後遺障害等級の解説

骨折 圧迫骨折・体幹骨骨折

腰椎圧迫骨折の後遺症と11級|後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、腰椎圧迫骨折の後遺症と、自賠責後遺症等級第11級について解説いたします。

腰椎圧迫骨折とはどのような傷病?

⑴腰椎とは

脊椎は、体幹骨の一つであり、中枢神経である脊髄を保護する役割とともに、体幹支持機能を併せ持っています。脊椎は、頭部に近いほうから頚椎胸椎腰椎(及び仙骨・尾骨)と分類されており、腰椎とは文字どおり腰の部分に位置する脊椎を指します。また、脊椎は24個の椎骨によって構成されており、頚椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個となります(下図参照)。

椎骨はそれぞれ番号が振られています。たとえば5個の腰椎については、頭部に近いほうから順に、第1腰椎、第2腰椎、…、第5腰椎とされており、L1~L5と表現されることもあります。このほか頚椎については第1頚椎~第7頚椎(C1~C7)、胸椎については第1胸椎~第12胸椎(Th1~Th12)と呼ばれます。

⑵腰椎圧迫骨折とは

腰椎圧迫骨折とは、腰椎が外部からの衝撃等により潰れるように骨折したものを指します。本稿のトップに載せている画像を見ていただけるとイメージしやすいでしょう。腰椎は人体の下方に位置しており、上半身の荷重が集中しやすいことから、外力によって圧迫骨折が発生しやすい部位です。また、骨粗鬆症がある場合には、軽微な外力でも起こることがあります。

腰椎圧迫骨折が発生すると、腰椎が潰れるように変形し、これによる神経圧迫を原因として、腰痛や下肢のしびれ、麻痺、痛みなどの症状を引き起こします。また、腰椎の椎体の圧潰によって脊椎全体が後彎的に変形し、姿勢や動作にも影響を与えることがあります。こうした症状により、寝返りや起き上がりといった日常生活動作にも支障を及ぼすこととなります。

⑶腰椎圧迫骨折の診断

腰椎圧迫骨折の主な診断は、XPやCTの画像所見と患者の受傷経緯や症状の確認によって行われます。XPやCTを用いることで、腰椎の骨の状態を詳細に確認することができます。また場合によってはMRIが撮影されることもあり、これによって腰椎圧迫骨折が周辺の軟部組織や神経に影響を及ぼしていないか等を確認することができます。

腰椎圧迫骨折の後遺症

腰椎圧迫骨折を受傷すると、前述のとおり、痛みやしびれ、麻痺といった神経症状のほか、腰部の可動域制限が現れることがあります。そして、治療の結果、これらの症状が後遺症として残存してしまった場合、自賠責保険に後遺障害等級の認定の申請を行うことができます。腰椎圧迫骨折の後遺症で認定される可能性がある後遺障害は、脊柱変形障害、脊柱運動障害、荷重機能障害、神経症状となります。本稿のタイトルにもある11級とは、脊柱変形障害の等級の一つです。以下、認定基準と合わせて詳しく見ていきましょう。

⑴脊柱変形障害

腰椎圧迫骨折では、骨が押し潰されることで脊柱の配列が崩れ、脊柱の変形障害を残す可能性があります。この変形は、側面から見た際に背中が湾曲する「後彎」や、正面から見た際に体幹が左右に湾曲する「側彎」として現れることが多いです。このような変形が進行すると、体のバランスが取りにくくなり、姿勢の悪化や周囲の筋肉への負担を引き起こし、腰椎の体幹支持機能に支障をきたすこととなります。

脊柱の変形障害について、自賠責の後遺障害等級では3つの等級が定められています。なお等級判断にあたっては、XPやCT画像又はMRI画像により腰椎圧迫骨折が確認できることを前提としたうえで、脊柱の後彎又は側彎の程度について評価がなされることとなります。

①別表第二第6級5号 著しい脊柱変形障害

脊柱に著しい変形を残すもの」に該当すると認められた場合には、第6級5号が認定されます。

具体的な認定基準は次のとおりです。なお、自賠責から支払われる保険金は1296万円です。

a 脊椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。

b 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。

②別表第二第8級相当 中程度の脊柱変形障害

脊柱に中程度の変形を残すもの」に該当すると認められた場合には、相当等級として第8級相当が認定されます。

具体的な認定基準は次のとおりです。なお、自賠責から支払われる保険金は819万円です。

a 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じているもの。

b コブ法による側彎度が50度以上であるもの。

c 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、60度以上の回線位となっているもの。

d 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、50度以上の屈曲位又は60度以上の進展位となっているもの。

e 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、側屈位になっており、XP写真等により矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの。

③別表第二第11級7号 単なる脊柱変形障害

脊柱に変形を残すもの」に該当すると認められた場合には、第11級7号が認定されます。

具体的な認定基準は次のとおりです。なお、自賠責から支払われる保険金は331万円です。

a 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがXP写真等により確認できるもの。

b 脊椎固定術が行われたもの。

c 3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの。

ご覧いただいて分かるように、第11級7号は、腰椎圧迫骨折はあるものの後彎や側彎の残存がない場合に認定される等級となります。

⑵腰部の脊柱運動障害

腰椎圧迫骨折の後遺症としてしばしば見られるのが、運動障害です。腰椎圧迫骨折により、腰部の可動域制限が残存した場合に認定されます。

①第6級5号 著しい脊柱運動障害

次のa~cのいずれかにより、頚部及び胸腰部が強直して可動域制限が残存した場合、「脊柱に著しい運動障害を残すもの」として第6級5号が認定されます。

なお、「強直」とは「関節の完全強直又はこれに近い状態にあるもの」をいい、「これに近い状態」とは、参考可動域角度の10%程度以下に制限されていることを意味します。

a 頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、そのことがX線写真等により確認できるもの

b 頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの

c 項背腰部軟部組織に明らかな気質的変化が認められるもの

注意点として、この等級は、腰椎圧迫骨折のみでは認定されることは殆どありません。なぜならば、「頚部及び胸腰部が強直」とあるように、頚部と胸腰部の両方に可動域制限が残存していることが要件となっているためです。たとえば、交通事故によって第5頚椎骨折と第1腰椎骨折を負い、頚部と腰部に可動域制限が残存したといったケースであれば認定される可能性があります。

②第8級2号 単なる脊柱運動障害

次のa~cのいずれかにより、腰部の可動域角度が参考可動域角度の2分の1以下に制限された場合、「脊柱に運動障害を残すもの」として第8級2号が認定されます。

a 胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの

b 胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの

c 項背腰部軟部組織に明らかな気質的変化が認められるもの

第8級2号は、第6級5号とは異なり、腰椎圧迫骨折のみでも認定される可能性があります。また、等級判断にあたっては、変形障害と同様にXPやCT画像又はMRI画像により腰椎圧迫骨折等が確認できることが前提となっています。そのため、疼痛が原因となって生じている運動障害(痛みがするので動かせないようなもの)については、脊柱運動障害としては認定されず、局部の神経症状として別途評価がなされます

⑶荷重機能障害

荷重機能障害もまた、腰椎圧迫骨折の後遺症としてみられることがあります。前述のとおり、腰椎は腰に位置する骨であり、上半身の荷重や体幹を支える役割も担っている重要な骨です。この部位の骨折によって、脊柱全体の動きに制限が生じることがあります。その結果、背骨にかかる荷重をうまく分散できなくなり、脊柱の体幹支持機能の低下が生じたり、立位や歩行時に痛みを伴うことが増える点も挙げられます。

自賠責の別表第二には荷重機能障害の等級が定められていないため、相当等級として認定されることとなります。詳しくは次の①~②のとおりです。

①別表第二第6級相当

荷重機能障害の原因が明らかに認められる場合であって、頚部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具の着用を要するものである場合に認定されます。要件上、腰部だけでなく頚部の保持の困難も要求されるため、腰椎圧迫骨折のみを受傷した場合に認定される可能性はまずないと考えられます。

②別表第二第8級相当

荷重機能障害の原因が明らかに認められる場合であって、頚部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具の着用を要するものである場合に認定されます。こちらは、腰椎圧迫骨折による腰部の保持困難があり、常時硬性補装具の着用が必要である旨を立証できれば、認定される可能性があります。

⑷腰痛や神経症状などの神経への影響

腰椎圧迫骨折では、腰痛などの慢性的な痛みが後遺症として残ることがあります。特に骨折による脊柱の変形が神経を圧迫する場合、圧迫された神経の支配領域に痛みやしびれなどの神経症状が発症する可能性もあります。症状としては、これらの神経障害は、腰椎圧迫骨折の重大な後遺症であり、後遺障害等級第12級13号または第14級9号として認定されるケースが見られます。

おわりに

本稿では、腰椎圧迫骨折の後遺症や、自賠責の後遺障害等級について解説いたしました。

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。