後遺障害等級一般論 骨折 上肢 下肢 神経症状
骨折の種類(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらでは、骨折の種類について整理しています。
骨折とは
(標準整形外科学第15版(医学書院)、743頁)
骨が何らかの原因によって、その解剖学的な連続性を絶たれた状態を骨折といいます。
骨折を起こすには、骨が全身的あるいは局所的疾患のために病的に弱体化していることを除けば、十分に強い外力が作用することが必要です。
もし加害者が、事故後に発見された骨折と事故の因果関係を否定したり、すべてが事故のせいではない(素因減額)という主張を行ってきた場合、例えば刑事記録や物損資料等から被害者の方の受傷部位に加わった衝撃が大きかったことを立証したり、過去の通院歴を検討し、事故時に骨の弱体化等がなかったか、あったとしても年相応の骨密度の低下である等の反論を行う必要があります。
骨折の原因
(標準整形外科学第15版(医学書院)、743~744頁)
交通事故や労災事故等を含む外傷性骨折、病的骨折、ストレス骨折の3種に分かれます。
外傷性骨折
正常な骨に強い外力が加わって生じる骨折です。
外力の加わった部位に骨折が生じる(直達外力による)場合と、外力が加わった部位から離れた部位に生じる(介達外力による)場合とがあります。
例えばですが、転倒して膝をついたときに生じる膝蓋骨骨折(膝のお皿)は直達外力によるもの、手をついて倒れたときに生じる上腕骨課上骨折は介達外力によるものという具合に整理できます。
→上腕骨課上骨折を含む肘部周辺の骨折についてはこちらの記事で整理しています。
病的骨折
骨の局所的な病変によって強度低下が基盤となり、通常では骨折を起こすとは考えられないような軽微な外力で生じる骨折です。
転移性あるいは原発性骨腫瘍、可能性骨髄炎などの局所病変によって起こることが多いです。
ストレス性骨折
明らかな外傷がなく、反復するストレスが加わることにより生じる骨折です。
疲労骨折
健常な骨に、通常は骨折を起こさない程度の負荷が繰り返し加わった場合に生じます。
急に環境や習慣を変えて激しい運動を繰り返したときに起こりやすいです。
脆弱性骨折
強度が低下した骨に、日常生活程度の軽微な負荷で生じる骨折です。
原因としては骨粗鬆症、骨軟化症が多く、椎体、骨盤、大腿骨頚部などに好発します。
そのほか長期透析、糖尿病、関節リウマチも原因になります。
骨折の種類
(標準整形外科学第15版(医学書院)、744~747頁)
その他、骨折の分類方法は様々です。
部位による分類(骨幹部、骨幹端部、骨端部。あるいは遠位や近位。)
長管骨(上腕骨や大腿骨など、棒状の長い骨。↑のイラストは脛骨です。)では、骨幹部骨折、骨間端部骨折、骨端部骨折に大別されます。
骨幹部→骨間端部→骨端部の順に、中央から端へ移動します。
骨折線が純粋に関節内に限局される骨折は関節内骨折や骨軟骨骨折と呼んで区別します。
脱臼に骨端部骨折を合併するものは脱臼骨折と呼びます。
また、体幹に近い方を近位部や近位端、体幹から遠い方を遠位部や遠位端と言います。↑のイラストですと、上の膝に近い方が近位、下の足首に近い方が遠位となります。
近位部骨折や遠位部骨折と言われれば、上記の骨折の内、骨幹部骨折を除いたものが該当しえますが、その辺の表現はお医者様にもよるところだと思われます。
関節内骨折も脱臼骨折も比較的強い外力により生じ、関節内骨折では軟骨損傷を、脱臼骨折では軟骨損傷に加え靱帯や腱を含む周辺軟部組織損傷や血管損傷を伴うことがあり、関節拘縮や不安定性が残存しやすいと言われています(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)、57頁)。
程度による分類(完全骨折、不完全骨折、不顕性骨折)
完全骨折
骨の連続性が完全に断たれたものです。
不完全骨折
部分的に骨の連続性が失われたものです。亀裂骨折(ひび)はこれに含まれます。
不顕性骨折
単純X線像では明らかでないが、MRIなどによって骨折の存在が証明されるものを言います。
大腿骨近位部、脛骨近位部、上腕骨大結節などで見られます。
骨挫傷(骨折ではない。)との厳密な区別は難しいと言われます。
→大腿骨近位部骨折はさらに骨頭骨折、頚部骨折、転子部骨折等に分類されますが、股関節の骨折としてこちらの記事で整理しています。
→脛骨近位部骨折(脛骨高原骨折(脛骨プラトー骨折))についてはこちらの記事で整理しています。
→上腕骨大結節骨折含む上腕骨近位端骨折についてはこちらの記事で整理しています。
外力の作用方向による分類(屈曲骨折、圧迫骨折、剪断骨折、捻転骨折、裂離骨折)
屈曲骨折
屈曲力、折れ曲がる作用による骨折です。
圧迫骨折
軸方向(上下方向)の圧迫力による骨折です。代表例は脊椎椎体骨折になります。
→脊椎骨折含む脊椎損傷の詳細はこちらの記事で整理しています。
剪断骨折
並行で逆向きの2つの力が加わることによる骨折です。
捻転骨折
大腿骨に体重をかっけたまま状態をひねった場合や、投球動作や腕相撲などで強い捻転力が上腕骨にかかった場合などに生じます。
裂離骨折(剥離骨折)
筋肉の瞬間的な収縮によって生じる骨折、大腿四頭筋の収縮による下前腸骨棘骨折や脛骨粗面骨折、上腕三頭筋の収縮による肘頭骨折などが含まれます。
骨折線の走行による分類(横骨折、斜骨折、螺旋骨折、粉砕骨折)
骨折線の走行によって、基本的には横骨折、斜骨折、螺旋骨折などに分けられます。
捻転骨折は螺旋骨折になりやすいです。
これらの骨折線が複数存在し、骨片の多いものを粉砕骨折と言います。
骨折部と外界の交通による分類(皮下骨折(単純骨折)、解放骨折(複雑骨折))
とても大雑把な表現ですが、骨が皮膚から外に飛び出すとか、創から骨が見える状態になっているのが解放骨折、そうでなければ皮下骨折になります。
皮下骨折(単純骨折)
骨折部に皮膚軟部の創がなく、外界との交通がないものを言います。
解放骨折(複雑骨折)
皮膚や軟部組織に創が存在し、骨折部と外界が直接交通するものを言います。
感染の危険が高く、骨折治癒過程に不利な要素が多いと言われます。
解放骨折を複雑骨折とも呼びますが、粉砕骨折と混同しやすいため、最近は複雑骨折の表現はあまり用いられません。
骨折の診断
(標準整形外科学第15版(医学書院)、752~753頁)
臨床症状と画像所見によって、骨折の診断は比較的に容易ですが、骨折型や合併症によって治療方針が変わる場合があるので注意を要すると言われます。
→骨折の診断や検査方法等の詳細についてはこちらの記事で整理しています。
臨床症状
皮下骨折か解放骨折か、血管損傷の有無、神経損傷の有無、骨折部の安定性、隣接関節および臓器との関係、軟部組織損傷、受傷後の時間的経過等に着目すべきだと言われています。
上腕骨骨幹部骨折や大腿骨課上骨折などでは、末梢神経損傷が起こりやすく、血管損傷がある場合には末梢神経損傷を合併することが多いです。
脱臼、靱帯損傷、関節内骨折の有無は、受傷肢の機能的な予後に大きく影響します。
画像所見
単純X線検査は必須です。あとは必要に応じてCT検査、MRI検査を行います。
不全骨折、不顕性骨折や骨挫傷を疑い場合はMRI検査が有用です。
骨折の治療
整復、固定、リハビリテーションが基本的な治療指針になります。
弁護士に相談を
交通事故等で骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うために、骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。