QUESTION

よくある質問

「被害者請求」と「事前認定」はどちらが良いのでしょうか?

交通事故

交通事故に遭い、治療を続けていく中で、これ以上治療を続けても良くならないという状態に達することがあります。

この状態に達することを、「症状固定」と言い、この時点で残ってしまった症状を後遺症と言います。

 

 

この症状固定を迎えると、加害者側の保険会社から「後遺障害等級の申請をしませんか?」ということで、

後遺障害診断書のひな型と、事前認定手続のご案内が送られてきます。

 

この「事前認定」手続は被害者にとって全くメリットが無いわけではないですが、

適切な賠償金を獲得するためには絶対に「被害者請求」の方がメリットが大きいです。

 

このページでは、「被害者請求」と「事前認定」のどちらが被害者側にとって良いのかを、それぞれの説明と共に解説します。

 

 

そもそも事前認定とは?

そもそも事前認定とは何でしょうか。

「事前」は何の「事前」なのでしょうか?

 

これは、「保険金支払の」事前認定です。

 

加害者側任意保険会社は、事故が発生すると被害者に対して治療費のいわゆる一括対応を含めた損害賠償金のお支払を行うことになります。

この時加害者側任意保険会社は、支払っている保険金の全てについて自社の負担になっているわけではありません。

 

自動車を運行する者は、自動車損害賠償保障法第5条の規定に基づいて、必ず自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)という保険に加入しています。

 

任意保険はこの自賠責保険に上乗せする形で保険金をお支払するために、加害者がまさに任意で付帯している保険です。

 

では被害者は、自賠責保険が対応する部分については自賠責保険に請求して、

任意保険会社が対応する部分については任意保険会社に請求して、

とするのか?というと、実務上はそうはなっていません。手続が煩雑になるからです。

 

したがって実務上は、任意保険会社が、自賠責保険が本来払うべき部分も「一括」して被害者にお支払し、

支払が終わった後に任意保険会社から自賠責保険に求償を行うという運用がとられています。

 

ここで問題になるのが、「任意保険会社」の認識と、「自賠責保険」の認識が一致するのか?ということです。

 

例えば任意保険会社が任意保険の基準で、今回の被害者に支払うべき保険金は100万円だと判断したとします。

このうち50万円を自賠責保険が払うべきだと考え、任意保険会社から自賠責保険に求償します。

任意保険会社は手出しが50万円で済むことになります。

 

しかし自賠責保険は自賠責保険独自の基準で計算したところ、今回の事故について自賠責保険からお支払すべき金額は20万円であると判断しました。

この場合、任意保険会社は50万円で済むはずだった手出しが80万円になってしまいます。

 

このように、保険金を支払った後に自賠責保険の支払意向を確認するような運用では、思わぬ手出しが発生してしまうことがあります。

こういった事態を避けるために、任意保険会社は常に保険金支払の「事前」に自賠責保険の支払意向を確認したいわけです。

 

これが「事前認定」です。

 

つまり、任意保険会社による後遺症部分の保険金支払の事前に、自賠責の後遺障害等級の認定を確認するための手続が「事前認定」手続ということになります。

 

被害者請求とは?

次は「被害者請求」についてみてみましょう。

 

「被害者請求」とは16条請求ともよばれる、自動車損害賠償保障法第16条に基づく請求のことを言います。

自動車損害賠償保障法第16条第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。

 

この条文は、実はとてもイレギュラーな条文です。

保険制度の成り立ちから言っても、保険という商品は、当然ですがそれを契約している人のための商品です。

損害賠償保険も、本来であれば加害者が被害者に対して賠償金をお支払した場合に、その賠償金を支払ったことによって加害者に発生した損害を填補するために、

加害者が保険金を受け取るという立て付けになっています

(実際の運用自体は手続の煩雑さなどもあり、加害者側任意保険会社が直接被害者に保険金をお支払する形になっています。)。

 

ところがこの自賠責保険は、法律で被害者が直接保険会社に請求をすることができるというのが明示されているわけです。

これは自賠責保険が自動車損害賠償保障法第1条に定めのあるように、被害者の保護のために強制加入が義務付けられている保険だからです。

 

自動車損害賠償保障法第1条この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立するとともに、これを補完する措置を講ずることにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。

 

損害賠償保険は本来であれば加害者が賠償金を支払った後に、加害者がその分の填補を受けるという保険ということは、

被害者は加害者が賠償金を一切支払わないと言うと、裁判などで加害者の支払義務を認めてもらうまでは賠償を受けられないということになります。

 

それでは被害者の保護を図るという目的に適わないため、自賠責保険は被害者請求権が認められているのです。

 

ですから後遺障害等級認定における「被害者請求」とは、この自賠法第16条に基づく、

被害者が直接自賠責保険に対して行う、後遺障害部分に関する保険金の請求ということになります。

 

「事前認定」と「被害者請求」の違いと被害者がとるべき手続

ここまで見てきたように、

「事前認定」は加害者側任意保険会社が保険金の支払の前に自賠責の意向を確認する手続であり、

「被害者請求」は被害者が直接自賠責保険に保険金の支払の請求を行う手続です。

 

では結局のところ被害者としてはどちらの手続をとるべきなのか?

これは絶対に「被害者請求」といって良いでしょう。

 

「事前認定」の手続をとった場合の加害者側保険会社の気持ちになって考えてみると、

この後遺障害等級認定の申請で、より重い後遺障害が認定されると、自社が支払う保険金額も高くなるわけです。

当然加害者側保険会社としては認定される等級は低い方が良いわけですから、

被害者から受け取った後遺障害診断書に、被害者にとって不利になるような保険会社顧問医の意見書などを添付して送付する可能性があります。

 

ここまではないとしても、この後遺障害診断書の記載では適切な後遺障害等級の認定は難しいとなった場合でもストップせずにそのまま手続が進められてしまうことになります。

そして、被害者側は提出した書類の一覧を見ることができません。

 

以上を踏まえると、「事前認定」は被害者側にとってリスクが大きいものだということがお分かりいただけるでしょう。

 

一方で、「被害者請求」は全ての請求書類を被害者側が準備しなければならないという側面があることは事実です。

また、作成された後遺障害診断書の記載が適切かどうかを判断できなければ、結局「事前認定」と同じ結末を辿ることになります。

 

だからこそ、この症状固定を迎えたタイミングで弁護士に相談することがおすすめされるわけです。

このタイミングで専門の弁護士に相談することで、適切な後遺障害診断書の作成や、場合によっては訂正の依頼を行うこともでき、

煩雑な請求書類の取り付けも一任することができます。

 

この症状固定のタイミングで弁護士に相談することで受けられる恩恵は非常に大きいと言えるでしょう。

 

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士が、適切な後遺障害等級の認定の獲得に向けたサポートを行っております。

交通事故被害に遭い、後遺障害等級認定の申請で疑問や不安をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士との初回無料の法律相談の流れについてはこちら。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。

弁護士小杉晴洋の詳しい経歴等はこちら

CONTACT

事故のご相談、採用・取材についてなど、
お問い合わせはこちらから。

お電話でのお問い合わせ

受付時間:平日土曜9:00-17:30

 

メールでのお問い合わせ

メールフォームへ
トップへ戻る