脳損傷 神経症状
【高次脳機能障害】医師監修|後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所
こちらの記事では、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)のもと、【高次脳機能障害】について整理しています。
高次脳機能障害とは
高次脳機能とは、社会生活を営む人間が発達させてきた、理解する、判断する、論理的に物事を考える等の認知機能で、知覚、言語、記憶、学習、思考、判断、感情等がこれにあたります。
何らかの原因で脳に損傷や機能異常が生じれば、高次脳機能に障害が発生する可能性があります。
高次脳機能障害の原因は
高次脳機能障害は交通事故等の頭部外傷で生じることがありますが、必ずしも外傷性のものとは限りません。
たとえば、頭部外傷とは無関係の脳血管障害(脳卒中とも。脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血の3種です。)、脳腫瘍、脳感染症など、脳に損傷や機能異常をきたすものであればいずれも原因になります。
高齢者の場合、既往症に何らかの高次脳機能障害を示す疾患があり、その後に頭部外傷を負うことや、その逆も考えられ、外傷の影響がどこまでなのか悩ましいケースもあります。
高次脳機能障害の症状
高次脳機能障害には、脳の特定の部位に病巣や損傷が生じ(局所性脳損傷)、その部位が行ってた機能が脱落して症状として出る巣症状(そう症状)(神経局所症状とも。)と、広範囲の脳損傷(びまん性軸索損傷)によって生じる症状があります。
外傷に伴う高次脳機能障害は主に後者が問題になる事案が多いです。
以下、発生する症状ごとに損傷部位や病巣の説明がありますが、よろしければ下のイラストを一緒にご確認ください。
→脳の構造や各部位の機能については脳と神経の記事で整理しています。
→高次脳機能障害で発生する症状の詳細はこちらの記事でご確認ください。
局所性脳損傷による巣症状(失語、失行、失認)
局所性脳損傷は脳挫傷や各種頭蓋内出血(脳内血腫や急性硬膜下血腫など)を指します。
脳挫傷は外傷により脳が崩れて損傷する状態で、脳挫傷で崩れた脳に出血を起こせば脳内血腫になります。
外傷によって頭蓋骨と硬膜の間に出血をきたすものが急性硬膜下血腫、硬膜とくも膜の間の出血が急性硬膜下血腫、くも膜と脳表の間の出血が外傷性くも膜下出血です。
脳の特定の部位に病巣や損傷が生じ(局所性脳損傷)、その部位が行ってた機能が脱落して症状として出る巣症状(そう症状)(神経局所症状とも。)としては、以下のものがあります。
失語 | 脳の損傷が原因で、読む・書く・話す・聞くなどの言語機能が失われた状態です。前頭葉と側頭葉が関連します。 |
失行 | 運動麻痺や感覚障害ががなく、記憶等も問題が無いにも関わらず、日常生活の様々な行為が損なわれます。頭頂葉が関連します。 |
失認 | 目は見えていて感覚に問題が無いにもかかわらず、眼に見たものを認識できない等の症状が生じます。側頭葉や後頭葉の損傷で生じます。 |
びまん性軸索損傷による症状(記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害)
びまん性軸索損傷は、外傷後より意識障害などの症状があるにも関わらず、頭部CT上、脳を破壊もしくは圧迫するような出血(局所性脳損傷)が明らかではない点に特徴があります。
病態としては、外傷によりミクロレベルで、脳細胞間の情報伝達を行う軸索(神経線維)が断裂して、機能障害をきたしている状態だと考えられています。
頭部の急激な回転加速度により脳がゆがむことで生じ、原因としては交通事故が圧倒的に多いと言われています。
びまん性軸索損傷によって生じる主な症状は以下の4つです。
記憶障害 | 昔のことが思い出せない、新しいことを覚えることができないなどの状態です。
主な病巣は海馬などの大脳辺縁系と言われます(大脳辺縁系は脳の内側にありますので上のイラストに記載ありません。)。 |
注意障害 | 物事に集中できない、集中する持続力が低下する、周りに注意が払えないなどの状態です。
主な病巣は前頭葉の前頭連合野と言われます。 |
遂行機能障害 | 物事を行うための段取りが悪かったり、臨機応変な対応ができず(こだわりが強くて予定外のことに想定できない)、物事をスムーズに行うことができない状態です。
主な病巣は前頭葉の前頭連合野と言われます。 |
社会的行動障害 | 易怒性(すぐに怒る)、意欲がわかない、特定のものに固執するなどして社会でうまく生きていくことが阻害される状態です。
主な病巣は前頭葉の前頭連合野と言われます。 |
→高次脳機能障害による症状で寝てばかりの状態になってしまうケースについてはこちらの記事をご覧ください。
→高次脳機能障害による注意障害についてはこちらの記事で整理しています。
→高次脳機能障害の患者への対応の仕方についてはこちらの記事をご覧ください。
認定されうる後遺障害等級
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害を整理すると以下のようになります。
なお、「高次脳機能」や「高次脳機能障害」については本ページで説明した通り、理解する、判断する、論理的に物事を考える等の認知機能や、知覚、言語、記憶、学習、思考、判断、感情といった分野の問題になりますが、局所的脳損傷により身体各部の運動を司る部位が損傷を受けると、巣症状として身体性機能障害(四肢麻痺、片麻痺等)が発生することもあります。
このように、同じ頭部損傷で身体性機能障害と高次脳機能障害の両方が発生することもありえますが、その場合はそれらの障害による就労制限や日常生活制限の程度に応じて総合的に等級判断がなされます。
→脳損傷による身体性機能障害については頭蓋骨骨折の記事で整理しております。
また、脳損傷により神経局所損傷(巣症状)(中枢神経系)が引き起こされて感覚器などに障害を生じる場合もあります。これも「高次脳機能障害」とは別の病態ではありますが、該当する等級があるときはその等級を認定が認定されます。
たとえば1側の後頭葉視覚中枢の損傷によって、両眼の反対側の視野欠損を生じた場合は視野障害の等級を認定します。したがって、そのほかに脳の障害があれば、両者を併合することができます。その他、脳の障害とともに、嗅覚障害、味覚障害等を残した場合も、同様に両者を併合して認定がなされます。
→後遺障害等級認定区分や検査方法の詳細については「高次脳機能障害の等級認定と金額について」の記事で整理しています。
→感覚器の障害は頭蓋底骨折による脳神経損傷(末梢神経系)でも発生します。視覚、嗅覚、聴覚、味覚等の感覚器に関する等級認定の詳細は頭蓋底骨折の記事をご確認ください。
別表第一第1級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」をいい、「身体機能は残存しているが高度の痴ほうがあるために、生活維持に必要な身のまわり動作に全面的介護を要するもの」もこれにあたります。 |
別表第一第2級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」をいい、「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」がこれにあてはまります。 |
別表第二第3級3号 | 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」をいい、「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」がこれに該当します。 |
別表第二第5級2号 | 「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」をいい、「単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」がこれに該当します。 |
別表第二第7級4号 | 「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」をいい、「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」がこれに該当します。 |
別表第二第9級10号 | 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」をいい、「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」がこれに該当します。 |
高次脳機能障害の後遺障害等級獲得や損害賠償請求については専門の弁護士に相談を
交通事故等で頭部外傷を負い外傷性の高次脳機能障害を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うためには、受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所では無料の法律相談や後遺障害等級査定を行っていますので、所属弁護士に是非ご相談ください。
弁護士法人小杉法律事務所による高次脳機能障害の解決事例
→【高次脳機能障害】医師の意見書により交通事故との因果関係を繋げ自賠責4級の判断を裁判で1級に変更
→【高次脳機能障害】①約2200万円の示談提示⇒約8300万円で解決。②介護状況を具体的に立証し、自賠責3級認定を裁判で2級獲得
→【高次脳機能障害】医師の意見書が決め手となり、賠償金約2.5億円獲得
→交通事故骨折→自賠責非該当判断→弁護士異議申立て→高次脳機能障害1級→1.4億賠償
→【高次脳機能障害】保険会社の申請12級⇒弁護士の異議申立て⇒【後遺障害等級5級】に変更
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