圧迫骨折・体幹骨骨折 下肢 神経症状
仙骨骨折の後遺症(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらの記事では、骨盤を構成する仙骨について、骨折後の後遺症を整理しています。
→仙骨の位置や周辺構造についてはこちらの記事をご覧ください。
仙骨骨折は交通事故等が原因で発生します
(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)、714頁)
仙骨を含む骨盤輪の骨折や、仙骨関節脱臼について、交通事故や墜落などの高エネルギー外傷にともなう致命的な外傷だと言われます。
他方、近年の高齢化に伴い、転倒などの低エネルギー外傷で受傷する、脆弱性骨盤輪骨折が増えています。
認定されうる後遺症
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。
神経症状
骨折部位に痛み等が残存する場合に認定可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
仙骨骨折が股関節の可動域制限に影響を及ぼしている場合は認定の可能性があります。この場合、可動域測定は他動値によります。
あるいは、末梢神経損傷を合併し、支配領域に麻痺症状が出た場合にも認定可能性はあります。この場合、可動域測定は自動値によります。
たとえば腰神経叢損傷の場合、股関節、膝関節、足関節に運動麻痺が生じる可能性があります。
また、重度の骨盤輪損傷等で人工関節・人工骨頭が挿入置換された場合には別の認定基準が準備されています。
※下の表は一側の股関節1関節の機能障害を念頭に整理しています。末梢神経損傷の場合等、態様によっては両下肢や一側でも数個の関節に運動麻痺が生じることはありえます。その場合、6級以上の後遺障害が認定される可能性もあります。
別表第二第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
→以下の2つのうちいずれか。 ・関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの ・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの |
別表第二第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
→以下の2つのうちいずれか ・患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの ・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下には制限されていないもの |
別表第二第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
→患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの |
変形障害
別表第二第12級5号 | 骨盤骨に著しい変形を残すもの |
なお、ここでいう「骨盤骨」には、仙骨が含まれます(が、尾骨の変形は障害認定の対象になりません)。
「著しい変形」とは、裸体となったとき、変形や欠損が明らかにわかる程度のもので、レントゲン写真によってはじめて見出される程度のものは該当しません(この点については、採骨による変形の場合も同様です)。
後遺障害申請時には変形や欠損が外観上判別しやすい写真を撮影し、添付するのが有用です。
骨盤骨が高度に変形したために、股関節が転位して運動障害が残った場合は、骨盤骨の変形と股関節の機能障害とを併合することができます。
たとえば、変形障害12級と股関節の機能障害12級の場合、併合して11級での後遺障害認定がなされます。
後遺障害の等級は損害賠償請求額の計算に直結ますので、骨盤骨骨折後に股関節に機能障害が残った場合、変形障害の残存がないのかどうか、忘れずにチェックすることが重要です。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等の外傷で骨盤の仙骨に骨折を受傷してしまうことがあります。治療費や休業損害、慰謝料等の損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、受傷の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。