圧迫骨折・体幹骨骨折 下肢 神経症状
仙骨骨折の症状(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらの記事では、骨盤を形成する骨の一つである仙骨の骨折で生じる症状について整理しています。
仙骨とは
仙骨は寛骨、尾骨とともに骨盤を形成する骨の一つで、骨盤後方にあります。
仙骨は仙腸関節により左右の寛骨と接続しており、輪状の構造を構成しますが、これを骨盤輪といいます。
部位としては第1~第5仙椎に分類されますが、成人以降は一つの骨になっています。
仙骨の骨折について
仙骨を含む骨盤輪の骨折は骨折型により、側方圧迫型(LC)、前後圧迫型(APC)、垂直剪断型(VS)、組み合わせの場合(CM)と分類されます(Young-Burgess(ヤング-バージェス)分類)。
仙腸関節脱臼まで含めれば、すべての骨折型で仙骨骨折が生じえます。
※仙腸関節:寛骨のうち、腸骨と呼ばれる部分(↑のイラストだと黄色)と仙骨の接続部分。
その他、AO分類も用いられ、A型(安定型)、B型(部分不安定型)、C型(完全不安定型)と区別されることがあります。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、817~818頁、図38-42、図38-43)
骨折の原因は
(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)、714頁)
仙骨を含む骨盤輪の骨折は、交通事故や墜落などの高エネルギー外傷に伴う致命的な外傷だといわれます。
他方、近年の高齢化に伴い、転倒などの低エネルギー外傷で受傷する、脆弱性骨盤輪骨折が増えています。
骨折後の症状
骨折部に痛み等の症状が発生する可能性があります。
重症事案で骨盤輪が破綻したり仙腸関節脱臼になった場合、周囲の血管損傷と骨折部からの出血により、大量出血をきたすことで死亡することもあります。
仙骨骨折や仙腸関節脱臼は腰神経叢損傷を引き起こすことが多く、その場合は運動麻痺・感覚麻痺が出現します。
腰神経叢は神経根L1~L4で構成されます。大まかにではありますが、感覚障害は股関節~大腿(前面及び両側面)~下腿(内側)に、運動麻痺は股関節、膝関節、足関節に影響を及ぼす可能性があります。
→腰神経叢含む末梢神経損傷の詳細はこちらの記事でご確認ください。
診断・検査について
(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)、714頁)
身体所見
高エネルギー外傷では、特に多臓器損傷の合併の有無を確認します。
尿道口からの出血は尿道損傷を疑う所見です。
尿検査
尿の外観で血尿と判断すれば、肝臓以下尿道までの損傷を疑います。
X線
蘇生が必要な場合、胸部と骨盤部の単純X線正面像2枚で重症度の判断を行います。
受傷者の症状が落ち着いているのであれば、インレット像、アウトレット像を追加し、それぞれ前後方向、垂直方向の転位や骨盤輪の破綻を明らかにします。
CT
重症度の判断に必要な、骨盤の後方構成体損傷を診断するのに用います。手術計画をする際にも必要な情報です。
MRI
高齢者の脆弱性骨盤輪骨折においては、後方構成体の破綻はX線では診断できないことも多く、その場合にMRIが有用です。
治療指針
(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)、715頁)(標準整形外科学第15版(医学書院)、818頁、図38-43)
骨盤輪が破綻していない場合は保存療法の適用になります。
特に高齢者は寝たきりを防ぐために、早期から痛みに応じて起立訓練や歩行訓練を開始し、通常は3~4週間で仮骨形成と痛みの軽減がみられると言われます。
ヤング-バージェス分類でいう垂直剪断型(VS)、側方圧迫型(LC)、AO分類でいうB型(部分不安定型)の一部類型(オープンブックタイプ)のうち、下肢の内旋が強い例等が手術療法の適用になります。プレートや脊椎固定材料を用いますが、専門施設への相談、加療が望ましいとされます。
認定されうる後遺障害は
神経症状(12級か14級)、機能障害(8級、10級、12級)、変形障害(12級)等の認定可能性があります。
→仙骨骨折後に認定されうる後遺障害等級の区分等詳細はこちらの記事でご確認ください。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等の外傷で骨盤の仙骨に骨折を受傷してしまうことがあります。治療費や休業損害、慰謝料等の損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、受傷の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。