保険会社の申請12級⇒弁護士の異議申立て⇒【後遺障害等級5級】に変更
交通事故被害者Dさん 20代・男性・アルバイト・福岡県久留米市
交通事故 後遺症・後遺障害
福岡県久留米市のDさんは、バイクに乗っていたところ交通事故被害に遭い、頭を打ってしまいます。
保険会社に言われるまま後遺障害診断書を作成し、提出したところ、後遺障害等級12級の判断が出ました。
Dさんは慰謝料などいくらの損害賠償金が取れるのか気になり、無料相談をしている弁護士のところへ法律相談に行くことにしました。
そうしたところ、弁護士小杉晴洋より意外な結果を告げられます。
小杉法律事務所では、交通事故被害に遭い、自賠責より後遺障害等級認定を受けた方について、「果たしてその後遺障害等級でよいのか」「損害賠償金はいくらになるか」について無料で査定をさせていただいております。
気になる方は\後遺障害等級認定を受けた方へ/のページをご覧ください。
この事例の後遺障害等級認定や示談解決のポイント
- 事前認定より被害者請求
- 後遺障害診断書の修正
- 医学的意見書の取付け
- 被害者・内妻・母親の陳述書作成
- 醜状障害面談の弁護士同行
- 事故時30歳未満は賃金センサス
交通事故の内容(福岡県久留米市)
被害者Dさん(20代・男性・アルバイト)は、バイクを運転中に交通事故被害に遭い、頭を打つ大怪我をしてしまいます。
久留米大学病院にて手術が成功し、Dさんは、1か月で退院することができました。
約1年ほど通院をしたところで、加害者側の任意保険会社から治療費打ち切りの連絡があり、治療終了となりました。
任意保険会社から後遺障害診断書が送られてきて、主治医に後遺障害診断書を書いてもらうよう言われたため、保険会社の指示どおりに久留米大学病院脳神経外科で後遺障害診断書を書いてもらい、これを保険会社に提出しました。
そうしたところ、保険会社より後遺障害等級12級の認定が出たという連絡があり、これから示談交渉に入ることになりました。
Dさんは、いよいよ慰謝料などの損害賠償金の話に入ると思い、適切な示談金を受け取るべく、交通事故に強い弁護士を探して、いくらくらいの賠償金を獲得できるのか聞いてみることにしました。
弁護士小杉晴洋による無料法律相談
被害者Dさんの持参資料
Dさんは、何の資料を持って行ったら良いのかわからず、とりあえず今回の交通事故に関係のありそうな資料をすべて持ってきてくれました。
法律相談をする弁護士の側からすると、どの資料が損害賠償金に影響するのか見てみないと分かりませんので、少しでも関係のありそうな資料はすべて持ってきてもらえると助かります。
また、源泉徴収票・給与明細などのお仕事や収入に関する資料も、法律相談時にご持参いただけると助かります。
Dさんは、保険会社から送られてきた資料も持ってきてくれていたので、まずはそちらを確認することにしました。
高次脳機能障害の疑い
弁護士小杉は、被害者Dさんから交通事故の内容や事故後の症状などについてお話を伺っていきました。
そうしたところ、会話がスムーズにいかないことがあり、高次脳機能障害被害者さん特有の引っ掛かりがありました。
単に会話下手ということもありますが、小杉法律事務所では、高次脳機能障害の被害者の方の事例を数多く取り扱ってきておりますので、法律相談をすることでおおよその見当を付けることはできます。
Dさんが持参された後遺障害診断書にも「脳挫傷」という記載がありましたので、ほとんど確信に近い状態となりました。
自賠責保険は後遺障害等級12級13号の認定
Dさんが持参された自賠責保険の認定理由(事前認定)を見ると、後遺障害診断書に「脳挫傷」と記載されていることから後遺障害等級12級13号の認定がなされたことが記されていました。
Dさんは、交通事故で頭に傷が残ってしまったため、それが理由となって後遺障害等級12級の認定がなされたと勘違いしているようでしたが、頭の傷については後遺障害等級の審査すらされておらず、「脳挫傷」所見が原因となって後遺障害等級認定がなされていることを説明しました。
脳の後遺障害等級というのは、別表一1級1号・2級1号、別表二3級3号・5級2号・7級4号・9級10号・12級13号・14級9号と種類がありますが、脳損傷についての画像所見があると12級13号は最低限認定がなされ、あとは後遺症の程度によって、別表一1級1号・2級1号、別表二3級3号・5級2号・7級4号・9級10号・12級13号のいずれかに分類されるという認定基準になっています。
MTBIに代表されるように、脳損傷の画像所見を自賠責保険に認定されるのが日本の後遺障害認定においては1番の難所となっているのですが、Dさんの事例では、この脳損傷の画像所見のパートはクリアしていました。
ただし、後遺障害診断書上、脳挫傷を原因とする後遺症については一切書かれていなかったので、後遺障害等級12級13号にとどまっているという状況になっていました。
弁護士小杉は、Dさんとの会話の中で、「神経系統に関する医学的意見」など高次脳機能障害の後遺障害等級認定に必要な証拠を揃えれば7級4号の認定は受けられるのではないかと考えました。
醜状障害
Dさんは頭に傷が残っていることが後遺障害等級12級の理由となっているのだろうと勘違いされていましたが、実際は、頭の傷については後遺障害等級の審査すら行われていませんでした。
これは後遺障害診断書の醜状障害欄が空欄になっていたことが原因です。
Dさん申告の頭の傷について、髪の毛をのけて確認してみましたが、確かにDさんの頭部には傷跡が残っていました。
しかし、頭部の傷跡で後遺障害等級認定を受けるためには、少なくとも鶏卵大面以上の瘢痕(卵の大きさ以上の傷跡)が残っていないといけませんが、Dさんの頭部の傷跡は卵の傷跡よりも大きいと評価できるか微妙なものでした。
それよりも、Dさんの頭部は、だいぶ凹んでしまっていて、その点の方が気になりました。
頭部の醜状障害については、瘢痕のほかに「欠損」という後遺障害等級認定基準があるため、そちらで異議申し立てをした方が良いであろうという判断となりました。
Dさんの頭部の凹みからすると、頭部の醜状障害の最高等級である後遺障害等級7級12号の認定可能性があると判断しました。
法律相談の席において、Dさんの頭部の凹みが分かるように写真を撮らせてもらい、これを異議申し立ての際の証拠として使うことにしました。
今後の流れや損害賠償金の説明
Dさんは、後遺障害等級12級をもとに損害賠償金がいくらくらい取れるかを気にしていましたが、弁護士小杉は後遺障害等級12級を前提とする解決に反対の意見を述べました。
具体的には、後遺障害診断書の訂正や「神経系統に関する医学的意見」など必要な証拠を揃えれば、高次脳機能障害7級4号と醜状障害7級12号の認定となり、後遺障害等級併合5級が獲得できる可能性があると説明をしました。
後遺障害等級12級13号を前提とした損害賠償金ですと、せいぜい弁護士が介入したところで1000万円程度にとどまりますが、後遺障害等級併合5級を前提とすると、5000万円以上の損害賠償金を獲得できる可能性が出てきます。
Dさんは、はじめは早期の示談解決を希望されておられましたが、5000万円以上の損害賠償金を獲得できる可能性を聞き、今後の方針は弁護士小杉に任せると言っていただきました。
日常生活状況報告や陳述書の作成
日常生活状況報告を書いてもらうことにより高次脳機能障害の後遺障害等級を変える
高次脳機能障害の後遺障害等級認定は、先に述べましたとおり、別表一1級1号・2級1号、別表二3級3号・5級2号・7級4号・9級10号・12級13号・14級9号の種類があり、Dさんには画像所見が認められていたので、後遺障害等級12級13号の認定はなされていました。
あとは、交通事故の前のDさんの状態と比べて「以前に覚えていたことを思い出せない」「疲れやすくなった」「自発性が低下した」「飽きっぽくなった」「話がまわりくどくなった」「周囲の人との意思疎通を上手く行えなくなった」「複数の作業を同時にできなくなった」「計画が立てられなくなった」「計画を遂行することができなくなった」「しつこくなった」「気分が変わりやすくなった」「怒りやすくなった」「不安を感じやすくなった」「夜寝つきが悪くなった」などの症状を付け加えることができれば、後遺障害等級が9級以上に上がるという状況にありました。
そして、医師というのは交通事故の後のDさんの状態しか知らず、交通事故前のDさんの状態については何も知りません。
そこで、「日常生活状況報告」をご家族など近しい人に書いてもらうことによって、交通事故前後の性格変化を立証し、高次脳機能障害の後遺障害等級9級以上の認定を受けるという方策を取ることがあります。
被害者Dさんに近しい人物としては、お母様と同棲中の彼女さんがいましたが、お母様はしばらくDさんと同居していないということでした。
「日常生活報告」には、被害者との同居の有無を書く欄があり、同居者の「日常生活状況報告」の方が証拠価値が高くなりますので、同棲中の彼女さんに「日常生活状況報告」を書いてもらうことにしました。
同棲中の彼女の日常生活状況報告による交通事故前後の状況変化立証
Dさん及び同棲中の彼女さんと面談をして、お話をお伺いしたところ、将来的には入籍して結婚する予定であるとのことでしたので、「内縁の妻」として日常生活報告を書いてもらうことにしました。
「日常生活状況報告」には、交通事故前後の日常活動、問題行動、日常の活動および適応状況、就労状況、身の回り動作能力、生活状況などを記していくことになりますが、同棲中の彼女さんに1つ1つヒアリングをしていき、日常生活状況報告を記入していきました。
具体的には、下記のような情報を得ることができました。
日常活動
交通事故の前 | 交通事故の後 |
・タバコの火やガスの始末、家の戸締りなど安全管理ができていた。 | ・声掛けや手助けなどをしても自分ではタバコやガスの始末、家の戸締りができなくなっていて、彼女が後始末をしなければならなくなっている。 |
・物やお金の管理を一人で行うことができ、道に迷うといったこともなかった。 | ・落とし物や金銭管理、道の指示など、彼女の直接的な手助けが必要。 |
・対人関係に何のトラブルもなかった。 | ・対人関係にやや問題があり、彼女のフォローが必要。 |
問題行動
交通事故の前 | 交通事故の後 |
・怒りをあらわにする・場にそぐわない言動があるなどは特になかった。 | ・ムッとする、怒る、イライラする、大声を出すなどの言動がほぼ毎日見られる。 |
・1つのことに執着するといったことは特になかった。 | ・菓子・食べ物・酒なども注意されるまで飲食を続けてしまうといった傾向が見られる。 |
・他人が自分のことを迷惑と感じているなどの思い込みをすることはなかった。 | ・月に1回程度、他人が自分のことを迷惑がっていると感じるような強い思い込みがみられる。 |
・暴力を振るったり、人をこわがらせるようなことをすることはなかった。 | ・年齢にそぐわない幼稚さが見られる。暴力を振ることもあり、人をこわがらせるようなことをする。 |
日常の活動および適応状況等
交通事故の前 | 交通事故の後 |
・人間関係に何の問題もなかった。 | ・たまに人間関係に問題が生じる |
・人への気持の伝え方に何の問題もなかった。 | ・人の気持ちを考えずに思ったことをそのまま言うようになり、言い方もキツイものになった。 |
母の陳述書による交通事故前後の状況変化立証
同棲中の彼女さんから日常生活状況報告を取り付けることができましたが、未だ入籍しているわけではなく、被害者Dさんのとの関係性が弱いと判断されるリスクもありましたので、Dさんのお母様からも陳述書を取り付けることにしました。
これにより、同棲中の彼女さんだけでなく、母親の観点からも交通事故前後の状況の変化を証明します。
お母様と面談したところ、下記のような情報を得ることができましたので、この内容を陳述書として作成しました。
交通事故の前 | 交通事故の後 |
・小さい頃からゲームなどを器用にこなすタイプだった。コミュニケーションも問題なし。 | ・会話についていけなかったり、自分の気持が説明できなかったり、人の名前や約束をすぐに忘れたりするようになった。 |
・母親に暴言を吐くといったことはなかった。 | ・暴言をはくようになり、あれを持ってこいなど命令口調のメールをしてくるようにもなった。 |
・兄弟仲が良かった。 | ・兄弟に対してしつこくなれなれしい態度をとるようになったり、叩く・腕をつかむなどの行動をとるようになった。 |
被害者本人の陳述書による交通事故前後の状況変化立証
高次脳機能障害の事例では、交通事故被害者本人の陳述書を取り付けるのは必須ではありませんが、Dさんはある程度コミュニケーションが取れる状態であり、また、交通事故前後の変化などを自分で認識できている面もありましたので、被害者本人の陳述書も作成して、高次脳機能障害の後遺障害等級認定に用いるという方針としました。
Dさんからヒアリングを行い、下記内容を陳述書としてまとめました。
- いつもぼんやりと霧に包まれているようで、動作がゆっくりになった。
- いつもイライラして、ちょっとしたことですぐに腹が立つ。気に入らないことがあると、暴力や暴言が出てしまう。場違いな発言や言動をしてしまう。相手に失礼な場面で笑いがこらえきれなかったりする。
- そのため、交通事故以前から付き合いのある友達から「以前の方がよかった。今は性格がキツすぎる。」と言われた。また、同棲中の彼女からも、私の性格が変わったせいか、怒りのメールをもらったりした。交通事故後は友達との付き合いが減ったなぁと実感している。
- 前向きに物事を考えられなくなり、いつも憂うつ。注意散漫で、些細な刺激でもすぐに気が散ってしまう。作業を終らせるのに時間がかかる。人の話を最後まで聞けない。物事を忘れやすくなった。
- 今、聞いたことをすぐに忘れてしまう。同時に複数のことが覚えられない。約束を守ることができない。同じ間違いを繰り返す。優先順位がつけられない。ひとつ解決できないとお手上げになってしまう。
- 砂漠のど真ん中に取り残されたような気になる。
- 交通事故後、頻繁に頭痛がするようになった。また、交通事故前は、寝るときの頭の向きはどちらでも良かったが、交通事故後は、こめかみの凹み(傷)がある方を上にして寝ないと落ち着かない、目が覚めてしまう、その後、眠れないという状態になった。
- 交通事故前は、コンテナから冷蔵庫、洗濯機などを出して移したり、ケーズ電機の店舗ごとに分けたりしていた。
- 交通事故後、養鶏場で鶏の世話の仕事をしていた。雨の日や低血圧の日は、手術したところが痛んだり、頭痛がしたりして遅く出勤することが多くなり、出勤しても度々作業を休むときがあった。交通事故前の職業より、比較的簡単で楽な作業だが、作業中、持続力・集中力に乏しく、ミスも多いため、一回一回区切りをつけて作業をすすめなければならず、作業中に常にイライラしてしまい、わーっとなって、付近にある養鶏場の窓や道具類、鶏などに当たり散らしたりしてしまっていた。餌を入れる台(吊り上げたり下したりするタイプ)に時々こめかみの凹み部分が当たり、めまいや脳震盪のような感覚が生じることもあった。そのため、もともと自分がやってみたくて始めた仕事だが、辞めて今の職業に転職した。
- 現在は、家具の製造工をしている。物事を忘れやすいため、作業のひとつである木枠組み立ての手順を覚えるのに大変苦労している。交通事故前は、作業手順などは、すぐに覚えられていた。作業手順を覚えるため、写真を撮る等工夫をしているが、なかなか覚えられない。また、こめかみの凹み付近の頭痛で仕事を休んでしまう事もたびたびである。
後遺障害診断書の修正や高次脳機能障害診断
後遺障害診断書の修正の必要性
高次脳機能障害の診断が無い
自賠責保険の後遺障害等級12級13号認定に対して、高次脳機能障害での異議申し立てを行う方針としておりましたが、そもそもDさんには高次脳機能障害の診断が付いていません。
そこで、同棲中の彼女さんの日常生活状況報告や、お母様及び被害者Dさん本人の陳述書を携えて医師面談を行うことによって、医学的に高次脳機能障害と診断できるのかどうかを聞きに行くことにしました。
弁護士小杉から見れば高次脳機能障害であるのですが、あくまで診断を行うのは主治医ですので、主治医の見解を得なければいけません。
※高次脳機能障害の後遺障害等級についての詳細はこちらのページをご覧ください
醜状障害欄に記載が無い
被害者Dさんの頭部には大きな凹みがありましたが、その点が後遺障害診断書には一切書かれていませんでした。
そこで、醜状障害についての後遺障害診断書の追記もお願いすることにしました。
※後遺障害診断書の修正についての詳細はこちらのページをご覧ください
久留米大学病院脳神経外科での医師面談
医師面談前の準備
医師面談を行うにあたっては、被害者Dさんにまつわる診断書・診療報酬明細書(レセプト)・診療録(カルテ)・画像所見・交通事故情報などの基本情報を把握して臨むことはもちろんですが、お医者さんの経歴や執筆論文などもチェックしていきます。
高次脳機能障害の診断
こちらが事前に調査した情報(日常生活状況報告や陳述書内容)などを主治医に伝え、高次脳機能障害の可能性についてお伺いしました。
そうしたところ、下記の医学的見解について教えていただくことができました。
- 手術から1年後の神経心理学検査におけるIQ値が同年代平均-1SDを下回る水準である
- 群指数については、作動記憶が最も低く、作動記憶は言語理解・知覚統合・処理速度より、言語理解は知覚統合・処理速度よりそれぞれ有意に低い
- もっとも高いのは知覚統合であり、処理速度との間に有意差がある
そして、画像所見及び上記神経心理学検査所見は、他人から指摘される性格変化と整合するものであるとして、Dさんは高次脳機能障害であるとの診断書を頂くことができました。
後遺障害診断書の醜状障害欄への追記
また、Dさんの頭部の凹みについて醜状障害欄に追記いただくことの了解もいただき、後遺障害診断書を修正してもらいました。
自賠責保険への異議申し立てによる後遺障害等級併合5級認定
事前認定ではなく被害者請求による異議申し立て
被害者Dさんについては事前認定にて後遺障害等級12級13号の結果通知がなされていましたが、日常生活状況報告・陳述書2通・高次脳機能障害の診断書など新しい証拠を取り付けましたので、これに基づいて異議申し立てをしていきます。
異議申し立ても、加害者側の任意保険会社にしてもらうことができますが(事前認定)、最初の後遺障害等級申請と同様、任意保険会社に任せていたのでは、適切な後遺障害等級認定は受けられません。
小杉法律事務所では、原則全件被害者請求(被害者側で後遺障害等級申請書類を準備して提出する)を行っていますが、Dさんの事例でも被害者請求の方法によって自賠責保険へ異議申し立てを行いました。
高次脳機能障害の異議申立ての内容
弁護士小杉晴洋名義の異議申立書では、久留米大学病院脳神経外科医の見解、内妻の日常生活状況報告、母の陳述書、被害者本人の陳述書といった証拠から、意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力等)、問題解決能力(理解力、判断力等)、作業負荷に対する持続・持久力、社会行動能力(協調性等)の4能力に分けた説明を行い、被害者Dさんが、一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い・約束を忘れる・ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないレベルになっていることを説明していきました。
これにより「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」にあたることを指摘し、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として後遺障害等級7級4号の認定がなされるべきということをプレゼンしていきました。
醜状障害については異議申立てだけでなく醜状面談に弁護士が同行
弁護士小杉晴洋名義の異議申立書では、久留米大学病院にて追記していただいた後遺障害診断書醜状障害欄の記載や、被害者Dさんの頭部の写真を元に、「外貌に著しい醜状を残すもの」として後遺障害等級7級12号の認定がなされるべきということを説明していきました。
また、自賠責保険の後遺障害等級認定は、労災の場合の後遺障害等級認定と異なって、基本は書面審査にて行われます。
異議申立書の記載や、提出された書面の証拠や画像から、後遺障害等級認定を行うのです。
ただし、醜状障害については例外で、損害保険料率算出機構の職員が被害者と直接面談をして、醜状の長さを測定するなどした上で、後遺障害等級認定を行うことになっています。
被害者Dさんの事例では、最初の後遺障害等級申請(事前認定)においては、後遺障害診断書に醜状障害のことが何も書かれていませんでしたので、醜状障害については一切審査がなされることなく後遺障害等級12級13号の認定が行われましたが、今回の異議申し立てでは、後遺障害診断書醜状障害欄に追記をしてもらっていますので、醜状障害の面談を実施することになりました。
小杉法律事務所では、傷痕が不当に短く測定されてしまってはいけませんので、醜状障害の面談には原則同席するようにしています。
Dさんの事例でも、損害保険料率算出機構福岡第二自賠責損害保険調査事務所に弁護士小杉が同席をすることにし、Dさんの頭部の醜状障害の状況について弁護士小杉から説明を行い、その説明どおりに測定をしてもらいました。
後遺障害等級併合5級(高次脳機能障害7級4号+醜状障害7級12号)
以上の異議申し立てや醜状障害面談の結果、見立てどおり、高次脳機能障害については後遺障害等級7級4号の認定、頭部の醜状障害については後遺障害等級7級12号の認定を得ることができました。
このように複数の後遺障害等級が認定された事例では、「併合」というものが行われ、後遺障害等級が1つにまとめられます。
8級以上の後遺障害等級が複数ある場合には、重い方の後遺障害等級が2つ繰り上げられることになっていますので、Dさんの事例では、後遺障害等級7級が2つ繰り上げられ併合5級の認定結果となります。
示談交渉(損害賠償金約7500万円獲得)
弁護士介入前の後遺障害等級12級の賠償金と弁護士介入後の後遺障害等級5級の賠償金の違い
Dさんの事例では、弁護士小杉に依頼いただくことで後遺障害等級12級13号から後遺障害等級併合5級に等級変更することができましたが、これにより後遺症慰謝料の金額と、逸失利益に大きな差が出ることになります。
弁護士に依頼せず後遺障害等級12級13号前提で示談していたとしたら
後遺症慰謝料93万円
弁護士が介入しない場合は、任意保険基準(≒自賠責基準)で後遺症慰謝料や逸失利益が支払われていたことになります。
まず、任意保険基準(≒自賠責基準)の後遺症慰謝料基準は、後遺障害等級12級の事例ですと、93万円とされています。
逸失利益131万円
次に、逸失利益ですが、Dさんは高次脳機能障害について無症状とされていたので、本来は逸失利益は支払われません。
しかし、示談交渉の場ですと、最低限自賠責基準までは支払われることになっていますので、逸失利益としては131万円の損害賠償金を得ることができます。
弁護士小杉の介入による後遺障害等級併合5級での示談交渉
後遺症慰謝料1400万円
弁護士の介入により、慰謝料水準は裁判基準にて支払ってもらうことができます。
Dさんの事例では、後遺障害等級併合5級の認定を受けることができましたが、後遺障害等級5級の場合の後遺症慰謝料の裁判基準は1400万円とされています。
逸失利益約7600万円
逸失利益というのは、「基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という式で計算されます。
逸失利益は、平たく言うと、交通事故によって生じた後遺症による将来の働きづらさを金銭換算するものです。
元の後遺障害診断書では、Dさんは高次脳機能障害の症状や醜状障害がなかったことになっていましたから、将来の働きづらさというものを観念できず逸失利益は0円、若しくは自賠責基準の131万円しか回収できないということになっていましたが、久留米大学病院にて後遺障害診断書等を修正してもらっていますので、示談交渉の際には将来の働きづらさを観念できるようになっていて、逸失利益の交渉を進めることができました。
基礎収入額
基礎収入額については、交通事故の前年の年収を基準に算定するのが原則とされています。
Dさんは、交通事故当時20代と若く、交通事故前年はアルバイト勤務でしたので、大きな収入は得ていませんでした。
しかしながら、Dさんが交通事故に遭わなかった場合、生涯アルバイト勤務であった可能性は低いため、逸失利益の示談交渉においては、裁判所の考え方を紹介するなどして、賃金センサスに基づく基礎収入額、具体的には年収約550万円という主張を行いました。
労働能力喪失率
労働省労働基準局長通牒(昭32.7.2基発第551号)によれば、後遺障害等級12級13号の労働能力喪失率は14%とされていますが、Dさんの事例では後遺障害等級併合5級の認定結果を得ていますので、労働能力喪失率は79%になります(5倍以上)。
労働能力喪失期間
後遺障害等級12級13号の場合ですと労働能力喪失期間は10年に制限されることが多いですが、Dさんの事例では後遺障害等級併合5級の認定結果を得ていますので、労働能力喪失期間は43年となります(4倍以上)。
逸失利益の計算
以上の内容で逸失利益を計算して、基礎収入額550万円×労働能力喪失率0.79×労働能力喪失期間43年に対応するライプニッツ係数17.5459(令和2年4月の改正民法施行前)≒7600万円の損害賠償金を獲得することに成功しました。
逸失利益の詳しいご説明についてはこちらのページをご覧ください。
損害賠償金約7500万円を獲得して示談解決
以上の後遺症慰謝料額および逸失利益に加え、入院雑費・休業損害・入通院慰謝料なども裁判基準で支払ってもらい、その合計額に過失相殺・損益相殺をした上で、最終的に約6000万円での示談金を受け取ることでの解決となりました。
異議申し立てによって後遺障害等級併合5級の自賠責保険金1574万円を回収していましたので、Dさんが受け取った損害賠償金の合計は約7500万円となりました。
依頼者の声(Dさん・20代男性・アルバイト・福岡県久留米市)
加害者側の任意保険会社から言われるがままに後遺障害診断書を作って、後遺障害等級の申請をしてもらいましたが、そのまま自分で示談してしまっていたら数百万円の示談金しか得られなかったと思いますから、後遺障害に強い弁護士さんに相談してみて本当に良かったと思っています。
こんなに損害賠償金をもらえるなんて思ってもみませんでした。
交通事故に遭ってしまった方は、小杉弁護士のような、交通事故に強い弁護士さんに依頼されることを勧めたいと思います。
弁護士小杉晴洋のコメント:任意保険会社の申請による後遺障害等級認定結果は疑うべき
Dさんの事例では、任意保険保険会社の事前認定による後遺障害等級12級13号認定が、弁護士小杉の異議申し立てによって後遺障害等級併合5級認定まで上がりました。
ここまで大きく後遺障害等級が変わることは多くはありませんが、小杉法律事務所では、異議申し立てによって後遺障害等級認定を変更させた解決実績が多数ございます。
後遺障害等級認定結果を受けたという方は、面倒くさがらずに、一度後遺症被害専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
小杉法律事務所では、無料相談を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。