交通事故の休業損害とは?いくらもらえる?計算や日数の数え方・休業補償との違いを解説!
2024.10.08
損害賠償請求

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 交通事故における休業損害とは何か
- 休業損害とその他損害との違い
- 休業損害の計算方法と職業別の考え方
- 請求手続き・必要書類・注意点
- 交通事故と有給休暇の関係
について解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、被害者側損害賠償請求専門弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
休業損害についてお困りの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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交通事故における休業損害とは

休業損害の定義と対象
交通事故によって業務を休まざるを得なかった場合に生じる収入の減少を補うための賠償が、「休業損害」です。
これは、事故の治療やリハビリのために仕事を休む必要があった場合でも、収入の減少を填補する目的で請求されるものです。
休業損害は、給与所得者・個人事業主はもちろん、専業主婦(家事従事者)に対しても認められることがあります。
対象となるのは、まさに事故のせいで休まざるを得なかった期間についての収入の減少であり、
自賠責基準・任意保険基準・裁判基準でそれぞれ計算の方法が異なる場合があります。
休業損害とその他損害の違い

「休業損害」と似た言葉は複数あり、混同されやすいため、それぞれの違いを整理しておきます。
休業補償
「休業損害」は、自賠責保険・任意保険に基づく損害賠償の文脈で使われる言葉です。
一方「休業補償」は、労働者災害補償保険(労災保険)による補償を指します。
被害者の方にとって実質的な意味合いはほぼ同じですが、
- 根拠となる法律
- 適用される保険
- 支給額の計算方法
などが異なります。
業務中または通勤途中の交通事故の場合には、休業損害も、休業補償もいずれも受け取ることが可能になります。
しかしながら、受け取ることができる総額は、発生した休業損害10割の限度になります。
労災保険から休業補償として支払われるのは、発生した休業損害のうち60%ですから、
業務災害・通勤災害の交通事故で労災保険を利用する場合には、加害者側に請求できる休業損害は、100%-60%=40%分ということになります。
| 労働者災害補償保険法第14条「休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。ただし、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため所定労働時間のうちその一部分についてのみ労働する日若しくは賃金が支払われる休暇(以下この項において「部分算定日」という。)又は複数事業労働者の部分算定日に係る休業補償給付の額は、給付基礎日額(第八条の二第二項第二号に定める額(以下この項において「最高限度額」という。)を給付基礎日額とすることとされている場合にあつては、同号の規定の適用がないものとした場合における給付基礎日額)から部分算定日に対して支払われる賃金の額を控除して得た額(当該控除して得た額が最高限度額を超える場合にあつては、最高限度額に相当する額)の百分の六十に相当する額とする。」 |
これだと労災保険を利用するメリットはあまりなさそうに感じられますが、
損害賠償請求において労災保険を利用した場合には、「費目間流用の禁止」というルールが適用されます。
この「費目間流用の禁止」とは、一言でいえば「休業補償として支払われたものを、慰謝料などと差し引きしてはいけないよ」というルールになります。
例を挙げてご説明します。
Aさんは通勤中の交通事故に遭い、休業損害として100万円、慰謝料として100万円の、合計200万円の損害が発生してしまいました。
ただし、Aさんには過失が20%ありました。
そうすると、交通事故の加害者に対して請求できるのは、休業損害の100万円×(100%-20%)=80万円と、慰謝料の100万円×(100%-20%)=80万円となりそうです。
このとき、加害者側保険会社から100万円分の休業損害の先払いを受けていたとしましょう。
そうすると、休業損害のうち加害者に請求できる80万円-100万円=-20万円となり、このマイナスは、慰謝料と相殺される(差し引きされる)ので、
慰謝料は、80万円-20万円=60万円となります。
慰謝料は本来80万円分請求できるはずであったのに、実際には60万円しかもらえないということになり、Aさんは、休業損害100万円+慰謝料60万円=160万円を受け取ることになります。
次に、加害者側保険会社から40%の休業損害の先払いをうけ、労災保険から60%の休業補償を受けていた場合を考えてみます。
このとき、Aさんは加害者に請求できる休業損害は80万円なので、加害者側から休業損害の先払いを受けると、80万円-(100万円×40%)=40万円となります。
そして、ここから労災保険の休業補償を受けると、40万円-(100万円×60%)=-20万円となります。
先ほどと変わりません・・・が、ここから、費目間流用の禁止のルールが適用されます。
費目間流用の禁止は、「休業補償として支払われたものを、慰謝料などと差し引きしてはいけないよ」というルールでした。
つまり、この―20万円は、慰謝料と差し引きができません。
そうするとどうなるかというと、Aさんは慰謝料として未だ支払いを受けていない80万円を、そのまま加害者に請求することができます。
このときAさんは、休業損害40万円+休業補償60万円+慰謝料80万円=180万円を受け取ることができています!
このように、過失割合が考えられるケースでは、労災保険を上手く活用することで、最終的に手元に残る金額を増やすことができますから、
弁護士などに相談しつつ労災保険の活用を検討してみることをお勧めします。
慰謝料
慰謝料は、事故による精神的苦痛に対する賠償です。
大きく分けて、「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」「後遺症慰謝料」「死亡慰謝料」の3つがあります。
休業損害が「収入の減少」という財産的損害を填補するものであるのに対し、
慰謝料は収入とは関係なく、入通院の期間や、残存する後遺症の程度、受けた精神的苦痛の大きさ等によって金額が決定されます。
後遺症逸失利益
後遺症が残った場合に、将来にわたって労働能力が低下・喪失することで得られなくなる収入に対する賠償が「後遺症逸失利益」です。
休業損害も、後遺症逸失利益も、収入の減少を損害として捉えている点で非常に似通っており、
境目は「症状固定」です。
「症状固定」とは、これ以上治療しても良くならないであろうと医師が判断する時点を言い、
この時点を超えてもなお残存している症状を、損害賠償請求実務では「後遺症」と表現しています。
この「後遺症」が残ってしまったことによって、将来にわたって働きにくくなることで生じる収入の減少に対する賠償が、「後遺症逸失利益」というわけです。
イメージとしては、
| 事故日~症状固定日までの収入の減少:休業損害 | 症状固定日~就労の終期(または労働能力喪失期間の終期)までの収入の減少:後遺症逸失利益 |
というようなかたちです。
症状固定~就労の終期というのは、賠償金を計算する時点ではわかりませんから、
逸失利益の計算は、可能な限り現実味のあるフィクションで行うことになります。
具体的には、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)という計算式で行います。
詳細な解説は以下のページをご覧ください。
いくらもらえる?休業損害の計算方法

休業損害の基本的な計算式
休業損害の基本的な計算式は次のとおりです。
| 休業損害=基礎収入(日額)×休業日数 |
シンプルな計算式ですが、「基礎収入をいくらと見るか」「何日間を休業日数と数えるか」によって金額が大きく変わります。
また、算定基準として
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 裁判(弁護士)基準
の3種類があり、裁判基準が最も被害者に有利な金額になることが一般的です。
休業日数の数え方
休業日数とは、交通事故の怪我により実際に仕事ができなかった日数です。
入院・通院を余儀なくされたために休まざるを得なかった日はもちろん、怪我が重く、就労が難しい自宅療養期間なども含まれます。
休業損害の対象となる期間は、原則として事故日から症状固定日(または治癒日)までとなります。
休業日数の数え方に関しては、以下の点が重要です。
- 土日・祝日であっても、療養のために休業が必要であった場合は対象に含まれます。
- 通院日はもちろん、自宅安静が必要な日も含まれます。
- 有給休暇を使用した日も、交通事故による休業のために消化した場合は休業日数としてカウントできます(のちほど解説します。)
なお、休業損害算定において含められるのは、実際に休んだ日数すべてではなく、怪我により休まざるを得なかったと証明される日数です。
具体的には主治医が休業の必要性を認めているなどの証拠が必要になります。
休業損害が請求できるから、働けるけど働かなくていいや、と思っていて実際に請求したところ認められなかった、ということはないようにしましょう。
基礎収入(日額)の算出方法
基礎収入の算出方法は、算定基準によって以下のように異なります。
| 自賠責基準 | 原則6100円 立証があれば1万9000円を限度としてその額 |
| 任意保険基準 | 事故前3か月間の総支給額÷90日が多い |
| 裁判基準(弁護士基準) | 事故前3か月間の総支給額÷実稼働日数 |
任意保険基準は、事故前3か月間の総支給額÷90日が多いですが、裁判基準(弁護士基準)だと事故前3か月間の総支給額÷実稼働日数での計算が可能です。
こちらも例をもとに見ていきます。
事故前3か月間の収入が、月額30万円のBさんの場合、
任意保険基準だと、(30万円×3か月)÷90日=1万円となります。
Bさんが月20日勤務だとすると、裁判基準(弁護士基準)では、
(30万円×3か月)÷(20日×3か月)=1万5000円となります。
このように、裁判基準(弁護士基準)では基礎日額が最も高額になることが多いです。
【職業別】休業損害の計算方法

ここからは、被害者の職業別(属性別)の、休業損害の計算方法をみていきましょう。
給与所得者の場合
給与所得者(会社員・公務員・アルバイト・パートなど)が交通事故による休業損害を請求する際の基本的な計算方法は次のとおりです。
| 基礎収入(日額)= 事故前3か月間の総支給額 ÷ 実稼働日数 |
この「事故前3か月間の総支給額」と「休業日数」は、勤務先に作成してもらう休業損害証明書によって証明します。
アルバイト・パートの場合も同様に計算しますが、シフト制でばらつきがある場合には、事故前3か月の平均日収を算出して日額とすることが一般的です。
会社役員の場合
会社役員の場合、役員報酬のうち「労務の対価」として支払われている部分のみが休業損害の基礎収入となります。
実質的に労働を行い、その対価として役員報酬を受け取っている場合には、その金額が基礎収入として認められます。
一方、実際の労働とは切り離された名目上の役員報酬(実質的には配当に近いもの)については、休業損害の対象外とされることになります。
| 東京地方裁判所平成13年2月16日判決(交通事故民事裁判例集34巻1号237頁)では、父親の経営する印刷会社の監査役であった男性(事故時30歳)について、会社の中心として働いていたことなどから、会社から得ていた報酬の全額を労務対価部分とし、休業損害の算定が行われました。 |
- 被害者が会社にとってどのような存在であったか
- 被害者が交通事故の影響で業務に従事できなくなった場合に代替する手段があるのか
- 被害者の休業中に会社にどのような不利益が生じたか
などを細かく立証していくことが求められます。
自営業・個人事業主の場合
自営業者・個人事業主の場合、原則として事故前年の確定申告による所得額を基に基礎収入が算出されます。
基礎収入(日額)= 前年の確定申告所得額 ÷ 365日
確定申告をしていない場合や、申告外所得がある場合には、基礎収入の認定が厳密に判断されます。
正確な証拠が存在する場合に限り、実際の所得が認められることもありますが、「高度の立証を要する」とされており、証拠の信頼性が厳しく問われます。
また、休業中も継続して発生する固定経費(家賃・従業員給与など)は休業損害に含めることができますが、休業すれば発生しなくなる流動経費(材料費など)は対象外です。
確定申告書の費目でいうと、
- 租税公課
- 利子割引料
- 損害保険料
- 修繕費
- 地代家賃
- 支払手数料
- 減価償却費
- リース料
- 諸会費
については概ね裁判例の傾向としても、休業損害の算定における基礎収入に含めることが認められやすい固定経費です。
- 水道光熱費
- 通信費
- 接待交通費
などは、その営業の実態などによって認められる可能性もあります。
学生の場合
学生がアルバイトをしており、交通事故被害に遭ったことでそのアルバイトを休まざるを得なくなった場合、
そのアルバイト収入が減少したことに対して休業損害を請求できます。
このアルバイト収入の減少分の請求の考え方は、給与所得者の場合と同様で、休業損害証明書をもとに基礎日額×休業日数という計算を行うことになります。
アルバイトなどの収入がない学生の場合には、基本的に休業損害の請求はできません。
ただし、就職が遅れてしまうことによる損害は認められます。
| 東京地方裁判所平成12年12月12日判決(交通事故民事裁判例集33巻6号1996頁)では、事故により留年し、1年半の就職遅れが生じてしまった大学生(21歳男性)について、
賃金センサス男性・大卒・20歳~24歳平均を基礎に、就職が遅れた期間分の休業損害、計479万円を認めています。 |
専業主婦(家事従事者)の場合
専業主婦(主夫)は給与を得ていませんが、家事労働の経済的価値が認められるため、休業損害の請求が可能です。
基礎収入は、厚生労働省が実施している賃金構造基本統計調査(賃金センサス)の「産業計・企業規模計・学歴計・女性労働者の全年齢平均賃金」を使用します。
裁判基準では、この基礎収入に基づき日額約1万円が目安となります(自賠責基準では日額6,100円)。
専業主婦(家事従事者)の方は、実休業日数の把握が難しいため、
治療経過や症状推移を見ながら、家事労働における休業割合を考慮しながらの算定方法(逓減方式)が用いられることが多いです。
兼業主婦(パート・アルバイトと家事を兼ねている方)の場合は、実際の賃金収入と賃金センサス上の金額のいずれか高い方を基礎収入として計算します。
無職・失業者の場合
事故当時に無職であった方については、原則として収入がないため休業損害の請求は困難です。
ただし、事故がなければ就労していた蓋然性が高いと認められる場合(例:求職活動中であった場合、定年退職直後であった場合など)には、例外的に休業損害が認められることがあります。
弊所でも、事故後退職してしまった被害者の方について、退職後の休業損害を獲得した事例がございます。
このような場合は証明が難しい側面もあるため、弁護士に相談されることをお勧めします。
休業損害を請求から受け取るまでの流れ

休業損害をはじめ、交通事故被害に遭った際の賠償金は、原則として示談締結時や裁判終結時など、損害額が確定されたタイミングで一括で支払いがされます。
しかしながら、事故に遭い、収入が減少している状態が続く中で、示談締結を待つというのは被害者にとって酷です。
ですから、休業損害に関しては内払いというかたちで、示談締結前に支払いを受けることができる場合があります。
以下はその流れのご説明です。
① 医療機関で診断書・領収書を入手する
事故後は速やかに医療機関を受診し、診断書を取得します。この診断書が、業務に就けない状態であることの根拠となります。
加害者側保険会社による治療費の一括対応が行われているケースでは、保険会社が自ら診断書を取得しますので、
この手続は不要です。
② 勤務先に休業損害証明書の作成を依頼する
会社に対して、事故前の給与実績・休業日数・休業期間を記載した「休業損害証明書」の作成を依頼します。
社判で印鑑を押してもらったりと、作成に当たっては注意すべきポイントがあります。
書類にミスがあると支払が遅れてしまうため、会社には気を付けて作成を依頼しましょう。
③ 必要書類を保険会社に提出する
休業損害証明書、源泉徴収票などをまとめて加害者側の保険会社に提出します。書類提出後、通常は1〜2週間程度で支払いがなされます。
④ 定期的に書類を提出して随時受領する
治療が長期にわたる場合は、月ごとに休業損害証明書を更新・提出することで、毎月単位で休業損害を受け取ることができます。
ただし、内払いはあくまで保険会社側のサービスです。
保険会社としても、損害が確定する前の支払いはリスクを伴いますから、打ち切りを言われることも多いです。
心身に大きな負担がかかっている中ではありますが、
- 働ける時はできるだけ働く
- 難しいときには弁護士に依頼するなどして交渉を行う
などの対応が必要になります。
⑤ 治療終了(症状固定)後に最終的な精算を行う
症状固定または治癒の後、すべての損害について示談交渉を行い、最終的な賠償金を受領します。
内払いが打ち切られたとしても、最終的な示談交渉の場においては、打ち切り後の休業損害の発生を立証できれば、その部分の回収も可能です。
関連記事:交通事故後の休業補償(休業損害)、いつもらえる?【弁護士解説】
休業損害を請求する際の必要書類

休業損害の請求に必要な書類は、職業によって異なります。
給与所得者(会社員・アルバイト・パート)
- 休業損害証明書:勤務先が作成。休業期間・事故前給与・休業日数などを記載
- 源泉徴収票(前年分):前年の収入を証明
- 給与明細(源泉徴収票が提出できないケース):基礎収入の算出に使用
- 診断書:療養の必要性を証明 一括対応中であれば不要
自営業・個人事業主
- 確定申告書:基礎収入を証明する最重要書類
- 帳簿・売上台帳:事故前後の収入比較に使用
- 診断書:療養の必要性を証明 一括対応中であれば不要
専業主婦(主夫)
- 住民票:同居家族の有無を証明
- 家事従事者自認書:同居家族のために家事を行うものであることを証明
- 家事労働における記録:入院・通院中の家事の支障状況を記した記録
- 診断書:療養の必要性を証明 一括対応中であれば不要
上記は代表的な書類であり、保険会社から追加書類を求められる場合もあります。
不備があるとスムーズに請求が進まないため、事前に弁護士に確認することをお勧めします。
休業損害請求を行う際の注意点

必要書類と証拠は事前に揃える
休業損害の請求では、事故による収入減少を客観的に証明できる書類が不可欠です。
診断書・休業損害証明書・給与明細・源泉徴収票など、必要な書類は早期に漏れなく揃えておくことが大切です。
漏れがあると請求書類の再提出が必要になるなど、支払いが遅れる原因になります。
休業損害証明書を正確に作成してもらう
休業損害証明書は、会社(雇用主)に作成を依頼する書類です。
休業期間・休業した理由・給与の支払い状況・事故前の収入などが正確に記載されている必要があります。
記載内容に誤りや不備があると、保険会社から修正を求められたり、正当な金額が認定されなかったりすることがあります。
勤務先に依頼する際は、記載内容をしっかり確認した上で提出するようにしましょう。
場合によっては弁護士に依頼し、弁護士と勤務先とでやり取りをしてもらうことも有用です。
虚偽申告や重複請求をしない
休業損害証明書に虚偽の内容を記載することは絶対にいけません。
証拠としての信用性を欠き、休業損害の立証が困難になることはもちろん、最悪の場合詐欺罪に問われる可能性さえあります。
実際の収入に基づいて算出する
休業損害は、事故前の実際の収入を基礎として計算されます。
実態と異なる収入を申告することは認められませんが、一方で過少に申告してしまうと不利益を被ることになります。
自営業者の場合、確定申告の所得が実態より低い場合には、帳簿や売上台帳などの資料を活用して実際の収入を証明する取り組みが重要です。
ただし、この実際の収入の立証はかなり厳密に行う必要があります。弁護士と相談しながら適切な資料を揃えることをお勧めします。
保険会社の示談案を安易に受け入れない
加害者側の保険会社が提示する示談案(休業損害の金額を含む)は、自賠責基準や任意保険基準に基づいた低い水準であることが少なくありません。
特に休業損害については、休業日数の認定期間を短く見積もられたり、基礎収入を低く評価されたりするケースがあります。
提示された金額に納得がいかない場合や、十分な説明がない場合には、署名・押印をする前に必ず弁護士に相談することを強くお勧めします。
弁護士基準で損害額を確認する
休業損害を含む損害賠償額は、弁護士(裁判)基準で計算するのが最も被害者に有利です。
自営業者や主婦、無職者の場合にはそもそも基礎日額が大幅に増額する可能性がありますし、
給与所得者の場合であっても、休業損害の算定期間が延びることもあります。
弁護士基準での損害額の確認に当たっては、無料相談を行っている弁護士に相談することが有用でしょう。
労災に該当する場合は労災保険の休業補償を検討する
業務中または通勤途上の交通事故であれば、労災保険の適用が受けられます。
労災保険の休業補償給付は、休業4日目以降、給付基礎日額の60%(さらに特別支給金20%を加えると計80%)が支給されます。
労災保険を活用することで、自賠責保険・任意保険の休業損害請求との間で有利な組み合わせを選択できる場合があります。
どちらを優先すべきかは個別の状況によって異なるため、弁護士に相談されることをお勧めします。
先払いに対応してもらえない場合は被害者請求を考える
加害者側の保険会社が休業損害の先払い(内払い)に応じない場合には、
被害者が直接、加害者が加入している自賠責保険会社に対して「被害者請求」を行うことができます。
被害者請求を利用することで、示談成立を待たずに一定の補償を受けられる場合があります。
手続きが複雑になることも多いため、弁護士のサポートを受けながら進めることをお勧めします。
交通事故と有給休暇の基礎知識

有給休暇の概要と取得条件
有給休暇とは、労働者が通常の給与を受け取りながら休むことができる権利です。
日本の労働基準法第39条では、入社後6か月以上が経過し、全労働日の8割以上出勤していることを条件として、
年次有給休暇が付与されます(最低10日〜最高20日)。
取得日数は勤続年数に応じて増えていきます。
| 労働基準法第39条「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」 |
労働者はこの有給休暇を、私的な目的・旅行・病気治療などに自由に利用することができます。
交通事故による休業と有給休暇の関係
交通事故に遭遇した際には、けがの治療や通院が必要になることがあり、仕事を休まざるを得ない場合があります。
このような場合に、労働者が有給休暇を利用して休むことがあります。
この時、有給休暇を使っているため通常通りの給与が支払われることを考えると、見かけ上は収入損失がないように見えます。
しかし、本来であれば自由に使えたはずの有給休暇を交通事故のために消費することは、労働者にとって経済的な損害とみなすことができます。
したがって、交通事故に関連して消化した有給休暇については、休業損害として請求することができます。
休業損害に関するよくある質問

有給休暇以外の法定休暇・特別休暇を使用した場合は休業損害を請求できますか?
有給休暇以外の法定休暇や特別休暇を使用した場合の扱いは、当該休暇の性質によって裁判所の判断が異なります。
有給休暇を使用したケース
先ほども見たように、有給休暇を使用した場合には、休業損害として請求ができます。
| 東京地方裁判所平成14年8月30日判決(交通事故民事裁判例集35巻4号1193頁)では、自宅で静養するために合計13日間の有給休暇を使用した場合につき、
有給休暇の財産的価値に鑑み、前年給与所得を365日で割った金額が日額とされ、その13日分(実使用日数)が休業損害として認められています。 |
| 神戸地方裁判所平成13年1月17日判決(交通事故民事裁判例集34巻1号23頁)では、年次有給休暇について、
本来なら自分のために自由に使用できる日を事故による傷害のために欠勤せざるを得ない日に充てたとして、休業損害算定の基礎日数とされています。 |
このように、交通事故のために有給休暇を使用せざるを得ない場合には休業損害として請求できることが実務でも通底しています。
有給休暇以外の法定休暇・特別休暇を使用したケース
| 福岡地方裁判所小倉支部平成27年12月16日判決(自保ジャーナル1981号90頁)では、会社員の男性が10日間の積立休暇(連続3日以上の私傷病に対して取得できる休暇)を使用した事案について、有給休暇と同様の財産的価値がある休暇であると認め、同休暇使用分についても休業損害として認定しています。 |
| 一方で、名古屋地方裁判所令和2年11月30日判決(交通事故民事裁判例集53巻6号1563頁)では、傷病休暇を使用した会社員の事案につき、傷病休暇は負傷または病気のため療養する必要がある場合に限って取得できるものであり、年次有給休暇のように時季を指定して使用できるものではないことなどを理由に、休業損害としての認定はしませんでした。 |
このように、当該休暇の性質により裁判所でも休業損害としての認定があるかどうかは変わってきますので、
有給休暇以外の法定休暇や特別休暇を使用した場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。
なお、事故に遭い入通院をすることによって働くことができず、それによって次年度以降の有給取得日数が減少するなどの影響が生じた場合には、
その取得できなかった有給休暇分を損害として請求できる場合があります(大阪地方裁判所平成20年9月8日判決(交通事故民事裁判例集41巻5号1210頁)等参照)。
交通事故による休業損害はいつまで貰えますか?
休業損害を請求できる期間は、原則として事故発生日から症状固定日(または治癒日)までです。
症状固定とは、医学的にこれ以上の改善が見込めない状態になったと医師が判断した日を指します。
症状固定後にも発生する収入の減少は、残った症状について後遺障害等級認定を申請し、後遺症逸失利益として別途請求することになります。
治療期間が長期にわたる場合、保険会社から「治療費の打ち切り」を提案されることがあります。
治療費が打ち切られると困るから、医師の判断より早く症状固定にしてしまう→休業損害の算定期間が短くなる、ということは避ける必要があります。
医師が治療継続を必要と判断している間は、保険会社の判断に従う必要はありません。
打ち切りを求められた場合には、速やかに弁護士に相談することをお勧めします。
休業損害は毎月もらえますか?
休業損害は、示談成立時に一括で受け取るのが原則ですが、
治療期間が長期にわたる場合には、毎月定期的に休業損害証明書を提出することで、毎月単位で受け取ることができます(内払い)。
通常、書類提出から1〜2週間で支払いがなされます。初回の請求の場合は審査に時間がかかることもありますが、
定期的に書類を提出することで以降はスムーズに支払いが行われることが多いです。
ただし、内払いはあくまで損害額が確定する前の支払いになるため、裁判基準満額の休業損害の支払いがされることは少ないです。
不足している部分については、最終的な示談交渉や裁判のタイミングでまとめて請求することになります。
弁護士法人小杉法律事務所では、被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
交通事故被害に遭い、休業損害についてお困りの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

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