後遺障害等級の解説

脳損傷 神経症状

びまん性軸索損傷の症状(弁護士法人小杉法律事務所監修)

こちらの記事では、びまん性軸索損傷後に生じる症状について整理しています。

びまん性軸索損傷とは

(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、266~267頁、276頁)

びまん性軸索損傷とは、脳損傷の一形態です。

頭部に外力が加わったとき、衝撃の結果による加速と減速により脳の移動、回転、変形がおこり、脳にズレ外力が加わり、神経線維が断裂(軸索損傷)して脳の広範な領域に損傷が及びます。

原因としては交通事故が圧倒的に多いと言われています。

受傷時に頭部CTを撮影しても目立った病変が認められませんが、MRI画像のうち、FLAIR画像、T2強調画像、 T2*(T2スター)強調画像で脳幹、脳梁、大脳皮質などの部位に異常所見をとらえることができます。

受傷後より強い意識障害が持続し、高次脳機能障害をきたしやすいと言われます。

意識障害の時間が長いほど予後は不良になります。

なお、「びまん性」という用語は「広範な領域」の脳損傷というニュアンスですが、他方で局所性脳損傷(脳挫傷)という損傷形態もあります。

局所性脳損傷(脳挫傷)とびまん性軸索損傷の区別などはこちらの記事でご確認ください。

「加速」「減速」による衝撃の具体例は脳挫傷についてまとめたこちらの記事でご確認ください。

びまん性軸索損傷で生じる可能性の高い高次機能障害についてはこちらの記事でご確認ください。

びまん性軸索損傷による症状について

(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、128頁)

急性期・亜急性期には意識障害が主で、せん妄を呈することが多いです。

せん妄は、軽度ないし中程度の意識障害に伴い突然発症し、主に、集中・持続障害などの注意障害、見当識障害、錯覚、幻覚、思考力の欠如、記憶力減退などの認知機能障害、感情障害および睡眠覚醒リズムの障害(昼夜逆転、夜間は不眠で日中は傾眠)などの症状が発生します。

重症になると不穏・興奮状態となり、認識機能が障害されて思考や判断が的確に行われなくなります。

意識回復の過程でこれらの精神症状が発生し、可逆性の場合は通過症候群と呼ばれることがあります。

通常、意識回復しても回復過程の間の記憶はありません。

慢性期には認知障害、情動障害および人格障害が持続し、種々の程度の認知症状態になります。

びまん性軸索損傷の急性期・亜急性期に生じる「意識障害」全般については、JCSやGCSといった評価方法含め、遷延性意識障害の記事内で解説しております。

認定されうる後遺障害等級

自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害を整理しました。

上記のような症状が残存した場合、高次脳機能障害による精神障害として1,2,3,5,7,9級での認定可能性があります。

他方、びまん性軸索損傷受傷後に遷延性意識障害になってしまった場合は1級の認定可能性があります。

びまん性軸索損傷で認定されうる後遺障害等級や必要な検査等はこちらの記事でご確認ください。

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交通事故等で頭部に外傷が加わり、びまん性軸索損傷を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うためには、受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。

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びまん性軸索損傷の急性期・亜急性期に生じる「意識障害」全般については、遷延性意識障害の記事内で解説しております。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。