後遺障害等級一般論
後遺障害等級の金額の計算方法|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、自賠責において後遺障害等級が認定された場合に支払われる自賠責保険金の金額の計算方法について解説しております。
また、以下の記事では、自賠責においてどのような後遺障害が定められているかについて解説しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。
交通事故と後遺障害等級|後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所
後遺障害等級と自賠責保険金の計算
⑴自賠責の後遺障害等級の基本的な考え方と保険金
自賠責保険は、労災の障害等級認定基準に準拠して、後遺障害等級認定基準を定めています。その基準は別表第一・別表第二に大別されており、別表第一に介護を要する後遺障害を、別表第二にそれ以外の後遺障害を定めています。別表第一は、常時介護を要する後遺障害については第1級、随時介護を要する後遺障害については第2級として整えられています。また別表第二は第1級~第14級の14段階に整理されており、等級の数字が小さいほど重度の後遺障害となります。自賠責の後遺障害等級は、この16等級により構成されているのです。
被害者が自賠責に後遺障害等級認定に係る16条請求(いわゆる「被害者請求」)を行い、等級が認定されれば、等級に応じた自賠責保険金が支払われます。金額は下表のとおりです。例えば、後遺障害等級第9級が認定されれば616万円の自賠責保険金の支払を受けることができます。

なお、交通事故において加害者が任意保険に加入している場合、加害者側の保険会社が賠償金の見立てを立てるために、自賠責に対して等級認定調査の手続きを行うことがあります(いわゆる「事前認定」)が、このときは被害者に対して自賠責保険金が支払われません。あくまで被害者請求を行った場合にのみ自賠責保険金が被害者に支払われます。もっとも、被害者請求後により遺障害等級が認定され自賠責保険金を受け取った場合は、加害者側保険会社は受領した保険金の額を損益相殺により賠償額から減額するので、弁護士を入れる(=保険会社が弁護士基準で賠償額を見積もる)等しない限りは最終的な賠償金額は変わりません。換言すれば、自賠責保険金は、損害賠償金の一部先取りのようなものといえます。
例:交通事故で1耳の聴力を全く失ったものとして第9級9号に該当する聴力障害を残したケース
被害者請求をした場合→自賠責保険金616万円を受領。その後加害者側保険会社は賠償金見積額1500万円-保険金受領額616万円=884万円を支払う。
事前認定をした場合→自賠責保険金は支払われないが、加害者側保険会社は賠償金見積額1500万円を支払う。
被害者請求と事前認定については、以下のページで詳しく解説しております。
交通事故の「被害者請求」と「事前認定」とは?違いは?どちらが良い?【弁護士解説】
⑵単一等級のケース
交通事故の後遺症について被害者請求を行い、単一の等級が認定された場合(複数の等級の認定がなく、また既存障害の認定もない場合)には、等級に応じた自賠責保険金が支払われます。
例1:頚部痛について別表第二第14級9号が認定された場合→75万円が支払われる
例2:両上肢を手関節以上で失い、別表第二第2級3号が認定された場合→2590万円が支払われる
例3:遷延性意識障害により植物人間状態となり、常時介護を要するとして別表第一第1級1号が認定された場合→4000万円が支払われる
なお、各等級において、具体的にどのような後遺障害が規定されているかについては、以下のページにて解説しております。
交通事故と後遺障害等級|後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所
⑵併合等級のケース
交通事故により複数の後遺症を残存するに至った場合、自賠責では、各後遺症が後遺障害に該当するか調査を行い等級判断がなされます。このとき、系列を異にする後遺障害等級が2つ以上認定されると、等級の併合という処理がなされることになります。併合の処理は、概ね以下のようなルールに則り行われます(ただし例外もあり)。
①系列を異にする別表第二に定める13級以上の等級が2つ以上認定された場合→重い方の等級を1級繰り上げる
②系列を異にする別表第二に定める8級以上の等級が2つ以上認定された場合→重い方の等級を2級繰り上げる
③系列を異にする別表第二に定める5級以上の等級が2つ以上認定された場合→重い方の等級を3級繰り上げる
そして、①~③のルールに基づき最終等級が決定したら、その等級に対応する保険金が支払われることとなります。
例:頚部の神経症状12級13号、肩関節の著しい機能障害10級10号が認定された場合
→重い方の等級である10級を1級繰り上げて併合9級。自賠責保険金額は616万円。
例:脊柱の運動障害8級2号、顔面部の著しい醜状7級12号が認定された場合
→重い方の等級である7級を2級繰り上げて併合5級。自賠責保険金額は1574万円。
例:両眼の視力が0.06以下になった視力障害4級3号、1下肢を足関節以上で失った下肢欠損障害5級5号
→重い方の等級である4級を3級繰り上げて併合1級。自賠責保険金額は3000万円。
なお、別表第一の等級が複数認定された場合には、併合の処理は行われません。
また、別表第一の等級と別表第二の等級が併存した場合にも、併合の処理は行われません。
⑶既存障害による加重のケース
自動車損害賠償保障法施行令第2条2項において、次のとおり規定されています。
法第十三条第一項の保険金額は、既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによつて同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあつた後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。
すなわち、既に後遺障害がある人物が、交通事故によって同一部位により重い後遺障害を残存するに至った場合には、既存障害が該当する等級に対応する保険金額を減額した上で保険金が支払われるということです。なお既存障害は、その原因が何であるかは問われず、また先天性であると後天性であるとに関わりません。また「同一部位」は、同一系列の障害であることをいいます。
加重の典型的な例としては、歯牙障害が挙げられます。たとえば、事故前から既存障害4歯が存在している人物が交通事故に遭い、3歯に歯科補綴を行うに至った場合を考えますと、事故後は合計7歯に対し歯科補綴を加えたものになることから歯牙障害第12級3号に該当しますが、既存障害4歯については「3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」として歯牙障害第14級2号に該当しますので、支払われる自賠責保険金は、12級の224万円-14級の75万円=149万円となります。
⑷加害者複数事案(ダブルポケット事案)
自賠責保険の16条請求は、交通事故の相手方となる人物が加入している自賠責保険会社に対して行うものです。通常、交通事故は二者の間で起こることが多いですが、もしも交通事故の当事者が三者以上になる場合には、16条請求を行うことができる自賠責の数も増えることになります。
次の例を題材に考えてみましょう。たとえば、Aが運転する自動車(所有者はA)にBが同乗していたところ、Cが運転する自動車(所有者はC)に衝突されたことによりBが怪我をしてしまったケースです。この怪我でBは後遺症を残存したため、自賠責に保険金を請求しようと考えていますが、どこに請求できるでしょうか。答えは、Aの自動車が加入していた自賠責保険会社(以下「A自賠」とします。)とCの自動車が加入していた自賠責保険会社(以下「C自賠」とします。)の二社になります。すなわち、BはA自賠とC自賠の双方に被害者請求を行うことができ、等級認定がされれば、双方から自賠責保険金が支払われます。このように、請求先の自賠責が2つあるような事案は、通称ダブルポケット事案とも呼ばれています。
なお、請求のタイミングは同時である必要はないので、Bは、まずA自賠に16条請求をして等級認定がなされた後に、追ってC自賠に16条請求を行うということも可能です。異なるタイミングで請求したとしても、再度調査が行われるのではなく、既に決定された等級に基づき保険金が支払われます。そのため、このケースにおいてBに右肩関節の可動域制限が残存し、自賠責で右肩関節の機能障害10級が認定されれば、A自賠とC自賠それぞれから461万円の支払を受けることができ、合計922万円の自賠責保険金が支払われることとなります。
おわりに

本稿では、後遺障害等級に基づく自賠責保険金の金額の計算方法について解説いたしました。
後遺障害等級は、損害賠償請求とは切っても切り離せないほどに重要なポイントであり、
後遺障害等級の認定の有無によって損害賠償金も大きく異なってきます。
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適切な後遺障害等級を受けるにはどうしたらいいのか、また具体的な後遺障害等級の見立てや自賠責保険金額の計算方法など、
交通事故の後遺障害や損害賠償請求のことでお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。
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