交通事故の慰謝料とは?平均相場はいくら?慰謝料の種類や基準・誰が払うかについて徹底解説!
2025.01.20
損害賠償請求

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求専門弁護士が、
- 交通事故の慰謝料とは何か
- 慰謝料の種類と算定基準・金額相場
- ケース別の計算例
- 慰謝料以外に請求できる損害
- 慰謝料の基本的な支払いルールと流れ
- 支払われない場合の対処法・注意点
- 弁護士に依頼するメリット
について解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、被害者側損害賠償請求専門弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
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交通事故の慰謝料とは

そもそも交通事故被害における慰謝料とはなんでしょうか。
どうして交通事故の被害に遭うと慰謝料の請求ができるのでしょうか。
それは、民法709条と710条に答えがあります。
| 民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 |
| 民法710条「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」 |
民法710条にある「財産以外の損害」が精神的苦痛を指しており、その精神的苦痛を慰謝する(なぐさめいたわる)ための賠償が慰謝料ということになります。
被害者はここにいう「権利又は法律上保護される利益」を侵害された者ということになりますから、法律上損害賠償を請求する権利が生じるということになります。
慰謝料というのは精神的苦痛に対して支払われる金銭です。
精神的苦痛は人それぞれですから、評価があいまいにならざるを得ません。
とはいえ何らの基準がないというのも平等性に欠けますから、損害賠償請求実務上はこの「慰謝料」を大きく3つに分け、それぞれについて基準に基づいて計算をする運用になっています。
ここではその3つの慰謝料の定義について確認し、それぞれの計算方法や基準、相場は後ほど解説します。
交通事故慰謝料の種類

交通事故の慰謝料は大きく3種類に分かれます。
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、文字のとおり入通院による精神的苦痛に対する慰謝料です。
人身事故被害に遭うと、怪我を負いその痛みや苦しみを負うことになります。
また、入通院による治療を余儀なくされることで、手間がかかったり、事故に遭わなければできていたことができなくなったりします。
こういった入通院期間の精神的苦痛に対して支払われるのが入通院慰謝料です。
原則として入通院期間の長さを基礎として金額が算定されますが、
- 重傷の場合
- 生死が危ぶまれる状態が継続したとき
- 麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき
- 手術を繰返したとき
などは入通院期間の長短にかかわらず別途増額がされます。
後遺障害慰謝料
後遺症慰謝料は、後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料です。
バイク事故で足を切断してしまった場合などがイメージしやすいですが、
交通事故によって生じた怪我の中には、治療を続けても良くならない=事故に遭う前の状態に戻らないというケースもあります。
こういった場合に毎年毎年後遺症によってどういう支障が生じてどういう精神的苦痛が生じたからこの年の慰謝料はいくらで、というような計算や支払いの手続をするのは現実的ではありません。
ですから、損害賠償請求実務においては、事故により生じた怪我についてある程度の期間治療を続けたものの、これ以上良くならないという状態に達した時点を「症状固定」とし、
この「症状固定」の時点で残存している症状を「後遺症」としたうえで、この「後遺症」が残ったことによる精神的苦痛については残った後遺症の部位や程度により概算する運用が通底しています。
なお、概ね後遺障害等級2級以上に該当するような重篤な後遺障害の場合には、被害者本人の慰謝料に加えて、
近親者の方に固有の慰謝料が別途請求できる場合があります(最高裁判所第三小法廷判決 民集第12巻12号1901頁)。
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、被害者本人が受けた苦しみや、生命を奪われた苦痛に対する慰謝料ですが、
民法711条に基づいて被害者を失った苦痛を抱えている近親者にも固有の慰謝料請求権が認められます。
| 民法711条「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」 |
交通事故慰謝料の算定基準

次に見ていくのは慰謝料の計算方法です。
慰謝料の計算方法には大きく分けて3つの基準があり、それぞれに特徴があります。
順にみてみましょう。
自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険における支払基準である、
「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」のことです。
この自賠責基準は金額が明確である一方、3つの基準としては最も低額な基準になります。
なぜかというと、自賠責保険という保険自体が、
最低限度の補償を担保することにより被害者保護を図るセーフティーネットとして設けられているものだからです。
| 自動車損害賠償保障法第1条「この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立するとともに、これを補完する措置を講ずることにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。」 |
被害者への迅速かつ平等な支払を実現するために設けられた最低限の基準ですから、金額としては3つの基準の中で最も低くなっています。
任意保険基準
自賠責基準が被害者にとって適切な慰謝料算定基準でないことは容易に予想がつくかもしれません。
なぜなら自賠責により支払われる保険金だけで被害者が適切な慰謝料を受け取ることができるのであれば加害者側が任意保険に加入する意味がなくなるからです。
上でもみたように任意保険は自賠責保険に上乗せするために各運転手が加入して保険料を別途支払っている保険ですから、
任意保険基準は自賠責基準より高いか少なくとも同じでなければなりません。
ここで任意保険会社担当者の気持ちになって考えてみましょう。
任意保険会社の利益を極めて簡単に理解しようとすれば、
利益=被保険者から支払われた保険料総額-被害者等に支払った保険金総額
ということになります。
任意保険会社とすれば被害者等に支払う保険金総額が少なければ少ないほど自社の利益が大きくなるという関係にあります。
任意保険会社は一括対応を行う場合、被害者に対して支払った保険金のうち自賠責保険が本来支払うべき部分に関しては、
自賠責保険に求償をかけることで回収することができ、自社の手出しを少なくすることができます。
したがって任意保険会社は、自賠責基準を参考に、同じか少し超える程度の金額で、かつ説明がつく限りで最も低い金額を基準としたいということになります。
これが任意保険基準であり、被害者にとっては到底適切な基準でないことがお分かりいただけると思います。
弁護士基準(裁判基準)
被害者にとって最も適切な基準が、この裁判基準(弁護士基準)です。
この裁判基準とは、過去の裁判例などを基に公益財団法人日弁連交通事故相談センターが策定した基準であり、
損害賠償請求実務で必須といえる「赤い本」と呼ばれる『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』という形でまとめられている基準です。
3つの基準の中で最も高額かつ、事故類型や被害者個人に特有の事情などを考慮して柔軟に慰謝料額を決定することができる基準です。
被害者が適切な慰謝料を獲得するためにはこの裁判基準(弁護士基準)を用いた計算がほぼ必須といえ、そのためには専門弁護士への依頼が極めて重要です。
それぞれをまとめたのが以下の表になります。
| 自賠責基準 | 損害保険料率算出機構が定める基準 最低限度額 |
| 任意保険基準 | 任意保険会社が独自に定める基準 自賠責基準と同じかやや高い |
| 裁判基準(弁護士基準) | 裁判所・弁護士が用いる最も公正な基準
最も高く、被害者にとって最も適切 |
交通事故慰謝料の平均相場・金額目安

入通院慰謝料の場合
自賠責基準による相場
自賠責基準における入通院慰謝料の計算式は次のとおりです。
| 入通院慰謝料 = 4,300円 × 治療日数 |
この「治療日数」は、「被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とする。」とされていて、
実際の計算は、入通院期間と、実入通院日数の2倍のどちらか短い方の日数が採用されます。
たとえば、むちうちで3か月通院(実通院日数30日)の場合には、4300円×30日×2=25万8000円が目安となります。
弁護士基準による相場
裁判基準における入通院慰謝料の計算は、原則として入通院の期間に応じて行われます。
先ほどの「赤い本」の中では、入通院慰謝料(傷害慰謝料)の計算に用いる表として、別表Ⅰと別表Ⅱが設けられています。
別表Ⅱは別表Ⅰと比較して少し金額が抑えられている基準ですが、原則として別表Ⅰを用いることとされています。
例外的に別表Ⅱが用いられる場合は、「むち打ち症で他覚所見が無い場合等(軽い打撲・軽い挫創等)」とされています。
具体的な傷病や通院期間を例に挙げながら計算のやり方を見ていきます。
弁護士基準(別表Ⅱ):入通院慰謝料の主な目安(軽傷・むちうち)
| 通院期間1か月 | 19万円 |
| 通院期間2か月 | 36万円 |
| 通院期間3か月 | 53万円 |
| 通院期間6か月 | 89万円 |
弁護士基準(別表Ⅰ):入通院慰謝料の主な目安(重傷・骨折など)
| 通院期間1か月 | 28万円 |
| 通院期間2か月 | 52万円 |
| 通院期間3か月 | 73万円 |
| 通院期間6か月 | 116万円 |
自賠責基準と弁護士基準では、同じ通院期間でも数十万円単位の差が生じることがわかります。
後遺障害慰謝料の場合
この後遺症慰謝料については、3つの基準(自賠責基準・任意保険基準・裁判基準)で金額に差異はあれど、
「認定された後遺障害等級に応じて金額が決定される」という決定方法自体は通底しています。
後遺障害等級は、被害者の方一人一人に残っている症状を平等に評価するための方法として実務上広く用いられており、
自賠責保険も、任意保険も、裁判所も、被害者の後遺症を判断する上ではまずはどの後遺障害等級に該当するかという視点で考えます。
この後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令における後遺障害等級表に準じて決定されます。
自賠責基準による相場
自賠責基準の後遺障害慰謝料は認定された後遺障害等級によって以下のとおりに定められています。
| 別表第1第1級 | 1650万円 |
| 別表第1第2級 | 1203万円 |
| 別表第2第1級 | 1150万円 |
| 別表第2第2級 | 998万円 |
| 第3級 | 861万円 |
| 第4級 | 737万円 |
| 第5級 | 618万円 |
| 第6級 | 512万円 |
| 第7級 | 419万円 |
| 第8級 | 331万円 |
| 第9級 | 249万円 |
| 第10級 | 190万円 |
| 第11級 | 136万円 |
| 第12級 | 94万円 |
| 第13級 | 57万円 |
| 第14級 | 32万円 |
弁護士基準による相場
弁護士基準の後遺障害慰謝料は自賠責基準と比べて大幅に高額になります。
| 第1級 | 2800万円 |
| 第2級 | 2370万円 |
| 第3級 | 1990万円 |
| 第4級 | 1670万円 |
| 第5級 | 1400万円 |
| 第6級 | 1180万円 |
| 第7級 | 1000万円 |
| 第8級 | 830万円 |
| 第9級 | 690万円 |
| 第10級 | 550万円 |
| 第11級 | 420万円 |
| 第12級 | 290万円 |
| 第13級 | 180万円 |
| 第14級 | 110万円 |
たとえば後遺障害等級14級の場合、自賠責基準の32万円に対し、弁護士基準では110万円と約3.4倍の差があります。
後遺障害診断書作成時に弁護士に相談すべき理由
交通事故における後遺障害等級の認定は主に自賠責損害調査事務所における調査で行われます。
この自賠責損害調査事務所における調査は、迅速に行うために原則として書面による審査となっています。
後遺障害等級の認定の申請時に必ず提出しなければならない書類として「後遺障害診断書」がありますが、
この「後遺障害診断書」の記載によって適切な後遺障害等級の認定可能性が大きく変わると言っても過言ではありません。
「後遺障害診断書」の作成は医師の専権事項ですが、医師は患者の症状を少しでも改善することについては専門家ですが、
「どう診断書を記載すれば後遺障害等級の認定基準に該当するか」ということに関しては専門家ではありません。
この事項の専門家が弁護士であり、だからこそ弁護士に相談することで大いに後遺症慰謝料が変わる可能性があります。
弁護士法人小杉法律事務所では後遺障害診断書の作成に当たり、記載時に気を付けていただきたいポイントや実施していただきたい検査をまとめた依頼書という書類をお送りすることで、
主治医に適切な後遺障害診断書を作成していただけるよう努めています。
場合によっては後遺障害等級認定の観点からみると不十分な記載の後遺障害診断書をご作成いただいた場合には、ご面談などを通して訂正をしていただくようにしています。
適切な後遺障害等級認定を得ることが適切な後遺症慰謝料を得るための第一歩です。
近親者固有の慰謝料が認められる場合
ところで、遷延性意識障害や重度高次脳機能障害などが残存するような場合、
被害者本人が事故以前と同じ日常を送れなくなったという精神的苦痛が甚大なことはもちろんですが、
介護の必要性などが生じると被害者のご家族にも負担がのしかかることになります。
このような場合には近親者固有の慰謝料が認められることがあります。
最高裁判所第三小法廷昭和33年8月5日判決(民集12巻12号1901頁)では、「死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合には、近親者にも慰謝料請求権が認められる」と判示されており、
現在の実務上もこの考え方は通底しています。
死亡慰謝料の場合
自賠責基準による相場
自賠責基準による死亡慰謝料は、請求権者の数や被扶養者の数によって決まります。
| 請求権者1名 | 死亡した本人の慰謝料400万円+550万円=950万円 |
| 請求権者2名 | 死亡した本人の慰謝料400万円+650万円=1050万円 |
| 請求権者3名以上 | 死亡した本人の慰謝料400万円+750万円=1150万円 |
| 被害者に被扶養者がいるとき | 上記金額に200万円を加算 |
なお、自賠責保険全体の死亡保険金の上限は3,000万円です。
弁護士基準による相場
弁護士基準における死亡慰謝料は、被害者の属性に応じて次のような目安が設定されています(近親者慰謝料を含む)。
| 被害者が一家の支柱である場合 | 2800万円 |
| 被害者が母親や、配偶者である場合 | 2500万円 |
| 被害者がその他(独身の男女、子供、幼児等)である場合 | 2000万円~2500万円 |
また、「具体的な斟酌事由により、増減されるべきで、一応の目安を示したものである。」という注意があります。
死亡慰謝料は近親者の方もそうですが、本来的にはお亡くなりになった被害者本人の精神的苦痛を評価したもののはずですから、
金額に差異があるのは少し違和感があるかもしれません。
この基準の1つ前の基準が示された時代の背景には、「昭和時代の家族構成のイメージを、『老夫婦、働き盛りの夫(一家の支柱)、主婦の妻(母親、配偶者)、子供』とし、
それぞれが死亡した場合に遺された家族・家計への影響を考え、人ひとりの価値に差があるものではなく、慰謝料の補完性の観点から差を設けるとの考え」
(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2014年版』慰謝料基準に関する慰謝料検討PT報告 より引用)がありました。
ところが、「人生を全うして生きてきた年齢の高い人と人生を享受することなく命を失った若年の人を同列には評価できないという点、
現在の核家族化のなかで子供を失った両親の悲嘆、精神的苦痛は極めて大きなものであることなどの点」から、
もちろん1つ前の基準同様に遺された家族・家計への影響は無視できないものの、子供を含む若年者の精神的苦痛がより評価されるようになり、
母親、配偶者及びその他の方の慰謝料基準が増額する形となりました。
昨今は現在の基準が示された2014年よりさらに共働きの家庭が増えていますから(厚生労働省 共働き等世帯数の年次推移より)、
そもそも一家の支柱と母親、配偶者を区別する基準がそのまま妥当しない時代に入っているのかもしれません。
このように、弁護士(裁判)基準は、注意書きのとおり言ってしまえば一応の目安にすぎず、時代に合わせた変化が必要なものでもあると思います。
だからこそ、具体的な斟酌事由(被害者の方お一人お一人の生前の生活)を適切に主張していくことで、金額は大きく変わります。
そこで重要になるのが刑事裁判への被害者参加です。
被害者参加とは平成19年の刑事訴訟法の改正により導入された制度で、
被害者やご遺族が刑事裁判で心情を陳述したりといった参加ができる制度のことです。
この被害者参加の際の心情意見陳述などは、
加害者(被告人)及び裁判官に被害者側が直接思いを伝えることができるために、
裁判官がそれを斟酌してくれ、被告人の刑事責任が重いものとなる傾向があります。
また、民事の損害賠償請求においても心情意見陳述で提出した陳述書は証拠として用いることができ、
例えば被害者の死亡によりご家族が受けた精神的苦痛の大きさを証明する証拠となったり、
被害者の兄弟姉妹の方が民法711条所定の者と同視しうるほど被害者のことを大切に想っていたことを証明する証拠となったりすることで、
死亡慰謝料を増額する事由になります。
弁護士法人小杉法律事務所では民事損害賠償請求に活かせるというところもありますが、
被害者参加はご家族にとって、事故後一つ前に進むきっかけになる場所でもあると考えており、積極的に参加をお勧めしております。
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【ケース別】交通事故による慰謝料の計算例

軽症(むちうち)の場合
前提条件:過失割合10対0(もらい事故)、後遺症なし、3か月通院(実通院日数30日)
| 自賠責基準 | 25万8000円(4300円×30日×2) |
| 弁護士基準(別表Ⅱ) | 53万円 |
同じ3か月通院でも、自賠責基準と弁護士基準では約40万円の差が生じます。
重傷(骨折)の場合
前提条件:入院1か月・通院7か月(実入通院日数60日)
| 自賠責基準 | 51万6000円(4300円×60日×2) |
| 弁護士基準(別表Ⅰ) | 157万円 |
骨折などの重傷の場合は自賠責基準と弁護士基準の差がさらに大きくなり、100万円以上の差が生じることもあります。
複雑骨折で入院3か月通院6か月の入通院を行った場合
複雑骨折で入院3か月通院6か月の入通院を行った場合はどうなるでしょうか。
今回の場合は重傷であり、別表Ⅰを用いて計算するという原則が適用される場面ですから、
別表Ⅰより211万円が目安となります
(ちなみに自賠責基準で計算した場合には最大でも116万1000円となります。)。
ただし、赤い本には「こういった事情がある場合には表の基準より慰謝料を増額すべき」という例が列挙されています。
例えば、
- 「入院待機中の期間及びギプス固定中等安静を要する自宅療養期間は、入院期間とみることがある。」
- 「傷害の部位、程度によっては、別表Ⅰの金額を20%~30%程度増額する。」
- 「生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰返したときなどは、入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮する。」
といったルールがあります。
したがって先ほどの例にあげた被害者がギプス固定を1か月行っていたような場合には、入院4か月通院5か月と同視できるので、233万円が一つの目安になります。
また、複雑骨折は傷害の程度が大きく、かつ手術を繰返すこともありますから、更に増額も考えられます。
このように、個別具体的な事情により基準を超えた慰謝料が相当と認められる場合もありますので、
そういった事情を漏らさず請求に載せていくことが重要です。
過失が10対0の場合
過失割合が10対0(もらい事故)の場合、過失相殺は行われないため、算定された慰謝料の全額を請求することが可能です。
ただし、過失が10対0であっても、被害者の保険会社は示談代行サービスを利用できません(弁護士法上の理由)。
そのため、加害者側の保険会社と被害者自身が直接交渉するか、弁護士に依頼する必要があります。
保険会社から低額な示談金を提示されるリスクがあるため、弁護士への相談を強くお勧めします。
物損のみの場合
物損事故(人身被害がない事故)では、慰謝料の請求は原則認められません。
物損事故で請求できるのは、車両の修理費・代車費用・評価損(格落ち)などの財産的損害のみです。
事故後に体の痛みや不調がある場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。
受診することで、慰謝料を含む適正な補償を受けることが可能になります。
交通事故で慰謝料以外に請求できる損害・賠償金

交通事故被害に遭った場合に被害者に発生する損害は大きく
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
の3種類に分けられます。
慰謝料以外にも以下のような損害を請求することが可能です。
積極損害
積極損害とは、事故によって実際に出費が生じた財産的損害です。
- 治療費:病院での診察・手術・入院などに要した費用
- 通院交通費:通院のために要したバス・タクシー代など
- 入院雑費:入院中の日用品費など(1日あたり1,500円が目安)
- 付添看護費:入院中に付添が必要な場合の費用
- 将来の治療費:症状固定後も継続して必要な治療費
- 後遺障害に伴う将来の介護費:重度後遺障害によって必要になる介護費用
消極損害
消極損害とは、事故がなければ将来得られたはずなのに得られなくなった収入や利益です。
- 休業損害:事故による怪我で仕事を休まざるを得なかった期間の収入減少
- 後遺症逸失利益:後遺障害が残ったことで将来的な労働能力が低下・喪失することで得られなくなる収入(基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数)
- 死亡逸失利益:被害者が死亡しなければ将来にわたって得られたはずの収入
交通事故の慰謝料の基本的な支払いルール

加害者が支払う場合
民法上及び自動車損害賠償保障法上は加害者が賠償金を支払うのが原則となっています。
| 民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 |
| 民法710条「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合(中略)、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」 |
| 自動車損害賠償保障法3条「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」 |
ただし、交通事故の適切な慰謝料は数十万から最大で数億円にのぼることもあり、その全額について加害者本人に支払いを求めるというのは現実的ではありません。
加害者が任意保険に未加入の場合や、保険適用外の損害賠償額を超える部分が生じた場合に、加害者が直接支払うケースとなります。
加害者の任意保険会社が支払う場合
多くの運転者が任意保険に加入していることから、実際には保険会社が被害者に慰謝料を支払う場合がほとんどです。
任意保険は自賠責保険よりも広範な補償を提供しており、損害賠償額や慰謝料の支払いにおいて重要な役割を果たします。
本来保険会社は示談交渉を代理して行うことはできませんが、約款上サービスとして明記されている対人賠償保険と対物賠償保険の支払い、
つまり加害者側として被害者に対して保険金を支払う場合の示談については代行することができる仕組みとなっています。
この仕組みにより、実務上被害者は加害者本人ではなく加害者の任意保険会社の担当者と示談交渉を行うことが多くなっています。
交通事故の慰謝料請求の注意点

交渉時の注意点
交通事故の慰謝料を請求する際、交渉では慰謝料の相場や基準を理解していることが大切です。
任意保険会社が提示してくる基準や自賠責基準は、被害者側にとって最も適切な慰謝料金額には遠く及ばないことがほとんどです。
適切な慰謝料の獲得のためには、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)に記載がある裁判基準での請求が必須です。
弁護士費用の差し引きを考えても受け取ることができる慰謝料額がアップすることも多いため、一度弁護士に相談することをお勧めします。
法的手段を考慮する際の注意点
任意保険未加入で加害者本人と交渉するような場合や、任意保険会社との交渉がうまく行かない場合、法的手段(調停・ADR・訴訟)を考慮することもあります。
訴訟を起こすかどうかの判断は慎重に行う必要があり、その際の時間や費用についても考慮する必要があります。
交通事故の慰謝料が支払われるまでの流れ

交通事故発生から示談成立まで
交通事故が発生した場合、被害者はまず治療を受ける必要があります。
この治療の段階では、医療費や治療に伴う不便さから精神的苦痛を受けることになり、
これに対する入通院慰謝料を請求することができます。
被害者が治療を終えると、後遺障害が残ったかどうかを判断するために自賠責保険に対して「後遺障害等級認定」を申請します。
後遺障害等級が認定された場合は、その等級に応じた後遺症慰謝料を請求することができます。
その後、加害者やその保険会社と示談交渉を行います。示談交渉では、損害賠償の総額について話し合いを行い、
被害者と加害者が合意に至ることで示談が成立します。この段階で弁護士を利用することで、示談金の額を適切に引き上げることが可能です。
示談成立後の支払いスケジュール
示談が成立すると、加害者側の保険会社から被害者に対して慰謝料が支払われます。
一般的には、示談成立後おおよそ2週間以内に指定された銀行口座に入金されることが多いです。
この支払いスケジュールは任意保険契約によるところが大きく、金額が大きい場合など、変動することもあります。
また、被害者が急いで資金を必要としている場合や支払いが遅れている場合には、自賠責保険への請求や人身傷害保険の活用によって、賠償金の一部について早期の支払いを受けることも可能です。
交通事故の慰謝料が支払われない場合の対処法

任意保険未加入時の対応
交通事故において加害者が任意保険に未加入である場合、被害者としては直接加害者へ慰謝料を請求することが必要になります。
しかし、加害者が全額を直ちに支払う能力がない場合もあります。
そのため、被害者は示談交渉の中で分割払いの取り決めを行うなど、柔軟な支払い方法を考慮することが重要です。
また、弁護士を通して法的手段を検討することも一つの方法です。
加害者の支払い能力がない場合の対策
加害者が支払い能力を持たない場合でも、諦めることなく以下の方法を活用することが重要です。
まず、自賠責保険からの支払いを最大限に活用することが求められます。
自賠責保険は強制加入の保険であり、被害者に対して一定の範囲まで補償を行います
(なお、物的損害については自賠責保険の対象外ですから、こちらについては加害者本人または自身の車両保険に請求せざるを得ません)。
また、弁護士費用特約が付帯されている自動車保険を使用することで、弁護士費用の負担を軽減しつつ交渉を行うこともできます。
さらに、自身で人身傷害保険(無保険車傷害特約など)に加入しているような場合には、自分が加入している保険から一定程度の保険金を受け取ることが可能になります。
交通事故の慰謝料以外の費用

治療費や休業損害の請求方法
治療費については、加害者の任意保険会社が病院に直接支払うケースが一般的ですが、
緊急の状況などで被害者が自己負担を余儀なくされる場合もあります。この場合、後から保険会社に請求する形を取る必要があります。
休業損害については、事故によって仕事を休まざるを得なくなった場合、その間の収入減少を填補するために請求が可能です。
原則として事件終結時にまとめて支払われることが一般的ですが、生活が苦しくなることも考えられるため、
内払として休業損害の一部を先に支払ってもらう交渉をすることも可能です。
弁護士費用の支払いについて
慰謝料や損害賠償額の交渉において、弁護士の関与が必要となる場合があります。
弁護士費用は基本的に依頼者が負担することになりますが、交通事故の場合、多くの任意保険には弁護士費用特約が付帯されていることがあり、
この特約を活用すると被害者の負担を軽減可能です。弁護士費用特約があるかどうか、事前に契約内容を確認しておくことをお勧めします。
なお、弁護士法人小杉法律事務所では弁護士費用特約が付帯されていない方の場合でも、弁護士費用は相手から獲得した金額からの精算となるため、
着手金や相談料などが発生しない、被害者の方にご負担の少ない費用体系を採用しております。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
交通事故被害に遭い、ご自身が受け取れる慰謝料額について疑問をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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交通事故の慰謝料交渉を弁護士に依頼するメリット

交通事故の慰謝料における交渉は、保険会社が提示する主張に対して適切に対応する必要がありますが、
専門性の高い知識が求められます。弁護士に依頼することは被害者にとって大きなメリットとなります。
示談交渉をスムーズに進められる
弁護士は交通事故に関する法的知識や判例を活用して、被害者に有利な条件で交渉を進められます。
保険会社との交渉を一任することで、被害者が保険会社の担当者と直接対峙する必要がなくなります。
特に過失割合が10対0のもらい事故の場合、被害者の保険会社は示談代行ができないため、弁護士に依頼することが実質的に唯一の専門家サポートとなります。
精神的な負担を抑えられる
交通事故直後は治療や生活への影響など多くのストレスを抱えることになります。
専門的な対応を弁護士に依頼することで精神的な負担を軽減し、迅速かつ公平な解決を図ることが可能です。
慰謝料の増額が期待できる
弁護士が介入することで、保険会社が提示する自賠責基準・任意保険基準ではなく、弁護士基準(裁判基準)での請求が可能になります。
たとえば、むちうちで6か月通院した場合の入通院慰謝料は自賠責基準で約51万6,000円ですが、弁護士基準では約89万円と大幅に増額されます。
弁護士費用の差し引きを考えても受け取ることができる慰謝料額がアップすることも多いため、弁護士への依頼は費用対効果の面からも合理的な選択です。
慰謝料以外の損害賠償も請求できる
弁護士は慰謝料だけでなく、治療費・休業損害・後遺症逸失利益・通院交通費など、本来請求できるすべての損害項目を漏れなく請求するサポートを行います。
被害者自身が交渉する場合と比べて、請求漏れが生じにくくなります。
交通事故の慰謝料に関するよくある質問

10対0事故でむちうちで1か月通院した場合の示談金の相場はいくらですか?
過失割合10対0(もらい事故)でむちうちで1か月通院した場合の示談金(慰謝料を含む損害賠償金)の目安をみてみましょう。
入通院慰謝料については、弁護士基準(別表Ⅱ)では通院1か月で約19万円が目安です。
自賠責基準では実通院日数の2倍か30日の短い方に4300円を掛けた金額(たとえば実通院10日の場合は6万8000円)となります。
これに治療費・通院交通費なども加算されますが、10対0であれば過失相殺は行われないため全額を請求できます。
保険会社が提示してくる示談金に納得いかない場合は、弁護士に相談されることをお勧めします。
通院30回の場合の慰謝料相場はいくらですか?
通院30回(実通院日数30日)の慰謝料の相場は、通院期間がどれだけあるかによっても変わります。
自賠責基準では、4300円×30日×2=25万8000円が目安です。
弁護士基準では、通院実日数ではなく「入通院期間」に基づいて計算されます。
仮に通院期間が3か月間で実通院30日の場合、軽傷(別表Ⅱ)で約53万円が目安となります。
なお、弁護士に依頼することで弁護士基準での請求が可能になり、大幅な増額が期待できます。
軽症の場合や通院が5回の場合は?
事故による怪我が軽症の場合や通院が5回程度の場合でも、基本的な計算方法は変わりません。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
- 関連記事:交通事故の慰謝料、軽傷の場合どのくらいが妥当?
- 関連記事:【交通事故】通院5回で受けられる慰謝料や一時金とは?
- 関連記事:交通事故の通院慰謝料、1日いくら貰える?相場と計算のポイントを解説!
むちうちで3か月通院した場合の示談金はいくらですか?
むちうちで3か月通院した場合(後遺症なし)の慰謝料の目安は以下のとおりです。
| 自賠責基準 | 25万8000円(4300円×30日×2) |
| 弁護士基準(別表Ⅱ) | 53万円 |
示談金は慰謝料だけでなく、治療費・通院交通費・休業損害なども含まれます。
また、過失割合が被害者側にある場合にはその割合分が減額されます。
自賠責基準での慰謝料と弁護士基準での慰謝料には大きな差がありますので、
保険会社が提示してくる金額をそのまま受け入れるのではなく、弁護士に相談した上で適正な金額を確認されることをお勧めします。

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