事前認定非該当⇒弁護士介入で2つの部位に後遺障害14級9号認定!
交通事故被害者Hさん 40歳・女性・家事従事者・佐賀県
交通事故 後遺症・後遺障害
佐賀県で交通事故の被害に遭い、むち打ちの症状が残ったHさん(40歳・女性・家事従事者)。治療の末症状固定を迎え、保険会社を通して後遺障害等級の申請をしましたが、結果は非該当。
症状が残っているにもかかわらず後遺障害等級が認定されなかったことに納得できないHさんは、弁護士に依頼します。
依頼を受けた弁護士木村治枝は、異議申立てで2つの部位に後遺障害等級第14級9号を認定してもらうことに成功しました。
このページでは、弁護士木村治枝がどのようにしてHさんの事例で2つの部位に後遺障害等級第14級9号を認定してもらうことができたのかを解説していきます。
小杉法律事務所では弁護士木村治枝をはじめとした後遺症被害者専門弁護士による無料相談を行っております。
交通事故による後遺症でお困りの方は、ぜひ一度小杉法律事務所の無料相談をお受けください。
交通事故態様&治療状況
交通事故態様
被害者Hさんは、佐賀県内の道路で、右折するために対向車が通り過ぎるのを待っていました。
すると、後ろからよそ見をしていた中型トラックが突っ込んできて、その衝撃で対向車線に押し出され、対向車からも追突されてしまいました。
被害者Hさんの乗っていた車両の後方は、リアガラスがすべて割れてしまい、トランクが大きくへこんでしまいました。
また、車両前方は、エアバッグが作動しただけでなく、骨格自体が大きく損傷してしまうほどの大きな事故でした。
治療状況(むち打ち)
被害者Hさんは救急搬送されそのまま少しの間入院。
頚椎捻挫・腰椎捻挫の診断を受け、約半年間、週2~3日程度の通院治療を続けました。
「傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態」(『労災補償 障害認定必携』一般財団法人 労災サポートセンター発行より引用)に達することを症状固定といいます。
簡単に言えば、これ以上治療を続けても治療の効果が得られないような状態に落ち着いてしまうことです。
交通事故でむち打ち(頚椎捻挫・腰椎捻挫)の診断を受けた被害者のほとんどは、急性期(交通事故直後)がもっとも症状が重く、治療を続けていく中でだんだんと良くなっていくということが多いです。
そのまま完治される方ももちろん多いですが、中には半年以上の通院を続けても、首の痛み(頚部痛)や腰の痛み(腰部痛)が残ってしまう方も多くいます。
むち打ちの診断を受けた被害者の場合、半年(6か月)を症状固定の一つの目安とすることが多いです。
被害者Hさんも、交通事故発生から約半年経った後も首の痛みと腰の痛みが残ってしまっており、医師から症状固定の診断を受けました。
症状固定時に残存した症状のことを後遺症といい、後遺障害等級認定の申請ができるようになります。
保険会社を通した後遺障害等級認定の申請(事前認定)は非該当…
被害者Hさんは、症状固定後も首の痛みや腰痛といった症状が残っている(後遺症がある)ということで、加害者側保険会社から後遺障害等級認定の申請をしてみてはどうか?と提案を受けました。
Hさんはその提案を受け入れ、加害者側保険会社を通して自賠責保険に後遺障害等級認定を申請します。
しかし、結果は非該当でした。
非該当の理由は以下のとおりです。
- 症状の裏付けとなる客観的な医学的所見に乏しい
- 治療状況や症状経過等を勘案すれば将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い
そうは言われても、Hさんの身体には実際に交通事故による被害で首の痛みや腰痛が残ってしまっています。
にもかかわらず後遺症が残存することが全く認められず、後遺障害等級が認定されないことに納得がいかず、Hさんは弁護士に相談することにしました。
弁護士木村治枝の介入
弁護士木村治枝による法律相談
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Hさんからお問い合わせを受けた弁護士木村治枝は、お電話で今後の見通しについてご説明しました。
- 首の痛み、腰痛については後遺障害等級第14級9号が認められる可能性あり。
- 手足のしびれ等ないので神経の圧迫等がなく、後遺障害等級第12級13号は厳しい。
- カルテ等を取り付けて治療状況や症状経過を丁寧に立証していく。
- 事故態様も後遺症の立証に使う。
Hさんは弁護士木村治枝の方針に納得していただいたようで、委任をしていただくことができました。
自賠責への異議申立てのために新しい証拠を収集・検討
当然ですが、事前認定の際に提出された証拠と同じ証拠を提出しただけでは、判断は覆りません。
異議申立てで非該当の判断を覆すためには、新しい証拠=「非該当の理由に反論できる証拠」を収集し、提出する必要があります。
上で見たように、非該当の理由は2つ。
1つ目の理由は、「症状の裏付けとなる客観的な医学的所見に乏しい」というものです。
この理由について詳しく見ていく前に、今回被害者Hさんが訴える首の痛み・腰痛について認定される可能性がある後遺障害等級についてみていきましょう。
首の痛み・腰痛は、局部の神経症状という分類がされます。
局部の神経症状に認定される可能性がある後遺障害等級は、
- 後遺障害等級第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
- 後遺障害等級第14級9号 局部に神経症状を残すもの
の2つです。
この第12級13号と第14級9号との区別は、「他覚的所見」の有無によって区別されます。
「他覚的所見」とは、簡単にいうと、「症状の原因を客観的なかたちで証明する、画像や検査結果などの証拠」です。
これによく似た何かに、見覚えがありませんか?
そうです。
非該当の1つ目の理由として挙げられている「症状の裏付けとなる客観的な医学的な所見」です。
つまり非該当の1つ目の理由は、被害者Hさんの訴える症状は、後遺障害等級第12級13号に該当する症状ではないですよといっているわけです。
言い換えればこれを覆すためには画像や検査結果などが必要ということです。
今回Hさんは手足のしびれ等がありませんでした。
手足のしびれ等がないということは、首や腰に神経の圧迫等がない=画像上症状を裏付ける所見が無いということです。
ですので、今回は後遺障害等級第12級13号は目指さず、後遺障害等級第14級9号を目指すことになります。
非該当の理由の2つ目は、「治療状況や症状経過等を勘案すれば将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」というものでした。
これを覆すためには、一言で言えば「将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられるような治療状況や症状経過等を辿っていた」と認めてもらえれば良いわけです。
治療状況や症状経過等についての説明をするわけですから、提出すべきなのは診断書・診療報酬明細書・カルテです。
このうち診断書・診療報酬明細書は事前認定時に既に提出しています。
ですので、異議申立てのために新しく収集すべきなのはカルテということになります。
弁護士木村治枝は被害者Hさんが交通事故後通院したすべての病院のカルテを収集し、検討を行いました。
そして、カルテの記載や、後で述べる新しい証拠をもって、異議申立てを行いました。
異議申立てで後遺障害等級第14級9号が認定されるべき理由を主張
前提:むち打ちで後遺障害等級第14級9号が認定されるポイント
まず、むち打ちで後遺障害等級第14級9号が認定されるポイントを見ていきましょう。
ここでは簡単な記載に留めますが、詳しくお知りになりたい方は、むち打ち徹底解説のページをご覧ください。
ポイントと、今回のHさんの状況を順にまとめたものが以下の表です。
常時の痛みやしびれであること(首や腰については可動時に痛みやしびれがあること) | ◎ 後遺障害診断書に頚部痛・腰痛が持続している旨記載あり |
事故態様が軽微ではないこと | 事前認定時提出書類では分からない⇒異議申立てで主張するべき(理由①) |
症状の推移に不自然さがないこと | 事前認定時提出書類では分からない⇒異議申立てで主張するべき(理由②) |
所見がないとはいえないこと | 〇 |
通院頻度や通院期間が適切(週2~3日の通院を約半年)であること | 事前認定時提出書類でも分かるが、異議申立てで強く主張するべき(理由②) |
整形外科に通うこと | 〇 |
理由①事故態様が大きい←刑事記録・車両写真から立証
事故態様について事前認定時に提出されるのは、交通事故が発生したという事実を証明する交通事故証明書と、加害者側保険会社が作成する事故発生状況報告書だけです。
この2つの書類では、事故態様が大きいものであったということを証明することはできません。
そこで、弁護士木村治枝は異議申立ての際に、事故態様の大きさを証明するための新しい証拠として、刑事記録・車両写真を提出しました。
刑事記録は主に過失割合の検討をするため、車両写真は物損の損害額を計算するために使用されることが多いものですが、事故態様の大きさを立証するためにも使うことができます。
まず、刑事記録から、加害車両が時速50キロメートルで被害者Hさんの車両に追突していることを立証しました。
追突事故は交通事故が発生する予測ができず、真後ろから不意打ち的に衝撃を受けますから、首の過屈曲や過伸展が起きやすくなり、むち打ちになりやすい事故類型です。
時速50キロメートルもの速度で追突されているわけですから、被害者Hさんの身体に加わった衝撃はかなりのものだったと主張しました。
なおかつ加害車両は中型トラックであり、衝突の勢いで被害者Hさんの車両は大きく押し出されています。
乗車していたHさんの首や腰にかかる負担は相当の大きさであったと主張しました。
さらに、対向車線に押し出された被害者Hさんの車両に対向車がぶつかっています。
対向車はまさか逆側の車線から車両が押し出されてくるとは思っていませんから、時速40キロメートルほどで走行しており、ほとんどブレーキをかけることなくHさんの車両に衝突しました。
ここで受けた衝撃もかなりのものといえると主張しました。
次に、車両写真を使い、交通事故による衝撃の大きさを立証しました。
被害者Hさんの車両はエアバッグが作動し、車両前部の骨格自体が大きく損傷し、車両後部は窓ガラスがすべて割れ、トランクの部分が大きくへこんでしまっていました。
また、対抗車両は内部の配線がむき出しになるほど大きく損傷していました。
骨格部(ピラーなど)が損傷していることは、交通事故による衝撃の大きさを物語るものです。
これらが写っている車両写真は、異議申立てで事故態様が大きいことを示すにはうってつけの証拠です。
また、今回は使用しませんでしたが、修理見積も有用な証拠になる場合があります。
「事故車両の修理にこれだけの費用がかかるほどなのだから事故による損傷も大きい=事故による衝撃も大きい」といった流れです。
理由②症状の推移が自然で、通院頻度や通院期間が適切←カルテの記載から立証
弁護士木村治枝はカルテの記載の、治療経過と、その治療を行った時の被害者Hさんが訴える症状に着目しました。
通院頻度や通院期間は、事前認定時に提出する診断書・診療報酬明細書でも確認できます。
しかし、詳しい治療の経過や、その時被害者Hさんがどういった症状を訴えていたのかはそういった書類では分かりません。
カルテを検討した弁護士木村治枝は、首の痛み・腰痛について被害者Hさんが医師に訴えている症状をすべて抜粋しました。
それをもとに、「交通事故に遭った直後から首の痛みや腰痛を訴えており、治療を続ける中で少しずつ良くなっているものの、そこから症状固定日まではほとんど変わりなし。」
という治療経過が自然であり、症状が継続しているとの主張を行いました。
弁護士介入の結果、異議申立てで首・腰にそれぞれ後遺障害等級第14級9号が認定!
異議申立ての結果、首・腰にそれぞれ後遺障害等級第14級9号が認定されました!
別の部位に後遺障害等級がそれぞれ認定された場合、「併合」と呼ばれる処理がされます。
この「併合」は、等級の繰上げに関わります。後遺症が複数残存した場合、後遺症が1つだけ残存する場合よりも労働に支障が出ることを等級として反映するためです。
繰上げのルールは以下のとおりです。
後遺障害等級第13級以上が2つ以上認定 | 重い方の後遺障害等級が1つ繰上げ |
後遺障害等級第8級以上が2つ以上認定 | 重い方の後遺障害等級が2つ繰上げ |
後遺障害等級第5級以上が2つ以上認定 | 重い方の後遺障害等級が3つ繰上げ |
今回はどちらも第14級9号であったので、残念ながら繰上げはなく、併合14級という処理になります。
これにより被害者Hさんは自賠責から75万円を受け取ることができました。
現行のルールでは後遺障害等級第14級がいくつ認められても繰上げはありません。(この問題点について弁護士小杉晴洋が行った講演録がありますので、ご興味ありましたらご覧ください。後遺障害等級併合14級の問題点)
弁護士木村治枝の示談交渉
もし弁護士が介入していなかったら?
もし弁護士が介入していなかったら、事前認定のとおり後遺症が残存しているとは認められないまま示談交渉を進めることになります。
後遺症が残存したことにより将来にわたって労働能力が喪失することに対する損害である逸失利益や、後遺症慰謝料などは当然認められません。0円です。
さらに、休業損害や入通院慰謝料についても、自賠責基準かそれより若干高い対人賠償基準での支払いになります。
弁護士が介入したことによる効果① 後遺症が残存することを主張できる
弁護士の介入により異議申立てで併合14級を獲得していますから、加害者側保険会社に対しても後遺症が残存することを主張できます。
つまり、後遺症慰謝料や逸失利益を主張できるということです。
逸失利益の計算式は、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)です。
被害者Hさんは家事従事者であったので、逸失利益算定の基礎収入は厚生労働省が毎年発表している賃金センサスを利用することになっています。(最高裁判所第二小法廷昭和49年7月19日判決 判例時報748号23頁)
家事従事者の基礎収入には、事故前年の賃金センサスの学歴計・女性労働者の全年齢平均の賃金額を採用します。
したがって、被害者Hさんの基礎収入は385万9400円となりました。
むち打ちによる疼痛で認定された後遺障害等級第14級の場合、労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は5年とされることが多いです。
(基礎収入)385万9400円×(労働能力喪失率)5%×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)4.5797=88万3744円、被害者Hさんの逸失利益は88万3744円です。
また、後遺障害等級第14級の後遺症慰謝料は、裁判基準では110万円とされています。
この時点で、被害者Hさんは弁護士に依頼していなければ200万円近く損をしていたことになります。
弁護士が介入したことによる効果② 休業損害や入通院慰謝料を裁判基準で支払ってもらうことができる
先ほどいったように、弁護士が介入しない場合、休業損害や入通院慰謝料は、自賠責基準かそれより若干高い対人賠償基準での支払いになります。
自賠責の休業損害の基準は日額6100円。入通院慰謝料の基準は日額4300円です。
しかし、弁護士が介入すると裁判基準により休業損害や入通院慰謝料を支払ってもらうことができます。
休業損害は逸失利益と同様に、基準を事故前年の賃金センサスの学歴計・女性労働者の全年齢平均の賃金額とすることができます。
つまり、385万9400円÷365日≒日額1万573円です。
また、入通院慰謝料についてはむち打ちの裁判基準の場合、入通院日数が6か月になると約90万円になります。
このように、弁護士が介入するだけで大きく増額することができます。
被害者Hさんは、弁護士の介入により、自賠責保険金も含めて約400万円の損害賠償金を受け取ることができました。
依頼者の声(交通事故被害者Hさん 40歳・女性・家事従事者・佐賀県)
事前認定の結果は非該当、医師にも後遺症は認められないと言われており、半ば諦めているような状態でした。
ですが、実際に私の首や腰には痛みが残っており、それが認められないということにどうしても納得ができず、弁護士に依頼することにしました。
木村先生は後遺障害等級を認定してもらうために様々な証拠を収集・駆使してくださっていました。
賠償金をより多くもらうことができたというのも嬉しいですが、後遺症が残っていることが認められたというのが何より嬉しかったです。
木村先生に依頼して本当に良かったと思いました。
弁護士木村治枝のコメント:異議申立ては証拠収集が重要です。
異議申立ては一度下された判断を覆すために行うものですので、それ相応の新しい証拠が必要になります。
今回のHさんの事例ではカルテと刑事記録、車両写真を使って異議申立てを行いました。
しかし、事例によっては医師の意見書や、被害者ご本人の陳述書など様々な証拠が有用になる場合があります。
事例ごとに必要な証拠を見極め、収集し、それをもとに的確な主張ができるかどうかは弁護士の力量に左右される部分です。
後遺症でお困りの方は、ぜひ後遺症被害者専門の弁護士事務所である小杉法律事務所にお気軽にご相談ください。