圧迫骨折・体幹骨骨折 神経症状
【腰椎圧迫骨折】骨折専門医による詳細解説|後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

診断書の「腰椎圧迫骨折」は、腰の背骨(腰椎)の一つが、上下から押しつぶされるように折れる骨折です。
多くはコルセットで治し、骨折が不安定なときは手術を考え、神経が傷ついて足の麻痺や排尿・排便の障害が出たときは手術が必要です。
つぶれた骨は元の高さには戻らないので、残りやすい腰痛や腰の硬さと、いまから残しておく記録まで順に見ていきましょう。
このページは、整形外科専門医・医学博士の江川誠一郎先生による
- 腰椎圧迫骨折とは?
- 腰椎圧迫骨折はどのような事故で起こり直後に何が起きるのか?
- 手術はどう決まりいつから立てるのか?
- どんな後遺症が残るのか?
等についての解説を踏まえながら、
交通事故で腰椎を圧迫骨折した場合に、
- 今からどのような証拠を残しておくべきか?
- 腰椎圧迫骨折の後遺障害等級は?
等について、交通事故後遺症被害専門弁護士が解説します。
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腰椎圧迫骨折の治療のポイント(この記事で分かること)
- 多くはコルセットで治す: 硬いコルセットで支え、できあがったら痛みに応じて歩く。骨は4週ほどでひとまずくっつき、3か月ほどでしっかりつく。コルセットも3か月ほどが目安
- 手術は、不安定な骨折や神経の障害があるとき: 不安定な破裂骨折や靱帯の損傷では手術を考える。神経が傷ついて足の麻痺や排尿・排便の障害(膀胱直腸障害)が出たら、手術が必要。骨粗鬆症の骨折で痛みが強いときは、骨セメントで固める治療(BKP)もある
- 後遺症で問題になりやすいこと: つぶれた骨は元の高さに戻らない。残りやすいのは腰痛と腰の硬さで、重い物を持つ・長く座る・前かがみがつらくなる
- 「事故の前からの骨折では」にはMRIで答える: MRIで、新しい骨折か古い骨折かが分かる。できれば受傷から2週以内に。X線で「骨折なし」でも痛みが続けば、早めに相談する
- 残しておく記録: 側面のX線で測る骨の前と後ろの高さ(受傷時・数か月後・症状固定前)、腰の前屈・後屈の角度、生活の困りごと。後半の変形障害・運動障害の解説につながる
腰椎圧迫骨折とは?腰の背骨が、上下からつぶれる骨折
腰椎圧迫骨折は、腰の背骨(腰椎)の一つが、上下からの力で押しつぶされる骨折です。
多くは骨の前側がつぶれ、くさびのような形になります。骨粗鬆症による背骨の骨折は大腿骨の付け根・手首と並ぶ高齢者の三大骨折の一つで、交通事故では働く世代にも起こります。
腰椎はどこ?体重を受け止める5つの骨
腰椎は、背骨のうち腰の部分にある5つの骨で、上から第1腰椎(L1)〜第5腰椎(L5)と呼びます。
上半身の重さを受け止める柱で、体を前に曲げる・後ろに反らす動きも担います。
背骨の一つ一つのつくり
背骨の一つ一つ(椎骨・ついこつ)は、前側の円柱の部分(椎体・ついたい)と、後ろ側の輪の部分(椎弓・ついきゅう)でできています。
体重を受け止めるのは椎体で、圧迫骨折はこの椎体が上下からつぶれる骨折です。椎弓は、神経の通り道(脊柱管・せきちゅうかん)を囲んで守っています。
胸と腰の境目に多い
胸の背骨(胸椎)は肋骨のかごに支えられ、動きが小さく安定しています。
肋骨のかごが終わる胸と腰の境目(胸腰椎移行部・きょうようついいこうぶ)は、背骨のカーブが切り替わる場所です。
医学書や文献によると、ここには力が集まりやすく、骨折が起こりやすいとされます。
腰椎では、この境目に近い第1・第2腰椎が骨折しやすい場所です。
神経の通り道
脊髄(せきずい)は、成人ではおおむね第1〜第2腰椎の高さで終わります(個人差があります)。
それより下の脊柱管には、脚や膀胱・腸へ向かう神経の束(馬尾・ばび)が通ります。
第1腰椎の高さは、多くの人で脊髄の終わりと馬尾の境目にあたります。腰椎の骨折で脚のしびれや排尿の異常が出るのは、これらの神経が圧迫されたときです。
よくあるすれ違い
「L1」の記号は、骨の番号のほかに、神経の番号を指すこともあります。診断書の「L1」がどちらの意味かは、文脈で読み分けます。
明日からできること
診断書や説明書きで、何番目の腰椎か(L1、L2など)と、折れたのが1か所か複数かを確かめて書き写しておきましょう。
監修医から一言腰の背骨は、上半身の重さを受け止める柱です。
この3つを記録に残すことを、腰椎圧迫骨折ではいちばん大事にしています。 |
圧迫骨折と破裂骨折はどう違う?-診断書で、骨折の場所と型を確かめる
背骨の体重を支える円柱の部分(椎体・ついたい)が、後ろの壁(後壁・こうへき)は無事なままつぶれたものが圧迫骨折です。
後ろの壁まで壊れたものは破裂骨折で、骨のかけらが神経の通り道へ飛び出すことがあります。
この記事は太字の2行(腰椎と、胸と腰の境目)を扱います。第1腰椎の骨折は、境目の行にあたります。
| 何が折れているか | 多い受傷 | 治療 | 後遺症 |
|---|---|---|---|
| 胸椎(上〜中部・別記事) | 転落・投げ出し | 多くは装具 | 背中の痛み・丸み |
| 胸と腰の境目 | 事故・転落・尻もち | 多くは装具 | つぶれの進行・丸み |
| 腰椎圧迫骨折 | 事故・飛び降り・尻もち | 多くは装具 | 腰痛・前かがみ |
| 破裂骨折 | 飛び降り・事故 | 不安定なら手術 | 背中の丸み・しびれ |
| 骨粗鬆症の骨折 | 尻もち・軽い転倒 | 多くは装具・BKP | 背中の丸み・次の骨折 |
読者が見分けたい3つの点
腰の背骨の骨折は、次の3つで見分けると分かりやすくなります。
- 後ろの壁が無事か、壊れているか(圧迫骨折か破裂骨折か)
- 何番目の骨で、何か所折れているか
- 脚のしびれや力の入りにくさ、尿や便の異常があるか
診断書の記号
AO分類では、後ろの壁が無事な骨折をA1・A2、後ろの壁にかかる骨折をA3・A4と書きます。
背骨が上下に引き裂かれる型はB、ずれた・外れた型はCで、A、B、Cの順に重くなります。
背骨を前・真ん中・後ろの3つの柱に分ける考え方(three-column theory)でも、前の柱だけの損傷を圧迫骨折と呼びます。
第1・第2腰椎の骨折
第1・第2腰椎は、胸と腰の境目(胸腰椎移行部)に含まれます。第2腰椎の骨折(診断書では「第2腰椎圧迫骨折」)も、同じ境目の骨折です。
よくあるすれ違い
つぶれた量が多いから破裂骨折、少ないから圧迫骨折、というわけではありません。型を分けるのは、後ろの壁が壊れているかどうかです。
明日からできること
主治医に「後ろの壁は無事ですか」「神経の通り道に骨のかけらは出ていませんか」と確かめ、答えを書き留めておきましょう。
CTを撮った場合は、その結果もあわせて控えます。
胸の背骨の骨折と、胸と腰の境目の骨折は胸椎圧迫骨折の記事でも解説しています。背骨の圧迫骨折の全体は圧迫骨折の記事をご覧ください。
骨粗鬆症の骨折とどう違う?-事故の強い力と、もろい骨
骨がもろくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)では、尻もちや、立った高さから転ぶ程度の軽い力でも背骨が折れます。
高齢の方の腰椎の骨折はほとんどが尻もちで起こり、若い方では交通事故や高い所からの飛び降りが多くなります。
年齢が高い方では、事故の前から気づかない骨折があることもあり、事故との関係が問われる場面があります。
骨粗鬆症の骨折
立った姿勢からの転倒か、それより軽い力で起こる骨折を、脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)と呼びます。
背骨の脆弱性骨折は、骨粗鬆症の代表的な骨折です。
文献では、骨粗鬆症による背骨の骨折の3分の2は、はっきりした症状が無いと報告されています。本人が気づかないまま、骨折が残っていることがあるのです。
交通事故の骨折
交通事故や転落の強い力では、骨がもろくない働く世代でも背骨が折れます。
力が強いほど、後ろの壁まで壊れる破裂骨折や、神経のけがを伴うことがあります。
よくあるすれ違い
年齢が高い方では「元からあった骨折ではないか」「骨がもろかったからではないか」と言われることがあります
新しい骨折かどうかは、MRIで分かります(後半の「意見書を書いてきた医師から、5つのこと」でくわしく説明します)。
明日からできること
事故の前に背骨や胸のX線を撮ったことがあれば(健診の胸部X線を含む)、いつ・どこで撮ったかを書き出しておきましょう。
年齢が高い方は、骨密度を測っておくことも主治医に相談してください。
腰椎圧迫骨折はどんな事故で起こり、直後に何が起きる?-尻もち・転落・衝突の力

腰椎圧迫骨折は、バイクから投げ出されての尻もち・飛び降り・衝突といった強い力で起こります。
直後から腰が強く痛み、起き上がるのがつらくなります。足のしびれや力の入りにくさ、尿や便の異常があれば、神経のけがを疑って急いで調べます。
どんな事故で腰椎を骨折する?尻もち・飛び降り・前に折れる衝突
交通事故では、背骨を上下から押しつぶす力と、体を前に強く曲げる力が典型です。
同じ事故でも、姿勢や骨の強さで骨折の型は変わるため、画像で確かめます。
| 事故の場面 | かかる力 | 骨折の型 |
|---|---|---|
| バイク・自転車で転び、尻もちをつく | 上下から押しつぶす力 | 前がつぶれる圧迫骨折 |
| 高い所から飛び降り、足から落ちる | かかとから背骨へ伝わる力 | 破裂骨折(かかとの骨折も) |
| 車の衝突で、体が前に強く折れ曲がる | 前に曲げて引き裂く力 | 引き裂かれる型(より不安定) |
なぜ前側がつぶれるのか
尻もちのように上下から力がかかると、背骨は少し前に曲がった姿勢のまま押しつぶされます。
このため椎体の前側に力が集まり、前が低いくさび形につぶれます。力がさらに強いと、後ろの壁まで壊れて破裂骨折になります。
体が前に折れ曲がる事故
車の衝突で体が前に強く折れ曲がると、背骨が後ろ側から上下に引き裂かれるように折れることがあります。
シートベルト型損傷とも呼ばれ、圧迫骨折とは別の、より不安定な型で、手術を検討することが多い骨折です。
名前にベルトとありますが、シートベルトは命を守るための大切な備えです。お腹の中のけがが重なることもあるため、お腹の痛みも医師に伝えてください。
高い所から落ちる事故
飛び降りなどで足から落ちると、まずかかとの骨が折れます。
その力がそのまま背骨まで伝わり、胸と腰の境目の破裂骨折が起こることがあります。かかとの痛みが強いと、腰の痛みを言いそびれることがあります。
よくあるすれ違い
ほかのけがの痛みが強いと、腰の痛みを訴えないまま時間がたつことがあります。腰の骨折が後から見つかると、事故との関係を説明する材料が少なくなりがちです。
明日からできること 次のことを、覚えているうちにメモしておきます。
- どんな姿勢で、体のどこから落ちたか・何に打ったか
- 腰の痛みに気づいた日と、そのときの様子
- 車の中にいた場合は、座っていた席とシートベルトの有無
受傷直後はどんな症状?腰が痛い・起き上がれない
受傷の直後から、腰の強い痛みで、起き上がる・寝返りを打つのがつらくなります。
骨粗鬆症による骨折の研究では、痛みが背骨の真上だけでなく、脇腹やお尻の上に出ることもあるとされます。
主な症状は次のとおりです。
- 腰の強い痛み、起き上がる・体をひねると響く痛み
- 背中を軽くたたくと響く、押すと痛む
- 足のしびれ・足に力が入らない・尿や便が出にくい/漏れる・股の間のしびれは、ただちに救急へ(入院中ならすぐ医療スタッフへ)
- 急に強まる痛み・息苦しさ・足先の冷えや色の変化は、予約を待たずにただちに救急へ
なぜ動くと痛むのか
つぶれた椎体は、骨がつくまでの間、体を起こしたり、ひねったりするたびに少し動きます。
体を動かしたときに強まる痛みは、新しい背骨の骨折によく見られる特徴です。寝ていると楽でも、起き上がる瞬間に強く痛むことがあります。
急いで調べる症状
骨のかけらやつぶれた骨が、背骨の中の神経(脊髄の終わりや馬尾)を圧迫すると、脚のしびれ、力の入りにくさ、尿や便の異常が出ます。
尿が出にくい、漏れる、股の間がしびれるといった症状は、急いで手術が必要になることがあります。
よくあるすれ違い
「腰痛はよくあること」と考えて、痛みが続いても受診しない方がいます。
背中をたたいても響かないから骨折ではない、とも限りません。痛みが強い、動くたびに響く場合は、骨折を疑って整形外科を受診してください。
明日からできること
痛む場所と、どんな動きで痛むか(起き上がる・寝返り・前かがみ)をメモしておきます。脚のしびれがあれば、その範囲も書き留めます。
X線・CT・MRIで何を調べる?骨の形、後ろの壁、新しい骨折か
X線は、腰を正面と横(側面)から撮り、椎体の高さとつぶれ方を確かめます。後ろの壁や骨のかけらを詳しく見るときはCT、新しい骨折かどうかや神経への影響を見るときはMRIを撮ります。
X線で「骨折なし」と言われても痛みが続くときは、早めにMRIを相談してください。
医師が画像で見ているところ
次の4つです。
- ①椎体の前と後ろの高さ(側面のX線)
- ②後ろの壁が壊れていないか、骨のかけらが神経の通り道に出ていないか(CT)
- ③新しい骨折かどうか、神経が圧迫されていないか(MRI)
- ④ほかの背骨にも骨折がないか
X線だけでは分からないことがある
受傷の直後は、X線で骨折がはっきりしないことがあります。
骨粗鬆症による骨折の研究では、新しい骨折を見つける力は、X線よりMRIのほうがずっと高いと報告されています。
MRIは、できれば受傷から2週以内に撮っておきたい検査です。
つぶれは後から進むことがある
受傷のときには軽いつぶれでも、骨がつくまでの間に、つぶれが進むことがあります。
そのため、はじめは1〜2週ごと、その後は受傷から1か月・3か月の時点でX線を撮り直し、高さが変わっていないかを確かめます。
よくあるすれ違い
救急外来で「骨折はありません」と言われ、痛みが続いたまま湿布だけで過ごす方がいます。
後から骨折が分かると、受傷直後の画像が乏しく、事故との関係を説明しにくくなります。
明日からできること
受診先ごとに画像の写し(CD-Rなど)をもらい、受傷時のものから順に保管しておきましょう。
どう治療し、いつから動ける?-コルセットで支えるか、手術で固定するか
腰椎圧迫骨折の多くは、手術をせず、コルセットで背骨を支えて治します。
手術になるのは、骨折が不安定なときや、神経の障害があるときです。どちらでも、骨がしっかりつくまでの3か月ほどの間、つぶれが進まないかをX線で見守ります。
コルセットでどう治す?硬性コルセットと、できあがるまで
コルセットは、硬いプラスチックなどで作る硬性コルセットが、いちばんしっかり支えます。
コルセットができるまでの数日は安静寄りに過ごし、その後は痛みに応じて歩きます。痛みが強ければ1〜2週、長くて3週ほど入院します。
硬性と軟性
硬性コルセットは、背骨を曲げる動きを強く抑え、つぶれた骨を支えます。
ただ、着けたり外したりが大変で、体に当たって痛むこともあります。
そのため、高齢の方では、布やゴムでできた腰の軟性コルセットを使うことも多くあります。
どれを使うかは、骨折の場所と型、体格をみて主治医が決めます。着ける期間は3か月ほどが目安です。
コルセットができるまで
コルセットは体に合わせて採寸して作るため、できあがるまで数日かかります。
その間は、痛みに合わせてベッドの上で過ごすことが多くなります。長く寝たままでいると筋力が落ち、ほかの合併症も起きやすくなるため、コルセットができたら歩く練習を始めます。
着けている間の過ごし方
前かがみで物を拾う、重い物を持つ、体を強くひねるといった動きは、つぶれを進めるおそれがあります。
物を拾うときは腰を曲げず、膝を曲げてしゃがみます。コルセットを着けている間も、主治医や理学療法士の指示に沿って、体を動かす練習を続けます。
よくあるすれ違い
「きつい」「暑い」と、自己判断でコルセットを外してしまう方がいます。外してよい時期と場面は、X線の経過を見て主治医が決めます。
明日からできること
コルセットを作った日、着ける時間の指示、外してよいと言われた日を書き留めておきましょう。
安静期間はどれくらい?-ベッドの上は数日、腰を守る期間は3か月
ベッドの上で過ごす期間は、コルセットができるまでの数日が中心で、主治医の許可が出れば痛みに応じて歩き始めます。
骨は1ヶ月(4週)ほどでひとまずくっつきますが、前かがみ・ひねり・重い物を持つ動きは、しっかりつく3か月ほどまで避けます。
不安定な骨折や神経の症状があるときは進め方が変わるため、動いてよい範囲は主治医に確かめてください。
安静は2段階
腰を守る安静とは、腰を前に曲げる・強くひねる・重い物を持つ動きを避けることで、コルセットを外す3か月ごろまで続きます。
重い物を運ぶ仕事に戻るのは、さらに先の3〜6か月が目安です。入院の目安は前の節のとおりです。
骨折の型で変わる
後ろの壁が壊れた不安定な骨折や、神経の症状があるときは、手術を含めて治療の進め方が変わります。
安静の期間と動いてよい範囲は、X線やCTの所見をみて主治医が決めます。
よくあるすれ違い
「安静にしてください」を「寝ていること」と受け取り、何週間も寝て過ごしてしまう方がいます。
動かない期間が長いほど筋力が落ち、血栓などの合併症も起きやすくなるため、許可が出れば歩くことは早くから勧められます。
逆に、歩けるようになった後も、腰を守る動きの制限は続きます。
明日からできること
主治医に「歩いてよい範囲」と「避ける動きと、いつまで避けるか」を聞いて、聞いた日付とともに書き留めておきましょう。
手術はどんなとき?-後ろから固定する手術と、骨セメントで固める治療
手術を検討するのは、不安定な破裂骨折のときや、背骨を支える靱帯(じんたい)が傷んでいるときです。
骨折で神経が傷つき、足の麻痺や、排尿・排便の障害(膀胱直腸障害)が出たときは、手術が必要です。
主に骨粗鬆症による骨折で、痛みが強いときや早く起き上がりたいときは、骨セメントで固める椎体形成術を行うこともあります。
後方固定術
背中側から、折れた骨の上下の椎骨にスクリュー(ねじ)を入れ、ロッド(棒)でつないで固定します。
神経が圧迫されていれば、その圧迫を取り除く処置も一緒に行います。
金属は多くはチタン製で、体の中に残しても問題のない金属です。抜くかどうかは、骨がついた後に主治医と相談して決めます。
椎体形成術(BKP)
つぶれた椎体の中で小さな風船をふくらませ、できた空間に骨セメントを詰めて固める治療です。
主に骨粗鬆症による骨折で、痛みが強いとき・早く起き上がりたいときに行います。
背中の小さな傷から行う、体への負担が小さく満足度の高い治療です。交通事故の若い方の骨折に行うかは、骨折の型と年齢をみて主治医が判断します。
治療の後に起こりうること
胸と腰の境目の破裂骨折を、短い範囲で後方固定した研究があります。
金属を抜いた後までの経過で、主に椎間板の高さが減り、曲がりが再び増えたと報告されています。経過は、骨折の状態や術式によって異なります。
BKPでは、合併症として、骨セメントが骨の外へ漏れることがあります。
治療後に隣の椎体が新しく折れることもありますが、骨粗鬆症そのものでも起こるため、手術が原因とは限りません。
よくあるすれ違い
「手術をしなかったから軽いけが」と受け取られがちです。手術をしない骨折でも、つぶれた形のまま骨がつき、腰痛や動きの硬さが残ることがあります。
明日からできること
手術記録や退院時の説明書で、次の3つを確かめておきましょう。
- どの高さの骨を、何か所固定したか
- 神経の圧迫を取り除く処置をしたか
- 金属を抜く予定があるか
いつから動ける?-骨がつくまでと、仕事に戻る時期
骨は4週ほどでひとまずくっつき(仮固定)、3か月ほどでしっかりつくのが目安です。
| 時期 | 体の状態 | できること |
|---|---|---|
| 受傷〜数日 | 痛みが強い | コルセットを作る |
| できあがってから | 痛みに応じて動ける | コルセットで歩く練習 |
| 1〜2週(長くて3週) | 痛みが和らいでくる | 入院した場合は退院 |
| 4週ごろ | 骨がひとまずくっつく | X線でつぶれを確認 |
| 2か月 | 骨がつく途中 | デスクワークに復職 |
| 2〜3か月 | 骨がついてくる | 立ち仕事に復職 |
| 3か月 | 骨がしっかりつく | コルセットを外す目安 |
| 3〜6か月 | 体力が戻ってくる | 重労働への復帰を検討 |
| 6か月〜1年 | 回復が横ばいに近づく | 症状固定を検討 |
表の時期は、骨折の型・年齢・ほかのけがで前後し、コルセットを外す時期や復職は主治医の指示が優先です。
症状固定は、治療を続けてもこれ以上の回復が見込みにくくなった時点のことで、骨がつくこととは別です。
なぜ3か月見守るのか
椎体は、内側にスポンジのような骨が多い骨です。つぶれた骨は4週ほどでひとまずくっつき、3か月ほどでしっかりつきます。
それまでの間は、体重がかかるたびに、つぶれが少しずつ進むことがあります。定期的にX線を撮るのは、その変化を早く見つけるためです。
つくのが遅れたり、その後もつぶれが進んだりすることもあり、その後の撮影は経過をみて主治医が決めます。
仕事の中身で戻る時期が変わる
デスクワークは2か月ほど、立ち仕事は2〜3か月、重い物を運ぶ仕事は3〜6か月が復職の目安です。
重い物を持つ、前かがみを続ける、長く座るといった動きは、骨がつくまで腰に負担がかかります。運転は、コルセットが外れてからにします。
よくあるすれ違い
「骨はついた」と言われても、元の仕事が元どおりできるとは限りません。骨がつくことと、重い物を持てること、長く座れることは別のものです。
明日からできること
主治医に許された範囲の生活で、次のことを時期ごとに書き留めておきましょう。記録のために、重い物を試しに持つ必要はありません。
- 歩ける距離と、座っていられる時間
- 無理なく持てた物と、難しかった動作
- 仕事でできたこと・できなかったこと
治療中に注意したい合併症は?つぶれの進行・背中の丸み・血栓
治療中と、その後の経過で注意したい合併症は次のとおりです。
- つぶれが進む、骨がつくのが遅れる(遷延癒合)・つかない(偽関節)
- 背骨が後ろへ丸く曲がったまま固まる(後弯・こうわん)
- まれに、つぶれた骨や骨のかけらによる神経の圧迫(脚のしびれ・力の入りにくさ・排尿の異常)
- 長く寝ていることによる筋力の低下、深部静脈血栓症
偽関節
骨が十分につかず、治る過程が止まっている状態を偽関節(ぎかんせつ)と呼びます。
文献では、骨折から9か月たっても治らず、3か月にわたって骨がつく変化が見られない状態をこう呼ぶことが多いとされます。
高齢者の骨粗鬆症による骨折の研究では、後ろの壁が壊れた型で骨がつきにくいことが報告されています。
体を起こすたびに痛む状態が続くときは、時期にかかわらず相談してください。
後弯
椎体の前が低くなったまま骨がつくと、その部分で背骨が後ろへ丸く曲がります。
曲がりが大きいと、まわりの背骨や筋肉に負担がかかり、腰や背中の痛み、疲れやすさにつながります。
文献では、骨折した部分の曲がりが大きく残るほど、腰痛が残りやすいという報告があります。
神経の症状
まれに、骨がつくまでの間につぶれが進み、時間がたってから神経が圧迫されることがあります。
こうした報告の多くは、高齢者の骨粗鬆症による骨折の研究です。脚のしびれが新たに出たり強まったりしたときは、次の予約を待たずに受診してください。
尿や便の異常・股の間のしびれ・足に力が入らないときは、ただちに救急を受診してください。
深部静脈血栓症(脚の深い静脈に血の塊ができる状態)
ふくらはぎが急に腫れる、張って痛むといった変化があれば、その日のうちに受診先へ連絡してください。
急な息苦しさや胸の痛みは、血の塊が肺へ流れた(肺塞栓症)おそれがあるため、ただちに救急を受診してください。強い息苦しさや意識がおかしいときは救急車を呼び、自分で運転しないでください。
よくあるすれ違い
「骨はついてきている」という説明だけで、背骨の曲がりの角度や高さの変化が記録に残らない場合もあります。
腰椎圧迫骨折ではどんな後遺症が残り、今から何を残す?-つぶれた高さ・腰の動き・腰痛

つぶれた骨は、元の高さには戻りません。ご本人が気づいた生活の困りごとを伝えることが、必要な評価と記録につながります。
つぶれたまま固まると、何が残る?変形・腰の硬さ・腰痛としびれ
腰椎圧迫骨折の後遺症は、次の3つに分けて考えると整理できます。
- 変形: 椎体が前の低いくさび形のまま固まる、背骨が後ろへ丸く曲がる(後弯)
- 腰の硬さ: 体を前に曲げる・後ろに反らす動きが小さくなる
- 痛みとしびれ: 腰痛が続く、まれにつぶれた骨が神経を圧迫して脚にしびれが出る
なぜ形が残るのか
背骨の圧迫骨折の多くは、つぶれた形のまま骨がつきます。骨がつけば痛みは和らいでいきますが、高さは元に戻りません。
つぶれが大きいほど、その部分で背骨は後ろへ曲がります。
なぜ腰が硬くなるのか
骨折した背骨と隣の骨の間は、骨がつく過程で動きが小さくなることがあります。
骨同士をつなげて固定した部分では動きが失われますが、器具だけで支えて後で抜く方法など、固定のしかたで動きの残り方は変わります。
痛みで動かせないのか、骨や固定で動かないのかは、診察で見分けます。
痛みとしびれ
腰痛は、骨折した場所の痛みのほか、曲がった背骨を支える筋肉の疲れとしても出ます。
脚のしびれがあるときは、しびれる範囲や、足首・足指の動かしにくさも伝えてください。
しびれが新たに出た・強まったときの受診の目安は、「治療中に注意したい合併症は?」の節のとおりです。
明日からできること
腰痛が強まる場面(長く座る・前かがみ・重い物)と、楽になる姿勢をメモしておきましょう。
家族に、横から見た背中の丸みを写真に撮ってもらうのも手がかりになります。
腰で体を支えにくくなるとは?-長く座る・持つ・前かがみで困ること
腰椎は、上半身の重さを受け止めて体をまっすぐ支える柱で、この働きを医学では荷重機能(かじゅうきのう)と呼びます。
椎体がつぶれたまま固まると、変形の程度や筋力によっては、立つ・座る・持ち上げるたびに腰に負担が集まります。
長く続けられない、重い物が持てないといった困りごとになる一方、大きな支障のない方もいます。
なぜ支えにくくなるのか
椎体の前が低くなると、背骨はその部分で前に傾きます。
体をまっすぐ保つため、背中や腰の筋肉が引っぱり続けることになります。その結果、立つ・座る姿勢を長く保つほど筋肉が疲れ、腰の痛みが強まります。
後遺障害等級認定上の「荷重機能障害」とは別
ここでいう体を支える働きは、医学の側の言い方です。
後遺障害等級認定上の「荷重機能障害」は、常に硬いコルセットが要る状態などの条件が別に決められており、次の章で弁護士が解説します。
生活で起こること
次のような場面で、困りごとが出やすくなります。
- 長く座る(運転・デスクワーク・会議)と、腰の奥が重くなる
- 前かがみの姿勢(洗面・料理・草取り)が続けられない
- 荷物や子どもを持ち上げると、腰に響く
- 夕方になると背中が疲れ、横になりたくなる
- コルセットを着けないと、仕事や家事がつらい
よくあるすれ違い
「骨はついているので、仕事はできるはず」と言われ、本人も「我慢すればできる」と答えてしまうことがあります。
できるかどうかと、どれだけ続けられるかは別のものです。診察で伝えなければ、困りごとは記録に残りません。
明日からできること
座っていられる時間、無理なく持てた物、コルセットを着けている時間を、日付を入れて書き留めてください。
コルセットを処方された日と、今も使っている場面も主治医に伝え、カルテに残してもらいましょう。
いつまで着けるかは主治医の指示に従ってください。長く着け続けると、体を支える筋肉が弱ることがあります。
意見書を書いてきた医師から、5つのこと
交通事故の医学意見書を書くなかで、背骨の圧迫骨折について繰り返し問われてきた論点を、5つにまとめます。
治療中の方とご家族に、知っておいていただきたい医学的なポイントです。
まず、治療や手続きの途中で言われがちな言葉を、医学の側でどう確かめるかと一緒に並べます。
どれも誤りではなく、「それだけでは分からないことがある」という意味です。右端の「番号」は、この下の5つのことの番号です。
| 言われがちな言葉 | 確かめること | 資料 | 番号 |
|---|---|---|---|
| 「年齢的に、元からあった骨折では」 | MRIで新しい骨折かを見る | 早期のMRI・事故前の画像・骨密度 | 1 |
| 「骨癒合良好」 | 骨がついても、つぶれた高さは残る | 3つの時点の側面X線と高さ | 2 |
| 「痛くて曲げないだけでは」 | 角度を測り、原因を画像などで確かめる | 腰の前屈・後屈の角度 | 3 |
| 「だいぶ楽になりましたね」 | 楽になった点と残る困りごとを分ける | 生活の困りごとのメモ | 4 |
| 「落ち着いたので、通院は間をあけても」 | 受診が空くと、その間の記録がなくなる | 整形外科の定期受診の記録 | 5 |
1. 「元からあった骨折では」には、MRIで答えるできれば受傷から2週以内
年齢が高い方の背骨の骨折では、「事故の前からあった骨折ではないか」が問われることがあります。
意見書の資料では、受傷当日のX線で「明らかな骨折なし」とされた例がありました。痛みが続き、1週間ほど後に撮ったMRIで、新しい骨折と分かったのです。
MRIを撮れば、新しい骨折か古い骨折かが分かり、事故が原因かどうかを考える大切な材料になります。
ただし、高齢者の骨粗鬆症による骨折の研究では、新しい骨折に似たMRIの写り方が、数か月〜1年近く残ることがあると報告されています。
受傷から時間がたつと、MRIだけでは骨折の時期を絞りにくくなります。早い時期に撮ったMRIほど強い材料になりますが、2週を過ぎたら不要、というわけではありません。
できれば受傷から2週以内にMRIを撮ってもらうよう、主治医に相談してください。
事故の前に撮った背骨や胸のX線(健診の胸部X線を含む)があれば、比べる材料になります。
年齢が高い方は、骨密度も測っておきましょう。骨粗鬆症かどうかを考える材料の一つになります(事故の前の骨の状態をそのまま示すものではありません)。
2. つぶれた高さは、側面のX線で数字になる3つの時点で比べる
意見書のために画像を時期順に並べ直すと、「骨癒合良好」の一文だけで、つぶれた高さが一度も測られていないことがあります。
骨がついても、椎体は前が低くなった形のまま固まっています。前と後ろの高さ(ミリ)と、その比が書かれて初めて、変形が残ったことが数字で伝わります。
つぶれは、受傷の後も進むことがあり、3か月という骨がつく目安を過ぎて進む例もあります。
後ろの壁が無事な軽い型でも、受傷時の軽いつぶれが、1年近くの経過で倍以上に進んでいた例があります。
高さは撮る姿勢やX線の向きで変わるため、できるだけ同じ条件で撮った画像を比べます。条件が違う画像も捨てずに保管し、違いを踏まえて医師に見てもらいます。
受傷直後・数か月後・症状固定の前の、少なくとも3つの時点で側面のX線を残してもらいましょう。
「前と後ろの高さを測ってもらえますか」と主治医に頼み、答えを控えておきます。
3. 腰の動きは測ってもらう痛みで曲げないのか、骨で曲がらないのか
腰の動きの硬さは、測ってもらわなければ書類に載りません。
意見書の資料では、後遺障害診断書の可動域の欄が空いたままのものを見かけます。
記載が無いと、制限があったことを資料から確かめられず、「制限は無い」と扱われるおそれがあります。
腰が曲がらない理由には、痛くて曲げられない場合と、骨の変形や手術の固定で動かない場合があります。
この2つは、後の評価で扱いが変わります。また、背骨が後ろへ丸く曲がった形で固まると、後ろに反らす動きが制限されやすくなります。
変形の向きと、動きの硬さの向きが合っているかも見られます。
症状固定が近づいたら、体を前に曲げる・後ろに反らす角度を測ってもらいましょう。
痛みで動かしにくいのか、つっぱって動かないのかも、そのまま伝えてください。
4. 「だいぶ楽になった」だけを残さない生活の困りごとを言葉にする
診療録の「だいぶ楽になった」「痛みはなくなった」の一言は、後から読まれる記録です。
意見書の資料では、こうした記載が、症状が残っていない根拠として引用される場面があります。
良くなった点だけを伝え、残っている困りごとを言わなければ、記録に残りません。
腰椎圧迫骨折の困りごとは、場面で現れます。
- 長く座ると腰が重くなる
- 前かがみが続けられない重い物を持てない
- コルセットが手放せない
といった形です。
脚のしびれがあるかどうかも、毎回伝えることが大切です。薬を出すために付いた「腰部脊柱管狭窄症」という病名が、事故の前からの病気と読まれかけた例もあります。
脚の症状が無いことを記録で示せて、区別できました。
診察の前に、困りごとを3つほどメモにまとめて渡すと、伝え漏れを防げます。「長く座ると」「重い物を持つと」のように、場面と程度が分かる言葉で書いてください。
5. 通院は整形外科へ(接骨院・整骨院は勧めません)
症状が事故の後から続いていることを示す、いちばん確かな材料は、診察のたびにカルテに残る症状・所見・画像です。
症状が続く間は、病院の整形外科か整形外科のクリニックで、医師の診察を定期的に受け続けることが大切です。
接骨院・整骨院への通院は、監修医に限らず多くの整形外科医が勧めていません。症状が落ち着けば、月1回程度で経過をみることが多くなります。
交通事故の後、通院先が整形外科から接骨院・整骨院に移ってしまうことがあります。
その間に医師の診察や画像の評価が行われなければ、つぶれた高さや腰の動きを確かめた記録が不足します。
後遺障害の評価の段階で「医師の診察記録がない期間」が問題になり、資料が足りない事態が起こりえます。
通院先は、整形外科のある病院・クリニック(リハビリを行うクリニックを含む)にしてください。
通院でのリハビリも病院・クリニックで受けてください(自宅でのリハビリは、主治医や理学療法士の指示に沿って続けます)。
主治医が決めた間隔で整形外科を受診し、症状が変わったときは次の予約を待たずに相談してください。復職の後も受診を途切れさせないようにしましょう。
監修医コラム|腰の背骨と神経——第2腰椎より下に脊髄はない
医学書や文献によると、成人の脊髄は、おおむね第1腰椎から第2腰椎の高さで終わります。
終わる高さには個人差があり、第12胸椎から第2腰椎の間とされます。それより下の背骨の中を通るのは、脊髄ではなく、脚や膀胱・腸へ向かう神経の束(馬尾)です。
このため、同じ背骨の骨折でも、胸の背骨では脊髄が、第2腰椎より下では馬尾が傷つくおそれがあります。
胸と腰の境目は、その両方が近くに集まる場所です。馬尾が傷つくと、脚のしびれや力の入りにくさが、左右で違う形で出やすいとされます。
注意したいのは、尿が出にくい・漏れる、股の間がしびれるといった症状です。
こうした症状は神経の障害を知らせるサインで、緊急の手術が必要になることがあります。軽く感じても、強くなるのを待たずに、ただちに救急を受診してください。
後遺障害等級に備えて何をそろえる?検査と記録
症状固定が近づいたら、残っている症状を医学的に示せる検査と記録がそろっているかを、主治医と確かめておくことが大切です。
| 検査・記録 | 分かること | ポイント |
|---|---|---|
| 側面のX線 | 椎体の前と後ろの高さ、背骨の曲がり | 受傷時・数か月後・症状固定前を同じ条件で |
| 受傷早期のMRI | 新しい骨折かどうか、神経への影響 | できれば受傷から2週以内 |
| CT | 後ろの壁・骨のかけら | X線で分かりにくいときに相談 |
| 腰の可動域 | 前に曲げる・後ろに反らす角度 | 痛みか、つっぱりかも伝える |
| 骨密度 | 骨粗鬆症かどうかの目安 | 年齢が高い方は早めに相談 |
| コルセットと生活の記録 | 着ける場面、座る・持つ・前かがみ | 処方日と、使っている場面を残す |
いつ受けておくか
X線は経過に応じて撮り直しますが、毎回の受診で撮るとは限りません。椎体の高さや腰の角度は、測られないまま症状固定を迎えることがあります。
骨がついたと言われた時期と、症状固定の前には、測ってもらうよう相談してください。
すべての検査を受ける必要はなく、どれが必要かは症状と画像の所見で主治医が判断します。
記録の残し方
検査を受けた日付・種類・説明された結果を、手帳やスマートフォンに書き留めます。
画像の写しは、受傷時のものから順に保管します。
生活の支障は「1時間座ると腰の奥が重く痛む」「段ボールひとつ持つと響く」のように、場面と程度が分かる言葉で残すと伝わりやすくなります。
症状固定前の最終確認
残っている症状と、受けた検査をメモにまとめます。次の受診で主治医に見せて、追加の評価が必要かを相談します。
後遺障害診断書をお願いするときにも同じメモを渡すと、書き漏れを防ぐ手がかりになります。
弁護士法人小杉法律事務所では、後遺障害診断書の作成に当たって、被害者の方からお伺いした情報を踏まえて、
主治医宛に実施していただきたい検査や記載時のポイントなどをまとめたお手紙をお送りしております。
後遺障害診断書の記載内容は、適切な後遺障害等級の認定にあたって非常に重要ですから、
専門弁護士のサポートを受けることはお勧めです。
記録がそろった段階で、それを等級の判断にどうつなげるかを一度弁護士に相談しておくと安心です。
次の章からは、弁護士が後遺障害等級の考え方を解説します。
腰椎圧迫骨折の後遺症で認定されうる後遺障害等級

腰椎圧迫骨折の後遺症
腰椎圧迫骨折を受傷すると、前述のとおり、痛みやしびれ、麻痺といった神経症状のほか、腰部の可動域制限が現れることがあります。
そして、治療の結果、これらの症状が後遺症として残存してしまった場合、自賠責保険に後遺障害等級の認定の申請を行うことができます。
腰椎圧迫骨折の後遺症で認定される可能性がある後遺障害は、脊柱変形障害、脊柱運動障害、荷重機能障害、神経症状となります。
⑴脊柱変形障害
腰椎圧迫骨折では、骨が押し潰されることで脊柱の配列が崩れ、脊柱の変形障害を残す可能性があります。
この変形は、側面から見た際に背中が湾曲する「後彎」や、正面から見た際に体幹が左右に湾曲する「側彎」として現れることが多いです。
このような変形が進行すると、体のバランスが取りにくくなり、姿勢の悪化や周囲の筋肉への負担を引き起こし、腰椎の体幹支持機能に支障をきたすこととなります。
脊柱の変形障害について、自賠責の後遺障害等級では3つの等級が定められています。
なお等級判断にあたっては、XPやCT画像又はMRI画像により腰椎圧迫骨折が確認できることを前提としたうえで、脊柱の後彎又は側彎の程度について評価がなされることとなります。
①別表第二第6級5号 著しい脊柱変形障害
「脊柱に著しい変形を残すもの」に該当すると認められた場合には、第6級5号が認定されます。
具体的な認定基準は次のとおりです。なお、自賠責から支払われる保険金は1296万円です。
- a 脊椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。
- b 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。
②別表第二第8級相当 中程度の脊柱変形障害
「脊柱に中程度の変形を残すもの」に該当すると認められた場合には、相当等級として第8級相当が認定されます。
具体的な認定基準は次のとおりです。なお、自賠責から支払われる保険金は819万円です。
- a 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じているもの。
- b コブ法による側彎度が50度以上であるもの。
- c 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、60度以上の回線位となっているもの。
- d 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、50度以上の屈曲位又は60度以上の進展位となっているもの。
- e 環椎又は軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、側屈位になっており、XP写真等により矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの。
③別表第二第11級7号 単なる脊柱変形障害
「脊柱に変形を残すもの」に該当すると認められた場合には、第11級7号が認定されます。
具体的な認定基準は次のとおりです。なお、自賠責から支払われる保険金は331万円です。
- a 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがXP写真等により確認できるもの。
- b 脊椎固定術が行われたもの。
- c 3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの。
ご覧いただいて分かるように、第11級7号は、腰椎圧迫骨折はあるものの後彎や側彎の残存がない場合に認定される等級となります。
監修医の補足椎体がどれだけ低くなったかは、側面のX線で、骨折した椎体の前と後ろの高さを測り、隣の椎体とも比べて確かめます。 受傷時・経過中・症状固定の前の画像を、できるだけ同じ条件で比べます(くわしくは前半の「5つのこと」の2)。測った値は、測った日と画像の種類と一緒に控えておきましょう。 |
⑵腰部の脊柱運動障害
腰椎圧迫骨折の後遺症としてしばしば見られるのが、運動障害です。腰椎圧迫骨折により、腰部の可動域制限が残存した場合に認定されます。
①第6級5号 著しい脊柱運動障害
次のa~cのいずれかにより、頚部及び胸腰部が強直して可動域制限が残存した場合、「脊柱に著しい運動障害を残すもの」として第6級5号が認定されます。
なお、「強直」とは「関節の完全強直又はこれに近い状態にあるもの」をいい、「これに近い状態」とは、参考可動域角度の10%程度以下に制限されていることを意味します。
- a 頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
- b 頚椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
- c 項背腰部軟部組織に明らかな気質的変化が認められるもの
注意点として、この等級は、腰椎圧迫骨折のみでは認定されることは殆どありません。
なぜならば、「頚部及び胸腰部が強直」とあるように、頚部と胸腰部の両方に可動域制限が残存していることが要件となっているためです。
たとえば、交通事故によって第5頚椎骨折と第1腰椎骨折を負い、頚部と腰部に可動域制限が残存したといったケースであれば認定される可能性があります。
②第8級2号 単なる脊柱運動障害
次のa~cのいずれかにより、腰部の可動域角度が参考可動域角度の2分の1以下に制限された場合、「脊柱に運動障害を残すもの」として第8級2号が認定されます。
- a 胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
- b 胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
- c 項背腰部軟部組織に明らかな気質的変化が認められるもの
第8級2号は、第6級5号とは異なり、腰椎圧迫骨折のみでも認定される可能性があります。
また、等級判断にあたっては、変形障害と同様にXPやCT画像又はMRI画像により腰椎圧迫骨折等が確認できることが前提となっています。
そのため、疼痛が原因となって生じている運動障害(痛みがするので動かせないようなもの)については、脊柱運動障害としては認定されず、局部の神経症状として別途評価がなされます。
監修医の補足腰の動きは、体を前に曲げる角度(前屈)と、後ろに反らす角度(後屈)を中心に測ります。 体をひねる・横に倒す動きにも支障があれば伝え、必要に応じて測ってもらいましょう。 測るときは、痛みで動かしにくいのか、つっぱって動かないのかを、そのまま伝えてください。
骨の変形や手術の固定が画像で確かめられているかも、主治医に確認しておきましょう。 |
⑶荷重機能障害
荷重機能障害もまた、腰椎圧迫骨折の後遺症としてみられることがあります。
前述のとおり、腰椎は腰に位置する骨であり、上半身の荷重や体幹を支える役割も担っている重要な骨です。
この部位の骨折によって、脊柱全体の動きに制限が生じることがあります。
その結果、背骨にかかる荷重をうまく分散できなくなり、脊柱の体幹支持機能の低下が生じたり、立位や歩行時に痛みを伴うことが増える点も挙げられます。
自賠責の別表第二には荷重機能障害の等級が定められていないため、相当等級として認定されることとなります。詳しくは次の①~②のとおりです。
①別表第二第6級相当
荷重機能障害の原因が明らかに認められる場合であって、頚部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具の着用を要するものである場合に認定されます。
要件上、腰部だけでなく頚部の保持の困難も要求されるため、腰椎圧迫骨折のみを受傷した場合に認定される可能性はまずないと考えられます。
②別表第二第8級相当
荷重機能障害の原因が明らかに認められる場合であって、頚部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具の着用を要するものである場合に認定されます。
こちらは、腰椎圧迫骨折による腰部の保持困難があり、常時硬性補装具の着用が必要である旨を立証できれば、認定される可能性があります。
監修医の補足硬性コルセットを処方された日と、着けるよう指示された期間・場面がカルテに書かれているか、主治医に確かめましょう。 骨がついた後も使っている場合は、どんな場面で、どのくらい着けているかと、必要な理由も記録に残してもらいましょう。 |
⑷腰痛や神経症状などの神経への影響
腰椎圧迫骨折では、腰痛などの慢性的な痛みが後遺症として残ることがあります。
特に骨折による脊柱の変形が神経を圧迫する場合、圧迫された神経の支配領域に痛みやしびれなどの神経症状が発症する可能性もあります。
症状としては、これらの神経障害は、腰椎圧迫骨折の重大な後遺症であり、後遺障害等級第12級13号または第14級9号として認定されるケースが見られます。
監修医の補足第2腰椎より下の骨折では、脊髄ではなく馬尾(神経の束)が圧迫され、脚に痛みやしびれが出ることがあります。 しびれる範囲、足首や足指の力の入りにくさ、排尿の変化を、そのつど主治医に伝えてください。 必要に応じてMRIで、神経が圧迫されていないかを確かめます。尿や便の異常・股の間のしびれ・足に力が入らないときは、次の予約を待たず、ただちに救急を受診してください。 |
腰椎圧迫骨折についてのよくある質問

腰椎圧迫骨折のコルセットはいつまで着けますか?
コルセットを外す時期は、X線で骨のつき方とつぶれの進み具合を見て、主治医が決めます。着ける期間は3か月ほどが目安です。
運転は、コルセットが外れてからにします。
次にすることとして、着ける時間(寝るときや入浴のときの扱い)と、外してよい時期の見通しを、主治医に確かめておきましょう。
腰の圧迫骨折の痛み(腰痛)は、いつまで続きますか?
多くは、骨がついていくにつれて和らいでいきます。一方で、つぶれた形のまま固まると、長く座る・前かがみ・重い物を持つといった場面で、腰痛が残ることがあります。
文献では、骨折した部分の曲がりが大きく残るほど、腰痛が残りやすいという報告があります。
次にすることとして、痛みが強まる場面と時間を書き留め、診察のたびに伝えてください。
重いものを持つ仕事や運転には、いつ戻れますか?
デスクワークは2か月ほど、立ち仕事は2〜3か月、重い物を運ぶ仕事は3〜6か月が復職の目安です。
運転は、コルセットが外れてからが目安です。
いずれも骨折の型・年齢・ほかのけがで前後し、主治医の指示が優先です。
次にすることとして、仕事の中身(持つ荷物の重さ・座っている時間・運転の時間)を具体的に伝えましょう。
そのうえで「どの仕事なら、いつごろ戻れそうですか」と主治医に聞いてください。
つぶれた骨は、元の高さに戻りますか?
元の高さには戻りません。背骨の圧迫骨折の多くは、つぶれた形のまま骨がつきます。骨がつけば痛みは和らいでいきますが、形はそのまま残ります。
次にすることとして、受傷時・数か月後・症状固定の前の側面のX線で、前と後ろの高さを測ってもらいましょう。
事故の前からあった骨折だと言われました。どうすればよいですか?
MRIを撮れば、新しい骨折か古い骨折かが分かり、事故が原因かどうかを考える材料になります。
早い時期に撮ったMRIほど、はっきりした材料になります。事故の前に撮った背骨や胸のX線があれば、比べることもできます。
次にすることとして、受傷早期のMRIがあるかを確かめ、無ければ主治医に相談してください。年齢が高い方は、骨密度を測っておくことも役に立ちます。
腰椎圧迫骨折の後遺症は、必ず残りますか?
形と症状で答えが分かれます。つぶれた形(骨の高さ)は、元には戻りません。
一方で、痛みや生活の支障は、残らない方も多くいます。だからこそ、つぶれた高さを側面のX線で測り、記録に残しておくことが大切です。
次にすることとして、座っていられる時間・無理なく持てる物・腰の動きの変化を書き留めましょう。側面のX線や可動域の測定も、主治医に相談してください。
交通事故による腰椎圧迫骨折は弁護士に相談しましょう

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弁護士法人小杉法律事務所による解決事例
参考文献: 日本整形外科学会骨粗鬆症委員会「骨粗鬆症性椎体骨折診療マニュアル」日整会誌 94:882-906, 2020/椎体骨折評価委員会「椎体骨折評価基準(2012年度改訂版)」Osteoporosis Japan 21:25-32, 2013/東野恒作ほか「胸腰椎移行部脊椎の pathobiomechanics」脊椎脊髄ジャーナル 26:867-872, 2013/Vaccaro AR, et al. Eur Spine J 25:1087-1094, 2016/Wang XY, et al. J Neurosurg Spine 8:246-254, 2008/Takahashi S, et al. Osteoporos Int 28:473-482, 2017/笹川武史ほか. J Spine Res 10:1352-1357, 2019/岩崎幹季『脊椎脊髄病学』金原出版, 2010/Harrop JS, et al. Neurosurg Focus 16(6):e4, 2004/『脊椎脊髄病用語辞典 改訂第5版』南江堂, 2015

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