骨折 下肢 神経症状
踵骨骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)
本記事では足部の踵(かかと)にある踵骨の骨折について整理しています。
踵骨(しょうこつ)とは
足には歩行時の荷重に耐えられるだけの安定した構造と、どのような形状の地表面にでも適合できる自由度の高い足底の動きが要求されます。28個の骨が理想的に組み合わさることで、この一見相反するような2つのことが可能になっています。
足根骨(そっこんこつ)(距骨・踵骨・舟状骨・内側楔状骨・中間楔状骨・外側楔状骨・立方骨の総称)がアーチ状に配列することで骨性に安定し、さらに足底靱帯ならびに足底腱膜が支えています。
踵骨は足の後部、かかとの骨です。
ショパール関節に接し、内側・外側縦アーチを構成する骨の一つです。
踵骨骨折の原因
踵骨骨折のほとんどは高所からの墜落によって踵部を打撲して起こる圧迫骨折で、両側性のことも多く、しばしば腰椎の圧迫骨折など他の部分の損傷を伴います。
踵骨骨折の症状
受傷直後から、踵部への荷重が不能になります。皮下出血、腫脹が著明で局所の圧痛と足関節運動時の激痛を伴います。
踵骨骨折の診断、治療、検査
(標準整形外科学第15版(医学書院)、845頁)
骨折線が後距踵関節に及ぶかどうかで関節内骨折と関節外骨折とに分類されます。
単純X線検査は、足関節の側面像のほか、軸斜撮影とアントンセン撮影を行います。単純X線側面像で踵骨隆起の上端と踵骨の上方頂点を結ぶ線でなす角は通常20~30°ですが、踵骨体部骨折があるとこの角度が減少します。
関節内骨折の転位の確認にはCT検査も有用です。
関節外骨折には部位別に前方突起骨折、体部骨折、隆起部骨折などがあります(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)、861頁)。
踵骨前方突起骨折は足首の二分靱帯損傷に合併することが多いと言われています。
→足首の二分靱帯損傷についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
踵骨骨折後の後遺障害認定
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。
神経症状
受傷部位に痛み等が残存する場合に認定可能性があります。
踵骨の骨折がショパール関節にも影響を及ぼす態様の場合や、内側・外側縦アーチに崩れや歪みがでた場合、痛みが残存する可能性が高まります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
骨折の影響で足首関節の可動域に制限が出た場合、8級、10級、12級の等級が認定される可能性があります。
靱帯損傷が生じて動揺関節になった場合、8級、10級、12級での認定可能性があります。
別表第二第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
→以下の2つのうちいずれか。 ・関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの ・常に硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
別表第二第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
→以下の2つのうちいずれか ・患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの ・時々硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
別表第二第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
→以下の2つのうちいずれか ・患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの ・重激な労働などの際以外には硬性補装具を必要としないもの(動揺関節の場合) |
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等でケガをして踵骨に骨折を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、骨折態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。