後遺障害等級の解説

脳損傷 神経症状

脳挫傷の後遺症に数年後になって気づくことも?(弁護士法人小杉法律事務所監修)

こちらの記事では、脳挫傷による後遺症が数年後に発覚した場合について整理しています。

脳挫傷とは

(標準脳神経外科学(医学書院)、267頁、276頁)

脳損傷のうち、脳の損傷が限局的で脳全体への波及が少ないものを脳挫傷(局所性脳損傷)と言います。

他方、脳の広範位にわたる損傷を起こした状態がびまん性軸索損傷と呼ばれます。

脳挫傷の後遺症について

高次脳機能障害、身体性機能障害、感覚器等の機能障害、外傷性てんかん、失調、頭痛等の後遺症が残存する可能性があります。

脳挫傷の後遺症についてはこちらの記事で詳細を整理しています。

数年後に症状について自覚することも

高次脳機能障害の可能性

脳挫傷により高次脳機能障害が発生した場合、症状について自覚するのが遅れ、事故後数年経過しているという可能性もあります。

身体障害が軽傷である場合は外見的に高次脳機能障害が目立ちにくく、本人も障害を認識できないことがあり、高次脳機能障害は「見えない障害」とも呼ばれています。

特に被害者が小児の場合、日常および学校生活などを観察することが高次脳機能の評価に重要ですが、年少児ほど評価に時間を要するケースがあり、中学生になって初めて、高校生になって初めて、とか、成人に近づく周囲の児童と比較することでやっと被害児童の症状が顕在化するケースもあります。

高次脳機能障害による症状は以下の通りですが、交通事故や労災事故で頭部を受傷したあとに次のような症状が現れた場合、早期に医療機関に相談し、適切な治療を受けることをお勧めします。

高次脳機能障害の後遺障害認定で必要になる検査や資料についてはこちらの記事で詳細を記載しています。

失語 脳の損傷が原因で、読む・書く・話す・聞くなどの言語機能が失われた状態です。
失行 運動麻痺や感覚障害ががなく、記憶等も問題が無いにも関わらず、日常生活の様々な行為が損なわれます。
失認 目は見えていて感覚に問題が無いにもかかわらず、眼に見たものを認識できない等の症状が生じます。
記憶障害 昔のことが思い出せない、新しいことを覚えることができないなどの状態です。
注意障害 物事に集中できない、集中する持続力が低下する、周りに注意が払えないなどの状態です。
遂行機能障害 物事を行うための段取りが悪かったり、臨機応変な対応ができず(こだわりが強くて予定外のことに想定できない)、物事をスムーズに行うことができない状態です。
社会的行動障害 易怒性(すぐに怒る)、意欲がわかない、特定のものに固執するなどして社会でうまく生きていくことが阻害される状態です。

時効について

不法行為を根拠にして加害者に賠償請求する場合の消滅時効は、

A:被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年

又は

B:不法行為の時から20年

となっています(民法424条1号及び2号、724条の2)(人身損害を前提に記載しています。)。

Aについて、事故から数年後に症状に気が付いた時点を「損害…を知った時」と解すれば、気づいた時点から5年以内であれば、治療費等の損害を請求できる余地があるということになります。

Bについて、「不法行為の時」というのは通常、事故発生時でしょうから、事故から20年以内は請求できる余地があるということになります。

因果関係の立証

時効については以上の通りですが、実際のところ、事故後数年経過して気づいた症状についての賠償請求を加害者側に求めていくハードルはそれなりに高いと言わざるを得ません。

一般的な理解として、交通事故や労災事故等で受傷したことにより生じる症状は、事故直後~それほど間をおかない間に発生し、その後(完治するかどうかはともかく)改善していくものととらえられていますので、「数年後に症状が出たのだ」と加害者に主張しても、「あの時の事故のせいかどうかわからない」と反論され、因果関係の立証に苦労する場面が多いでしょう。

高次脳機能障害として、あるいはその疑いがあるということで診察を受けていたとか、受傷後の頭部CTやMRI画像等で脳損傷を裏付ける所見が残っていなければ、それも立証を難しくする要素になります。

対策するとして

まず、頭部外傷後には高次脳機能障害が発生するかもしれないと認識し、早期からそのような視点で被害者自身や、あるいは身近で生活する親族の方が、注意深く観察することが大事でしょう。少しでも違和感があれば医療機関に相談し、適切な検査や治療を受けるべきです。

あるいは、早期に示談等で解決するにしても、免責証書や示談書に「後日、本件事故に関する後遺障害が判明した場合には別途協議をする。」等の留保の文言を加えておくべきでしょう(といっても「協議する」約束でしかないので、因果関係について争われる余地は十分あります。)。

事故後早い段階で法律相談に来ていただければ、弁護士が可能性について指摘することができる場合もあります。

高次脳機能障害の事案は弁護士に相談した方がよい理由はこちらの記事でも整理しています。

弁護士に相談を

交通事故等で頭部外傷を負い外傷性の高次脳機能障害を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うためには、受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。