脳損傷 神経症状
脳挫傷の後遺症と前頭葉(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらの記事では、脳挫傷後の後遺症と前頭葉との関連性について整理しました。
脳挫傷とは
(標準脳神経外科学(医学書院)、267頁、276頁)
脳損傷のうち、脳の損傷が限局的で脳全体への波及が少ないものを脳挫傷(局所性脳損傷)と言います。
他方、脳の広範位にわたる損傷を起こした状態がびまん性軸索損傷と呼ばれます。
交通事故等による頭部外傷で生じます。
(標準脳神経外科学(医学書院)、266~267頁、275頁)
脳挫傷は穿通外傷のように外力が極めて限局的に加わってできる場合もありますが、多くの場合は頭部に加速あるいは減速の衝撃が生じて発生します。
→脳挫傷受傷の原因(「穿通外傷」、「加速あるいは減速の衝撃」の具体例など)についてはこちらの記事で詳細をご確認ください。
前頭葉の損傷で何が起きるか
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、129~130頁)
大脳にある前頭葉は主に精神活動や運動性言語に関連します。
前頭葉のどの部位を損傷したかにもよりますが、次のような症状が発生します。
前頭葉穹窿部 | 自発性が欠如し、複雑な思考や判断が困難になる。高度な場合は無気力・無関心になる。 |
前頭葉内側部 | 自発言語が少なくなり、失禁症状が発生し、無動性無言の状態になる。 |
前頭葉下面 | 短期記憶障害や抑制が欠如し、感情失禁がみられ、一見してひょうきん、多幸性で状況にふさわしくない発現などで社会的問題行動をしばしば起こす。 |
高次脳機能障害としての等級認定可能性
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害を整理しました。
前頭葉損傷後に予想される各症状は高次脳機能障害に含まれる精神障害として取り扱われる結果、症状固定時に残存すれば高次脳機能障害として認定がなされる可能性があります。
認定区分は次の通りです。
→高次脳機能障害として認定を受けるために重要な検査や視点についてはこちらの記事で整理しています。
→その他、脳挫傷後に生じうる後遺障害についてはこちらの記事でご確認ください。
別表第一第1級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」をいい、「身体機能は残存しているが高度の痴ほうがあるために、生活維持に必要な身のまわり動作に全面的介護を要するもの」もこれにあたります。 |
別表第一第2級1号 | 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」をいい、「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている状態です。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの」がこれにあてはまります。 |
別表第二第3級3号 | 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」をいい、「自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない場合です。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える状態です。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」がこれに該当します。 |
別表第二第5級2号 | 「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」をいい、「単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題があります。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」がこれに該当します。 |
別表第二第7級4号 | 「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」をいい、「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」がこれに該当します。 |
別表第二第9級10号 | 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」をいい、「一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」がこれに該当します。 |
弁護士に相談を
交通事故等で頭部外傷を負い、前頭葉に障害を負った場合、器質性精神障害が生じる場合がありますが、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うためには、受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。