後遺障害等級一般論 骨折 上肢 下肢 神経症状
骨折で治りにくい部位(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらの記事では、骨折のうち、治りにくい部位について整理しています。
骨折とは
骨折とは、骨組織が何らかの外力によってその解剖学的な連続性を断たれた状態をいいます。加えられた外力が骨強度を超えたときに発生します。
治りにくい部位・その理由
→骨折が治る・治癒していく過程についての詳細はこちらの記事で記載しております。
骨折の正常な治癒過程で主なものは間接的骨癒合です。骨折部に生じた血腫内に肉芽が形成され、やがて仮骨によって両骨折端が連結された後、骨折部位に必要とされる強度を有する骨として再造成(リモデリング)されていきます。
ただ、不十分な固定や血流障害等が理由で骨癒合がうまくいかない(遷延癒合、骨癒合不全等)が起きることがあります。
血流障害が起きやすい骨折については、舟状骨骨折、大腿骨骨折、距骨骨折、脛骨中下1/3骨折等が挙げられます。
舟状骨骨折(手)
7つある手根骨(↑イラストだと黄で着色)の一つが舟状骨です。
手の舟状骨の血行は遠位部(指先の方向)より近位部(手首に近い方)へ供給されるために、近位部の骨折では骨癒合は不良です。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、809頁)
大腿骨頚部骨折
(標準整形外科学第15版(医学書院)、826頁)
大腿骨頚部骨折は次の理由で極めて骨癒合しにくく、骨接合後も偽関節となりえます。
→大腿骨頚部骨折についてはこちらの記事で詳細を整理しております。
・骨折部が関節内のために骨膜血行がもともと乏しい。
・主に血行を得ている内側大腿回旋動脈の分枝が骨折により損傷されやすい。
・骨折によって髄内血行も断たれる。
・骨折線にしばしば剪断力がかかる。
・基礎に高度な骨粗鬆症をもつ患者の場合、正常な骨折治癒を期待しにくい。
※偽関節
医学書では「骨折間隙に関節液様の粘液性組織液が満たされるものを偽関節 pseudoarthosis という(ただし骨癒合不全すべてを偽関節ということも多い)」等記載されます(標準整形外科学第15版(医学書院)、750頁)
自賠責保険の変形障害における認定上の「偽関節」については、例えば「上腕骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもの」くらいの表現にとどまっています。「ゆ合不全」とは、骨片間のゆ合機転が止まって異常可動を示す状態を表現し、長管骨の保持性や支持性への影響の程度に応じて等級を認定する、と説明されています。
距骨骨折
(標準整形外科学第15版(医学書院)、844~845頁)
距骨骨折は血流途絶により距骨体部の阻血性壊死を起こしやすく、長期免荷を要することがあり、足関節拘縮や骨委縮を生じやすいので、最近ではPTB装具などを用いて比較的早期から荷重歩行をさせることもあります。
距骨体部が壊死に至り、荷重時痛が高度な場合、距踵関節固定術を行うことがあります。
弁護士に相談を
交通事故等で骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うために、骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。本記事で整理しましたように、骨折態様や部位によっては他の骨折に比べ骨癒合に時間がかかるケースもあり、それだけ治療期間も長期化しますから、それも踏まえて事故後の治療や検査の方針、加害者側との交渉等を検討する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。