脳損傷 鼻 口・顎・歯・舌 骨折 醜状障害 上肢 下肢 神経症状
頭蓋骨骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)
本記事では、頭蓋骨の骨折について整理します。頭蓋骨は頭蓋円蓋部と頭蓋底に分かれますが、本記事では主に頭蓋円蓋部の骨折をメインに記載しました。
→頭蓋骨以外の部位(上肢下肢、脊椎や骨盤等。)の骨折についてはこちらの記事でまとめております。
頭蓋骨とは
こちらのイラストのとおり、頭蓋骨は様々な骨が組み合わさって出来上がっていますが、大まかな整理としては脳を入れる神経頭蓋(脳頭蓋)か、それ以外の顔面頭蓋(内臓頭蓋)に分かれます。神経頭蓋はさらに、頭蓋円蓋部と頭蓋底で区別されます。
神経頭蓋と顔面頭蓋
神経頭蓋(脳が入る部分)
頭蓋骨を構成する骨のうち、脳を入れる部分です。
前頭骨、頭頂骨、後頭骨、篩骨(しこつ)、蝶形骨、側頭骨の6つで構成されます。
篩骨については内部に入り込んでいるので上のイラストでは描写されていませんが、右側の図で「側頭骨」「蝶形骨」「眼窩」が線でつないだあたりの内側にある骨です。
顔面頭蓋(それ以外)
頭蓋骨を構成する骨のうち、神経頭蓋以外のものです。
鼻骨、鋤骨(じょこつ)、涙骨、上顎骨、下鼻甲介、口蓋骨、下顎骨、舌骨、頬骨の9つです。
上のイラストで記載が無いのは鋤骨と舌骨ですが、鋤骨は鼻腔のさらに内側、舌骨はあごと頚が繋がる部分に位置します。
頭蓋円蓋部と頭蓋底
頭蓋骨のうち神経頭蓋については、さらに2つに分類できます。こちらの区分は神経頭蓋と顔面頭蓋のように構成する骨での区別にはなっていません。
眼窩(がんか)の上の部分を眼窩上縁、後頭骨の後方に出っ張った部分(上のイラストで右図の「側頭骨」と書いてあるすぐ上あたり)を外後頭隆起と呼びますが、神経頭蓋について眼窩上縁と外後頭隆起をつないだ線から上側を頭蓋円蓋部(ずがいこつえんがいぶ)、下側を頭蓋底(ずがいてい)といいます。
※なお、頭蓋骨や頭蓋底の「頭蓋」は「とうがい」と読むこともあります。
頭蓋底には神経や血管が通る小さな穴が多く存在し、構造的に骨折をきたしやすい部分で、脳神経麻痺を合併すれば視覚、嗅覚、聴覚、味覚の障害や顔面神経麻痺等が発生することがあります。
→頭蓋底骨折についてはこちらの記事で詳細を整理しております。
頭蓋骨骨折の原因
交通事故や転倒・転落時に頭部に衝撃が加わり、頭蓋骨を骨折することがあります。
頭蓋骨骨折の診断・検査
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、270頁)
骨折の診断は単純X線像で可能ですが、頭蓋内病変を確認する必要があるため、骨折を確認した場合はCT撮影を行うことが必須だと言われています。
頭蓋骨骨折の分類
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、270~271頁)
骨折の態様によって線状骨折、粉砕骨折、陥没骨折の3種に、また、頭蓋骨の露出の有無によって開放性骨折と閉鎖性骨折に分類できます。
線状骨折、粉砕骨折、陥没骨折
線状骨折
頭蓋円蓋部骨折で最も多くみられるのが線状骨折です。
頭部単純X線像で骨折線が線状に認められ、1本の場合も複数見られる場合もあります。
線状骨折それ自体は特に外科的治療の必要性はなく、保存的な治療だけでよいとされますが、骨折線が内部の血管を横切る場合、硬膜外血腫を合併することがあり、注意が必要です。
硬膜外血腫を合併した場合、観血的治療が必要になります。
側頭部では中硬膜動脈が、頭頂部では上矢状静脈洞、後頭蓋外窩では横静脈洞が破綻することが多いです。
頭蓋骨にひびが入ったと言われる場合の多くは、こちらの線状骨折を指すものだと思われます。
粉砕骨折
頭部への外力が広い範囲で加わったとき、線状骨折が広い範囲で生じることを粉砕骨折と言います。
頭蓋骨が2本以上の線状に破損、またはバラバラに砕けて陥没骨折になっていることが多いです。
陥没骨折
外力が局所的に加わった際に生じ、頭部X線撮影や3D-CT撮影で頭蓋骨が骨折して陥没している様子を確認できます。
閉鎖性損傷(単純骨折)と開放性損傷(複雑骨折)
閉鎖性損傷
頭蓋骨が露出していない、骨折部が外界と交通していない骨折です。
1本でも複数の線状骨折でも単純骨折と呼び、瓦がバラバラになったような性状の複雑な骨折は粉砕骨折といいます。
開放性損傷
頭皮の損傷を伴い、骨折部が外界と直接的に交通している状態を言います。
骨折による症状
骨折そのものの症状としては、骨折部位の痛み(圧痛、疼痛)や腫脹等の症状が発生しえます。
ただし、頭蓋骨骨折の合併損傷には注意が必要です。
懸念される合併損傷
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、280頁)
頭蓋内血腫
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、282~289頁)
血腫が発生する場所によって区分されます。
頭部について、外側から順に構造を整理してみると、下のようなイメージになります
外側>>>皮膚>頭蓋骨>硬膜>くも膜>軟膜>脳>>>内側
硬膜、くも膜、軟膜は3つ合わせて髄膜と言います。くも膜と軟膜の間にはくも膜下腔というスペースがあり、髄液で満たされています。
急性頭蓋内血腫
強い外力が頭部に働くことで発生します。損傷部位と血腫の場所から次の3種に分類されます。
硬膜外血腫 | 頭蓋骨と硬膜の間 |
硬膜下血腫 | 硬膜とくも膜の間 |
脳内血腫 | くも膜よりさらに内側の脳実質内の血腫 |
原則として頭蓋骨は変形しないため、血腫の出現やの脳浮腫等で頭蓋内容積が増加すると、頭蓋内圧が高まり、頭痛、嘔気・嘔吐、外転神経麻痺(脳神経Ⅵ)、意識障害をきたし、脳ヘルニアや生命の危険につながる可能性があります。そのため、早期に診断して、血腫を除去する手術を行うなど適切に対応する必要があります。
※脳浮腫:脳組織内に水が異常に増加し蓄積した状態。外傷によるほか、腫瘍、血管障害、感染などの多くの疾患でみられます。(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、155頁)
慢性硬膜下血腫
受傷時に硬膜下に生じた小さな血腫が、受傷後3週間以上の期間をおいて徐々に増大し、脳を圧迫します。
軽微な外傷でも起こることが知られていますが、発生機序は完全には解明されていません。
急性硬膜下血腫との関係ですが、血腫が発生する部位は同じです。ただ、慢性硬膜下血腫の場合、血腫の周辺に被膜(外膜・内膜)が形成されるのが特徴で、急性か慢性かの単純な区別ではなく、そもそも異なる病態だと考えられています。
頭痛を初期症状とすることが多く、血腫が片側だけの場合は血腫の増大とともに徐々に対側の片麻痺や言語障害などの巣症状を生じるようになります。放置すれば意識障害に進展します。
穿頭術により液状血腫を除去して、脳の圧迫を解除することが治療の基本になります。
脳損傷
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、266~267頁、275~276頁)
大部分の外傷性脳損傷は頭部の急激な加速または原則の結果として生じると言われています。
※加速:例えば、顔面に真正面からパンチを受けた際、頭全体が後方に振られることを言います。
※減速:例えば、転倒して額を壁に打ち付けた際、頭全体の動きが急に止まる(減速する)ことを言います。
脳局所脳損傷(脳挫傷)
局所性脳損傷(脳挫傷)とは、脳の損傷が限局的で脳全体への波及が少ないものを言います。
最も多い局所性脳損傷は頭蓋内で脳が移動して脳の先端部が頭蓋骨と衝突して生じるもので、前頭葉先端や側頭葉先端に多いです。
運動機能や言語機能など重要な機能を司る脳の部位(皮質)が局所的に損傷されると、それらによる神経局所症状(巣症状(そうしょうじょう))が現れます。
打撃部位に生じる直接損傷と、その反対側で生じる対側損傷があります。
頭部CT画像で確認できます。
脳挫傷に続発して脳内血腫が発生することも多いと言われます。
びまん性軸索損傷
頭部に外力が加わったとき、衝撃の結果による加速と減速により脳の移動、回転、変形がおこり、脳にズレ外力が加わり、神経線維が断裂(軸索損傷)して脳の広範な領域に損傷が及びます。
受傷直後から6時間以上持続する高度な意識障害が特徴です。
受傷時に頭部CTを撮影しても脳実質内に高度の意識障害の原因になるような目立った病変が認められませんが、MRI画像のうち、FLAIR画像、T2強調画像、 T2*(T2スター)強調画像で脳幹、脳梁、大脳皮質などの部位に異常所見をとらえることができます。
高次脳機能障害をきたしやすく、意識障害の時間が長いほど予後は不良になります。
→びまん性軸索損傷の症状についてはこちらの記事で整理しております。
外傷性てんかん
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、281頁)
てんかんについては、受傷後24時間以内のてんかん発作を直後てんかん、受傷後1週間以内に生じるものを早期てんかん、その後に初発するものを晩期てんかんと分類します。
このうち晩期てんかんが本来の意味の外傷性てんかんとされ、通常受傷後6か月までに約半数が、2年までに80%が発症します。
外傷性てんかんの発生には脳の局所損傷が関与しており、特に次の5つのケースでは、外傷性てんかんの発生リスクが高いと言われています。
1 | 開放性脳損傷および感染を合併した場合 |
2 | 脳挫傷および6時間以上の意識障害、24時間以上の外傷性健忘を合併し、GCS10点未満のもの |
3 | 急性頭蓋内血腫のあるもの |
4 | 陥没骨折、硬膜損傷のあるもの |
5 | 早期てんかん発症が認められたもの |
頭痛
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、122頁)
頭痛の発生原因は様々ありますが、頭部外傷に関連するものとしては、頭蓋内外にある痛覚受性器官が、圧迫・伸展・収縮・損傷・炎症の波及等で刺激されることにより生じます。
頭蓋内で整理すると、硬膜および硬膜に囲まれた静脈洞、脳神経、脳動脈主幹部が痛覚受性器官で、硬膜では頭蓋底部、特に前頭蓋底部が痛覚に敏感だと言われます。
脳神経損傷
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、289頁、25頁)
外力が頭部に加わることで、脳実質外で脳神経が損傷をうけることがあります。
脳神経とは、主には脳幹と呼ばれる部位から左右に12対でる末梢神経系のことを指しますが、嗅神経、顔面神経、視神経、動眼・滑車・外転神経の順で損傷が認められる頻度が高いです。
原因としては、外力により頭部の加速減速で脳槽内を走行する神経自体が損傷される場合と、脳神経が通過する頭蓋底が骨折した場合に損傷される場合があります。
※脳槽:髄液で満たされた脳とくも膜の間の空間をくも膜腔といいますが、くも膜腔のうち特に開けた区画を脳槽と言います。
認定されうる後遺障害
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害を整理しました。
本記事のテーマになっている頭蓋骨の骨折でいうと、骨折単体か、脳損傷や脳神経損傷等の合併がある場合の2つに大別されます。
本記事で合併損傷がある場合については、脳損傷等を合併した場合に認定されうる後遺障害等級のみ記載し、脳神経損傷を合併した場合の視覚、聴覚、味覚、嗅覚等の障害は頭蓋底骨折について整理したページで記載しています。
ところで、脳の損傷によって生じる症状は非常に多岐にわたりますので、精神障害・神経障害を区別せず、それらの諸症状を総合的に判断して、後遺障害の等級を決定することが原則とされています。
たとえば、「頭部外傷により記銘力障害・知能低下・感情障害といった精神障害と、めまい・頭痛等の神経障害が残った場合」、実務的にこれを分離し、それぞれ後遺障害の程度を見極めることは困難ですから、総合的にとらえることとされています(併合処理はしない。)。
ただし、脳損傷により感覚器などに障害を生じた場合で、その障害について該当する等級(相当等級を含む。)があるときは、その該当等級を認定することになります。
たとえば1側の後頭葉視覚中枢の損傷によって、両眼の反対側の視野欠損を生じた場合は視野障害の等級を認定します。)したがって、そのほかに脳の障害があれば、両者を併合することができます。なお、脳の障害とともに、嗅覚障害、味覚障害等を残した場合も、同様に両者を併合して認定することができます。
また、下記のとおり、第1級から第14級まで認定の幅は広くあるのですが、どうしても就労できない、あるいは日常生活に著しい支障をきたす等の訴えがあったとしても、神経系統の障害が医学的に証明されたもの(他覚所見によって証明されたもの)でなければ、非器質性精神障害の基準により等級評価を行う場合を除き、別表第二第12級以上の等級の適用はできないとされています。
他方で、たとえ自覚症状の訴えが軽い場合であっても、CT・MRI等で異常が認められたり、脳波に異常が認められる場合には、医学的に証明されたもの(他覚所見によって証明されたもの)として別表第二第12級の評価が可能だとされています。
骨折単体
この場合、骨折部位に疼痛等の神経症状が残存すれば、神経症状として認定される可能性があります。
神経症状
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
脳損傷等を合併した場合(身体性機能障害、高次脳機能障害、外傷性てんかん、頭痛、中枢神経系(脳)の脱落症状としての感覚器の機能障害)
局所性脳損傷(脳挫傷)で運動機能や言語機能など重要な機能を司る脳の部位(皮質)が局所的に損傷されると、それらによる神経局所症状(巣症状(そうしょうじょう))が現れます。
神経局所症状のうち、四肢(上下肢)に発生する運動障害等については、脳の損傷による身体性機能障害として審査・認定の対象になります。
他方、びまん性軸索損傷で発生することが多い高次脳機能障害についても、認定区分が準備されています。
なお、同じ事故で受傷した脳損傷等で身体性機能障害と高次脳機能障害の両方が発生することもありえますが、その場合はそれらの障害による就労制限や日常生活制限の程度に応じて総合的に等級判断がなされます。
身体性機能障害
次のような目安で後遺障害等級の判断が行われます。
別表第一第1級1号 | 高度の四肢麻痺、中程度(常時介護)の四肢麻痺、高度(常時介護)の片麻痺 |
別表第一第2級1号 | 中程度(随時介護)の四肢麻痺、高度の片麻痺 |
別表第二第3級3号 | 中程度(除く介護)の四肢麻痺 |
別表第二第5級2号 | 軽度の四肢麻痺、中程度の片麻痺、高度の単麻痺 |
別表第二第7級4号 | 軽度の片麻痺、中程度の単麻痺 |
別表第二第9級10号 | 軽度の単麻痺 |
別表第二第12級13号 | 軽微の四肢麻痺、軽微の片麻痺、軽微の単麻痺 |
四肢麻痺とは左右の上肢と下肢に麻痺が出ているものを言います。
片麻痺とは一側の上肢と下肢に麻痺が出ているものを言います。右上肢と右下肢、あるいは左上肢と左下肢の2種です。
単麻痺とは、左右の上肢と下肢のどれか1肢にのみ麻痺が出ている場合を言います。
「高度の麻痺」には次のようなものが該当します。
①完全強直またはこれに近い状態にあるもの |
②上肢においては、3大関節および5つの手指のいずれの関節も自動運動によっては可動させることができないものまたはこれに近い状態にあるもの |
③下肢においては、3大関節のいずれも自動運動によっては可動させることができないものまたはこれに近い状態にあるもの |
④上肢においては、随意運動の顕著な障害により、障害を残した1上肢では物を持ち上げて移動させることができないもの |
⑤下肢においては、随意運動の顕著な障害により、1下肢の支持性および随意的な運動性をほとんど失ったもの |
「上肢」とは肩~手指まで、「下肢」とは股関節~足指までを指し、3大関節というのは、上肢だと肩、肘、手首、下肢だと股関節、膝関節、足首のことを指します。
以下、この点は共通です。
→上肢下肢や3大関節がどこを指すか等はこちらの記事でも整理しています。
「中等度の麻痺」とは、具体的には次のようなものとされています。
①上肢においては、障害を残した1上肢では仕事に必要な軽量の物(概ね500g)を持ち上げることができないものまたは障害を残した1上肢では文字を書くことができないもの |
②下肢においては、障害を残した1下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないものまたは障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難であるもの |
「軽度の麻痺」の具体例としては、次のようなものがあります。
①上肢においては、障害を残した1上肢では文字を書くことに困難を伴うもの |
②下肢においては、日常生活は概ね独歩であるが、障害を残した1下肢を有するため不安定で転倒しやすく、速度も遅いものまたは障害を残した両下肢を有するため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないもの |
「軽微な麻痺」の具体例としては、次のようなものがあります。
①軽微な随意運動の障害または軽微な筋緊張の亢進が認められるもの |
②運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね1上肢または1下肢の全域にわたって認められるもの |
高次脳機能障害
高次脳機能とは、社会生活を営む人間が発達させてきた、理解する、判断する、論理的に物事を考える等の認知機能で、知覚、言語、記憶、学習、思考、判断、感情等がこれにあたります。
何らかの原因で脳に損傷や機能異常が生じれば、高次脳機能に障害が発生する可能性があります。
次のような目安で後遺障害等級の認定がなされます。
→高次脳機能障害の詳細についてはこちらの記事をご確認ください。
別表第一第1級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」をいい、「身体機能は残存しているが高度の痴ほうがあるために、生活維持に必要な身のまわり動作に全面的介護を要するもの」もこれにあたります。 |
別表第一第2級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」をいい、「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」がこれにあてはまります。 |
別表第二第3級3号 | 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」をいい、「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」がこれに該当します。 |
別表第二第5級2号 | 「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」をいい、「単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」がこれに該当します。 |
別表第二第7級4号 | 「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」をいい、「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」がこれに該当します。 |
別表第二第9級10号 | 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」をいい、「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」がこれに該当します。 |
外傷性てんかん
脳の損傷によりてんかん発作を起こすものが認定の対象になりますが、1ヶ月に2回以上の発作がある場合には、通常、高度の高次脳機能障害を伴うので、脳の高次脳機能障害にかかる別表第二第3級以上の認定基準により後遺障害等級を認定するとされています。
別表第二第5級2号 | 1ヶ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が『意識障害の有無を問わず転倒する発作』または『意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作』(以下『転倒する発作等』といいます。)であるもの |
別表第二第7級4号 | 転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの、または転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上あるもの |
別表第二第9級10号 | 数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの、または服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの |
別表第二第12級13号 | 発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの |
ここでいう「転倒する発作」の例としては、次のようなものがあります。
① 意識消失が起こり、その後ただちに四肢等が強くつっぱる強直性のけいれんが続き、次第に短時間の収縮と弛緩を繰り返す間代性のけいれんに移行する強直間代発作
② 脱力発作のうち、意識は通常あるものの、筋緊張が消失して倒れてしまうもの
また、「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」の例としては、「意識混濁を呈するとともに、うろうろ歩き回るなど目的性を欠く行動が自動的に出現し、発作中は周囲の状況に正しく反応できないもの」があります。
頭痛
別表第二第9級10号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することのできる労務が相当な程度に制限されるもの |
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
中枢神経系(脳)の脱落症状としての感覚器の機能障害
脳損傷により感覚器などに障害を生じた場合で、その障害について、該当する等級(相当等級を含む。)があるときは、その該当等級を認定することになり、そのほかに脳の障害があれば、両者を併合することができます。
こちらについては要するに各感覚器の機能障害に準じての等級認定になります。脳神経損傷によって生じる場合と同様の区分になりますので、脳神経損傷を合併することの多い頭蓋底骨折の記事で詳細を記載しております。
脳神経損傷を合併した場合(視覚、聴覚、嗅覚、味覚等の障害)
→頭蓋底骨折で合併することが多いため、頭蓋底骨折の解説記事で整理しています。
→嗅覚障害については鼻骨骨折による後遺症について解説した記事でも整理しています。
醜状障害について
頭部、顔面部、頚部に醜状障害を残した場合、外貌の醜状障害として後遺障害が認定されることがあります。
冒頭の画像のように「頭蓋骨」自体は顔面部まで含んだ骨格ですから、頭蓋骨骨折受傷後に醜状障害を残すこともありえますので、忘れずチェックしてください。
外貌の醜状障害
別表第二第7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
別表第二第9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
別表第二第12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
「外貌」とは
外貌とは、頭部・顔面部・頸部の日常露出している部分をいい、それぞれの部分によって、認定の基準が異なっています。
頭部とは、通常髪の毛の生えている部分をいいます。
顔面部とは、いわゆる顔の部分で、その範囲は、下顎の骨の稜線と髪の毛の生えぎわとで囲まれた部分です。
頚部とは、顔面部より下の日常露出している部分をいい、顎の下の部分は頚部に入ります。
等級認定の対象となる「外貌の醜状」とは、他人をして醜いと思わせる程度、すなわち人目につく程度以上のものであることが原則で、色素沈着の程度、部位、形態等を考慮しながら、総合的に判断がなされます。
そのため、醜状障害の認定に際しては、原則として、診断書に記載された長さや大きさだけで判断することなく、被害者と面接し、醜状の実際を的確に把握した上で認定します。
また、眉毛、頭髪等にかくれ、人目につかない部分については、醜状として取り扱いません。
別表第二第7級12号に規定されている「外貌の著しい醜状」
頭部では、てのひら大以上の瘢痕または頭蓋骨のてのひら大以上の欠損が残った場合を指します。
ここでいう「てのひら」とは、指を除いた部分をさしますが、個人差もありますので、通常、被害者本人のてのひらを目安にします。
顔面部では、鶏卵大面以上の瘢痕、または10円銅貨大以上の組織陥没が残った場合が、「著しい醜状」に該当します。
頚部では、てのひら大以上の瘢痕が残った場合が、「著しい醜状」に該当します。
別表第二第9級16号に規定されている「外貌の相当程度の醜状」
顔面部に、5cm以上の線状痕が残った場合が、「相当程度の醜状」に該当します。
別表第二第12級14号に規定されている「外貌の醜状」
頭部では、鶏卵大面以上の瘢痕、または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損が残った場合を指します。
顔面部では、10円銅貨大以上の瘢痕、または3cm以上の線状痕が残った場合が該当します。
頚部では、鶏卵大面以上の瘢痕が残った場合が該当します。
弁護士に相談を
交通事故等で頭蓋骨に骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うためには、骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。