骨折 上肢 神経症状
舟状骨骨折について(弁護士法人小杉法律事務所監修)
この記事では手にある舟状骨の骨折について整理します。舟状骨は足にもありますが、足の舟状骨骨折についてはこちらのリンク先の記事で整理しています。
舟状骨(しゅうじょうこつ)とは
このイラストは右手を上から眺めたものです。
一般的に手首という場合、前腕とてのひらが繋がっている部分のことを指しますが、前腕側では橈骨と尺骨、手のひら側では8つの手根骨(大菱形骨(だいりょうけいこつ)、小菱形骨(しょうりょうけいこつ)、有頭骨(ゆうとうこつ)、有鉤骨(ゆうこうこつ)、舟状骨(しゅうじょうこつ)、月状骨(げつじょうこつ)、三角骨(さんかくこつ)、豆状骨(とうじょうこつ))で構成されています。
手根骨についてはさらに、近位手根列(舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨)と遠位手根列(大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨)に分類でき、近位手根列と遠位手根列の間には手根中央関節があります。
また、橈尺骨と近位手根列の間の関節を橈骨手根関節と言います。
手関節の可動域は橈骨手根関節と手根中央関節の可動域の総和となっています。手関節の背屈では、橈骨手根関節の動きが66.5%、手根中央関節の動きが33.5%で、橈骨手根関節の動きが大きいです。これに対して手関節の屈曲では橈骨手根関節で40%、手根中央関節で60%となり、手根中央関節の動きが多くなります。(標準整形外科学第15版(医学書院)、493~494頁)
ですので、手根骨を骨折した場合、骨折態様によっては手関節の動きに影響をあたえる恐れがあります。
→舟状骨骨折含む手首の骨折一般についてはこちらの記事をご覧ください。
舟状骨骨折を受傷する原因はどのようなものか
手関節背屈位(手首を持ち上げる動き)で手をついたときに受傷することが多い骨折です。
舟状骨体部での骨折が多いです。
舟状骨への血行は遠位部(手首から遠い)より近位部(手首に近い)へ供給されるために、近位部の骨折では骨癒合は不良となり、治りにくい骨折だと言えます。
→骨折で治りにくい部位についてはこちらの記事で整理しています。
舟状骨骨折の症状・病態はどのようなものか
手関節の運動時痛、いわゆる嗅ぎタバコ窩に圧痛腫脹を認めることが多いです。
また、舟状骨を含む手根骨に脱臼や骨折等が生じた場合、手根管症候群(正中神経麻痺)を合併する可能性もあります。
→手根管症候群(正中神経麻痺)の詳細はこちらの記事をご覧ください。
舟状骨骨折の治療について
保存療法では、前腕遠位から拇指基節骨間でのギプスによる固定(thumb spica)を10~12週行うことが多いです。しかし、このような長期間の固定を行っても骨癒合しない場合があること、社会的背景で長期間の外固定を望まないこと、内固定材料の進化により、最近は手術療法を行うことが多くなりました。(標準整形外科学第15版(医学書院)809頁)
舟状骨骨折で認定されうる後遺障害等級は
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のものが認定される可能性があります。
神経症状
骨折部位の痛みやしびれ等の症状です。
骨折等の器質的損傷が画像所見等の客観的な資料から明らかでない場合、非該当か、等級認定が下りても14級になる可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
舟状骨骨折が手関節の動きに影響を与えている場合、認定可能性があります。その場合、手首の可動域(屈曲(掌屈)・伸展(背屈)等)だけではなく、前腕部の回内・回外運動についても測定し、評価してもらうのが妥当です。
回内・回外の機能障害の認定にあたっては、健側の1/4以下に制限されているものを著しい機能障害に準じて別表第二第10級相当、健側の1/2以下に制限されているものを単なる機能障害に準じて別表第二第12級相当が認定されます。
骨折等の器質的損傷が画像所見等の客観的な資料から明らかでないとか、骨折態様等から残存した可動域制限の説明がつかないとされる場合、機能障害としての等級認定がなされない可能性があります。
別表第二第8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
別表第二第10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
別表第二第12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
検査方法
単純X線画像では通常の正・側面2方向では骨折線がわからないことがあり、斜位(回内)像と手関節正面最大尺屈位像を追加して評価します。単純X線検査で診断がつかない場合、CTやMRIで診断されることもあります。
弁護士に相談を
交通事故等の外傷で舟状骨骨折を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、舟状骨骨折の態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。
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