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不法行為の時効は?一定期間を過ぎると損害賠償請求できなくなる?

2026.06.05

お知らせ

民法においては、時効という制度があります。

法定された一定期間が経過することによって、権利の得喪が発生するというルールです。

では、交通事故などに代表される不法行為により損害が生じた場合、損害賠償請求権はいつまで行使することができるでしょうか。

 

民法における時効にはどのようなものがある?

時効は、大きく分けると、取得時効と消滅時効という2種類があります。

取得時効は、一定期間、特定の条件下において動産や不動産について占有(事実上の支配管理を行う)することにより、占有者がその所有権を取得することができるというものです。

かたや消滅時効は、権利を行使することなく一定期間が経過すると、その権利が消滅してしまうというものです。権利が消滅するので、その権利はもはや行使することができなくなります。

今回解説するテーマに関係するのは、消滅時効になります。そのため、以下では消滅時効に特化した内容となります。

 

不法行為による損害賠償請求権の時効は?

⑴消滅時効の基本的な考え方

まず、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効について規定している民法724条をみてみましょう。条文は以下のとおりです。

第七百二十四条

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

民法724条によれば、

①被害者又は法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間損害賠償請求権を行使しなかったとき

②不法行為発生時から20年間損害賠償請求権を行使しなかったとき

に、不法行為の損害賠償請求権は消滅時効を迎えるとされています。

ここでいう「損害及び加害者を知った時」の解釈ですが、

これは、単に損害や加害者を知ったことを意味するのではなく、「賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知った」ことを意味するとされています(最高裁第二小法廷昭和48年11月16日 民集27・10・1374)。

そのため、たとえば被害者が加害者の住所・氏名当を知らないために損害賠償請求権の行使が事実上不可能である場合には、加害者の住所・氏名等が確認されて損害賠償請求権を事実上行使できるに至るに至ったときには「加害者を知った時」に当たるといえます。

 

交通事故の場合、加害者が逃亡するなどをしない限りは、基本的に損害及び加害者を知った時=事故時となることが多いので、

損害賠償請求権の消滅時効は事故時から3年と考えてよさそうにも思えます。

ですが、2017年の民法改正によって、724条の次に、724条の2という条項が設けられました。724条の2の条文は次のとおりです。

第七百二十四条の二

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

724条の2では、「人の生命又は身体」に関する損害については、例外的にその損害賠償請求権の消滅時効は3年ではなく5年とすることを定めています。

 

以上をまとめると、不法行為の損害賠償請求権については次のように表すことができます。

人身損害に関する損害賠償請求権の消滅時効→損害及び加害者を知った時から5年  or  不法行為発生時から20年

物的損害に関する損害賠償請求権の消滅時効→損害及び加害者を知った時から3年  or  不法行為発生時から20年

 

そのため、たとえば令和8年6月1日に自動車を運転していて交通事故に遭い、身体を怪我したり自動車が壊れてしまった場合、

身体の怪我に関する損害(=人身損害)については令和13年6月1日が、

自動車に関する損害(=物的損害)については令和11年6月1日が、それぞれ消滅時効となります。

 

⑵20年の消滅時効とは?

724条2号の「不法行為の時から二十年間行使しないとき」についてですが、

たとえば被害者(又は法定代理人)が損害や加害者を知らない状態が継続している状況というのは、

加害者からすると、損害賠償請求されるのかどうか不明な状況(権利関係が不安定な状況)が続いているということができます。

そうした不安定な状況が際限なく続いてしまうことを防ぐために、724条2号の規定により、20年という期限が設けられています。

もちろん、被害者の方からすれば、「加害者がきちんと誠実に対応し、損害賠償請求に応じればよいのでは」という気持ちだと思います。

ただ、あくまで法律は中立ですから、加害者についてもこうしたかたちで権利関係が不安定化・複雑化しないように保護をしているかたちになります。

 

そして、消滅時効は、先に到来したほうに即するかたちで時効消滅します。以下の(i)及び(ii)のケースをみてみましょう。

(i)は、事故から17年経過して被害者が損害及び加害者を知り、人損の損害賠償請求ができるようになったケース、

(ii)は事故から5年経過して被害者が損害及び加害者を知り、人損の損害賠償請求ができるようになったケースになります。

 

(i)では、不法行為時から20年の消滅時効が先に到来するので、事故から20年の時点(★印)で損害賠償請求権は時効消滅します。

一方、(ii)では、損害及び加害者を知った時から5年の消滅時効が先に到来するので、事故から10年の時点(★印)で時効消滅します。

 

消滅時効が迫っている…何か対策はあるのか?

不法行為の損害賠償請求権に関する消滅時効の基本的な考え方を今一度おさらいしておきましょう。

人身損害に関する損害賠償請求権の消滅時効→損害及び加害者を知った時から5年  or  不法行為発生時から20年

物的損害に関する損害賠償請求権の消滅時効→損害及び加害者を知った時から3年  or  不法行為発生時から20年

 

では、消滅時効が到来しそうになった場合にはどうしたらよいのか、とご不安に思われる方もいるかと思います。

このような場合の手立てとして、時効の完成猶予・時効の更新というものがあります。

⑴時効の完成猶予

時効の完成猶予は、時効期間が経過する前に一定の事由が発生した場合に、一定期間、時効の完成を遅らせることができます。

一定の事由につき、民法147条では、①裁判上の請求、②支払督促、③民事訴訟法第275条第1項の和解又は民事調停法もしくは家事事件手続法による調停、④破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加の4つが挙げられています。①~④の事由が終了するまでの間は、時効の完成が猶予されます。①裁判上の請求というのは、いわゆる提訴して損害賠償請求することをいいますので、提訴している間は時効のカウントが一時的にストップしているということですね。

くわえて、民法150条では、「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」と規定されています。催告の代表例としては内容証明郵便が挙げられます。不法行為による損害賠償請求権の時効が目睫に迫っているような場合、加害者に対して内容証明郵便により損害賠償請求を行うことで、6か月間、時効の完成を遅らせることができます。ただし注意点としては、催告による時効の完成猶予は一度きりしかできません。そのため、一度内容証明郵便を送付して6か月の時効の完成猶予をしたのち、再度内容証明郵便を送ったとしても、更に6か月の完成猶予がなされるわけではありません。

このほか、民法148条では強制執行、担保権の実行、民事執行法第195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売、民事執行法第196条に規定する財産開示手続又は同法第204条に規定する第三者からの情報取得手続が、民法149条では仮差押え、仮処分による時効の完成猶予が規定されています。

またイレギュラーな事態に備えたものとして、民法161条では、「天災その他避けることのできない事変のため」第147条第1項各号又は第148条第1項各号に掲げる自由に係る手続きを行うことができないときは、その障害が消滅した時から3か月を経過するまでは時効の完成が猶予されます。

⑵時効の更新

時効の更新は、一定の事由が発生した場合に、これまでの時効経過のカウントがリセットされ、新たにゼロから時効のカウントが始まるものになります。

民法147条2項より、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときには、時効の更新が行われ、新たに時効のカウントがゼロから開始することになります。また、民法148条2項でも、強制執行、担保権の実行、民事執行法第195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売、民事執行法第196条に規定する財産開示手続又は同法第204条に規定する第三者からの情報取得手続といった事由が終了した時に時効の更新がなされ、新たに時効のカウントがスタートします(ただし申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合を除きます。)。

民法152条では、承認による時効の更新が規定されています。すなわち、債務者(加害者)による債務承認があった場合には、時効の更新がなされ、承認の時から新たに時効のカウントが進行することになります。交通事故における債務承認の代表的な例としては、加害者の任意保険会社による示談提示が挙げられます。

 

消滅時効の徒過には注意!

法律の世界には、「権利の上に眠る者は保護に値せず」という法諺があり、これは消滅時効制度の根拠にもなっています。

交通事故に代表される不法行為の被害者の方は損害賠償請求権を有しえますが、

適切に権利を行使しなければ、適切な補償を受けることができなくなります。

気付いた時には損害賠償請求権の消滅時効を過ぎてしまっていた…ということがないように気を付けなければいけませんが、

消滅時効制度をはじめとして、法律は非常にわかりづらいところも少なくありません。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、適切な賠償を獲得できるようサポートを行います。

交通事故の損害賠償請求で疑問をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

弁護士法人小杉法律事務所へのお問い合わせはこちらのページから。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。

弁護士小杉晴洋の詳しい経歴等はこちら

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