上肢 神経症状
正中神経(弁護士法人小杉法律事務所監修)
本記事では末梢神経損傷のうち、正中神経麻痺について整理します。
正中神経とは
正中神経は腕神経叢に由来し、上肢掌側(屈側)を走行する末梢神経です。
発生する症状に違いが出ますので、障害部位によって区別されます。
本記事では手根管症候群について整理していきます。
手根管症候群(正中神経低位麻痺)(手首部) | 手根管(手根骨と屈筋支帯で構成されたトンネル状構造)の絞扼による |
前骨間神経麻痺(肘の内側の少し下) | 円回内筋、浅指屈筋(腱性起始部)、交差する小血管などの絞扼による |
回内筋症候群(正中神経高位麻痺)(肘の内側~その少し下) | 円回内筋(上腕頭~尺骨頭間)、または浅指屈筋(腱性起始部)の絞扼による |
手根管症候群の原因
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、498頁)
二次性と突発性に分かれます。
二次性
橈骨遠位端骨折や手根骨脱臼・骨折等の手関節部外傷
→手根骨のうち、舟状骨の骨折についてはこちらの記事で整理しています。
突発性
加齢、繰り返す動作による滑膜や腱の変性肥厚、それに続く手根管内容積と圧の増大など
手根管症候群の症状
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、470頁)
母指から環指(薬指)にかけてのしびれや疼痛が発生します。症状が進行すると母指球筋が委縮し、母指対立運動(つまみ動作)が困難になります(perfect O sign)。また、夜間や明け方にしびれが増強する傾向があります。
手根管症候群で必要な検査
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、470頁))
Tinel徴候(ティネル徴候)
手関節付近の正中神経を4~6回叩打すると支配領域である母指から環指撓側及び手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じます。
Phalenテスト
手関節を最大掌屈(屈曲)位に約1分感保持させるテストです。正中神経が分布している指に疼痛やしびれの増悪がみられれば陽性です。
単純X線検査
骨折・変形癒合、骨病変や石灰沈着物の手根管内での存在をチェックします。通常の正面像、側面像のほかに手根管撮影が有用です。
電気生理学的検査
神経伝導速度の測定が有用です。
認定されうる後遺障害等級
手指(母指、示指、中指、環指)についての神経障害や機能障害が認定される可能性があります。
→手根管症候群を含む末梢神経損傷で認定されうる後遺障害等級についてはこちらの記事をご覧ください。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等で受傷し、正中神経損傷(手根管症候群)を損傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、損傷の部位や態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。