後遺障害診断書の内容に納得いかない!どうしたらいい?【弁護士解説】
交通事故 学校事故 労災事故 スポーツ事故
交通事故・労災被害・学校事故・スポーツ事故などで被害に遭い、後遺症が残ってしまったという場合、加害者サイドや保険会社サイドなどから後遺障害診断書の提出を求められることが多いです。しかし、主治医が「大したことないよ」などといって不十分な内容の後遺障害診断書しか書いてくれないことがあります。このようなケースではどうしたらいいでしょうか?
事故被害に遭い、後遺症が残ってしまったという場合、「加害者のせいで後遺症が生じてしまった!後遺症のせいで将来どうなるか分からないし、どうしてくれるんだ!」という不安や悩みや怒りに、苛まされてしまいます。
「事故の前の元の姿に戻してくれ!」というのが後遺症被害に遭われた方の本音だと思いますが、現実的にはそうもいきません。
また、「加害者を同じ目に遭わせてやる!」といった報復感情も理解できますが、これをやってしまうと犯罪者になってしまいます。
日本の法律では、損害賠償は原則としてお金で解決しなければならないとされていますので(民法第417条)、事故で後遺症を残されてしまった場合には、せめて、なるべく多くの損害賠償金・保険金を獲得したいと考えるのは自然な事でしょう。
しかしながら、整形外科医・脳外科医などの主治医の先生が「大したことないよ」などといって、不十分な後遺障害診断書しか書いてくれなかったら、どうなるでしょう?
適切な後遺障害診断書を作ってもらえないと、大した後遺障害ではないと判断されてしまい、自賠責保険・労働基準監督署・スポーツ振興センターなどが行う後遺障害等級認定で低い評価がされてしまいます。
従いまして、内容不十分な後遺障害診断書ですと数百万円~数億円の単位で慰謝料などの損害賠償金を損してしまう結果にもなりかねません。
小杉法律事務所では、1級~14級のすべての後遺障害等級獲得実績があり、主治医の先生と掛け合って後遺障害診断書を訂正していただいた実績も多数ございます。
以下では、内容が不十分な後遺障害診断書を書かれてしまった場合、どうしたらいいのかについて後遺症専門の弁護士が解説していきます。
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後遺障害診断書の内容のどこをどう修正すべき?修正パート別の専門弁護士解説
- ①後遺障害診断書の診断名(傷病名)が適切に書かれていない
- ②後遺症の内容(自覚症状)が適切に書かれていない
- ③画像所見・検査結果など医学的裏付けが適切に書かれていない
- ④その他後遺障害診断書の修正
①後遺障害診断書の診断名(傷病名)が適切に書かれていない
- 過去に付けてもらったことのある診断名であれば後遺障害診断書に追記可能
- 小杉法律事務所での実際の後遺障害診断書傷病名欄修正例
- 患者さんが自身の見解として後遺障害診断書に診断名追記を要求するのはダメ!先生とケンカはせずに他の病院の診察へ
過去に付けてもらったことのある診断名であれば後遺障害診断書に追記可能
不十分な後遺障害診断書の中には、診断名(傷病名)がちゃんと書かれていないというものがあります。
具体的には、過去に診断されたことのある診断名が書いていなかったという場合は、後遺障害診断書に追記修正をしてもらえることがあります。
これは、主治医とは違う、他の病院での診察の際に付けられた診断名であっても、後遺障害診断書に追記してくれることがあります。
小杉法律事務所での実際の後遺障害診断書傷病名欄修正例
小杉法律事務所(福岡弁護士事務所)の解決事例でいうと、原病院の整形外科に通っていた事故被害者Aさんが、治療期間の後半で済生会福岡総合病院の整形外科に転院し、最終的には済生会福岡総合病院の整形外科で後遺障害診断書を書いてもらったということがありました。
ところが、以前原病院で付けられていた診断名が、済生会福岡総合病院の整形外科医の作成した後遺障害診断書には書いてなかったのです。
しかも、この診断名落ちは、後遺障害等級認定に大きな影響を与えるようなものでした。
そこで、弁護士小杉晴洋が済生会福岡総合病院整形外科医との医師面談を行い、後遺障害診断書の診断書名の追記をお願いしに行くことになりました。
済生会福岡総合病院というのは、九州や福岡でも屈指の大病院で、かつ、整形外科医の先生は、下肢関節外科や骨折外傷に強く、被害者Aさんの後遺症(下肢の骨折)領域の権威の先生でしたので、後遺障害診断書に原病院の診断名を追記してもらえるのか不安でしたが、医学的にも正しい内容であったようで、ご追記いただけました。
この後遺障害診断書診断名に追記修正をしてくれたという解決事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
患者さんが自分の見解として後遺障害診断書に診断名追記を要求するのはダメ!先生とケンカはせずに他の病院の診察へ
過去にどのお医者さんも付けていない診断名について「私の後遺症は●●という診断名が付くはずだ!」と言って、後遺障害診断書の修正を求めるのはやめた方がいいです。
患者さんの側がネットや知り合いから聞いた情報を頼りに、主治医の先生に対して医学的な見解を述べるというのは、基本的にはおすすめしません。
弁護士の目線で言い換えると、こうした患者さんの行動は、主治医の先生との信頼関係を破壊し、本来修正してもらえるはずのパートすら修正してもらえなくなってしまったり、慰謝料などの損害賠償請求を裏付けるために医学的意見書が必要となった場合の協力を得られなくなってしまうリスクが高いといえ、良いこと無しでしょう。
診断名を付けるのは、お医者さんの専権事項です。
自分の体のことを1番分かっているのは患者さん本人とも言えますから、真実は患者さん側の見解が正しいということもあり得ますが、主治医の先生と見解を異にする場合にケンカしてはいけません。
こうしたケースでは、セカンドオピニオンを実施し、ご自身の症状の専門の先生に診察してもらうようにしましょう。
他の病院の先生が、違う診断名を付けてくれるということはよくあります。
②後遺症の内容(自覚症状)が適切に書かれていない
- 自覚症状のパートは後遺障害診断書の中で1番重要
- 自覚症状欄は患者さんの要求に従って後遺障害診断書の修正がなされるべきパート
- 小杉法律事務所での実際の後遺障害診断書自覚症状欄修正例
- 後遺障害診断書の自覚症状欄は簡潔な方がいい(情報を多く書かない)
- むち打ちの場合の後遺障害診断書
自覚症状のパートは後遺障害診断書の中で1番重要
自賠責保険(損害保険料率算出機構)・労働基準監督署・スポーツ振興センターといった後遺障害等級の認定機関は、まず自覚症状を把握して、その上で、当該自覚症状が医学的に裏付けられるものかという判断過程をたどります。
すなわち、自覚症状欄に記載がなければ、そもそも後遺障害等級認定を出せるかどうかの審査すらしてもらえないのです。
従いまして、後遺障害診断書の中で1番重要なパートはどこですか?と問われたら、間違いなく「自覚症状欄です」と答えることになります。
自覚症状欄は、後遺障害等級認定の出発点です。
自覚症状欄は患者さんの要求に従って後遺障害診断書の修正がなされるべきパート
後遺障害診断書には、自覚症状を書く欄があります。
あくまで「自覚」症状ですから、被害者本人しか分からないのが自覚症状です。
すなわち、自覚症状の答えは、被害者本人のみが持っているということになります。
従いまして、自覚症状が適切に書かれていないという場合は、主治医の先生に後遺障害診断書の修正のお願いをするべきです。
小杉法律事務所での実際の後遺障害診断書修正例
福岡の腰痛事例(交通事故)
小杉法律事務所(福岡弁護士事務所)の解決事例でいうと、福岡市東区の整形外科に通っていた被害者Bさんが、交通事故のせいで腰痛を発症し、腰椎捻挫の診断も受けていたという事例がありました。
ところが、後遺障害診断書の傷病名の欄には「腰椎捻挫」と書いてあるものの、自覚症状欄には「腰痛」の記載がありませんでした。
この場合、「診断名として腰椎捻挫が書かれているのであるから、腰椎捻挫について後遺障害等級の認定をしてくれるのでは?」と思われるかもしれませんが、上で述べましたとおり、自覚症状欄に書いてないと、後遺障害等級認定の審査すらしてくれないのです。
はじめは、書面にて後遺障害診断書自覚症状欄の追記願いのお手紙を出しましたが、当該福岡市東区の整形外科医の先生には断られてしまいます。
そこで、弁護士小杉晴洋と木村治枝が、当該福岡市東区の整形外科医を直接訪れ、後遺障害診断書の自覚症状欄の追記をお願いしに行くことになりました。
弁護士が行う医師面談というのは、診察時間となっていないお昼休みの時間帯か、午後の診察終了後に行われることが多いですが、被害者Bさんの件ではお昼休みの時間帯での医師面談を指定されました。
はじめは、手紙での回答と同様、「後遺障害診断書の追記は行わない」の一点張りで、弁護士小杉・木村と整形外科の先生との押し問答が続きますが、午後の診察開始時刻が迫った頃、ようやく、整形外科の先生の医学的ご見解にケチをつけるつもりは毛頭なく、被害者Bさんの自覚症状だけを追記してほしいという意図が伝わり、予定されていた医師面談時刻のギリギリに後遺障害診断書の追記をしていただくことができました。
この後遺障害診断書自覚症状欄に腰痛を追記をしてくれたという解決事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
鹿児島の頚部痛事例(学校事故)
後遺障害診断書の訂正は、交通事故や労災事故だけでなく、学校事故でも必要な場面があります。
体育の授業中の事故によって首に痛みが残存してしまった被害中学生Eさんの事例では、Eさんの首の痛みの残存症状が後遺障害診断書に適切に記載されておらず、後遺障害等級非該当の認定がなされてしまいました。
そこで、弁護士小杉は、医師に症状の修正をしてもらい、スポーツ振興センターに不服審査請求をすることで、後遺障害等級第14級の9を獲得しています。
この学校事故の後遺障害診断書に症状追記をしてくれたという解決事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
後遺障害診断書の自覚症状欄は簡潔な方がいい(情報を多く書かない)
ここまで、後遺障害診断書の自覚症状欄というのは非常に大事なもので、かつ、被害者自身に答えがあるものなのだから、間違った記載があったなら修正してもらうべきという論調で筆を進めてきました。
しかしながら、1点注意が必要です。
それは、後遺障害診断書の自覚症状欄はとにかく症状を書けば良いというものではないということです。
後遺障害等級認定で最も多い類型は、後遺障害等級14級9号(14級の9)「局部に神経症状を残すもの」とされていますが、この具体的要件の1つとして「常時疼痛を残すもの」というものが存在します。
平たく言うと、常に痛い場合にはじめて後遺障害等級認定がなされる可能性があるのであって、たまに痛いくらいでは後遺障害とは評価できないよ、という要件です。
この常時痛の要件は、自賠責保険をはじめとする後遺障害等級認定機関がよく揚げ足取りとして使います。
例えば、単に「首が痛い」「頚部痛」などと自覚症状欄に書いてあるときは、常時痛以外の要件を満たせば、後遺障害等級14級9号の認定がなされるのですが、「家事の際に首が痛くなる」「長時間PC作業をしていると頚部痛が生じる」などと書いてあるときは、「家事以外の時は首は痛くないんですね?」「長時間PC作業をしてなければ頚部痛は生じないんですね?」などと揚げ足を取られてしまって、後遺障害等級非該当の認定がなされてしまうのです。
こうした例では、家事以外の時は首が一切痛くないとか、長時間PC作業をしていなければ頚部痛が生じることはないということが言いたいわけではなく、家事の時やPC作業の時以外でも首が痛いときはあるが、特に家事の時や長時間PC作業の時に首が痛いというのを伝えたかったというの真実であることが多いです。
首というのは、日常生活において動かすことが必須の部位ですので、動作時痛であったとしても、後遺障害等級認定がなされるべきと考えます。
後遺障害等級認定を得るためのポイントとしては、端的に「首の痛み」であるとか「頚部痛」という表現で記してもらって、余計なことを後遺障害診断書に記載してもらわないようにしましょう。
どうしても後遺障害診断書に書いてほしい辛い症状がある場合は、「首の痛み」や「頚部痛」といった端的な表現をまずしてもらって、常時痛の要件をまずクリアさせた上で「家事の際に特に首が痛くなる」「長時間PC作業をしていると頚部痛が強くなる」など酷い症状を記載してもらうようにしてください。
むち打ちの場合の後遺障害診断書
ここでは、むち打ちの例を引きながら後遺障害診断書自覚症状欄の注意点を記載しましたが、交通事故むち打ち被害全般の解説についてはこちらのページをご覧ください。
③画像所見・検査結果など医学的裏付けが適切に書かれていない
- 医学的裏付けは後遺障害等級認定にあたり非常に重要
- 被害者患者の側から医学的見解を医師に述べるのはNG
- 医師は医学的見解の専門だが後遺障害等級認定基準の専門ではない
- 後遺障害等級認定を受けるために必要な医学的裏付けというのは特殊で複雑【後遺症専門弁護士の必要性】
- 小杉法律事務所での実際の後遺障害診断書修正例(靱帯損傷の例・CRPSの例など)
医学的裏付けは後遺障害等級認定にあたり非常に重要
後遺障害診断書には、画像所見や検査結果などの医学的裏付けを書くパートがあります。
自賠責保険(損害保険料率算出機構)・労働基準監督署・スポーツ振興センターなどの後遺障害等級認定機関は、詐病による後遺症の申告を排除する必要がありますので、主に、医学的裏付けのある後遺症といえるのかどうかの認定を行っています。
ですので、画像所見や検査結果といった医学的裏付けは非常に重要です。
被害者患者の側から医学的見解を医師に述べるのはNG
後遺症の医学的裏付けは非常に重要な分野ですが、診断名と同様、患者さんの側から医学的見解を述べるというのはおすすめしません。
ご自身の症状に対する検査結果など医学的裏付けに疑問があれば、セカンドオピニオンを実施するようにしてください。
医師は医学的見解の専門だが後遺障害等級認定基準の専門ではない
診断名は、医師の専権事項といえますが、後遺障害診断書には記載のルールや等級認定基準という要件があります。
自賠責保険顧問医経験者・裁判所鑑定医など、後遺障害等級認定基準に詳しいお医者さんもいますが、多くの医師は患者さんの体をどう治すかに興味があるのであって、患者さんの体にどのような後遺症が残るかについて興味はありません。
むしろ、どのようにして患者さんの体に後遺症が残らないようにするかがお医者さんの仕事ということもできます。
従いまして、後遺障害診断書の記載事項や、後遺障害等級認定基準について、強い興味・関心を有している医師というのは多くはない印象です。
こうしたお医者さんの姿勢は責められるようなものではなく、むしろ患者さんの体を治すことに懸命になられているというのは素晴らしいことかと思います。
しかしながら、懸命な治療やリハビリの結果として、やむを得ず後遺症が残ってしまった場合というのは、適切な後遺障害等級認定を受け、適切な損害賠償金を受け取らなければいけません。
ここの役割を担うのが弁護士の仕事であり、この弁護士の仕事に対して、お医者さんに協力していただくという形になります。
後遺障害等級認定を受けるために必要な医学的裏付けというのは特殊で複雑【後遺症専門弁護士の必要性】
後遺障害等級は1級~14級まで、その級の中でも複数の種類があります(例えば、後遺障害等級9級は17種類あります。)。
しかも号数が定められていない、隠れ後遺障害というものも存在し(正式には、「準用等級」や「相当等級」といいます。)、非常に多くの種類の後遺障害が用意されています。
かつ、その分野も、視力・調節機能・眼球運動・視野・まぶた・聴力・耳介・耳漏・耳鳴り・めまい・そしゃく・言語・味覚・歯・脳・麻痺・脊髄・てんかん・頭痛・骨折・靱帯損傷・捻挫・精神障害・傷痕・臓器・体幹骨・上肢・下肢など様々な医学領域にわたります(労災補償障害者認定必携第17版参照)。
それぞれの領域について適切な後遺障害等級を獲得するためには、どの診察科で治療をし、どのような検査を行い、どのような画像を撮るべきで、どのような診断書・意見書を準備するべきかといったポイントは、後遺障害認定基準や過去の裁判例・認定例を熟知した専門の弁護士でなければ行うことができません。
なお、後遺障害等級認定というのは司法試験にも一切出題されず、専門として多くの事例を扱ってきた弁護士で無ければ適切な解決に導くことは困難です。
小杉法律事務所では、他の法律事務所への依頼をとりやめて当事務所へ依頼される被害者の方が多く、また、同業の弁護士から「一緒にやって欲しい」「代わりに依頼を引き受けてほしい」という要望もよく受けています。
後遺障害等級認定を受けるために必要な医学的裏付けがなされているかどうかは、後遺症専門の弁護士に後遺障害診断書を見てもらうようにしましょう。
専門の弁護士であれば、適切に後遺障害診断書を分析し、カルテ調査・医師面談・検査指示など必要なアクションを起こしてくれます。
小杉法律事務所での実際の後遺障害診断書修正例
腓骨神経麻痺を医学的裏付けとして追記
最初の例と同じ解決事例ですが、Aさんのケースでは、診断名の追記修正のほかに、医学的裏付けとして腓骨神経麻痺を後遺障害診断書に追記してもらいました。
これは、過去に弁護士小杉が腓骨神経麻痺の被害者さんの事例を解決したことがあったため、Aさんの下垂足の症状を見て、腓骨神経麻痺を疑い、医師面談にてその医学的当否を確認の上、追記していただいたという流れになります。
腓骨神経麻痺の裏付けがあると、足指の可動域制限について、自動値にて後遺障害等級認定がなされるため、後遺障害等級非該当が9級15号まで上がります。
この後遺障害診断書に腓骨神経麻痺の医学的裏付けを追記してもらったという解決事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
内側側副靭帯損傷・前十字靭帯損傷による動揺関節を医学的裏付けとして追記
バイク事故被害にあったLさんは、骨折被害はなかったものの、どうも事故前にはなかった膝のぐらつきを感じるという症状が発現していました。
弁護士小杉は、これが隠れ後遺障害等級(準用等級・相当等級)である動揺関節の可能性があるとして、MRIやストレスレントゲンの撮影をお願いした上、医師面談を実施しました。
そうしたところ、整形外科の医師も動揺関節を認めてくださり、その旨を後遺障害診断書に追記してくださいました。
この後遺障害診断書に動揺関節の医学的裏付けを追記してもらったという解決事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
CRPSの医学的裏付けを追記
労災被害にあったCさんは、物に触れただけで激痛が走るような後遺症を残してしまいます。
弁護士小杉の見解も、主治医の見解も、CRPSということで一致していましたが、労災のCRPS後遺障害等級認定基準と、厚生労働省研究班の発表しているCRPS判定指標とでは内容に差があり、主治医の見解は後者に立脚するものでした。
医学的には厚生労働省CRPS研究班の判定指標が正しいのかもしれませんが、それを言ったところで労働基準監督署ないし労働局は、CRPSでの後遺障害等級認定をしてくれませんので、労災におけるCRPS後遺障害等級認定基準を主治医に説明した上、後遺障害診断書内容を修正していただきました。
これによりCRPSの最高等級である後遺障害等級第7級の3の獲得に成功しています。
この労災後遺障害診断書にCRPSの医学的裏付けを追記してもらい後遺障害等級第7級の3を獲得した解決事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
④その他の後遺障害診断書の修正
- 醜状障害欄の修正
- 関節可動域欄の修正
- 変形障害欄の修正
- 症状固定日欄の修正
- 氏名・性別・生年月日・住所・職業・受傷日時・入通院期間などの基本情報の修正
醜状障害欄の修正
後遺障害診断書の醜状障害欄は誤りが多い
醜状障害というのは傷跡のことですが、外傷によって生じた場合に後遺障害等級該当性が問題となります。
傷痕の話なので、病院における専門診察科は、形成外科・皮膚科・美容整形外科といったあたりになりますが、後遺症として残るような傷痕を有する事故の場合、通常、脳損傷であるとか骨折であるとか、他の重傷被害が伴っています。
そのため、本来は醜状障害の専門診察科ではない、整形外科医や脳神経外科医が主治医となっていることが多く、わざわざ形成外科や皮膚科などに後遺障害診断書を書きに行かず、整形外科医や脳神経外科医による後遺障害診断書1通のみを作成して、後遺障害等級申請がなされるというケースも多く存在します。
従いまして、醜状障害欄の記載が不十分であったり、そもそも空欄となっているような後遺障害診断書が散見されます。
ですので、後遺障害診断書の醜状障害欄のパートというのは後遺症専門の弁護士が目を光らせてチェックする箇所の一つということができます。
小杉法律事務所での実際の後遺障害診断書修正例
福岡県久留米市の交通事故解決事例(頭部の醜状障害)
福岡県久留米市の被害者Dさんは、バイク事故被害に遭い、頭部に大きな傷害を受けてしまいました。
これにより頭部は陥没してしまいましたが、後遺障害診断書の醜状欄は空欄のままでした。
これは頭部の醜状よりも、脳損傷による治療について医師が専念していたからだと思われますが、適切な後遺障害等級認定を受けるためには、脳損傷のみならず頭部醜状障害の評価も受けなくてはなりません。
実際被害者Dさんの頭部が陥没していたとしても、後遺障害診断書に記載がなければ、自賠責保険等の後遺障害等級認定機関は、頭部陥没という事実はなかったものとして扱ってきます。
そこで、弁護士小杉晴洋が久留米大学病院の脳神経外科医の先生に写真を付けた上で頭部陥没の事実を説明し、後遺障害診断書の醜状欄に追記をしてもらいました。
この後遺障害診断書に頭部陥没の追記をしたもらったという解決事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
福岡市の学校事故解決事例(顔面部の醜状障害)
福岡市の小学生Fさんは、登下校の途中、同級生が振り回してカバンが鼻に当たって、怪我をしてしまいます。
被害者Fさんには、顔の傷が後遺症として残ってしまいますが、スポーツ振興センターはこれを後遺障害としては評価してくれず、非該当の判断となりました。
被害者Fさんの顔の傷と、後遺障害診断書の内容を確認した弁護士小杉が、後遺障害診断書の訂正の必要を訴え、訂正に向けて動くことになりました。
具体的には、平面的な傷の長さは測られていたのですが、鼻の高さの部分が測定に入っておらず、この点を主治医に訴えることになりました。
硬い定規ではなくメジャーなどを駆使して後遺障害診断書の訂正活動を行い、無事主治医の先生に後遺障害診断書の訂正をしていただくことに成功しました。
この学校事故後遺障害診断書の醜状記載欄を訂正してもらったという解決事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
関節可動域欄の修正
後遺障害診断書の関節可動域欄は記入漏れが多い
後遺障害診断書には、上肢・下肢関節可動域の記入欄がありますが、これは、肩・肘・手・手指・股・膝・足・足指とパートが多く、その中の指だけ取って見ても28関節存在しています。
そして、1つの関節だけを見ても、屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋といった6つの動きを測定しなければならず(例:肩・股)、かつ、各動きについて、自動運動(患者さんが自分でどこまで動かせるか)と他動運動(医師が動かしたらどこまで動くか)の2つの方法で測定しなければなりません。
加えて、関節可動域の後遺障害等級認定は、基本的には左右の比較によって行われますので、怪我をした方だけを測定すればよいのではなく、左右両方を測定しなければならないのです(以上、労災補償障害認定必携283頁以下参照)。
事例によっては100に近い測定を要求されることもあり、関節可動域欄は記入漏れの多いパートとなっています。
ですので、後遺障害診断書の上肢・下肢の関節可動域欄のパートというのは後遺症専門の弁護士が目を光らせてチェックする箇所の一つということができます。
小杉法律事務所での実際の後遺障害診断書修正例(上肢・下肢の関節可動域)
先に述べましたAさんの事例でも、関節可動域欄の後遺障害診断書追記を行っていただき、最終的には後遺障害等級併合6級を獲得しています。
後遺障害診断書関節可動域欄の追記等により後遺障害等級併合6級を獲得した事例の詳細はこちらのページをご覧ください。
また、労災被害に遭われたZさんの事例(大腿骨頸部骨折)では、人工骨頭の挿入に、関節可動域の追記を合わせることによって、後遺障害等級8級を獲得しています。
後遺障害診断書関節可動域欄の追記により後遺障害等級8級を獲得した事例の詳細はこちらのページをご覧ください。
変形障害欄の修正
後遺障害診断書の変形障害欄は記入漏れが多い
後遺障害診断書の変形障害欄は、分かりづらい箇所にあり、記入漏れが多いです。
また、他の後遺障害と併発していることが多く、かつ、サブ的な位置付けにされやすい後遺障害類型なので、より記入漏れが多くなっています。
ですので、後遺障害診断書の変形障害欄のパートというのは後遺症専門の弁護士が目を光らせてチェックする箇所の一つということができます。
小杉法律事務所での実際の後遺障害診断書修正例
体幹骨の変形
Yさんは、労災被害に遭い、大腿骨骨折や膝蓋骨折などの傷害を負ってしまいます。
その手術の際に、骨盤骨の骨を移植していたのですが、この骨盤骨については事故により直接受傷したものではなかったため、診断書に記載が挙がっていませんでした。
弁護士小杉がカルテを読んでいた中で、骨盤骨の移植の事実を発見し、これを整形外科医に伝えることで、後遺障害診断書を訂正してもらいました。
結果として、大腿骨骨折や膝蓋骨折自体は完治していたのですが、骨盤骨の変形で後遺障害等級12級を獲得することができました。
後遺障害診断書体幹骨の変形欄の追記をしてもらったという解決事例の詳細についてはこちらのページをご覧ください。
長管骨の変形
先に述べましたAさんの事例では、長管骨の変形欄の後遺障害診断書追記を行っていただき、最終的には後遺障害等級併合6級を獲得しています。
後遺障害診断書長管骨の変形欄の追記等により後遺障害等級併合6級を獲得した事例の詳細はこちらのページをご覧ください。
症状固定日欄の修正
症状固定日というのは、加害者サイドから争われやすいところで、支払われる治療費の金額や入通院慰謝料額に直接影響を与えるパートとなっています。
任意保険会社の担当者や顧問弁護士の中には、頻繁に主治医に医療照会や医師面談を行い、いかに早いタイミングでの症状固定を主治医に決断させるかを迫るような人たちもいます。
また、医師の中には、保険会社から治療費を支払ってもらえるまでを後遺障害診断書記載の症状固定と捉えている方もいますが、このような考えをしてしまっては、症状固定日を決めるのが加害者サイドということになってしまいます。
小杉法律事務所でも、医師面談の実施等により症状固定日の修正をお願いした事例は複数ございますが、症状固定日については、後遺障害等級認定と異なり、その時に治療費の打切りもなされてしまいますし、一度は症状固定の判断をしたという事実が後にも影響を与えてしまうので、事後的に後遺障害診断書の修正を行うという措置よりも、後遺障害診断書を書いてもらうまでに医師面談を実施するなどの措置を取った方が良いことが多いです。
症状固定については治療期間中の動きが重要となりますが、交通事故における治療期間中の注意点についてはこちらのページをご覧ください。
氏名・性別・生年月日・住所・職業・受傷日時・入通院期間などの基本情報の修正
これらについては、医師の専門領域でもなく、単なる誤字の類だと思いますから、患者さんご自身で後遺障害診断書の修正依頼をしてしまって構いません。
なお、氏名・性別・生年月日・住所・職業・受傷日時・入通院期間などの基本情報については、後遺障害診断書にて証明するものでもありませんので、誤字や一部空欄があったとしても、申請が通ることもあります。
医師への後遺障害診断書の修正依頼はどのように行うか?
- 基本的には患者さんが直接後遺障害診断書の修正依頼をしない方が良い!
- どうしても後遺障害診断書の内容に納得がいかない場合は修正依頼ではなくセカンドオピニオン!
- 後遺障害等級認定のための後遺障害診断書の修正依頼は専門の弁護士へ!
基本的には患者さんが直接後遺障害診断書の修正依頼をしない方が良い!
診断名や医学的見解のパートで述べましたが、患者さん自身も医師であるといった事情でもない限り、患者さんが直接後遺障害診断書の修正を依頼しても良いことはありません。
その後必要な場面で医学的意見書の作成に協力してもらえなくなるなどのデメリットが想定されます。
氏名・性別・生年月日・住所・職業といった患者さんご自身の領域については、後遺障害診断書の修正依頼をしても差支えありませんが、ここの修正は、誤字や一部空欄があったままでも後遺障害等級認定や損害賠償金に影響を及ぼしませんので、基本的には後遺障害診断書の修正依頼は直接行わない方がよいくらいに考えておいた方が良いと思います。
自覚症状についても、患者さん本人が一番よくわかっているパートとはいえ、詳細に書けば良いというものではなく(むしろ悪い)、適切な後遺障害等級認定の結果を受けるためには専門的な知識・理解が必要な領域ですので、専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
小杉法律事務所(福岡弁護士事務所)の\無料法律相談の流れ/はこちらのページをご覧ください。
どうしても後遺障害診断書の内容に納得がいかない場合は修正依頼ではなくセカンドオピニオン!
後遺障害診断書のどこをどう修正したら適切な後遺障害等級認定が得られるかについて、患者さん本人が判断するのは極めて難しいことですし、また、診断事項については診察した医師しか見解を述べられません。
そこで、後遺障害診断書の内容にどうしても納得がいかないという場合は、主治医に修正依頼をするのではなく、セカンドオピニオンを実施して、他の医師の診察を受けるようにしてください。
セカンドオピニオンの感触が良かった場合は、その病院での治療を一定期間続けることにより、後日別の後遺障害診断書を書いてもらえることがあります。
後遺障害等級認定のための後遺障害診断書修正依頼は専門の弁護士へ!
長きにわたり述べてきましたが、後遺障害等級認定というのは複雑多岐にわたり、医師でもその内容を理解していない人の方が多い事柄です。
また、弁護士でも、専門特化していなければ、後遺障害等級認定の内容を理解できません。
後遺障害診断書のどの部分をどのように修正するかは、後遺症に専門特化した弁護士に相談されることをおすすめします。
小杉法律事務所では、100件を超える医師面談実績があり、医師の経歴調査、文献・論文調査などを経た上で医師面談を実施するといった後遺障害診断書修正のノウハウを有しています。
後遺障害診断書の記載内容に納得がいかないという被害者の方については、無料の法律相談を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
また、各事例に応じた後遺障害等級の無料査定も実施しておりますので、こちらもご活用ください。