交通事故被害者が知っておくべき自賠責保険の慰謝料の基準
2025.01.20
損害賠償請求
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 自賠責保険とは
- 慰謝料の種類と基準
- 自賠責慰謝料の計算方法
- 自賠責保険に対する慰謝料請求の手続き
- 適切な慰謝料を獲得するためのポイント
について解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、被害者側損害賠償請求専門弁護士による初回無料の法律相談を実施しています。
交通事故被害に遭い、慰謝料請求についてお困りの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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自賠責保険の基本情報
自賠責保険とは
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法に基づく強制保険であり、すべての自動車やバイクに加入が義務付けられています。
同5条「自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。」
目的は、交通事故によって被害を受けた方が最低限の補償を受け取れるようにし、無保険事故を防ぐことです。
同1条「この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立するとともに、これを補完する措置を講ずることにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。」
自賠責保険に未加入の場合は1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金が課せられることもあります。
同86条3項「次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第五条の規定に違反したとき。」
自賠責保険は、加害者が任意保険に入っていない場合であっても、被害者に対して必要な補償を提供する重要な制度です。
自賠責保険金の支払限度額
自賠責保険の保険金については、支払限度額があらかじめ設定されています(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準)。
治療費、文書料、休業損害、入通院慰謝料などが含まれる傷害による損害に対する支払限度額は120万円とされています。
後遺症が残ってしまった場合で、自賠責保険から後遺障害等級の認定が得られた場合は、認定された後遺障害等級に応じた後遺症慰謝料と後遺症による逸失利益が支払われます。
後遺障害による損害の支払限度額は、後遺障害等級表に記載のとおり、認定された後遺障害等級によって変動します。
また、被害者の方が亡くなってしまった場合には葬儀費用や死亡慰謝料及び死亡逸失利益の支払があります。
この死亡による損害の支払限度額は3000万円です。
慰謝料の種類と自賠責基準
入通院慰謝料
交通事故による怪我で入院や通院が必要になった場合、被害者には入通院慰謝料が支払われます。
自賠責保険では、入通院慰謝料は日額4,300円となっており、最高で120万円が支払われます。
ただし、この120万円は治療費や文書料、休業損害などを含めた上限額になりますから、実際に慰謝料として受け取ることができる金額はこれより少なくなることが多いです。
この金額は実際に治療にかかった日数に基づいて計算されます。入通院慰謝料は、怪我の治療過程で生じた精神的または肉体的な苦痛に対する補償です。
被害者がスムーズに慰謝料を請求できるよう、適切な診療記録の保管が求められます。
後遺症慰謝料
交通事故によって後遺障害が残った場合、後遺障害等級に応じて慰謝料が支払われます。
自賠責保険では、後遺障害等級は第1級から第14級まで設定されており、それに応じた慰謝料の金額が決まります。
例えば、1級では1,650万円、14級では32万円が支給されます。これらの金額は、被害者の生活への影響や苦痛の度合いを評価して決定されます。
後遺症慰謝料は等級に応じて決まり、また逸失利益の請求の際に金額に大きな影響を与える労働能力喪失率も等級に応じて決まりますから、
適切な後遺障害等級を得ることは損害賠償請求においては非常に重要です。
後遺障害等級認定基準から導かれるポイントを押さえた後遺障害診断書の作成ができるかによって、適切な後遺障害等級が獲得できるかが大きく変わりますから、
後遺障害診断書の作成に当たっては弁護士に相談することをお勧めします。
後遺障害診断書について弁護士に相談した方が良い4つの理由とは?
死亡慰謝料
交通事故によって被害者が亡くなった場合は自賠責保険から死亡慰謝料が支払われます。
自賠責保険の金額は400万円から950万円の範囲で、遺族の人数や被扶養者の有無により金額が決まります。
遺族にとって大きな精神的損害を補償するための金額です。任意保険を利用する場合は、さらに高額な慰謝料が支払われることもあります。
自賠責保険の慰謝料の計算方法
計算方法の概要
交通事故の被害者として、慰謝料の計算方法を理解しておくことは重要です。
先ほど見たように、基本的に自賠責保険における慰謝料の計算は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、そして死亡慰謝料といった種類ごとに異なる基準が設けられています。
自賠責保険の補償は最低限のもので、より大きな金額の補償を受けたい場合は弁護士による交渉の上で任意保険からの支払が必要になることがほとんどです。
自賠責保険における計算方法の基本的な考え方は、公平な慰謝料を被害者に支給することを目的としており、被害状況に応じて規定された金額を算出します。
具体的な計算例
具体的な慰謝料の計算例を以下に示します。例えば、入通院慰謝料の場合、治療期間や実治療日数に基づき、日額4300円が支払われます。
自賠責基準上は「被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とする。」とされています。
具体的には治療期間か実治療日数の2倍のどちらか短い方で計算されますので、
実治療日数が60日、治療期間が90日の場合の入通院慰謝料は、
4300円×90日=38万7000円が慰謝料となります。
後遺障害慰謝料は、等級に応じた支払がされます。例えば、後遺障害が第14級の場合、32万円が支払われます。
等級が上がるごとに支払額も大きくなり、第1級の場合は1650万円が支払われる基準となっています。
死亡慰謝料に関しては、基本となる慰謝料が400万円から始まり、被扶養者がいる場合などには支払額が増加し、最高で950万円が設定されています。
このように、被害者の状況や等級によって慰謝料の総額は大きく変わるため、事故状況に合わせた適切な計算が必要です。
慰謝料請求の手続き
被害者請求とは
交通事故における自賠責保険の慰謝料請求には「被害者請求」という方法があります。
これは、被害者自身が直接、自賠責保険の保険金を受け取るために保険会社に請求する方法です。
この手続きにより被害者が自らの判断で請求を進めることが可能となり、迅速に慰謝料を受け取りやすくなります。
ただし、請求には所定の書式を揃える必要があることと、任意保険会社の一括対応中は被害者請求ができないことには注意が必要です。
請求に必要な書類
被害者請求を行うためには、いくつかの書類を用意する必要があります。
具体的には、
- 交通事故証明書
- 診断書(自賠責様式)
- 診療報酬明細書(自賠責様式)または領収証&診療報酬明細書
- 休業損害証明書
- 通院交通費明細書
などが必要です(国土交通省 自賠責保険・共済ポータルサイト 自賠責保険金(共済金)支払までの流れ)
各書類は、交通事故における被害内容や治療の実態を証明するもので、慰謝料の正確な計算に使用されます。
弁護士に依頼することで、書類の準備や申請を円滑に進めることができる場合もあります。
注意点とアドバイス:適切な慰謝料の請求は弁護士に相談しましょう。
自賠責保険と任意保険の違い
交通事故被害者が知っておくべき重要なポイントの一つに、自賠責保険と任意保険の違いがあります。
自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法に基づいてすべての自動車に加入が義務付けられている保険で、被害者が最低限の補償を受けられることを目的としています。
これに対して、任意保険は自賠責保険ではカバーしきれない部分を補償するためのもので、加入は任意です。
任意保険の基準は保険会社によって設定されており、自賠責保険基準に比べると同じか少し高いくらいの金額になりますが、到底被害者側にとって適切な慰謝料金額とは言えません。
ですから、適切な慰謝料を獲得するためには弁護士に相談し、裁判基準で請求することが必須です。
慰謝料の増額交渉
交通事故による損害賠償の請求において、慰謝料の金額は標準的な基準に基づいて算出されますが、
状況に応じてその金額を増額できる可能性があります。
慰謝料の増額交渉は、被害者が受けた損害の具体的な状況や証拠を基に行われます。
特に、弁護士を介した交渉は、専門的な知識と経験が活かされ、相手方との交渉がスムーズに進むことが期待できます。
弁護士が介入することで、受け取る慰謝料の金額が相場よりも増額されることがあります。
特に後遺障害の慰謝料に関しては、適切な等級認定を受けることが重要であり、専門家のサポートを受けることで最適な補償を得られる可能性が高まります。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士の、
- 治療期間中のアドバイス
- 後遺障害診断書の作成に当たってのサポート
- 被害者請求のサポート
- 異議申し立て
などの介入により適切な慰謝料を獲得することができた事例が数多くございます。
交通事故被害に遭い、慰謝料の請求について疑問をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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