後遺障害等級の解説

脳損傷 神経症状

【高次脳機能障害による注意障害】医師監修|後遺障害等級専門の弁護士法人小杉法律事務所

こちらの記事では、【高次脳機能障害による注意障害】について、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)監修のもと整理をしています。

 

高次脳機能障害

高次脳機能とは、社会生活を営む人間が発達させてきた、理解する、判断する、論理的に物事を考える等の認知機能で、知覚、言語、記憶、学習、思考、判断、感情等がこれにあたります。

何らかの原因で脳に損傷や機能異常が生じれば、高次脳機能に障害が発生する可能性があります。

高次脳機能障害は交通事故等の頭部外傷で生じることがありますが、必ずしも外傷性のものとは限りません。

たとえば、通常頭部外傷とは無関係の脳血管障害、脳腫瘍、脳感染症など、脳に損傷や機能異常をきたすものであればいずれも原因になります。

高齢者の場合、既往症に何らかの高次脳機能障害を示す疾患があり、その後に頭部外傷を負うことや、その逆も考えられ、外傷の影響がどこまでなのか悩ましいケースもあります。

 

注意障害とは

注意障害とは、物事に集中できない、集中する持続力が低下する、周りに注意が払えないなどの障害です。

びまん性軸索損傷により生じることが多く、主な病巣は前頭葉の前頭連合野と言われます。

 

症状の具体例

小さな刺激でも他のことが気になって仕事を途中で止めてしまう、逆に、仕事中に他の優先事項ができてもそちらにうまく移行できない、等の症状が発生します。

注意障害の前提として、そもそも注意力とは何かという点から整理すると、次のように表すこともできます。

選択性の低下 多くの情報から必要な情報を選び取る機能が低下し、隣の人物や部屋を飛んでいる虫などいろいろなものに反応しやすくなる
持続性の低下 注意力や集中力を持続させて1つのことを続ける機能が低下し、疲れやすくなったり、途中で投げ出してしまったりする
転導性の低下 1つのことに注意を向けているときに、他の別のことに気づいて注意を切り替えることが難しくなる
分配性の低下 電話しながらメモを取るなど、いくつかのことに同時に注意を向けながら行動する能力が低下する

 

リハビリについて

頭部外傷による高次脳機能障害は、早期から各障害に応じたリハビリテーションを行うことがすすめられています。

注意障害の場合、attention process training によるリハビリテーションが行われます。(略してATPトレーニング。)

ATPは注意力の4つの特性(選択性、持続性、転導性、分配性)に対し、合計13項目、106(難度の異なる)の訓練課題が含まれます。

 

注意障害を抱える方への対応

注意障害を抱える人が身近にいらっしゃる場合は、次のような対応を心がけるのがよいと言われています。

選択性の低下 周囲に仕切りを設けたり、周囲の刺激を取り除き、気が散る原因を取り除く
持続性の低下 こまめに休憩がとれるよう配慮する
転導性の低下 そもそも注意を切り替える必要がない環境を作る(何かをするときは電話を切るなど)
分配性の低下 なるべく一つずつ物事に取り組めるようにする

 

認定されうる後遺障害等級

後遺障害等級

脳外傷による高次脳機能障害について、自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害を整理すると、以下のようになります。

高次脳機能障害の等級認定で必要な検査方法や書式、その他注意すべきポイントはこちらの記事でご確認ください。

別表第一第1級1号 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」をいい、「身体機能は残存しているが高度の痴ほうがあるために、生活維持に必要な身のまわり動作に全面的介護を要するもの」もこれにあたります。
別表第一第2級1号 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」をいい、「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている状態です。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」がこれにあてはまります。
別表第二第3級3号 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」をいい、「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない場合です。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える状態です。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」がこれに該当します。
別表第二第5級2号 「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」をいい、「単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題があります。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」がこれに該当します。
別表第二第7級4号 「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」をいい、「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」がこれに該当します。
別表第二第9級10号 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」をいい、「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」がこれに該当します。

 

高次脳機能障害の損害賠償請求や後遺障害等級認定については専門の弁護士に相談を

後遺症専門弁護士小杉晴洋

交通事故等で頭部外傷を負い外傷性の高次脳機能障害を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うためには、受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所では賠償額や後遺障害等級認定の無料査定を行っておりますので、所属弁護士に是非ご相談ください。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。