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交通事故で有給休暇を使うと休業損害はどうなる?

2024.10.08

損害賠償請求

休業損害

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、

  • 交通事故のため休まざるを得なくなった損害に対する填補
  • 交通事故で有給休暇を使用した場合の取り扱い
  • 交通事故で有給休暇を除く法定休暇や特別休暇を使用した場合の取り扱い

について解説します。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、被害者側損害賠償請求専門弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。

休業損害について疑問をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

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交通事故と有給休暇の基礎知識

有給休暇の概要と取得条件

有給休暇とは、労働者が通常の給与を受け取りながら休むことができる権利です。

日本の労働基準法第39条では、労働者は一定の条件を満たすことで年次有給休暇を取得することができます。

 

具体的には、入社後6か月以上が経過し、全労働日の8割以上出勤していることが条件とされています。

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

取得日数は勤続年数に応じて増えていきます。労働者はこの有給休暇を、私的な目的、旅行、病気治療などに自由に利用することができます。

 

交通事故による休業と有給休暇の関係

交通事故に遭遇した際には、けがの治療や通院が必要になることがあり、仕事を休まざるを得ない場合があります。

このような休業が必要な場合に、労働者は有給休暇を利用して休む場合があります。

 

この時、有給休暇を使っているため通常通りの給与が支払われることを考えると、見かけ上は収入損失がないように見えます。

 

しかし、本来であれば自由に使えたはずの有給休暇を交通事故のために消費することは、労働者にとって経済的な損害とみなすことができます。

 

したがって、交通事故に関連して消化することになった有給休暇に対しては、休業損害を請求することができます

(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)2018年版収録 武富一晃裁判官講演「給与所得者の休業損害を算定する上での問題点」

自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁国土交通省告示第1号)第2の2⑴ 参照)。

 

 

休業損害とは何か?

休業損害の定義と対象

交通事故によって業務を休まざるを得なかった場合に生じる収入の減少を補うための賠償が、「休業損害」です。

これは、事故の治療やリハビリのために仕事を休む必要があった場合でも、収入の減少を補てんする目的で請求されるものです。

休業損害は、給与所得者、個人事業主はもちろん、家事従事者に対しても認められることがあります。

 

対象となるのは、事故前の収入を基に計算された日当であり、裁判基準や保険基準によって具体的な額が異なる場合があります。

 

給与所得者のための休業損害

給与所得者の場合、交通事故によるケガや治療のために勤務できなかった日数分の給与減少が休業損害として請求できます。

 

有給休暇取得時の休業損害請求の可否

交通事故により治療を受けるために有給休暇を取得した場合、その期間であっても休業損害の請求は可能です。

通常、有給休暇を使っている間は給与が支払われるため、見た目上は収入の減少はありません。

しかし、交通事故がなければ有給休暇を自由に使えたであろうことから、その権利を失ったことが財産的損害と評価されます。

このため、休業損害を請求することができるのです。有給休暇を使用した場合でも、事故前の収入をもとに休業損害を計算し、必要に応じて勤務先から『休業損害証明書』を作成してもらう必要があります。

 

 

実際の請求手続きと留意点

休業損害証明書の役割と申請方法

交通事故が原因で有給休暇を取得した場合、休業損害を請求するためには「休業損害証明書」が必要です。

この証明書は、勤務先に事故のための休業期間を証明してもらうもので、請求の根拠として重要な役割を果たします。

 

証明書には、事故前の給与実績や休業日数が明記されることが求められ、これを基に休業損害の計算が行われます。

申請方法としては、勤務先に証明書の作成を依頼し、適切に記入してもらった上で保険会社に提出します。

 

保険会社とのやり取りにおける注意点

保険会社と休業損害に関するやり取りをする際には、いくつかの注意点があります。

まず、交通事故後に有給休暇を使用した場合でも、休業損害が認められるケースがあるため、それを主張するための書類や証拠をしっかりと揃えておくことが重要です。

保険会社は、通常詳細な証拠や書類を求めるため、誤った情報を避け、正確な情報を提供しましょう。

また、交渉の際(特に日額)には、法律や保険に関する専門的な知識が必要になることがあるので、弁護士や専門家に相談することを検討しましょう。

 

有給休暇以外の法定休暇や特別休暇を使用した場合の休業損害は?

有給休暇を使用したケース

東京地方裁判所平成14年8月30日判決(交通事故民事裁判例集35巻4号1193頁)では、自宅で静養するために合計13日間の有給休暇を使用した場合につき、

有給休暇の財産的価値に鑑み、前年給与所得を365日で割った金額が日額とされ、その13日分(実使用日数)が休業損害として認められています。

 

神戸地方裁判所平成13年1月17日判決(交通事故民事裁判例集34巻1号23頁)では、年次有給休暇について、

本来なら自分のために自由に使用できる日を事故による傷害のために欠勤せざるを得ない日に充てたとして、休業損害算定の基礎日数とされています。

 

このように、交通事故のために有給休暇を使用せざるを得ない場合には休業損害として請求できることが実務でも通底しています。

 

では、有給休暇以外の特別休暇を取った場合も休業損害は認められるでしょうか?

 

有給休暇以外の法定休暇や特別休暇を使用したケース

福岡地方裁判所小倉支部平成27年12月16日判決(自保ジャーナル1981号90頁)では、会社員の男性が10日間の積立休暇(連続3日以上の私傷病に対して取得できる休暇)を使用した事案について、

有給休暇と同様の財産的価値がある休暇であるものと認め、同休暇使用分についても休業損害として認定しています。

 

一方で、名古屋地方裁判所令和2年11月30日判決(交通事故民事裁判例集53巻6号1563頁)では、傷病休暇を使用した会社員の事案につき、

傷病休暇は負傷又は病気のため療養する必要がある場合に限って取得できるものであり、

年次有給休暇のように時季を指定して使用できるものではないことなどからすると、

傷病休暇の取得によって年次有給休暇を使用した場合と同様の財産的損害があったとみることは困難であるとして、傷病休暇を使用した分に関しては休業損害としての認定はしませんでした。

 

このように、当該休暇の性質により裁判所でも休業損害としての認定があるかどうかは変わってきますので、

有給休暇以外の法定休暇や特別休暇を使用する場合には、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

なお、事故に遭い入通院をすることによって働くことができず、それによって次年度以降の有給取得日数が減少するなどの影響が生じた場合には、

その取得できなかった有給休暇分を損害として請求することができます

(大阪地方裁判所平成20年9月8日判決(交通事故民事裁判例集41巻5号1210頁)及びさいたま地方裁判所令和1年9月5日判決(交通事故民事裁判例集52巻5号1117頁)等参照)。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。

交通事故被害に遭い、休業損害について疑問をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。

弁護士小杉晴洋の詳しい経歴等はこちら

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