後遺障害慰謝料を知る!最新の早見表と計算方法
2024.09.10
損害賠償請求
このページでは、後遺症被害を専門とする弁護士が、
- そもそも後遺障害慰謝料とは?
- 自賠責基準の後遺障害慰謝料早見表
- 弁護士基準の後遺障害慰謝料早見表
- 弁護士に依頼するメリット
について解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、後遺症被害を専門とする弁護士による初回無料のご相談を実施しております。
後遺障害慰謝料について疑問をお抱えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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後遺障害慰謝料とは?
そもそも後遺障害慰謝料とは、交通事故や労災、学校事故によって生じた症状について、
適切な治療を行ったにもかかわらず後遺症が残ることが確定した場合に支払われる慰謝料のことです。
事故に遭い、治療を続けていく中で完治すればもちろん良いですが、中には治療の効果がなくなり、これ以上治療しても良くならないという状態に達することもあります。
この段階を損害賠償請求実務上は「症状固定」と言い、この時点で残存している症状を「後遺症」としています。
後遺障害慰謝料は事故により生じた精神的・肉体的な苦痛に対する補償のうち、
まさに「後遺障害」に対する慰謝料として支払われるもので、その金額は後遺障害の等級に応じて異なります。
※入通院期間の精神的・肉体的苦痛については「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」という別の費目としての慰謝料が請求できます。
ところで、なぜ後遺障害慰謝料の金額が後遺障害等級に応じて決まっているかというと、一言で言えば平等性を確保するためです。
そもそも金銭での賠償が前提となっている損害賠償実務において、
実際のその被害者の方に残存する後遺障害が日常でどのような支障を生じさせ、
それによって被害者の方がどのような苦痛を感じているかといったことを金銭で評価するというのは困難を極めます。
また、同じような事故で同じような苦痛を受けた人が同じだけの賠償を受けられなければ平等性が失われてしまいます。
以上のような問題を避けるために、主に労災の障害(補償)給付の支払や、
自賠責保険における後遺障害保険金の支払について、発生した後遺障害を基準(後遺障害等級)に当てはめ、
画一的に給付金や保険金をお支払するという運用が行われるようになり、今や損害賠償請求実務においてはその請求方法が当然のように用いられているのです。
(労働基準法第77条「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治つた場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。」
労働者災害補償保険法第15条「第十五条障害補償給付は、厚生労働省令で定める障害等級に応じ、障害補償年金又は障害補償一時金とする。
②障害補償年金又は障害補償一時金の額は、それぞれ、別表第一又は別表第二に規定する額とする。」)
では実際にその後遺障害等級表がどのように決まっているかというと、
労災については労働基準法施行規則40条に関する別表第2あるいは労働者災害補償保険法施行規則14条に関する別表第1に、
交通事故については自動車損害賠償保障法施行令第2条に関して定められている別表第1と別表第2で定めがあります。
自賠責保険の後遺障害等級表は、自賠法施行令にも規定があるように「原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。」ため、
基本的には同じものとして考えて差し支えありません。
以下ではその後遺障害等級表とそれに応じた慰謝料基準額を示した表について解説します。
また、後遺障害慰謝料には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の三つの基準がありますが、慰謝料の算定方法もそれぞれ異なりますので順にみていきましょう。
等級別後遺障害慰謝料早見表(自賠責基準)
別表第1
第1級 | 1650万円 |
第2級 | 1203万円 |
別表第2
第1級 | 1150万円 |
第2級 | 998万円 |
第3級 | 861万円 |
第4級 | 737万円 |
第5級 | 618万円 |
第6級 | 512万円 |
第7級 | 219万円 |
第8級 | 331万円 |
第9級 | 249万円 |
第10級 | 190万円 |
第11級 | 136万円 |
第12級 | 94万円 |
第13級 | 57万円 |
第14級 | 32万円 |
別表第1と第2の違いは介護を要するかどうかです。
介護を要するような重度後遺障害の場合は、別表第1の基準が適用され、より高い基準により慰謝料が支払われることになります。
この自賠責基準は交通事故の損害賠償額算定基準としては最も低額なものです。
自賠責保険は自動車損害賠償保障法の第1条にあるように、損害賠償保障制度を確立することによる被害者の保護を図ることを目的とした保険ですから、
迅速かつ平等な支払を受けることができる代わりに、金額としては低くなっています。
等級別後遺障害慰謝料早見表(任意保険基準)
実際のところ任意保険のお支払基準は、約款上「法律上損害賠償の責を負うと認められる金額」のようなあいまいな表現にとどまっていることが多く、
具体的に表で表すことができるわけではありません。
ただし、弁護士介入前の任意保険基準の金額は、自賠責基準と同じか少し高いくらいで収まることが多いです。
任意保険会社は被害者に対して保険金をお支払した後、
自賠責保険に対して「あなたの代わりに被害者に○○円を支払ったので、その分自分にお支払してください。」ということができます。
任意保険は自賠責基準が最低基準であることを前提に、不足分をお支払してもらうために加害者が加入している保険ですから自賠責基準を下回ることはありません。
しかし、任意保険としてはお支払する保険金が自賠責基準に近づけば近づくほど自社で負担しなければならない金額が減るわけですから、
自賠責基準より少し高いくらいで提示をしてくることが多いのです。
当然、最も被害者側として適切な賠償であると考えられる弁護士基準(裁判基準)からすれば低い基準ですから、
弁護士が介入することで大きな増額が期待できます。
等級別後遺障害慰謝料早見表(弁護士(裁判)基準)
弁護士基準の後遺障害慰謝料早見表は、交通事故損害賠償請求実務において大きな影響力を誇っている、
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)』(通称『赤い本)
にその記載があります。
第1級 | 2800万円 |
第2級 | 2370万円 |
第3級 | 1990万円 |
第4級 | 1670万円 |
第5級 | 1400万円 |
第6級 | 1180万円 |
第7級 | 1000万円 |
第8級 | 830万円 |
第9級 | 690万円 |
第10級 | 550万円 |
第11級 | 420万円 |
第12級 | 290万円 |
第13級 | 180万円 |
第14級 | 110万円 |
自賠責基準と見比べていただくと違いが一目瞭然かと思います。
このように、被害者側として最も適切な弁護士(裁判)基準での賠償を受けることは重要です。
また、ここまで見てきた様に、後遺障害慰謝料は後遺障害等級とかなり密接な関係があります。
だからこそ慰謝料額の検討の前にまずは適切な後遺障害等級の認定を勝ち取ることも極めて重要です。
後遺症被害を専門とする弁護士からの治療期間からのアドバイスを受けたり、ポイントを押さえた適切な後遺障害診断書の作成をしてもらったり
することによって、適切な後遺障害等級の認定を勝ち取ることができる可能性は大きく高まります。
弁護士法人小杉法律事務所はこの適切な後遺障害等級の獲得に向けたサポートに自信を持っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
後遺症被害を専門とする弁護士へのお問い合わせはこちらのページから。
後遺障害慰謝料を増額させるためのポイント
ところで、ここまで見てきたように後遺障害慰謝料と後遺障害等級が密接にかかわっていることは言うまでもありません。
そのうえで適切な後遺障害等級を基に、後遺障害慰謝料の請求をしていく際にも、
先ほどみた基準はあくまで基準ですから、個別具体的な事情によって増減することがあります。
とりわけ先ほど登場した赤い本に明記されている、
「自賠責14級に至らない後遺症があった場合等(例えば3歯以上歯科補綴の場合は自賠責14級であるが2歯以上の場合は14級に至らない等)は、それに応じた後遺症慰謝料が認められることがある。」や、
「特定の後遺障害等級の認定がなされ、より上級の等級に至らない場合(例えば外貌醜状痕で12級には該当するがより上級の等級には至らない等)でも、症状により等級の慰謝料に相当額を加算することがある。」
と言った場合はもちろん慰謝料の増額を検討すべきです。
『交通事故損害額算定基準-実務運用と解説-』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター編)(通称『青い本』)でも、
「基本的には、自賠責後遺障害等級表に該当するものを慰謝料算定の対象とするが、自賠責後遺障害等級表に該当しない程度の障害でもその部位程度により認められることは当然である。」
とされており、障害の程度による慰謝料の認定や増額を検討すべきであると言えます。
例えば東京地方裁判所平成7年1月27日判決(交通事故民事裁判例集28巻1号95頁)では、
自賠責基準に達しない顔面の線条痕を残し逸失利益を請求しなかった会社員について、傷害慰謝料(入通院慰謝料)とは別に200万円の慰謝料を認めています。
また、被害者本人の後遺症が重篤な場合には近親者固有の慰謝料が別途認定されることがあります。
この近親者固有の慰謝料については、最高裁判所昭和33年8月5日判決(民事裁判例集12巻12号1901頁)において、
死亡の場合でなくとも、死亡に比肩するような精神的苦痛を受けた場合には、近親者にも慰謝料請求権が認められると判示されており、
実務上は別表第1の1級や2級が認定された場合に認められる傾向があります。
この近親者固有の慰謝料は、民法711条に規定のある「被害者の父母、配偶者及び子」だけでなく、
これらと実質的に同視すべき立場にある方についても認められる傾向にあります。
(最高裁判所第三小法廷昭和49年12月17日判決(民事裁判例集第28巻10号2040頁)参照)。
横浜地方裁判所平成14年9月25日判決(自保ジャーナル1473号30頁)では、
「凶暴性を伴う高次脳機能障害(第1級3号)が残存した主婦について、
本人分の後遺障害慰謝料として2800万円の、夫及び長男に各250万円の、次男及び三男に各150万円の、合計3600万円の後遺障害慰謝料を認めています。」
仙台地方裁判所平成23年9月9日判決(自保ジャーナル1870号11頁)では、
「胸髄損傷による両下肢麻痺等(別表第1の1級1号)の会社員について、本人分として3000万円、父分として250万円、
法律上の母ではないが、事故当時既に父と同協して内縁関係にあり、その後法律婚し、現にかつ将来にわたって介護にあたる事実上の母分として250万円、
合計で3500万円の後遺障害慰謝料を認めています。」
神戸地裁伊丹支部平成30年11月27日判決(自保ジャーナル2039号1頁)では、
「遷延性意識障害(別表第1の1級1号)の中学生につき、本人分3000万円、父母各400万円、姉と兄に各200万円の合計4200万円の後遺障害慰謝料を認めています。」
このように、重度後遺障害の場合には近親者にも固有損害として慰謝料の請求が認められる場合があります。
また近親者に類する方についても認められる可能性があり、この近親者に類するかどうかの判断においては、
事故前どれだけ被害者本人と密接な関係にあったかや、事故後介護にどれだけ携わるかといった事情を適切に主張することが重要です。
後遺障害慰謝料を増額するためには、先ほども述べたように適切な後遺障害等級を獲得することが大前提です。
そのうえで、交通事故により生じた後遺症について具体的な証拠を揃えることで、慰謝料の金額を増やす可能性が高まります。
例えば、詳細な診断書や治療記録、写真などが有力な証拠になります。
また、事故後の日常生活における支障や苦痛についての日記をつけることも効果的です。これらの証拠は、後に慰謝料の請求手続きの際に非常に有利に働きます。
また、加害者の著しく不誠実な態度や、事故発生自体に故意もしくは重過失が存するような場合には、別途慰謝料を増額できる要素になる場合もあります。
ですから、民事の損害賠償請求と刑事処分を連動させて見ていくことも重要です。
後遺障害慰謝料については弁護士に相談しましょう
ここまで見てきたように、自賠責基準や弁護士基準の後遺障害慰謝料は、後遺障害等級表に密接に関係しています。
だからこそまずは適切な後遺障害等級の獲得に全力を尽くす必要があります。
ポイントを押さえた後遺障害診断書の作成や訂正を行い、自賠責保険への被害者請求や、異議申し立てによって適切な後遺障害等級の獲得を目指すべきです。
(後遺障害診断書について弁護士に相談した方が良い4つの理由とは?)
そのうえで、個別具体的な生活や労働上の支障を適切に主張したり、近親者の精神的苦痛を適切に主張したりすることで、
弁護士(裁判)基準以上の後遺障害慰謝料を獲得する可能性が高まります。
これは後遺症被害を専門とする弁護士に相談されることを強くお勧めします。
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後遺障害慰謝料についてご不安をお抱えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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弁護士法人小杉法律事務所の解決事例や講演内容等
以下に弁護士(裁判)基準以上の後遺障害慰謝料を獲得した事例や、これに関する講演内容を一部ご紹介しておりますので、
よろしければご覧ください。
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