コラム
交通事故がもたらす突然の別れ…葬儀費用とその対処法【弁護士解説】
2026.01.23

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 交通事故による葬儀費用とは?
- 葬儀費用についての認定基準
- 葬儀費用として認められる項目
- 葬儀費用に関する交渉
などについて解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による死亡事故解決サポートを行っております。
交通事故被害で大切な方を亡くされた被害者の方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士による死亡事故解決サポートの詳細についてはこちら。
交通事故による葬儀費用とは

交通事故は突然の出来事です。
ご遺族の方は、突然大切な人を失う悲しみを抱えながら、
お亡くなりになった後の手続や、葬儀などを、準備もままならないまま執り行う必要があります。
交通事故で被害者の方がお亡くなりなってしまった場合に要した葬儀費用については、
加害者側に請求できることが一般的ですが、請求漏れ等が出ないようにしっかりと知識を持つことが重要です。
葬儀費用が発生する背景
交通事故により被害者が死亡した場合、遺族は葬儀を執り行うことになります。
この葬儀費用については、最高裁判所第一小法廷昭和43年10月3日判決で、加害者側に請求できることが認められています。
| 最高裁判所第一小法廷昭和43年10月3日判決「右費用(葬儀に要した費用)は、その額その他原審認定の諸般の事情に徴し、社会通念上不相当な支出とは解されない。そして、遺族の負担した葬式費用は、それが特に不相当なものでないかぎり、人の死亡事故によつて生じた必要的出費として、加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当であり、人が早晩死亡すべきことをもつて、右賠償を免れる理由とすることはできない。」 |
この判例では、葬儀に要した費用は、それが特に不相当なものでない限り、必要的出費として加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当であると判示されています。
人はいつかは亡くなるものであり、そうすると葬儀費用もいつかは発生するものです。
事故に遭っても遭わなくても、いつかは(一度きり)発生する費用については、本当に事故によって発生した損害なのか?という議論があります。
この点についても、上の判例では、「人が早晩死亡すべきことをもつて」=人が遅かれ早かれ(事故がなくとも)死亡することになるとしても、「右賠償を免れる理由とすることはできない。」としており、
交通事故でお亡くなりになってしまった被害者の方の葬儀費用については、加害者側に請求できることが判例上(実務上)も確定しています。
では、ここでいう「特に不相当なものでない限り」というのは具体的にどこまでの範囲を指しているのか?について、以下で解説します。
葬儀費用として損害賠償請求時に認められる項目

一般的に葬儀費用として認められるもの
交通事故で大切な方を亡くされた場合の葬儀に要する費用など、すべて認められて然るべきだというお考えはもっともです。
しかし残念ながら、実務上では認定される項目やその金額について制限がかかることが多いです。
一般的に葬儀費用として損害賠償の対象として認められるものは以下のようなものがあります。
- 通夜・告別式費用: 祭壇代、斎場使用料、棺・骨壺代、遺影作製費など。
- 宗教者への謝礼: お布施、読経料、戒名料(法名料)など。
- 火葬・埋葬費用: 火葬料、納骨にかかる実費。
- 飲食・接待費: 通夜振る舞いや精進落としなどの飲食代(過度でないもの)。
- 供養・装飾費: 供花代、葬儀広告代、看板代など。
- 事務的費用: 死亡通知の郵送費、電話代、会葬御礼(粗供養)など。
- 遺体関連: 遺体の捜索費、処置費、搬送料(霊柩車、遠方からの搬送など)。
- 法要費用: 四十九日までの法要(初七日など)にかかる費用。
これらは、故人を弔うために必要不可欠と見なされ、賠償対象の範囲として認められることが多い項目です。
また、別枠になりますが、ご遺族が病院や葬式に駆け付けるために生じた交通費も「駆け付け費用」という項目での請求が可能です。
仏壇仏具購入費・墓碑建立費の取り扱い
交通事故被害者が亡くなってしまった場合、先ほどみた、まさに葬儀の際に要することが多い費用のほかにも、
仏壇仏具の購入費や、墓碑の建立費が発生することがあります。
これらの費用については、損害賠償請求上どう取り扱われるのでしょうか。
被害者ご遺族からすれば、葬儀を執り行えばそこで終わりということはもちろんなく、その後亡くなられた方を慰霊していくことが必要となりますから、
仏壇仏具購入費や、墓碑建立費についても認められてしかるべきであろうと思われます。
この点については、最高裁判所第二小法廷昭和44年2月28日判決で、しっかりと加害者側に請求できることが認められています。
| 最高裁判所第二小法廷昭和44年2月28日判決「人が死亡した場合にその遺族が墓碑、仏壇等をもつてその霊をまつることは、わが国の習俗において通常必要とされることであるから、家族のため祭祀を主宰すべき立場にある者が、不法行為によつて死亡した家族のため墓碑を建設し、仏壇を購入したときは、そのために支出した費用は、不法行為によつて生じた損害でないとはいえない。死が何人も早晩免れえない運命であり、死者の霊をまつることが当然にその遺族の責務とされることではあつても、不法行為のさいに当該遺族がその費用の支出を余儀なくされることは、ひとえに不法行為によつて生じた事態であつて、この理は、墓碑建設、仏壇購入の費用とその他の葬儀費用とにおいて何ら区別するいわれがないものというべきである(大審院大正一三年(オ)第七一八号同年一二月二日判決、民集三巻五二二頁参照)。したがつて、前記の立場にある遺族が、墓碑建設、仏壇購入のため費用を支出した場合には、その支出が社会通念上相当と認められる限度において、不法行為により通常生ずべき損害として、その賠償を加害に対して請求することができるものと解するのが相当である。」 |
ただし、ここで遺族側として気を付けなければならないポイントが2つあります。
1つ目は、仏壇や墓碑が、その被害者個人だけでなく将来的に家族やその子孫をまつるためのものとなる場合です。
この場合、将来的にその仏壇や墓碑に入ることになる家族や子孫が、本来自分たちのために購入すべきであった仏壇や墓碑を購入しなくなるわけですから、
ある意味では利益が生じていると捉えることもできます。
このような場合だと、被害者本人「固有」の損害として認定される限度での賠償が行われることになります(最高裁判所第二小法廷昭和44年2月28日判決)
2つ目は、葬儀費用認定の上限額です。
後ほど解説しますが、葬儀費用については「社会通念上相当である」という制約が課せられるために、裁判基準(弁護士基準)上も上限額の目安が定められています。
そして、この葬儀費用認定の上限額には、仏壇仏具購入費や、墓碑建立費も含まれることが一般的です。
そうすると、葬儀自体に要した費用+仏壇仏具の購入費や墓碑建立費となると、上限額を超過してしまう可能性が生じます。
このような場合には、仏壇仏具の購入費や墓碑建立費は、葬儀費用とは別途認められるべきだという損害賠償請求上の主張を行う必要性が生じます。
香典や香典返しの位置づけ
香典や香典返しは、一言でいうと被害者から加害者に対して行う損害賠償請求に関与しません。
香典は、参列者の方からいただくものですが、香典をお渡ししている側からすると葬儀費用に充ててくださいと思ってお渡ししているわけではなく、
故人に弔意を表すためにお渡ししているものであろうと思われます。
そうすると、今回の交通事故により生じた損害(葬儀費用)に充当する趣旨で受け取っているものではないということになりますから、
被害者が加害者に対して損害賠償請求をする際に、香典を受け取っているからといってその額が差し引きされるようなことはありません(最高裁判所第一小法廷昭和43年10月3日判決)。
逆に言うと、参列者が故人に弔意を表すためにお渡しする香典、これに対して御礼を申し上げるためにお渡しする香典返し、これについても
損害賠償請求とは別軸で発生しているものですから、葬儀費用として発生した損害であるとして加害者に対して請求することもできません。
このように、香典及び香典返しは被害者と加害者との間の損害賠償請求に関与しません。
葬儀費用の認定基準
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先ほども述べたように、他人の不法行為によって大切な方の命を奪われたという場合の葬儀費用に関しては、
全て加害者側から支払われるべきであると考えるのが、被害者ご遺族からすれば当然であろうと思われます。
しかしながら、最高裁判例で「社会通念上相当である」ものに限るとされている以上は、
保険会社基準でも、裁判基準(弁護士基準)でも基準額が存在します。
自賠責保険からの支払基準
自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準によれば、
自賠責保険からの葬儀費用の支払いは100万円であるとされています。
自賠責保険・共済ポータルサイト(国土交通省)においても、自賠責保険からは、通夜、祭壇、火葬、墓石などの費用(墓地、香典返しなどは除く)。について100万円が支払われると明記されています。
任意保険での補償内容
任意保険会社は自賠責保険の上乗せの目的で存在していますから、葬儀費用としては100万円以上の支払がされることになります。
一方で任意保険会社は支払う保険金が少なければ少ないほど自社の利益が大きくなりますから、できるだけ低い金額で抑えようとします。
保険会社主導で低い金額での認定をされないよう、しっかりと後述の裁判基準(弁護士基準)での請求をすることが重要です。
裁判基準(弁護士基準)における葬儀費用認定基準
裁判基準(弁護士基準)における葬儀費用認定基準は、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)に記載があります。
| 『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)「葬儀費用は原則として150万円。但し、これを下回る場合は、実際に支出した額。」 |
このように、裁判基準(弁護士基準)上も、150万円が上限とされています。
葬儀自体の費用だけでなく、仏壇仏具の購入費や墓碑建立費なども含めたうえでと考えると、不慮の事故で命を落とされた被害者を弔うには安いと感じられるかもしれません。
しかしながら、「原則」と記載があるように、これを超える金額が認められている裁判例も複数あります。
例えば、神戸地方裁判所平成28年10月27日判決(交通事故民事裁判例集49巻5号1304頁)では、被害者が19歳大学生であった交通事故につき、
葬儀が実家のある神戸ではなく、大学のある広島市で行われ、200名を超える友人らが弔問に訪れたことや、葬儀費用として支出した額が170万を超える金額であったことなどから、
170万円の認定がされています。
大阪地方裁判所平成28年10月26日判決(交通事故民事裁判例集49巻5号1204頁)では、
単身赴任先の交通事故で無くなった50歳男性会社員について、単身赴任先で葬儀を行い、改めて地元でも葬儀を行ったことなどを理由に、
200万円の認定がされています。
東京地方裁判所平成20年8月26日判決(交通事故民事裁判例集41巻4号1015頁)では、
大手監査法人に勤務していた34歳男性が亡くなった交通事故につき、奥様やご両親が、700万円超の葬儀関係費や墓碑建立費等を支出したことなどを踏まえ、
被害者の身上や事故態様等から、手厚く対応しようとしたことは無理からぬとして、250万円の認定がされています。
このように、被害者個人に特有の事情などによって、上限額を超える認定がされることもあります。
また、葬儀費用と別途、仏壇仏具の購入費や墓碑建立費等が認められた、つまり仏壇仏具購入費や墓碑建立費等が150万円の枠外として認められた裁判例も複数あります。
例えば、浦和地方裁判所平成9年8月12日判決(交通事故民事裁判例集30巻4号1146頁)では、
9歳の小学生男子が亡くなった交通事故について、墓地・墓石の購入費として100万円、それ以外の費用として120万円の合計220万円を葬儀費用として認定しています。
京都地方裁判所平成28年11月29日判決(交通事故民事裁判例集49巻6号1400頁)では、
事故により頭部がつぶれてしまった被害者の葬儀に当たり、エンバーミング(遺体処置)を行って、顔に似せたものを形成し、頭部にかぶせて行ったという事案について、
葬儀費用のほかに、エンバーミング費用として6万6000円が認められています。
このように、仏壇仏具の購入費や墓碑建立費などは、葬儀費用の枠外での認定がされることもあります。
賠償請求における注意点

葬儀会社とのコミュニケーション
冒頭述べたように、交通事故被害というのは突然のことです。
悲しみを感じられる間もない中で、法的な手続を進め、葬儀の準備を行い、執り行う必要があります。
その中で賠償請求における注意点に留意している余裕などないのが実情であり、自然なことであると思います。
だからこそ、葬儀会社などとしっかりとコミュニケーションを取りつつ、サポートを受けていきながら進めていくことが重要です。
弁護士への相談
ここまで見てきたように、交通事故により支出した葬儀費用についての損害賠償請求にあたっては、
まずは葬儀費用の原則の上限額である150万円の中で、もれなく請求をすることが重要です。このためには、領収証等をしっかり保管しておく必要があります。
さらに、
個別具体的な事情について述べ、葬儀費用については上限額を超えて認められるべきだという主張を行っていくことが、
被害者ご本人やご遺族にとっても重要になります。
そのためには、損害賠償請求を専門としている弁護士に相談し、きちんと請求をしてもらうことをお勧めします。
損害賠償請求を専門としている弁護士であれば、被害者の方、ご遺族の方お一人お一人の事情やお気持ちを汲み取り、適切な賠償額へと押し上げることが可能です。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による無料相談を実施しております。
大切な方を亡くされ、交通事故で亡くされ、お困りごとをお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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