醜状障害
交通事故で顔に傷が残った場合(醜状障害)の慰謝料【弁護士解説】
交通事故の被害に遭い、顔に怪我をしてしまったという場合、
当然ですが治療費などの交通事故に遭わなければ支出する必要がなかった費用や、痛みや入通院の大変さに対する慰謝料の請求はできるでしょう。
しかし、治療を続けても顔に消えない傷跡が残ってしまったという場合に、
上に挙げたようなものを支払ってもらっただけで、適切な損害の賠償がなされたと言えるでしょうか?
顔に消えない傷が残ったということ、それにより受ける精神的苦痛などはきちんと慰謝料として評価され、損害賠償を受けるべきです。
ということで今回は、交通事故で顔に傷が残った場合に、被害者の方が受けるべき適切な慰謝料・損害賠償とはどういったものなのかについて、交通事故被害者専門弁護士が解説します。
顔に傷跡が残った場合、保険会社に損害賠償請求できるもの
まずご説明するのは、交通事故の被害に遭った場合に、受けた被害の内容等にかかわらず請求できるものです。
治療関係費
治療関係費は、治療のために支出した必要かつ相当な実費全額について請求をすることができます。
なお顔に傷が残ってしまった場合に、美容整形などでその傷を隠すことをご検討の方もいらっしゃると思います。
美容整形については注意点がございますので、ページ下部で詳しくご説明させていただければと思います。
休業損害
交通事故により受けた痛みなどでお仕事や家事ができなくなったり、入通院のためにお仕事を休まざるを得なかったりして、
本来得られるはずであった収入が無くなってしまったという場合には、その分を請求することができます。
入通院(傷害)慰謝料
怪我をした痛みや、入通院の大変さ、紛争解決に関わらなければいけないといった、
交通事故被害者に一般に生じる精神的苦痛に対する慰謝料についても当然請求ができます。最も低い自賠責基準の入通院慰謝料は日額4300円とされていますが、
裁判基準ではより高額になります。
その他
その他にも、通院交通費・入院雑費・損害賠償請求関係費用(例:診断書代)などについても請求をすることができます。
後遺障害等級が認定された場合
後遺障害等級が認定された場合、つまり顔に消えない傷が残ってしまったということが自賠責損害調査事務所の調査等により認定された場合には、
新たに後遺症慰謝料や逸失利益といったものについても請求をすることができるようになります。
それぞれについて詳しく見ていく前に、まずは顔の傷で認められる後遺障害等級について見ていきましょう。
顔の傷で認められる後遺障害等級
交通事故被害で顔に傷が残ってしまった場合に認められる後遺障害等級は、
- ①7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
- ②9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
- ③12級14号 外貌に醜状を残すもの
の3つになります。ここでいう「外貌」とは、「頭部、顔面部、頚部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分をいう。」とされています
(一般社団法人 労災サポートセンター発行 『労災補償 障害認定必携』より引用。)。
①~③を比較するとお分かりになるように、それぞれの等級は、残存した醜状の程度(大きさ)によって決定されることになります。
具体的に見ていきましょう。なお、ここでご説明するのは顔(顔面部)に残った傷の場合です。
① 7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
顔面部における「著しい醜状を残すもの」とは、「原則として、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没に該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。」とされています。
② 9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
顔面部における「相当程度の醜状を残すもの」とは、「原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のものをいう。」とされています。
③ 12級14号 外貌に醜状を残すもの
顔面部における単なる「醜状」とは、原則として10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕に該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。」とされています。
ここで注目しなければならないのは、どの等級であっても、「人目につく程度以上のもの」という条件があることです。
つまり、傷が残った場所が顔面部であったとしても、頭髪や眉毛等で、人目につかないように隠すことができる場所であるときは、後遺障害として認定されないということになります。
Q. どこまでが顔面部に含まれるの?
A. 下あごの骨の稜線と、髪の毛の生え際とで囲まれた部分 とされています。
顔面部の傷と評価されるか、首(頚部)や頭部の傷と評価されるかによって、判断の基準が変わってきます(顔面部の方が基準が緩い)から、
傷が残った場所が顔面部に含まれるかは極めて重要です。
弁護士法人小杉法律事務所でも、顎の先端に残った傷が首(頚部)の傷と評価され、一度後遺障害に該当しないとされた事例で、顎の先端は顔面部に含まれることを主張したことによって、判断を覆し、後遺障害等級第9級を獲得した事例
があります。
Q. 瘢痕の大きさや線状痕の長さは直線的に測定するの?
A. 人の顔は立体ですから、その立体に沿って測定する必要があります。
大阪地方裁判所平成10年1月23日判決(交通事故民事裁判例集31巻1号57頁)では、
「瘢痕の長さは、両端を定規で直線的に測定すると約2.5センチメートルであるが、瘢痕の形に沿ってこれを測定すると3センチメートルに及ぶ。」とし、
自賠責損害調査事務所が後遺障害には該当しないと判断した顔の傷について、後遺障害等級第12級13号を認定しています。
弁護士法人小杉法律事務所でも、線状痕の長さの測定は立体に沿って測定すべきことを医師面談で主張し、医師に後遺障害診断書の記載を2.5センチメートルから4センチメートルと訂正いただいたことにより、後遺障害等級第12級14号を獲得した事例
があります。
Q. 一つ一つの大きさが等級認定に満たない瘢痕や線状痕が複数ある時には、後遺障害等級として認定されないの?
A. 全体を一つの醜状として後遺障害等級を認定する場合があります。
『労災補償 障害認定必携』では、「2個以上の瘢痕又は線状痕が相隣接し、又は相まって1個の瘢痕又は線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合は、それらの面積、長さ等を合算して等級を認定する。」とされています。
具体的な実務上の運用としては、それぞれの瘢痕や線条痕の間隔が1センチメートル以下であるときには、この条件が適用されるようです。
弁護士法人小杉法律事務所では、瘢痕や線状痕が複数ある場合には、その大きさ・長さだけでなく、その間隔も測定していただくように医師に依頼して後遺障害診断書を作成していただいております。また、損害保険料率算出機構にて行われる醜状面談にも弁護士が同行して、瘢痕や線状痕の間隔まで測定するよう弁護士が意見を求めています。
左頬部に残存した複数の瘢痕についてそれぞれの間隔について後遺障害診断書を記載してもらうよう医師面談を行い、後遺障害診断書を訂正したことにより後遺障害等級第12級14号を獲得した事例
請求できる費目
顔に残ってしまった傷について後遺障害等級が認定されると、将来にわたって働きにくくなる損害である逸失利益と、
消えない傷が残ってしまったという精神的苦痛に対する後遺症慰謝料を請求することができるようになります。
ただし、外貌醜状障害の場合にはそれぞれについて大きな注意点があります。順番に見ていきましょう。
逸失利益
先ほどみたように、逸失利益とは将来にわたって働きにくくなる損害のことです。
例えば交通事故被害に遭い、腕が全く動かなくなってしまったというような場合には、働きにくくなっていること(=後遺障害が残ったことにより労働能力を喪失したこと)は一目瞭然です。
では、顔に傷が残ってしまったことで将来にわたって働きにくくなるということは一目瞭然でしょうか?
おそらくそうではありません。たとえ顔に傷が残っていてもパソコンで文字を打つことは難なく出来るでしょうし、通勤に支障が出るという事もないでしょう。
ということは、顔に傷が残ったことを理由に逸失利益を請求することは出来ないのでしょうか?最悪の場合はあり得ます。
大阪地方裁判所平成11年8月31日判決(自保ジャーナル1335号3頁)では、
後遺障害等級第7級に該当する醜状が顔面に残ってしまった22歳ホテル勤務の女性について、減収がないことを理由に逸失利益が否定されました。
大阪地方裁判所平成27年7月17日判決(自保ジャーナル1956号60頁)では、
後遺障害等級第9級16号に該当する醜状が顔面に残ってしまった37歳会社員の男性について逸失利益が否定されました。
このように、残念ながら顔に傷が残ったことによって将来にわたって働きにくくなるということは裁判であっても認められない場合があります。
裁判であっても認められない場合があるわけですから、示談交渉時点ではなおさらです。
しかし、本当に顔に傷が残ったことで働きにくくなったり、不利益が生じたりすることがないのでしょうか?そんなわけがありません。
モデルをはじめとするような容姿が仕事の内容に直結しているような職業の方はもちろん、
残った傷がコンプレックスとなり、人と話すことが辛く感じ、営業成績が低下したりするようなこともあるはずです。
にもかかわらず逸失利益が全く認定されないということになってはいけません。
そこで、裁判例によっては被害者一人ひとりの個別具体的な事情に着目し、逸失利益を認定している場合があります。
比較的認定されやすいと思われるのは以下の条件に該当する場合です。
顔が前面に出る職業に従事している(する予定がある)こと
モデルや俳優、接客業等の、人に顔を見られることが多くなる職業に従事している場合には、
顔に傷が残ってしまったことにより、対人関係に消極的になることも含めて収入減が生じる可能性が高いですから、逸失利益が認定されやすい傾向にあります。
裁判時点で現に収入減が生じてしまっているケースではとりわけ認定されやすいです。
名古屋地方裁判所平成26年5月28日判決(自保ジャーナル1926号144頁)では、交通事故被害に遭い後遺障害等級第9級に該当する醜状が顔面に残存し、
以前に従事していた空港ラウンジ業務から配置換えされ、退職を余儀なくされた女性について逸失利益を認定しています。
被害者が今後職業選択を行う立場にあること
被害者が未成年の学生であるというような場合、もちろん日常生活の対人関係において、消極的になり、不利益が生じるということも考えられます。
それが職業選択の場面になるとなおさらです。対人関係が苦手になってしまったことで面接の場で自分をアピールすることができなくなり、
希望していた企業から内定がもらえなかった、ということも十分にありますし、そもそも人前に立つ仕事がしたかったのに顔に消えない傷が残り、
コンプレックスを抱えたせいでその夢をあきらめざるを得なかった、という事もあり得ます。
職業選択の場で生じる不利益は、今後の被害者の方の仕事人生すべてに影響を与えうるものです。
ですから、被害者が今後職業選択を行う立場にある場合には逸失利益が認定されやすい傾向にあります。
名古屋地方裁判所平成24年11月27日判決(自保ジャーナル1890号38頁)では、
交通事故被害に遭い顔面に後遺障害等級第12級に該当する線状痕・陥没痕が残存した当時12歳の小学生の女の子について、
「今後の進路ないし職業の選択・就業等において不利益な扱いを受ける蓋然性は否定できず、醜状痕を気にして消極的になる可能性も考慮し」、逸失利益が認定されています。
東京地方裁判所平成13年8月22日判決(交通事故民事裁判例集34巻4号1047頁)では、
交通事故被害に遭い顔面に後遺障害等級第12級に該当する醜状が残存した当時19歳の予備校生であった男性について、
「男性といえども醜状痕によって希望する仕事への就職が制限されたり、就職しても営業成績が上がらなかったり、仕事の能率や意欲を低下させて所得に影響を与えることは十分に考えられる」として、逸失利益が認定されています。
被害者が(未婚の)女性であること
これは、平成22年6月9日までに発生した交通事故に関する裁判で比較的多く見られた傾向です。
なぜ平成22年6月9日までに限定されているかというと、
それ以前には、男性と女性で、同じ程度の傷が残っていても、認定される後遺障害等級が違った(女性の方がより上位だった)からだと思われます。
その後後遺障害等級表が改訂され、少なくとも後遺障害等級の認定上では男女差がなくなったことで、
被害者が(未婚の)女性であることを理由に逸失利益を認定する傾向は薄まっていると思われます。
ただし、昨今の情勢の変化で、外見による差別をしてはいけないことや男女差別をしてはいけないことが周知されているとはいえ、
まだまだ差別が是正されていないのが現状ですから、現実的には被害者が女性であることは一考慮要素にはなると思われます。
大阪地方裁判所平成21年1月30日判決では、被害者が女性であったことを大きな理由として、逸失利益を認めています。
これらのような条件に該当する場合には、顔に傷が残ったという後遺症であっても逸失利益が認定されやすい傾向にあります。
しかし、もちろん認定されないという場合もありますし、認定されたとしても、他の後遺症が残存した場合と比較すると低めの認定に抑えられることも多いです。
それはやはり、顔に傷が残ったということを理由に将来得られるはずだった収入が減少する可能性が高いということを立証することが難しいのが原因です。
逸失利益は被害者に控えめな算定をすることになっていますから、なかなか認められにくいのが現状です。
では、顔に傷が残ってしまったことは損害として全く評価してもらえないのかというとそうではありません。
裁判例の多くは次にご説明する後遺症慰謝料での調整を図っています。
(逸失利益についてのより詳しい解説はこちらのページをご覧ください。。)
後遺症慰謝料
後遺症慰謝料は交通事故被害により将来にわたって残存するような障害が残ってしまった場合にその精神的苦痛に対して支払われるものです。
顔に消えない傷が残ってしまい、対人関係が苦痛になったといったことは、まさに後遺症による精神的苦痛です。
後遺症慰謝料の額は、基本的に認定された後遺障害等級に応じて決定され、そこから被害者の方に特有の事情等を考慮して調整されるという運用が多いです。
醜状障害の場合、この調整が他の後遺障害と比較して圧倒的に多いです。
仙台地方裁判所平成7年2月6日判決(自保ジャーナル1098号2頁)では、
交通事故被害で後遺障害等級第7級に該当する醜状が顔に残ってしまった30歳の専業主婦について、
「家事能力が後遺症によって現実に低下したとは認められないとして逸失利益を否定」したものの、
基本的には1000万円とされている7級の後遺症慰謝料を1200万円としました。
大阪地方裁判所平成27年7月17日判決(自保ジャーナル1956号60頁では、
交通事故被害で後遺障害等級第9級に該当する醜状が顔に残ってしまった37歳の男性会社員について、
「逸失利益を認めないことを考慮」して、基本的に690万円とされている9級の後遺症慰謝料を900万円としました。
この他にも、顔に傷が残ってしまったというような場合、逸失利益を認定しない代わりに後遺症慰謝料を増額して対応するという判例は数多く存在します。
明確な基準がなく、個別事案に対する裁判所の判断に委ねられているところが大きいため、
弁護士に依頼するかどうか、依頼した弁護士が関連する判例を熟知した主張をできる弁護士かどうかで大きく左右される場合もあります。
ですから、一度後遺症被害を専門にしている弁護士にご相談されることをおすすめします。
美容整形費用について
ところで、顔に残ってしまった傷跡を隠したいということで、いわゆる美容整形をご検討の方もいらっしゃると思います。
この美容整形の費用は請求できるのでしょうか?
請求自体はできると思われます。ただし、美容整形は保険適用外ですから、費用が高額になることも十分にあり得ます。
治療費として認定されるのは、必要かつ相当な実費のみですから、
美容整形をその金額で受けなければならなかったという立証ができなければ認定はされないでしょうし、まず示談交渉では相手方保険会社は認めてくれないでしょう。
また、これは良い面も悪い面もありますが、美容整形によって傷跡を隠すことができたというときには、
当然逸失利益や後遺症慰謝料は認められなくなります。
ここは被害者ご本人のお気持ちが一番重要なところではありますが、美容整形をするかを決める上で一度弁護士に相談し、アドバイスをもらっても良いかと思います。
なお、美容整形やレーザー治療等による症状の改善が見込まれる場合であっても、そういった手術や治療にはリスクもありますから、
それを受けないことを理由に後遺症の認定をしないということはありません(大阪地方裁判所平成8年12月12日判決 交通事故民事裁判例集29巻6号1787頁)。
弁護士法人小杉事務所の後遺障害等級認定サポート
ここまで見てきたように、顔に傷が残ってしまったという場合には、裁判例や後遺障害等級認定実務を熟知していることはもちろんですが、
被害者の方一人ひとりに特有のご事情を適切に主張・立証していくことで大きく賠償額を上げられる可能性があります。
だからこそ、弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者専門弁護士として以下の点をはじめ、交通事故発生から解決まで丁寧にサポートさせて頂きます。
治療方法アドバイス
顔に傷が残ってしまった場合の治療は、いつまで治療すべきか?傷を隠すために美容整形をした方が良いのか?など被害者の方がどこまで損害賠償請求をしたいか、
どこまで顔の傷を隠したいかといったお気持ちによって大きく変わるところがあります。
被害者の方一人ひとりのお気持ちをお伺いし、ご相談の上最も適切なアドバイスができるよう心がけております。
後遺障害診断書の作成から訂正まで
後遺障害診断書の記載は、後遺障害等級の認定において最も重要だと言っても過言ではありません。
医学的書類である以上、医師のご意見が基本的には尊重されるべきですが、
「醜状の大きさは顔の立体に沿って測定しなければいけない」とか「隣接する醜状痕の間隔も等級認定に影響する」といったような、
後遺障害等級認定実務を熟知している弁護士だからこそ知っていることもあります。
適切な後遺障害等級認定の第一歩は、適切な後遺障害診断書を作成していただくことですから、
医師に測定箇所や測定方法についてのお願いをしたり、場合によっては医師と面談の上後遺障害診断書を訂正していただいたりすることで、
適切な後遺障害診断書を作成していただけるよう努めます。
後遺障害等級認定の自賠責面談に同行&意見書の添付
顔の傷に対する後遺障害等級の認定は、「人目に付く程度の以上のもの」であることが必須の要件となっていました。
そこで、自賠責損害調査事務所の調査員は、醜状障害の後遺障害等級の認定にあたり、
被害者と直接面談し、実際に「人目に付く程度の以上のもの」かどうかを確認したり、大きさの測定をしたりします。
その面談は後遺障害診断書と同じくらい等級の認定に直結しますから、弁護士法人小杉法律事務所では弁護士がその面談に同行します。
被害者の方と調査員との間に入り、測定方法や見え方について意見を言い、
場合によっては弁護士名義の意見書や医学的意見書を添付したりして、適切な後遺障害等級が認定されるよう努めます。
弁護士法人小杉法律事務所の弁護士が面談に同行したことにより、後遺障害等級第12級と言われかねない顔の醜状痕について、第9級が認定された事例
まとめ
ここまででお伝えしてきたように、顔に残ってしまった傷は、適切な後遺障害等級が認定されたからといって適切な損害賠償金を受け取れるとは限りません。
適切な損害賠償金を受け取るためには、損害賠償請求を熟知し、かつ被害者の方一人ひとりのご事情を汲み取りそれを主張できる後遺症被害者専門弁護士の力が不可欠と言えます。
交通事故の被害に遭い、顔に残ってしまった傷についてお困りの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所の後遺症被害者専門弁護士の無料法律相談をお受けください。
弁護士法人小杉法律事務所の後遺症被害者専門弁護士へのお問い合わせはこちらのページから。
関連:顔以外の傷は後遺障害として認められる?
ちなみに、顔以外の場所(頭部・首・上肢・下肢・胸及び腹・背中及び尻)に残ってしまった傷はどういった扱いがされているかというと、
「外貌」に含まれる頭部・首(頚部)について認定される等級自体は、
- 第7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
- 第9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
- 第12級14号 外貌に醜状を残すもの
の3つで変わりませんが、それぞれの等級が認定されるために必要とされる程度(大きさ)が異なります。
また、外貌に含まれない上肢・下肢・胸及び腹・背中及び尻については、認定される等級自体が異なります。
各部位について順番に見ていきましょう。
① 頭部(顔面部を除く)
頭部とは、通常髪の毛の生えている部分をいうとされています。
頭部において「著しい醜状を残すもの」として評価されるのは、
原則として被害者本人のてのひら(指の部分を除く)大以上の瘢痕又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損とされています。
頭部において単なる「醜状を残すもの」として評価されるのは、
原則として鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損とされています。
頭部の陥没について後遺障害診断書の訂正をしていただき、自賠責損害調査事務所担当者との面談にも同行したことで、後遺障害等級第7級を獲得した事例
② 首(頚部)
首(頚部)において「著しい醜状を残すもの」として評価されるのは、
原則として被害者本人のてのひら(指の部分を除く)大以上の瘢痕で、人目に付く程度以上のものとされています。
首(頚部)において単なる「醜状を残すもの」として評価されるのは、
原則として鶏卵大面以上の瘢痕で、人目に付く程度以上のものとされています。
③ 上肢(肩・腕・手)の醜状障害
上肢(肩・腕・手)について認定される可能性があるのは、
- 第14級4号「上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」
です。
ちなみに自賠責の後遺障害等級判断における「上肢の露出面」とは、肩関節以下(手部を含む)をいいます。
なお、上肢にてのひらの大きさの3倍程度以上の瘢痕を残した場合には、後遺障害等級第12級相当という認定がされます。
④ 下肢(腿・脚・足)の醜状障害
下肢(腿・脚・足)について認定される可能性があるのは、
- 第14級5号「下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」
です。
ちなみに自賠責の後遺障害等級判断における「下肢の露出面」とは、股関節以下(足背部を含む)をいいます。
なお、下肢にてのひらの大きさの3倍程度以上の瘢痕を残した場合には、後遺障害等級第12級相当という認定がされます。
⑤ 胸及び腹の醜状障害
胸及び腹や、⑥背中及び尻は、基本的に日常露出しない部分になりますから、
それだけ等級の認定において要求される醜状の程度も大きく、後遺障害等級認定表に定めがありません。
そこで、相当する等級が認定されることになります。
胸及び腹について相当する等級として認定される可能性があるのは、
- 後遺障害等級第12級相当「胸部及び腹部の全面積の1/2程度以上の範囲に瘢痕を残すもの」
- 後遺障害等級第14級相当「胸部及び腹部の全面積の1/4程度以上の範囲に瘢痕を残すもの」
の2つになります。
⑥ 背中及び尻の醜状障害
背中及び尻について相当する等級として認定される可能性があるのは、
- 後遺障害等級第12級相当「背部及び臀部の全面積の1/2程度以上の範囲に瘢痕を残すもの」
- 後遺障害等級第14級相当「背部及び臀部の全面積の1/4程度以上の範囲に瘢痕を残すもの」
の2つになります。