交通事故で受けた精神的苦痛…慰謝料請求を弁護士に依頼する場合に費用倒れにならないためには?
2026.07.31
損害賠償請求

交通事故で精神的苦痛を負った場合、加害者に対して慰謝料の請求を行うことができます。
本稿では、精神的苦痛での慰謝料請求に関して、以下の事項について解説しております。
- そもそも「慰謝料」とは?
- 慰謝料にはどのような種類があるか
- 慰謝料の算定基準
- 交通事故の慰謝料請求を弁護士に依頼する場合に費用倒れにならないためには
- 慰謝料請求はしない方がいい?
そもそも「慰謝料」とは?
「慰謝料」とは、交通事故等の不法行為による精神的苦痛に関し、金銭による補償として支払われる賠償金のことをいいます。
精神的苦痛なども賠償責任の対象となることについては、民法710条に規定されています。条文は次のとおりです。
| (財産以外の損害の賠償) 第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。 |
710条では直接的に「精神的苦痛」や「慰謝料」という言葉が用いられているわけではなく、
「財産以外の損害」の一つとして「精神的苦痛」が含まれている解釈になります。
少し難しい話になりますが、ここでいう「財産以外の損害」は広義には「無形的な損害」も含まれると解釈されるため、
たとえば幼児や法人などの精神的苦痛を感じないとされる主体についても、賠償の対象となると考えることができます。
慰謝料にはどのような種類がある?
交通事故における損害賠償請求では、状況に応じて3種類の慰謝料を請求することができます。
この3種類の慰謝料が、入通院慰謝料(傷害慰謝料)・後遺症慰謝料・死亡慰謝料になります。
⑴入通院慰謝料(傷害慰謝料)
入通院慰謝料は、交通事故で怪我をしたことや症状による苦しみ、そして治療のために入院・通院を余儀なくされたことによる苦痛を精神的損害として請求するものになります。傷害を負ったことに起因する慰謝料であることから、傷害慰謝料とも呼ばれます。
⑵後遺症慰謝料
後遺症慰謝料は、交通事故受傷後、治療を行った結果として後遺症が残存してしまったことにや、将来的にも後遺症と付き合っていかなければならないことについての精神的苦痛を精神的損害として請求するものになります。
実務上では、後遺症が残存したことに加えて、その後遺症が、自賠責保険が規定している後遺障害に該当することによって請求することができる取扱いとなっています。
⑶死亡慰謝料
死亡慰謝料は、交通事故によって被害者が死亡という重大な結果に至らしめられたことによる精神的苦痛を精神的損害として請求するものになります。
「亡くなっているのであれば精神的苦痛などないのでは?」という疑問もあるかもしれません。
しかし、損害賠償請求分野においては、仮に交通事故によって被害者が致命傷を受けて即死したような場合でも、致命傷を受けた瞬間に精神的苦痛が発生しており、そのため慰謝料請求権が発生しているという考え方であるため、死亡慰謝料の請求という理屈が成立しえます。
なお、被害者本人は死亡している以上、死亡慰謝料を実際に請求するのは被害者本人の相続人になります。
⑷近親者固有の慰謝料
入通院慰謝料・後遺症慰謝料・死亡慰謝料は、被害者本人の傷害による精神的苦痛・後遺症による精神的苦痛・死亡による精神的苦痛をそれぞれ賠償するものでした。
これらの他に、交通事故によって被害者の近親者が精神的苦痛を受けた場合には、近親者固有の慰謝料として、その精神的損害についても賠償請求することができるときがあります。「近親者慰謝料」と短縮して呼ばれることもあります。
近親者固有の慰謝料の賠償請求に関する根拠条文は、民法711条になります。
| (近親者に対する損害の賠償) 第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。 |
ただし実務上、近親者慰謝料はどのような事例においても認められるわけではなく、死亡事故や被害者に重度後遺症が残存したケースなどの重大な事案に限られる傾向にあります。
慰謝料の算定基準
慰謝料の算定について、主に3つの基準があります。
それが自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準になります。
⑴自賠責基準
自賠責基準は、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)によって定められる慰謝料の算定基準です。
自賠責保険が、損害賠償の最低補償を確保する趣旨であることから、任意保険基準や弁護士基準と比較すると低額になります。
①入通院慰謝料の算定
自賠責基準における入通院慰謝料の算定は、次のルールにのっとり行われます。
・日額4300円
・慰謝料の対象となる日数は、傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とする
・妊婦が胎児を死産又は流産した場合は、上記のほかに慰謝料を認める
「慰謝料 裁判」→裁判基準の慰謝料額で満たせそう?
「慰謝料請求 しない方がいい」→そんなことない
②後遺症慰謝料の算定
自賠責保険において認定された後遺障害等級に応じて金額が定められています。

③死亡本人の慰謝料・遺族の慰謝料
死亡本人の慰謝料は400万円となります。
遺族の慰謝料について、請求権者となる者は被害者の父母(養父母含む)、配偶者及び子(養子、認知した子及び胎児含む)となり、
請求権者1人の場合は550万円、2人の場合は650万円、3人以上の場合には750万円となります。
また、被害者に被扶養者がいる場合には、これらの金額に200万円が加算されます。
⑵任意保険基準
任意保険基準は、自動車の任意保険会社が独自に定める慰謝料の算定基準です。
しかし、その計算方法や基準は各保険会社によって異なっているため、具体的な金額は事案ごとに異なります。
自賠責基準よりも高額になることが多いのが特徴ですが、最も被害者側にとって適切な基準である弁護士基準と比較すると低額であることがほとんどです。
⑶弁護士基準
弁護士基準は、裁判所が認める慰謝料の相場に基づいて算定される基準です。裁判所の判断をベースとする基準であることから、裁判基準とも呼ばれます。
自賠責基準や任意保険基準と比べて高額になることが一般的です。弁護士に依頼することで、この基準に基づく賠償を求めることができるため、結果的に受け取る額が大きくなる傾向があります。
①入通院慰謝料
弁護士基準での入通院慰謝料(傷害慰謝料)の算定は、原則として入通院期間を基礎として別表Ⅰに基づいて行います。
なお通院が長期にわたる場合には、実通院日数の3.5倍程度を通院期間の目安として算定することもあります。
例外として、むち打ち症で他覚所見がない場合、軽い打撲、軽い挫創(挫傷)の場合には、金額の水準が別表Ⅰよりやや低い別表Ⅱが用いられます。
別表Ⅱを用いるようなケースにおいて通院が長期にわたる場合には、実通院日数の3倍程度を通院期間の目安とすることもあります。
別表Ⅰ、別表Ⅱは以下のとおりです。
たとえば、6か月通院した場合の入通院慰謝料は、別表Ⅰだと116万円、別表Ⅱだと89万円となります。


②後遺症慰謝料
弁護士基準の後遺症慰謝料は、基本的には自賠責保険において認定された後遺障害等級に応じた金額となります。詳しい金額は下表をご覧ください。

③死亡慰謝料
弁護士基準における死亡慰謝料は、被害者の属性に応じて一定の目安があります。
・一家の支柱 2800万円
・母親、配偶者 2500万円
・その他(独身男女・子供・幼児等) 2000万円~2500万円
ただしこれらはあくまで「目安」であり、実務上では、個別具体的な事情によって金額が増減することも少なくありません。
④近親者慰謝料
民法711条の説明のところで述べたとおり、被害者が死亡したり重度後遺症を残存するに至ったケースでは、近親者慰謝料を請求できることがあります。
もっとも、自賠責基準のように具体的な金額が決まっているわけではなく、およそ被害者本人との関係性の程度等に応じて金額は異なります。
また、死亡慰謝料で示した目安の金額は、本人分だけでなく近親者分も含むものですので、これを越えて更に高い金額が認定されるかどうかはやはり具体的な事情によります。
重度後遺症で近親者に慰謝料が認められるケースとしては、後遺障害等級1級、2級、3級などの事例が多く、後遺症の内容についても高次脳機能障害や脊髄損傷による麻痺、遷延性意識障害などの事例であることが特に多い印象です。
慰謝料請求を弁護士に依頼する場合に、費用倒れにならないためには?
以上が、慰謝料に関する簡単な説明になります。
本項で解説する内容と大きくかかわりがあるところとしては、「弁護士基準の慰謝料額は、一般に自賠責基準や任意保険基準よりも高額であること」です。
弁護士に依頼することにより費用倒れにならないためには、
「弁護士介入前の慰謝料額(自賠責基準又は任意保険基準の額)と弁護士介入後の慰謝料額の差額」が「弁護士費用」よりも高くなることが重要です。
たとえば、弁護士介入前の慰謝料額が70万円、弁護士介入後の慰謝料額が90万円、弁護士に依頼した場合の弁護士費用が25万円としますと、
- 弁護士不介入で解決する場合→慰謝料70万円を受け取る
- 弁護士介入で解決する場合→慰謝料は20万円アップした90万円を受け取るが、弁護士費用25万円を支払うため、手元に残る金額は65万円
この例で言いますと、弁護士が介入することによる慰謝料の増額幅(この例では20万円)よりも弁護士費用(25万円)のほうが大きいため、
収支としてはむしろマイナスになってしまっています。つまり、弁護士を入れない方が結果的には手元に残る金額が多くなるということです。
もちろん、慰謝料のほかにも、休業損害や逸失利益など、弁護士が介入することによって金額アップが望める損害もありますので、
そうしたものも考慮した上で弁護士に依頼するかどうか検討することをおすすめします。
なお、車両保険に弁護士費用特約を附帯させていた場合で、弁護士費用特約が使えるようであれば、
弁護士費用特約により補償される金額の範囲内においては、このような憂いは生じないと考えてよいでしょう。
上記の例でいいますと、弁護士費用25万円が弁護士費用特約から支払われる(被害者からの手出しがゼロ)のであれば、弁護士介入により被害者が受け取ることができる金額は90万円となりますので、収支としてはプラスになると考えられます。
慰謝料請求しないほうがいい?
こちらの質問を時折いただくことがあります。
回答としましては、交通事故の場合においては慰謝料請求しないことによるメリットは基本的にはありませんので、慰謝料請求していただいて大丈夫です。
加害者本人に対して請求するとなれば、加害者の属性や加害者との関係性などを考慮して損害賠償請求するかどうか判断が必要なケースがあるかもしれませんが、これは交通事故に限った話ではありませんし、もし加害者の任意保険会社が介入しているようであれば、あえて被害者側が慰謝料請求を遠慮する必要はありません。
おわりに

本稿では、慰謝料に関する基本的な説明を踏まえつつ、慰謝料請求で弁護士に依頼する場合に費用倒れにならないための考え方について解説しました。
弁護士法人小杉法律事務所では、被害者側損害賠償請求専門弁護士が初回無料の法律相談を実施しております。
弁護士に依頼することによって、慰謝料だけでなく、休業損害や逸失利益などの金額が上がる可能性がありますので、
相手方任意保険会社から提示された示談案の内容に疑問があったり、後遺症の等級認定などでお悩みの方は、
ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

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