スポーツ振興センター後遺障害等級非該当→弁護士介入により12級認定
学校事故被害者Fさん 小学生・女性・福岡市東区
学校事故 後遺症・後遺障害
通学中の事故で鼻に傷害を負ってしまった福岡市東区の小学生Fさん。
鼻の怪我は白い痕として残ってしまいます。
ところが、スポーツ振興センターは後遺障害等級非該当の認定をしました。
白い傷痕というのは後遺障害等級の認定はされないのでしょうか?
被害者Fさんの事例は、弁護士小杉晴洋が依頼を受け、示談解決しました。
このページでは、どのような手法によってFさんの事例を解決したのかについて紹介していきます。
小杉法律事務所では、スポーツ振興センターより後遺障害等級の認定を受けた被害者について、無料の法律相談を行っています。
スポーツ振興センターより後遺障害等級認定を受けた方はこちらのページをご覧ください。
この事例の後遺障害等級認定や示談解決のポイント
- 醜状障害の要件の把握(白斑について)
- 医師面談実施による後遺障害診断書の修正
- 弁護士名義の意見を付けた不服審査請求
- 裁判基準以上の通院付添費用の認定
- 慰謝料の裁判基準額の認定
- 醜状障害における逸失利益の認定
学校事故の内容(福岡市東区)
被害者Fさん(小学4年生)は、小学校が終わり、同級生と一緒に下校していました。
同級生の一人がカバンを振り回していたところ、それがFさんの鼻に当たり、怪我をしてしまいます。
Fさんは治療を続け、鼻の傷は徐々に小さくなっていったものの、半年を経過しても傷が消えてなくなることはなく、白い痕として残ってしまいました。
Fさんの親御さんは、この白い傷痕について、福岡市教育委員会経由で、後遺障害等級の申請をしてみましたが、スポーツ振興センターの判断は、外貌醜状障害とは評価できないということで後遺障害等級非該当の判断結果が通知されました。
Fさんの親御さんは、このスポーツ振興センターの後遺障害等級認定が正しいのかどうか分からず、福岡市内で学校事故を取り扱っている弁護士を探すことにしました。
弁護士小杉晴洋による無料法律相談と依頼
Fさんの親御さんより、後遺障害診断書を見せてもらいましたが、後遺障害等級が認定される記載内容にはなっていませんでした。
もちろん、後遺障害等級が通るように嘘の内容を後遺障害診断書に書いてもらうことはできないのですが、Fさんの実際の傷跡を正確に記載してあるものとは言えませんでしたので、修正の必要があると感じました。
具体的には、鼻というのは平面ではなく、凹凸があるものですが、障害診断書では平面的に傷の長さが記されていたのです。
Fさんの親御さんに、医師に障害診断書を訂正してもらった上で、スポーツ振興センターに再度の障害等級認定をお願いしましょうとの方針をお伝えし(不服審査請求)、依頼を受けることになりました。
福岡青洲会病院での医師面談と後遺障害診断書の修正
後遺障害等級の対象となる醜状障害は3㎝の長さから
顔に線状の傷跡が残ってしまったという事例では、その線状痕の長さによって後遺障害等級認定が行われることになっています。
具体的には、5㎝以上の傷跡が残ってしまったという事例では後遺障害等級9級の16、3㎝以上の傷跡が残ってしまったという事例では後遺障害等級12級の14が、それぞれ認定されることになっています。
なお、Fさんの後遺障害診断書には線状痕の長さが2.5㎝として記入がしてありました。
乳幼児や低学年の児童の場合は、線状痕の長さが2.5㎝であっても後遺障害等級12級の14の認定がなされるのですが、Fさんは小学4年生でしたので、後遺障害等級12級の14の認定を受けるには3㎝以上の線状痕の長さが必要となります。
確かに、Fさんの鼻の傷跡は、硬い定規をあてると、長さが2.5㎝程度のものでした。
しかしながら、鼻というのは、頬などと異なり、平面的なものではなく、高さがあるものですから、鼻の高さの部分の傷跡も合わせて測定されなければなりません。
Fさんの鼻の傷跡も、硬い定規ではなく、メジャーにて測定をすると、長さが4㎝程度あるものでした。
そこで、上記の点を福岡青洲会病院の形成外科医師に説明をして、後遺障害診断書の線状痕の長さを修正してもらうことにしました。
白い傷痕が「醜状」と評価できるか?
被害者Fさんの顔は、日焼けしていて、鼻の傷の部分のみが白くなっていました。
絆創膏などを貼っていたことによって鼻の傷の部分だけ日焼けをしなかっただけだと評価されてしまうと、それは「醜状」とは評価されずに、長さが3㎝以上あったとしても後遺障害等級認定を受けることができません。
スポーツ振興センター自身が編集している「災害共済給付ハンドブック」では、色素脱失による白斑等も「醜状」として扱う旨の記載があることから、Fさんの傷跡について、日焼けしなかったからではなく、色素脱失による白斑等として後遺症に該当する旨の医学的知見が必要となります。
ですので、この医学的知見について、福岡青洲会病院の形成外科医師に見解を伺うことにしました。
福岡青洲会病院形成外科での医師面談
線状痕の長さの修正について
鼻の高さ部分も含めたメジャー測定をしている写真も携えて医師面談に赴いたところ、福岡青洲会病院形成外科医師は、快く後遺障害診断書の線状痕の長さの修正に応じてくださいました。
白い傷痕の醜状評価について
医師というのは身体を治すことが専門で、後遺障害等級認定の専門ではありませんので、まずは弁護士小杉からスポーツ振興センターにおける醜状障害の後遺障害等級認定基準について説明をさせていただきました。
その中で、色素脱失による白斑等も醜状として取り扱う旨の基準があることから、Fさんの白色の傷跡がこれに該当すると言えるのかについて医学的見解をお尋ねしました。
そうしたところ、鼻の受傷から、皮膚組織が破壊され、その後色素脱失による白斑が形成されるという医学的な流れをご説明頂くことができ、この点も後遺障害診断書に追記していただけることになりました。
醜状障害についてのより詳しい解説はこちらのページからご覧ください。
スポーツ振興センターへの不服審査請求と障害見舞金の支払い
弁護士名義の意見書を添えて不服審査請求
スポーツ振興センターの後遺障害等級非該当の認定に対して、福岡青洲会病院形成外科医師に修正いただいた後遺障害診断書を元にして、不服審査請求を行いました。
しかしながら、それだけでは心許なかったことから、弁護士小杉名義の意見書も添えて不服審査請求を行うことにしました。
交通事故における自賠責保険や、労災事故における労働基準監督署の場合、大量に後遺障害等級認定実務を行っておりますので、一般的な弁護士よりも後遺障害等級認定基準に詳しい職員の人が多数存在していますが、スポーツ振興センターの後遺障害等級認定は、自賠責保険や労働基準監督署の認定と比べ専門性が高くなく、申請する側のプレゼンが非常に重要となっています。
福岡青洲会病院形成外科医師に修正いただいた後遺障害診断書に加え、メジャー測定している風景の写真を付け、また、これらの証拠と「災害共済給付ハンドブック」で紹介されている醜状障害の認定基準との整合性を丁寧に説明する意見書を添えて提出しました。
具体的には、①鼻の高さ部分も「外貌」に該当しこの部分も醜状障害の後遺障害等級認定上は考慮しなければならないこと、②被害者Eさんの白い痕は「色素脱失による白斑」として醜状に該当することなどの意見を提出しました。
後遺障害等級12級の14認定+障害見舞金の支払い
以上の不服審査請求により、スポーツ振興センターは、当初の非該当判断を変更し、後遺障害等級認定12級の14の認定をしてくれました。
また、通学中の後遺障害の場合、学校生活上での後遺障害の事例の1/2の障害見舞金が支払われることになっています。
Fさんの事例は、通学中の事故で後遺障害等級認定12級の14の認定がなされましたので、後遺障害等級12級の障害見舞金額210万円の半額にあたる、105万円の支払いがなされました。
損害賠償金約400万円での示談解決
加害者が小学生の場合、原則として加害者の親が責任を負います
Fさんと同じく、加害者も小学4年生でしたので、責任能力が認められず、加害児童は損害賠償責任を負いません(民法第712条)。
そして、このような事例では、未成年者である加害児童を監督する親権者が損害賠償責任を負うことになっています(民法第714条1項本文)。
この点、当該親権者が監督義務を怠らなかったときは損害賠償責任を免れることになっていて(民法第714条1項ただし書)、具体的には、親権者の直接の監視下にないときにした行為については、通常は人身に危険が及ぶ行為でなければ監督義務を問われないこととされていますが(最高裁判所平成27年4月9日判決 民集69巻3号455頁参照)、Eさんの事例では、カバンを振り回すという行為を行っていますので、これは「通常は人身に危険が及ぶ行為」に該当するため、民法第714条1項ただし書によって加害児童の親が責任を免れることにはなりません。
示談交渉では、この点を主張したうえで、損害賠償請求を行いました。
学校事故の事例であっても加害者側の任意保険が使えることがあります
交通事故の事例ですと、任意保険に加入している車が多く、保険会社が対人賠償を行ってくれることが多いですが、学校事故の場合でも保険会社が対人賠償を行ってくれることがあります。
PTAの保険、加害生徒の親が会社で加入している保険など種類は様々です。
加害者側が任意保険に加入していない場合は、損害賠償請求が認められたとしても、払えるお金がなく、結局被害者側が泣き寝入りしなければならなくなるといった事態も想定されます。
加害者側は本当は使える保険があるのに、それに気づいていないだけという事例も散見されますので、加害児童の親と交渉を行う際には、まず使える任意保険を探すように促しています。
小杉法律事務所は被害者専門の弁護士事務所ですので、加害者側の法律相談は受け付けておりませんが、加害者側の任意保険を見つけることは、被害者の損害賠償請求に資するものであるため、この点のアドバイスは加害者側にしております。
Fさんの事例でも、AIG損害保険株式会社の任意保険が使えましたので、AIGの担当者と示談交渉を行いました。
裁判基準以上の通院付添費用の認定
Fさんは小学4年生でしたので、お父様やお母様が福岡青洲会病院への通院に付き添っていました。
通院付添いの立証に成功すれば、裁判基準において日額3300円の通院付添費用が支払われることになりますので、付添看護自認書の証拠や医証をもとに示談交渉を行いました。
そうしたところ、お母様の福岡青洲会病院への通院付添いについて、裁判基準日額3300円での支払いを受けることに成功しました。
また、お父様については、お仕事を休まれてFさんの通院に付き添っていた日があり、お父様の欠勤による給料減少は日額3300円を超えるものでした。
そこで、お父様のお勤め先に休業損害証明書を書いてもらい、これを元に示談交渉を行いました。
そうしたところ、お父様の福岡青洲会病院への通院付添いについて、裁判基準日額の約5倍となる日額1万5000円超の支払いを受けることに成功しました。
裁判基準相場での慰謝料認定
通院慰謝料
Fさんは6か月強の通院期間がありましたので、裁判基準の通院慰謝料額は約120万円(別表Ⅰ)か約90万円(別表Ⅱ)のいずれかとなります。
通院慰謝料の裁判基準には、高い方の基準(別表Ⅰ)と低い方の基準(別表Ⅱ)とがありますが、後遺障害等級非該当の場合ですと、単なる挫傷・挫創と判断されてしまい、低い方の通院慰謝料水準とされてしまいます。
Fさんの事例では、不服審査請求により後遺障害等級12級の認定を受けることができましたので、高い方の慰謝料基準(別表Ⅰ)である120万円超の通院慰謝料額を支払ってもらうことができました。
後遺症慰謝料
スポーツ振興センターの後遺障害等級認定が非該当の場合は、後遺症慰謝料の請求はできないのが原則となっていますが、Fさんの事例では、不服審査請求により後遺障害等級12級の認定を受けることができましたので、後遺症慰謝料の請求を行うこともできます。
また、任意保険基準では12級の後遺症慰謝料額は93万円といった低額の算定をされることが多いですが、Fさんは弁護士に依頼しておりますので、裁判基準の290万円を支払ってもらうことができました。
逸失利益の認定
後遺障害等級認定がなされると、将来仕事がしづらくなるといった点を損害評価し、逸失利益の損害賠償請求が認められることになります。
ただし、醜状障害の場合は、手が使えなくなる/膝が曲がらないなど身体機能に障害を残すわけではありませんので、労働能力喪失率の立証が難しく、
逸失利益を否定する裁判例も多く存在します。
醜状障害の後遺症の事例で逸失利益を認めた裁判例としては、モデルなど容姿が仕事内容になっているケースが挙げられますが、Eさんは未だ小学生ですので、将来どのような仕事に就くのか決まっていません。
そこで、鼻の醜状障害の例で、かつ、小学生が被害者となっている裁判例をパラリーガルが調査したところ、名古屋地方裁判所において逸失利益を肯定している裁判例を発見しました。
また、日本の裁判例では醜状障害の逸失利益性について否定的な裁判例が多く存在しますが、海外では、顔の醜状障害が、精神面に影響を与え、その結果として仕事のパフォーマンスが下がるということで逸失利益性を認めている裁判例が多く存在します。
以上の裁判例や文献を元にして、Fさんの心理面への影響、将来の就くことが考えられる職種が制限されることなどを主張立証して示談交渉を行った結果、一部逸失利益を認めてもらうことに成功しました。
逸失利益についてのより詳しい解説はこちらのページからご覧ください。
損害賠償金約400万円での示談解決
スポーツ振興センターから支払われた障害見舞金105万円は示談交渉においては控除されますが、その他の損害賠償金として約400万円での示談解決となりました。
依頼者の声(Eさんの親御さん・40代・福岡市東区)
娘の顔に傷が残り、しかも、それが何の評価もされないということに納得がいかず、小杉弁護士に相談させていただきました。
小杉弁護士は、福岡青洲会病院で医師面談を実施して、スポーツ振興センターに不服審査請求を行って、示談交渉をしますといった具合に、分かりやすく流れを説明してくださいました。
無事スポーツ振興センターの後遺症障害の認定を覆され、示談解決に至りましたので満足しています。
弁護士小杉晴洋のコメント:まずは後遺症被害専門の弁護士による医師面談
後遺障害等級認定は書面審査にて行われます。
書面に書いてないことは、無いものとして扱われるのです。
ですので、不当な後遺障害等級認定が出された場合は、その書面自体を変更していく必要があります。
書面の中で最も重要なものは後遺障害診断書ですが、お医者さんは医学のプロであっても、後遺障害等級認定のプロではありません。
すなわち、後遺障害等級認定基準を知らずに、悪気なく不十分な後遺障害診断書を書いているということがあります。
主治医の見解に反する所見を診断書に書いてもらうことはできませんが、主治医の見解と整合する所見なのであれば、それは後遺障害診断書を修正してもらうべきです。
何の根拠もなく「診断書を修正してください」とお願いするのは、医師への冒涜ともとれる行動ですので控えるべきですが、医師面談を実施して、主治医の見解をお伺いし、そのご見解の範囲で後遺障害診断書を修正してもらうことは非常に有用です。
小杉法律事務所では、後遺障害診断書を修正していただくことで後遺障害等級を変更させた解決事例が多数ございます。
後遺障害等級評価に納得がいかないという方については、無料の法律相談を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
※後遺障害診断書修正の詳細についてはこちらのページをご覧ください
※学校事故における無料法律相談の流れはこちらのページをご覧ください