脳損傷 神経症状
脳梗塞の後遺症で寝てばかりになるケース|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所
こちらの記事では、脳梗塞の後遺症で寝てばかりの状態になるケースについて整理しています。
なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事監修をしてもらっています。
脳梗塞とは
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、243頁)
脳は全身の臓器の中でエネルギー代謝が最も活発な臓器で、エネルギー生産のために必要なグルコースを脳内で貯蔵することがほとんどできないため、常に血液からのグルコース供給を必要としています。
脳の血流が低下し、酸素とグルコースの供給が不十分になる状態を脳虚血と言いますが、脳虚血状態が持続して脳実質が壊死に陥った状態を脳梗塞といいます。
脳梗塞の原因とは
脳梗塞の主な原因は、心疾患、高血圧、糖尿病、脂質異常症や喫煙、大量飲酒等だとされており、交通事故等の外傷で発生することは一般的だとは言えません。
交通事故等の外傷が原因で脳梗塞が発生するのであれば、外傷性動脈狭窄・閉塞の可能性を指摘することができます。
→外傷性脳梗塞の原因についてはこちらの記事で整理しています。
寝てばかりの状態になる可能性も
外傷による脳梗塞として可能性を指摘できる外傷性動脈狭窄・閉塞の場合、片麻痺や言語障害、脳幹部の症状として意識障害を含めた症状や小脳症状(小脳性運動失調など)、脊髄症状を呈することがあると言われています。(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、292頁)
片麻痺とは一側の上肢と下肢に麻痺が出ているものを言いますが、身体的な問題で日常生活に支障がでますので、程度によっては寝てばかりの状態になることがありえます。
また、遷延性意識障害(植物状態・植物人間)の場合は当然ですが、寝てばかりの状態になってしまいます。
脊髄症状(四肢の運動麻痺や感覚障害、循環器障害や呼吸器障害、膀胱直腸障害など)についても程度によっては、寝てばかりの状態になることがあります。
後遺症の認定について
外傷による脳梗塞による高次脳機能障害について、自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害を整理すると以下のようになります。
身体性機能障害
片麻痺等の症状については、次のような目安で後遺障害等級の判断が行われます。
別表第一第1級1号 | 高度の四肢麻痺、中程度(常時介護)の四肢麻痺、高度(常時介護)の片麻痺 |
別表第一第2級1号 | 中程度(随時介護)の四肢麻痺、高度の片麻痺 |
別表第二第3級3号 | 中程度(除く介護)の四肢麻痺 |
別表第二第5級2号 | 軽度の四肢麻痺、中程度の片麻痺、高度の単麻痺 |
別表第二第7級4号 | 軽度の片麻痺、中程度の単麻痺 |
別表第二第9級10号 | 軽度の単麻痺 |
別表第二第12級13号 | 軽微の四肢麻痺、軽微の片麻痺、軽微の単麻痺 |
四肢麻痺とは左右の上肢と下肢に麻痺が出ているものを言います。
片麻痺とは一側の上肢と下肢に麻痺が出ているものを言います。右上肢と右下肢、あるいは左上肢と左下肢の2種です。
単麻痺とは、左右の上肢と下肢のどれか1肢にのみ麻痺が出ている場合を言います。
遷延性意識障害
→遷延性意識障害についての詳細はこちらの記事で整理しています。
別表第一第1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの。
→生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常時介護を要するもの |
脊髄症状
→脊髄症状については脊髄損傷に関するものとしてこちらの記事で整理しています。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等で外傷後に脳梗塞が発生した場合、一般論で言えば事故との因果関係を立証するのはかなり困難だと言えます。可能性について検討したいという方は、弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。