靭帯損傷/断裂 下肢 神経症状
足首の靱帯損傷の後遺症(弁護士法人小杉法律事務所監修)
この記事では、足首に靱帯損傷を負った場合の後遺症について説明しています。
靱帯損傷とは
靱帯とは、関節内外にある繊維性組織で、関節運動の方向性を規定し、過度の関節運動を防止する働きがあります。
靱帯損傷とは、靱帯の繊維が部分的または完全に損傷・断裂したものです。
足首の靱帯損傷の症状
足首の痛みや動きにくさ、動揺性などの症状が発生する可能性があります。
受傷の原因
足首の内返し、外返しの強制等で生じます。
足首の捻挫
一般的に、靱帯損傷が軽度のものを指し、X線像で骨折、脱臼、関節面の位置関係の異常がみられないものを捻挫といいます。
足首の靱帯損傷の分類
足首の靱帯損傷で好発すると言われているのが、遠位脛腓靱帯損傷、外側靱帯損傷、内側靱帯損傷(三角靱帯損傷)、二分靱帯損傷です。
各種靱帯損傷の治療方針等
まず問診で、外力によって強制された足関節の方向(外反、内反、背屈、底屈など)を問うことが大切だと言われています。
局所所見として関節包や靱帯の損傷部に腫脹と圧痛があり、受傷時と同じ方向への他動運動で痛みがあります。
単純X線検査を行い骨折のないことを確認した後、重症と思われる場合には内半、外反および前方引き出しを行ってみて不安定性を調べ、ストレスX線検査を行います。内半ストレスで距骨傾斜角10°以上、前方引き出し距離5mm以上を陽性としますが、個人差もあるため健側との比較を行います。
超音波検査は動的検査も可能なため有用です。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、843~844頁)
外側靱帯損傷
外側靱帯損傷の概要
足関節外側靱帯は前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯から構成されます。
足関節靱帯損傷の大部分を占めます。
足の内がえしの強制により生じます。
外側靱帯損傷の中でも前距腓靭帯の損傷が多いです。
外側靱帯損傷の治療方針
前距腓靱帯単独損傷か、前距腓・踵腓靭帯複合損傷かが治療上重要になります。
前距腓靭帯単独損傷の保存療法の成績は良好で、1週間程度のギプスまたはシーネ固定を行い、3週間程度のテーピング固定を行います。
前距腓靭帯・踵腓靭帯複合損傷は3~6週間のギプス固定を行います。
ギプス除去後も不安定性の強い場合や、スポーツ選手など活動性の高い患者には、靱帯修復手術が必要になることがあります。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、844頁)
遠位脛腓靱帯損傷
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、869頁)
遠位脛腓靱帯損傷の概要
遠位脛腓靱帯は、前脛腓靭帯と後脛腓靱帯で構成されます。
足の外がえしの強制により生じます。
単独損傷は少なく、多くは多果骨折に合併します。
遠位脛腓靱帯は主に前脛腓靱帯と後脛腓靱帯で構成され、複合的な遠位脛腓関節の動きを許容しています。
遠位脛腓靱帯損傷の多くは前脛腓靱帯の損傷ですが、重症例では後下脛腓靱帯も損傷することがあります。
典型的な受傷肢位は足部外旋、足関節背屈位です。
内側靱帯損傷(三角靱帯損傷)を合併することも多いです。
腓骨高位骨折を合併することもあるため注意が必要です。
遠位脛腓関節の開大(不安定性)の程度がなければ保存療法がおこなわれますが、明らかな開大がある場合は手術が検討されます。
保存療法
急性期はRICE治療(安静、冷却、圧迫、挙上)を行います。
荷重は疼痛のない範囲で許可されますが、疼痛があれば松葉杖を使用して免荷します。
受傷後2週までに荷重量を可能な範囲で増加させます。受傷後4~8週間で社会復帰、スポーツ復帰が目標になります。
手術療法
手術による脛腓間固定で最も多く行われている方法は金属スクリューで、良好な成績が認められます。ただし、一定期間の免荷が必要になり、スクリュー留置のまま荷重をすると折損の恐れがあります。金属スクリューの抜去の必要性とその時期については議論がありますが、術後8~12週程度のスクリュー留置が勧められています。その間リハビリテーションのなかで行う荷重に伴うプログラムが制限されます。
スーチャーボタンによる固定は脛腓間の生理的運動を許容し、理学療法が早期から積極的に行えるため、良好な治療成績が期待できます。近年はスーチャーテープによる補強術も行われています。スーチャーボタン固定は2~4週の免荷が推奨されています。
内側靱帯損傷(三角靱帯損傷)
内側靱帯(三角靱帯)は、前脛距靭帯、脛舟靱帯、脛踵靱帯、後脛距靱帯から構成されます。
足の外がえしの強制により生じます。
単独損傷は少なく、多くは果部骨折に合併して発生します。
内側靱帯損傷(三角靱帯損傷)は保存療法を行いますが、三角靱帯・脛腓靱帯複合損傷では手術療法を要することが多いです。(標準整形外科学第15版(医学書院)、844頁)
※足首果部
足首の関節は、脛・腓骨の遠位部と距骨の3つで構成されますが、脛骨遠位部には内果と後果、腓骨遠位部には外果があります。
これらの果部に発生した骨折を果部骨折といいます。
→足関節の果部骨折の詳細についてはくるぶしの骨折の記事をご確認ください。
二分靱帯損傷
二分靱帯は踵骨前方突起を起点としたV字状の靱帯で、踵舟靱帯と踵立方靱帯の総称です。
足関節内反捻挫時に損傷することが多いです。
両靱帯とも1cm幅、2cm長程度の短い靱帯ですが、特に踵舟靱帯は非常に強靭であるため、受傷時に靱帯の単独損傷を起こすことはまれで、靱帯付着部である踵骨前方突起の(剥離)骨折を伴うことが多いです。
骨折の有無、骨片の大きさによりますが、基本的には保存療法が第1選択となります。疼痛が軽度であれば硬性サポーターとし、荷重および歩行に支障があれば、短下肢ギプスによる2~4週間の固定を行ったのちサポーターに変更します。可動域訓練は痛みに応じて受傷早期より開始してよいと言われています。
骨片が大きい場合はスクリューなどによる骨接合術などの手術療法が選択されます。
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、871頁)
他に立方骨、舟状骨の裂離骨折に合併して生じることもあると言われます。
足首の靱帯損傷の後遺症
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。
神経症状
受傷部位に痛み等が残存する場合に認定可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
足首の靱帯損傷の影響で足関節の可動域に制限が出た場合、8級、10級、12級の等級が認定される可能性があります。
靱帯損傷により動揺関節になった場合、8級、10級、12級での認定可能性があります。
別表第二第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
→以下の2つのうちいずれか。 ・関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの ・常に硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
別表第二第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
→以下の2つのうちいずれか ・患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの ・時々硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
別表第二第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
→以下の2つのうちいずれか ・患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの ・重激な労働などの際以外には硬性補装具を必要としないもの(動揺関節の場合) |
関連する記事
→全身の靱帯損傷一般についてはこちらの記事をご確認ください。
→足関節の果部骨折(脛骨及び腓骨の遠位部骨折)の詳細についてはくるぶしの骨折の記事をご確認ください。
→二分靱帯損傷に関連する踵骨骨折についてはこちらの記事をご確認ください。
→二分靱帯損傷に関連する立方骨骨折についてはこちらの記事をご覧ください。
→二分靱帯損傷に関連する舟状骨骨折についてはこちらの記事をご覧ください。
→遠位脛腓靱帯損傷に関連して、腓骨骨折についてはこちらの記事をご覧ください。
弁護士に相談を
交通事故等の外傷で足首の靱帯損傷を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、靱帯損傷の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。
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