後遺障害3級の慰謝料金額&逸失利益金額の相場は?【弁護士解説】
2025.01.20
損害賠償請求
このページでは、後遺症被害を専門とする弁護士が、
- 後遺障害3級とは?
- 後遺障害3級の症状と認定基準
- 後遺障害3級の慰謝料
- 後遺障害3級の逸失利益
- 後遺障害3級で適切な賠償を得るためのポイント
について解説していきます。
弁護士法人小杉法律事務所では、後遺症被害を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
後遺障害3級について疑問をお抱えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
後遺障害3級とは
後遺障害3級は、交通事故などで重大な障害を負った場合に認められる等級です。
この等級は、労働能力の完全な喪失を意味し、被害者にとって非常に大きな影響を与えるものです。
後遺障害3級に認定されると、その影響を考慮した慰謝料や損害賠償が適用されるため、適切な知識と対応が重要です。
そもそも後遺障害等級とは
そもそも後遺障害等級とは、交通事故などによる怪我が治療後も後遺症として残った場合に、その障害の程度を評価するための基準です。
怪我を負った後に治療を続けていく中で、これ以上治療を続けても良くならないという状態に達することがあります。
この状態について、労災の障害認定基準を定めている『労災補償障害認定必携』(一般財団法人労災サポートセンター発行)を見てみましょう。
ちなみに、交通事故のほとんどの事案で後遺障害等級の認定を行うことになる、損害保険料率算出機構が設置している自賠責損害調査事務所が用いている自賠責保険支払基準でも、
「等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う。」とされており、
この『労災補償障害認定必携』の記載は概ね交通事故の場合でも妥当します。
この『労災補償障害認定必携』は、「障害」について、
「負傷または疾病(以下「傷病」という。)がなおったときに残存する当該傷病と相当因果関係を有し、かつ、将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的なき損状態」としています。
また、ここでいう「なおったとき」とは、「傷病に対しておこなわれる医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したときをいう。」としていて、
この状態を、損害賠償請求実務上は症状固定と呼んでいます。
(交通事故における症状固定についての詳しい説明はこちらのページから。)
この症状固定の時点で残存している後遺症について、その程度を評価するための基準が後遺障害等級というわけです。
後遺障害等級の評価は1級から14級まであり、数字が小さくなるほど障害の程度が重いことを示します。
それぞれの等級には詳細な認定基準があり、公平かつ客観的に評価されるようになっています。
後遺障害3級の症状と認定基準
後遺障害3級は、障害の程度が特に重く、日常生活や労働に大きな支障をきたす場合に認定されます。
具体的な症状と認定基準は以下のとおりです(交通事故の場合)。
眼の障害
第3級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になった場合
口の障害
第3級2号 咀嚼または言語の機能を廃したもの
神経系統の機能または精神の障害
第3級3号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
胸腹部臓器の障害
第3級4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
手指の障害
第3級5号 両手の手指の全部を失ったもの
これらの基準に該当する場合、後遺障害3級として認定され、その後の慰謝料や逸失利益といった損害賠償の計算に影響を与えます。
後遺障害3級の慰謝料相場
後遺障害3級が認定された場合の慰謝料相場について、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
のそれぞれをみていきましょう。
後遺障害3級の慰謝料額(自賠責基準)
自賠責基準による後遺障害3級の慰謝料額は829万円です(自動車損害賠償保障法施行令及び自賠責保険支払基準より)。
この金額は交通事故によって後遺障害等級が3級に認定された場合に支払われる基本的な慰謝料額となります。
ところで、自動車損害賠償保障法の第1条をみると、
「自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立するとともに、これを補完する措置を講ずることにより、被害者の保護を測り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。」と定められており、
この目的を達成するために強制加入とされているのが自賠責保険です(同第5条)。
ですから、自賠責保険は交通事故の被害者が広く補償を受けられる反面、それが被害者にとって最も適切な金額というわけではなく、3つの基準の中では最も低額になることがほとんどです。
後遺障害3級の慰謝料額(任意保険基準)
後遺障害3級の慰謝料の任意保険基準は明確に定められているわけではありません。
どの任意保険会社の約款を見ても「法律上、被保険者が損害賠償の責を負うと認められる金額」のようなあいまいな記載にとどまっています。
というのも、具体的な損害賠償金額は被害者の方の事故前の生活状況や、事故発生の状況など様々な要因で変化するため、明確な基準を定めることが難しいからです。
保険会社によって細かい基準や計算方法が異なるため、具体的な金額は一概には言えません。
ただし、3つの基準の中では真ん中に位置するということはほぼ確実です。
任意保険会社は被害者に対して損害賠償金を支払った場合には、
自賠責保険に対し、(自賠責保険基準の限度で)「あなたの代わりに被害者の方に○○円支払ったのだから、その分私に支払ってください」ということができます。
これを用いることによって、任意保険会社は自賠責保険基準と同じ額を支払えば自社の手出しを0円にすることができます。
ただそれでは任意保険会社に加入する意味がなくなってしまいますから、
ほとんどの事案では自賠責保険基準に近く、ただ自賠責保険基準よりも若干高いくらいの金額に収まることになります。
当然それでは被害者側にとって最も適切な賠償がなされているとは言えませんから、弁護士(裁判)基準での慰謝料額を主張する必要があります。
後遺障害3級の慰謝料(弁護士基準(裁判基準))
過去の交通事故の判例を集積し、交通事故事案における算定基準を定めている『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準 上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)では、
弁護士(裁判)基準による後遺障害3級の慰謝料額は1990万円とされています。
これは自賠責基準と比べて大幅に高い金額になります。
交通事故に関する損害賠償請求を弁護士に依頼することで、被害者が受ける精神的および肉体的な苦痛をより正当に評価してもらうことができます。
弁護士に依頼することで、裁判での適切な立証や交渉によって、より高い慰謝料を受け取ることができます。
後遺障害3級の逸失利益の算出方法と補償金額
逸失利益とは、交通事故などで後遺障害を負った場合に、その後の労働能力が低下することによって将来得られるはずだった収入が減少することから生じる損害のことを指します。
具体的には、後遺障害3級の労働能力喪失率を考慮して、将来得られたであろう収入を損害賠償として請求することが可能です。
後遺障害3級の労働能力喪失率は100%とされており、その支障の大きさが分かると思います。
後遺障害3級の逸失利益の算出方法
逸失利益の算出方法は以下のように計算します。
まず、基準とする年収(基礎収入)を設定し、その後労働能力喪失率と労働能力喪失期間を考慮して計算します。
基礎収入は基本的に事故前の年収を参考とし、労働能力喪失期間は原則として症状固定時の年齢から67歳までとされています。具体的な計算式は次の通りです。
逸失利益=基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数) |
後遺障害3級の場合、労働能力喪失率は100%となります。また、ライプニッツ係数は将来の収入を現在価値に換算するために用いられます。
逸失利益に関する詳しい解説はこちら。
労働能力喪失率に関する詳しい解説はこちら。
ライプニッツ係数に関する詳しい解説はこちら。
後遺障害3級の労働能力喪失率と就労不能の影響
後遺障害3級の認定を受けた場合、労働能力喪失率は100%になります。
これは、今後その人が労働によって収入を得ることができない、あるいは非常に難しい状態であることを示しています。
このため、就労不能の影響は大きく、その分適切な補償が求められます。
将来の収入が失われるという重大な損害を補うため、正確な逸失利益の計算と損害賠償の請求が重要です。
交通事故や後遺障害の損害賠償に詳しい弁護士に相談することで、適切な補償を受けるためのサポートを得ることができます。
後遺障害3級の慰謝料増額方法
弁護士に依頼するメリット
後遺障害3級の慰謝料を増額するためには、弁護士に依頼することが大きなメリットとなります。
交通事故に詳しい弁護士は、法律知識や過去の判例を基に、適切な損害賠償金額の請求を行うことができます。
弁護士に依頼することで、相手方保険会社との交渉も円滑に進めることができ、より高い金額の慰謝料を受け取る可能性が高まります。
裁判による増額交渉のポイント
後遺障害3級の慰謝料増額を目指す場合、裁判に訴えることも一つの方法です。
後遺障害3級のような重度後遺障害の場合は、将来治療費や逸失利益といった費目がかなり大きな金額になることも多く、
示談交渉限りでは満足な金額での保険会社の決済が下りないことも少なくありません。
このような場合には、裁判を通じて適正な賠償額を求めることができ、弁護士基準による慰謝料相場に近づくことが期待されます。
裁判では、具体的な損害額や後遺障害等級の妥当性を立証することが重要です。
経験豊富な弁護士のサポートを受けることで、効果的に証拠を提出し、より高額かつ適切な慰謝料を得るための交渉が可能となります。
効果的な証拠収集と立証方法
後遺障害3級の慰謝料増額を狙うためには、効果的な証拠収集と立証が欠かせません。
まず大前提として、後遺障害等級と慰謝料や労働能力喪失率などが密接にかかわっているという関係上、
後遺障害3級の認定を得られなければ適切な賠償は得られません。
したがって、ポイントを抑えた後遺障害診断書を作成したり、不備がある場合には訂正を依頼したり、
異議申立てを行ったりといった手続きを取ることで、まずは後遺障害3級の認定を目指すべきです。
これは後遺症被害を専門とする弁護士の力を借りなければ難しいでしょう。
後遺障害診断書について弁護士に相談した方が良い4つの理由とは?
そのうえで、その先の裁判などを視野に入れ、交通事故の発生状況や後遺障害の具体的な症状、治療経過を詳細に記録し、診断書や医師の意見書などの証拠を確保することが重要です。
また、慰謝料や逸失利益、将来治療費などの請求にあたっては、まさに日々の生活に生じている支障を裁判所に適切に評価してもらうために職場や家の方の協力を仰ぎ、証拠を収集していくことも効果的です。
まとめ:後遺障害3級の慰謝料相場と増額方法
後遺障害3級の慰謝料や逸失利益を正確に理解し、適切な対応をすることは、被害者の生活の質を保証するために非常に重要です。
後遺障害3級の自賠責基準の慰謝料額は829万円で、弁護士(裁判)基準は1990万円となり、額に大きな差があります。
交通事故で後遺障害が発生した場合、早期に専門的な知識を持つ弁護士に相談することが求められます。
特に後遺障害3級のような重度後遺障害の場合は、軽度の事案で登場しないような将来治療費・将来介護費などの費目についても適切に請求をしていくことが求められ、
これは後遺症被害を専門とする弁護士でなければ難しいものです。
適切な対応を行うことで、被害者が受ける経済的苦痛を軽減し、生活の再建を図ることができます。
後遺障害3級の認定についてお困りの方は、ぜひ一度後遺症被害を専門とする弁護士にご相談されることをお勧めします。
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