骨折 上肢 神経症状
手の骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)
手の構造
↑は右手をついて上から(背側から)描写した図になります。
手指の各指は、おや指・ひとさし指・なか指・くすり指・こ指といいます。
おや指は末節と基節、その他の四本の指は末節・中節・基節に分かれます(総称して指骨と言います。)。
おや指にある関節は、指節間関節(IP)と中手指節関節(MP)、その他の四本の指の関節は、遠位指節間関節(DIP)・近位指節間関節(PIP)・中手指節関節(MP)です。
手の骨は、末節骨・中節骨・基節骨・中手骨、そして大小八つの骨から成る手根骨で構成されています。
手根骨は、大菱形骨(だいりょうけいこつ)、小菱形骨(しょうりょうけいこつ)、有頭骨(ゆうとうこつ)、有鉤骨(ゆうこうこつ)、舟状骨(しゅうじょうこつ)、月状骨(げつじょうこつ)、三角骨(さんかくこつ)、豆状骨(とうじょうこつ)の総称です。
手根骨や橈骨の骨折は手首の骨折についての記事で記載しておりますので、よろしければご覧ください。
手指の後遺障害は上肢の3大関節の後遺障害とは区別されています。
→上肢の3大関節と手指の分類についてはこちらの記事をご覧ください。
手の骨折の種類
中手骨骨折
硬いものに挟まれるなどの直達外力や、ボクシング、空手などによるスポーツ外傷での介達外力で発生することがあります。
→中手骨骨折による症状や後遺障害認定についてはこちらの記事をご覧ください。
指骨骨折
原因
手指は外傷を受けやすい部位で、局所を強打する、硬いものに挟まれるなどの直達外力や、スポーツ外傷(球技、スキー、スノーボードなど)での介達外力で発生します。
症状
手指の痛み、腫脹および変形が見られます。
治療について(標準整形外科学第15版(医学書院)、812頁)
新鮮例には徒手整復が容易であることが多いです。陳旧例や整復困難例に対しては観血的に整復し、鋼線などによる内固定を行います。
関節内骨折に対しては徒手整復を試みますが、整復が不十分である場合は手術療法を選択します。小骨片が関節面に入り込んでいる場合には摘出するか、整復して骨片を内固定します。内固定が困難な場合は、創外固定の併用も考慮します。
手の骨折をした際の症状
骨折部位の神経症状(痛みなど)や関節部の動きにくさが発生する可能性があります。
手の骨折をした場合に認定されうる後遺症
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のものが認定される可能性があります。
神経症状(痛みやしびれ等)
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害(関節の動かしにくさ)
下記の通り、多くの種類があります。
大まかな区分としては、親指の機能障害の有無、5本ある指のうち何本に機能障害が残存したか、動きにくい関節はどの関節なのか、になります。
おや指では中手指節関節(MP)または指節間関節(IP)、他の四本の指では、中手指節関節(MP)または近位指節間関節(PIP)に著しい運動障害を残すものを、「手指の用を廃したもの」として取り扱います。著しい運動障害を残すものとは、患側の関節可動域が健側の1/2以下になったものをいいます。
また、おや指では、橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の1/2以下になったものも「著しい運動障害を残すもの」として取り扱います。
別表第二第7級7号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの |
別表第二第8級4号 | 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの |
別表第二第9級13号 | 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの |
別表第二第10級7号 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの |
別表第二第12級10号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの |
別表第二第13級6号 | 1手のこ指の用を廃したもの |
別表第二第14級7号 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
検査方法
X線画像検査は必須です。X線検査で確認しにくい場合、CT画像の撮影について主治医の先生と相談なさることをお勧めします。
また、手指に可動域制限が残存した場合、後遺障害診断書へ可動域の測定値を記載していただくよう主治医の先生にお願いする必要がありますが、手指は5本あり、それぞれ2~3つの関節がありますので、測定部位が多く、単に「指が動かしにくい」と伝えただけでは必要な検査を受けられない可能性があります。異常のある関節についてしっかり測定していただいたか、その記載が正確なのか等、被害者側でも注意することが肝要です。
弁護士に相談を
交通事故等の外傷で手に骨折を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、手の骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。