後遺障害等級一般論
既存障害・加重障害について

弁護士小杉晴洋講演写真
本コラムは、弁護士小杉晴洋が福岡県弁護士会において行った加重障害|既存障害の講演内容を元に記しております。
加重障害|既存障害とは
「加重障害」とは、既に後遺障害のある被害者が、2度目の事故により傷害を受けたことによって、同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における2度目の事故による後遺障害をいいます。
簡単に言うと、過去に交通事故に遭って後遺障害認定を受けたことがある人がまた交通事故に遭ったとか、交通事故と関係なく持病を有していた人が交通事故に遭ったという場合に、今回の交通事故での後遺障害の判断に、以前から有している症状が影響を受けるかどうかという話です。
過去に後遺障害等級の認定を受けたことがある方や、交通事故の前から持病を有していた方については、この加重障害という問題に直面する可能性がありますので注意が必要です。
そして、ここでいう、過去の事故による後遺障害や、交通事故の前から有していた持病のことを「既存障害」と呼び、損害賠償請求における減額の理由にされてしまうことがあります。
加重障害|既存障害の根拠規定:自動車損害賠償保障法施行令2条2項の規定や解釈について

加重障害|既存障害については、自動車損害賠償保障法施行令2条2項に規定があります。
⑴自動車損害賠償保障法施行令2条2項の条文
「法第十三条第一項の保険金額は、既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによって同一の部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表一又は別表二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあった後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。」
※法第十三条第一項:「責任保険の保険金額は、政令で定める。」
⑵自動車損害賠償保障法施行令2条2項の条文解釈
要約すると、①既に後遺障害のあった者(既存障害を有する者)が、②同一部位について、③障害の程度を加重した場合、その加重した限度で自賠責保険金の支払いがなされるということが規定されています。
支払われる自賠責保険金は、「新しい障害の金額-既存障害の金額」ということになります。
例えば、元々9級に該当する既存障害を有していた人が交通事故に遭って、同一部位について後遺障害等級3級の障害が残ってしまった場合、支払われる自賠責保険金は、後遺障害等級3級の自賠責保険金2219万円-後遺障害等級9級の自賠責保険金616万円=1603万円となります。
実際の事件で問題となる要件は、①「既に後遺障害のある者」と、②「同一の部位」に該当するかどうかです。
⑶「既に後遺障害のある者」であるかどうか(既存障害)

加重障害が問題となるケースでは、交通事故によって生じた後遺症が後遺障害等級表の等級に該当するかどうかの判断とは別に、既存障害が後遺障害等級表に該当するかの判断がなされます。
既存障害が先天性のものか後天性のものかは問われず、また、過去の後遺障害で賠償を受けたかどうかも問われません。
既存障害の後遺障害等級該当の判断は甘めになされる印象があり(被害者側にとっては損)、被害者側の戦い方としては、自賠責保険が既存障害等級を重めに認定した場合、その等級認定を下げるために立証を行っていきます。
たとえば、自賠責保険が既存障害と評価した障害について、当時のカルテを取り寄せてその症状を確認し、自賠責が認定するほどに酷い症状ではないことを裏付ける記載を探したり、当時の主治医と医師面談を実施して、既存障害の程度に関する医学的意見を取り寄せ、認定等級にはあてはまらないといった立証を行ったりしていきます。
⑷「同一の部位」であるかどうか
①従来の自賠責保険の運用
自賠責保険の運用は、「同一の部位」であるかどうかの判断は、同一系列にあたるかかどうかで判断されていました。
したがいまして、たとえば、元々脊髄損傷による下肢の対麻痺の既存障害を有していた車いすの人が、自動車にはねられて頸椎捻挫となった場合、これらの症状は同一系列であるため、車いすの被害者の頸椎捻挫由来の首の痛みについて、後遺障害等級14級9号が認定されることはありません。
これに対して、末梢神経障害における局部の神経症状の場合は、従来から「同一の部位」に該当するとは判断されていません。
例えば、過去に頸部痛で14級9号の認定を受けていた者が、右膝痛で14級9号の認定を受ける場合は、「同一の部位」に該当するとは判断されません。
他方で、既存障害が頸椎捻挫による右腕のしびれで、新たな障害が頸椎捻挫による右手のしびれの場合は、右上肢ということで同一であるので、局部の神経症状といえども「同一の部位」に該当すると判断されています。
たとえば、第1事故で頸椎捻挫由来の頸部痛と右上肢シビレ、第2事故で頸椎捻挫由来の頸部痛と左上肢シビレという場合で、いずれも後遺障害等級14級9号程度とすると、
・第1事故:頸部痛と右上肢シビレにつき14級9号(※併合14級ではない)
・第2事故:頸部痛非該当(既存障害から加重無し)・左上肢シビレ14級9号
ということになります。
いずれも後遺障害等級12級13号程度とすると、
・第1事故:頸部痛と右上肢シビレにつき12級13号(※併合11級ではない)
・第2事故:頸部痛非該当(既存障害から加重無し)・左上肢シビレ12級13号
ということになります。
既存障害が12級13号・新しい障害14級9号だとすると、
・第1事故:頸部痛と右上肢シビレにつき12級13号(併合11級ではない)
・第2事故:頸部痛非該当(既存障害から加重無し)・左上肢シビレ14級9号
ということになります。
既存障害が14級9号・新しい障害が12級13号の場合は、第2事故における自賠責保険の処理が不明で、
・第1事故:頸部痛と右上肢シビレにつき14級9号(※併合14級ではない)
・第2事故:頸部痛は12級13号-14級9号(既存障害からの加重)ですが、左上肢シビレで新たに12級13号が認定されるので、12級の自賠責保険金224万円-14級の自賠責保険金75万円ではなく、新たな12級13号につき224万円の自賠責保険金が支払われるのが自然だと思われます。
なお、既存障害が頸椎捻挫による右手のしびれで、新たな障害が右手関節捻挫による右手の痛みの解決事例についてはこちらをご覧ください。
②平成28年東京高裁判決以降の自賠責の運用
自賠責保険を被告とした東京高等裁判所平成28年1月20日判決(判例時報2292号58頁等。以下「同一部位判決」といいます。)において、「『同一の部位』とは、損害として一体的に評価されるべき身体の類型的な部位をいうと解すべきである。」との判断が示されました。
この判決を受けて、平成28年2月国土交通省より損害保険料率算出機構に対し自動車局保障制度参事官室長通達「加重障害の認定について」を発出し、損害保険料率算出機構は、同年3月30日国土交通省に対し加重障害に関する従来の運用変更を実施する旨の回答をした上で(損料2015-382号)、同年11月1日「自賠責保険(共済)における加重障害の認定に関する検討結果について」において具体的な運用変更方法を示しています(損料2016-116号。その他国官参自保第550号、同854号等参照)。
まず、脳・脊髄等の中枢神経の障害(主として第9級以上の障害に該当)についても、神経の損傷箇所を把握し、その損傷箇所と対応して発生する身体の範囲を把握することが可能であること等が確認されたことから、既存障害と新たに生じた障害の原因である神経の各損傷箇所に応じて例外的な検討を行う場面を特例措置として設けるとしました。
そして、特例措置の対象事案について、加重障害に該当しない事案のうち、①既存障害と新たに加わった障害がともに神経系統の機能又は精神の障害系列(系列番号13)に属する、②既存障害が神経系統の機能又は精神の障害(第1級~第9級)である、③新たに加わった障害が局部の神経系統の障害(第12級または第14級)に該当する、④新たに加わった障害の神経症状の範囲が既存障害の精神・神経症状の範囲と明らかに異なる、のすべての要件を満たすものとしました。
分かりづらい表現となっていますが、要は、「同一部位=同一系列」という従来の自賠責の解釈は変えずに、同一部位判決の類似事例と評価できる事例のみ、特例措置として個別の判断を行うというような内容となっています。
損害保険料率算出機構が特例措置の適用が想定される具体例として挙げているのは、下記の3例です。
例1:既存障害が対麻痺の事例「既存障害が第5級に該当する対麻痺で、麻痺の存する高位より上の身体部分(頭頸部、両上肢等の範囲)に、新たに局部の神経系統の障害が加わったもの」
※弁護士小杉解説:これは、たとえば、元々脊髄損傷(胸髄損傷や腰髄損傷)によって下半身麻痺の既存障害を有する者が交通事故に遭い、頭・首・両上肢の範囲に痛みや痺れを残す後遺障害を新たに負った場合は、特例措置として、既存障害がない場合と同様に、後遺障害等級の認定を行うといったことを示す内容といえます。
例2:既存障害が片麻痺の事例「既存障害が第1級に該当する片麻痺で、麻痺肢とは反対側の上肢または下肢に、新たに局部の神経系統の障害が加わったもの」
※弁護士小杉解説:これは、例えば、右半身に麻痺を有するといった既存障害を残す者が交通事故に遭い、左半身に痛みや痺れを残す後遺障害を新たに負った場合は、特例措置として、既存障害がない場合と同様に、後遺障害等級の認定を行うといったことを示す内容といえます。
例3:既存障害が脳障害の事例:「既存障害が第9級に該当する脳障害で、服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されていたところ、頸部、腰部、上肢、下肢等に新たに局部の神経系統の障害が加わったもの」
※弁護士小杉解説:発作が完全に抑制されている例が挙げられているので分かりづらいですが、既存障害が高次脳機能障害・非器質性精神障害・てんかん障害の場合においては、痛みや痺れを残す後遺障害を新たに負った場合、既存障害がない場合と同様に、後遺障害等級の認定を行うといったことを示す内容とみて良いでしょう。
なお、上記の自賠責保険の運用は、同一部位判決の判決確定日である平成28年2月4日を基準日とし、当該基準日以降に発生した交通事故に適用するものとされています。
また、特例措置を適用する事案及びその可能性のある事案については、損害保険料率算出機構本部(損害調査部)において集約し、必要に応じて医師・弁護士等の専門家の意見を徴した上で判断を行うとされています。
⑸加重障害・既存障害に関する自賠責の運用の今後の課題

①既存障害認定が甘いという点は同一部位判決以前と変わらない
既存障害の対象が、過去の交通事故事件に関するものである場合には、過去に何級の後遺障害等級認定を受けたかというのがそのまま既存障害の評価となります。この場合は、果たして過去の後遺障害等級認定が妥当であったかどうかといった審査を丁寧にしてくれることはありませんので、基本は異議申立てや紛争処理申請よりも裁判に馴染む類型といえます。
また、既存障害の対象が、過去の交通事故事件に関するものでない場合には、経過診断書や後遺障害診断書に記載されている既存障害の有無のチェック欄を取っ掛かりとして、医療照会を行い、その回答内容によって、できる限り重い後遺障害等級評価をしてくるという傾向があります。
既存障害の後遺障害等級評価が重いというのは、今回の交通事故での損害賠償額を減らす事由となりますので、被害者側としては、断固として戦う必要があります。
既存障害が交通事故事件に関するものでない場合、自賠責による後遺障害等級認定を経ていないということですので、症状固定日がいつであったのか、症状固定日の際の後遺症がどのような程度であったのか等も情報も整理されていないことも多く、こうした事情もあいまって、症状が酷かった時期を切り取って、その時点の症状を既存障害として評価されることがあります。
交通事故直前には既に症状はなくなっていた/軽減していたのに、酷い時の症状を切り取って既存障害と評価するのです。
交通事故直前には存在していなかった症状は既存障害ではありません。
これは、絶対に許されない既存障害評価で、異議申立てや紛争処理申請によって覆す必要があります。
②結局「同一部位=同一系列」という従来の評価方法を変えていない
先に述べたように、自賠責は、結局、「同一部位=同一系列」という従来の評価方法を変更しておらず、一部特例措置として扱う旨の運用を掲げています。
同一部位判決では、「『同一の部位』とは、損害として一体的に評価されるべき身体の類型的な部位をいうと解すべきである。」との判断が示されていますので、これに従った運用をしなければならないはずですが、大量の交通事故事件を迅速に処理しなければならないという自賠責保険の運用上、なるべく頭を使わずに判断しなければならないという合理性をなるべく残したというようなところでしょうか。
特に痛み・痺れ等といった神経系統の障害は、どこの部位であっても同じ系列に属しますので、「同一部位=同一系列」という考えを前提とすると、頭も足も同じ部位と考えることができ、「こことここは同じ部位だろうか?」と考えなくて済みます。
頭と足が同じ部位というのは、どう考えてもおかしいわけですが、新たに加わった障害の神経症状の範囲が既存障害の精神・神経症状の範囲と明らかに異なる場合には、特例措置として別途判断することになり、全件頭を使わないで判断するといった運用は中止となりました。
ただ、「明らかに異なる場合」のみ特例措置となっていますので、自賠責が「明らか」と評価しない場合には、従来どおり、既存障害分が引かれた賠償額しか受け取れない運用となっています。
また、「明らかに異なる場合」であっても、新たに加わった障害が9級以上の場合には、従来どおりの判断がなされます。
たとえば、既存障害が脊髄損傷由来の対麻痺1級で、新たに加わった障害が右腕のCRPS7級の例ですと、既存障害は下半身に関するもので、新たに加わった障害は右腕に関するものですから、明らかに異なる場合に該当しますが、これは同一部位判決の後の自賠責保険の運用でも非該当となります。また、既存障害として高次脳機能障害2級を有する者が、新たに2級に該当する脊髄損傷を負った例でも、非該当となります。
同一部位判決の趣旨からすれば、前者の例ではCRPS7級の認定がなされるべきですし、後者の例では脊髄損傷2級の認定がなされるべきです。
こうした判断は、元々障害を有する人への差別的な取扱いであり、元々重度の障害を有する人が交通事故に遭った場合には健常者とは同じ取り扱いをしませんと宣言しているようなものですので、弁護士法人小杉法律事務所としては、憲法14条の平等権を侵害する取扱いであると考えています。
平成28年より運用の改善は見られますが、以上のとおり、まだまだ不十分な点がありますので、今後も訴訟提起等を通じて、自賠責の運用変更を促していきたいと考えています。
なお、この考え方は、交通事故に限らず、労災・学校事故など他の後遺障害評価においても同様です。
加重障害事案における具体的な注意点

⑴既存障害の有無をチェックする
加重障害事案においては、そもそも既存障害・既往症があるのかどうかをチェックするところから始まります。
後で既存障害が判明すると、当初の見込んでいた損害額が減額されてしまう可能性があるため、事前に既存障害・既往症の有無を把握しておくことが重要です。
また、診断書などの既存障害欄に「有」とチェックされていないかどうか、カルテなどに既存障害に関する記載がないかどうかを確認することも重要となります。
既存障害を窺わせる記載が医証の中に存在する場合は、自賠責保険が既存障害の調査を始めてしまい、前述のとおり、甘い既存障害評価がなされ、損害額を減らされてしまうので、事前の既存障害チェックを行うようにしましょう。
⑵既存障害が不当に高く評価されていないかをチェックする
既存障害が後遺障害等級表に該当すると判断されると、今回の事故における後遺障害等級-既存障害の後遺障害等級の自賠責保険金しか受け取ることができなくなってしまいます。
また、今回の事故における後遺障害等級が既存障害の後遺障害等級よりも低いと、非該当と判断され、後遺障害であるとの認定すらされなくなってしまいます。
そこで、まずは既存障害について判断された後遺障害等級が不当に高く評価されていないかをチェックし、既存障害の後遺障害等級を下げられるかどうかを検討していくことになります。
この点については、医師面談及びそれに基づく意見書が有効で、既存障害等級を下げられる可能性があるのであれば、異議申立て→紛争処理申請と進んでいくことになります。
また、既存障害に関するカルテ等当時の医療記録、事故直近の健康診断、事故前の仕事に関する資料なども、既存障害の後遺障害等級を下げる重要な証拠となることが多いです。
被害者請求段階で既存障害の点が論点になることが判明していれば、既存障害についての意見書や証拠をつけて被害者請求をするという方策をとることもあります。
⑶「同一の部位」に当たるのかどうかをチェックする
既存障害が後遺障害等級に該当するとしても、そもそもそれが「同一の部位」に当たるのかどうかのチェックが必要です。
既存障害があったとしても、「同一の部位」に当たらないということができれば、既存障害が何級であると評価されても、新しい後遺障害について等級が付けられるからです。
形式的には同じ部位に症状が残っていても、原因が違うのであれば、「同一の部位」と評価されずに新たに後遺障害についての等級が付けられることがありますし、また、今後は同一系列であるかどうかではなく、個別具体的な判断がなされますので、中枢神経の障害なのか末梢神経の障害なのか、既存障害と新しい障害との間に医学的な関連はあるのかなどの立証により自賠責保険の判断が覆る可能性があります。
自賠責保険の判断を鵜呑みにせず、既存障害と新しい障害との関係を丁寧に調査し、症状についての原因が違う等の理由が見いだせそうであれば、異議申立て→紛争処理申請と進んでいくのが良い方策といえます。
上述の特例措置に該当しないような事例の場合は、裁判でその不合理さを是正することになります。
⑷既存障害と今回の交通事故との時間差をチェックする
たとえば、以前に頸椎捻挫由来の頸部痛について「局部に神経症状を残すもの」として14級の認定を受けていた場合、将来交通事故に遭って頸椎捻挫由来の頸部痛について「局部に神経症状を残すもの」として14級の認定を再度受けることはありません。後遺障害というのは永久残存性を有するとされており、自賠責保険は過去の判断に拘束されることになっています。
しかしながら、実際問題として、むち打ちの後遺障害等級14級9号程度ですと、逸失利益が67歳まで認められることは少なく、5年などに制限されるケースが多いです。たとえば、15年前の頸椎捻挫で14級と認定され労働能力喪失期間5年分の賠償を受けた者が、新しい交通事故により頸椎捻挫由来の頸部痛が生じた場合、逸失利益を一切もらえないというのは不合理です。
そこでこのような場合には、訴訟提起をして、今回の新たな後遺障害についての主張立証を行っていくことが適切であるといえます。
加重障害|既存障害に関する実際の解決事例

⑴既存障害等級を下げることにより今回の交通事故の後遺障害等級を獲得した事例
①既存障害:てんかん 新しい障害:顔面骨折
この事例では、てんかんの既往症を有していた方が交通事故によって顔面を骨折してしまい、顔に神経症状が生じてしまいました。
自賠責保険の判断は既存障害のてんかんが後遺障害等級9級10号に該当することから、顔の神経症状は後遺障害等級には該当しないというものでした。
この事例では、既存障害のてんかんが後遺障害等級9級10号には該当しないとする紛争処理申請をすることによって、顔の神経症状の後遺障害等級を新たに獲得しています。
この解決事例の詳細はこちらのページをご覧ください。
②既存障害:右膝痛 新しい障害:右膝痛
この事例は、過去に右膝での通院歴のあった方が交通事故に遭い右膝を骨折してしまったというケースです。
自賠責保険は、骨折に伴う右膝痛について後遺障害等級12級13号の認定をしましたが、元々右膝について既往症を有していたことから、既存障害14級9号の認定も行い、12級の自賠責保険金(224万円)から14級の自賠責保険金(75万円)を引いた149万円についての支払を行ってきました。
しかしながら、既往症とされている右膝痛は後遺症と評価するようなものではなかったため、その点を指摘する紛争処理申請を行い、既存障害を非該当判断に変更させることで、既存障害によるマイナスを打ち消しました。
この解決事例の詳細はこちらのページをご覧ください。
⑵「同一の部位」には当たらないとすることにより今回の交通事故の後遺障害等級を獲得した事例
①既存障害:右肩痛 新しい障害:右肩しびれ
この事例は、以前、右肩痛で後遺障害等級12級12号(当時。現12級13号)の認定を受けていた方が、約15年後に新たに交通事故に遭い、頸椎捻挫の症状として右肩にしびれが出てしまったというケースです。
自賠責保険は、過去に右肩について後遺障害等級を獲得していたことを理由に、今回の交通事故では、後遺障害等級非該当の判断をしました。
しかしながら、過去の交通事故の記録を取り寄せて精査したところ、以前の後遺障害と今回の後遺障害は、原因が異なることが判明します。
そこで、その点を指摘して異議申立てをしたところ、今回の事故で、右肩の症状について後遺障害等級14級9号が認定されました。
この解決事例の詳細はこちらのページをご覧ください。
②既存障害:胸髄損傷 新しい障害:頸椎捻挫
この事例は、元々胸髄損傷の障害を持っておられる方が、追突事故に遭ってしまい、首のむち打ちとなってしまったというケースです。
従来の自賠責保険の考え方では、同一系列で後遺障害等級1級の既存障害があるため、その後いかなる神経症状が後遺症として残ってしまったとしても、後遺障害等級の認定がなされることはありません。
ただし、この被害者の方は、胸から上は何らの障害を有しておらず、頸椎捻挫由来の症状について一切後遺障害等級の認定がなされないというのは不合理です。
そこで、同一部位判決を元に弁護士名義の意見書を作成し、自賠責保険に被害者請求をしたところ、「同一の部位」であるとの評価はされず、後遺障害等級14級9号の認定を得ることができました。
この解決事例の詳細はこちらのページをご覧ください。
③既存障害:むち打ち 新しい障害:むち打ち
交通事故事案において、最も多い傷害は「むち打ち」です。
過去にむち打ちで後遺障害等級を獲得していた場合であっても、「同一の部位」に該当するとの判断を避けることにより、再度後遺障害等級を獲得することが可能です。
過去にむち打ちでの後遺障害等級認定を受けていた被害者につき、再度むち打ちで後遺障害等級を獲得した解決事例についてはこちらやこちらをご覧ください。
⑶時の経過より過去の後遺障害等級を考慮せずに新しく後遺障害等級を獲得した事例
①既存障害:頸部痛 新しい障害:頸部痛
過去にむち打ち症によって後遺障害等級を獲得していた方が、再度交通事故に遭ってむち打ちとなり、同じ部位に症状が出てしまったというケースにおいて、訴訟提起をすることにより、裁判所に改めて同じ部位の後遺障害等級を認定させることができました。
この解決事例の詳細はこちらのページをご覧ください。
加重障害における逸失利益の算定

加重障害における逸失利益の算定には、下記の3つの考え方があります。
- 2度目の事故によって新たに生じた労働能力の喪失の程度を認定し、その直前の収入の金額(実収入又は既存の後遺障害を考慮して賃金センサスの平均賃金を減額した額)に、当該労働能力喪失率を乗ずる方式
- 2度目の事故後の後遺障害による逸失利益の金額から、2度目の事故による受傷がなかったとした場合の既存の後遺障害のみによる逸失利益を控除する方式
- 2度目の事故後の後遺障害による逸失利益の金額から、既存の後遺障害を理由に素因減額(民法第722条2項の類推適用)をする方式
過去に後遺障害等級の認定を受けていた方や、持病による疾患を有していた方であっても、新たな交通事故に遭う前にお仕事をして収入を得ているケースというのは多く存在します。
素直に考えれば、元々障害を有している状態で収入を得ていたわけですから、その収入というのは元々有していた障害を織り込み済みの金額ということになります。
後遺症逸失利益の算定というのは、事故前年の年収を基礎収入額として算定するのが原則とされていますから、原則的な計算方法に従う限り、元々有してた障害は既に基礎収入額の中で考慮されているということができますから、加重障害を理由に逸失利益を減額するべきではないということになります。
したがいまして、①の考え方に従い、逸失利益を算定するのが良いと考えられます。
この考え方に従うと、②の考え方は論外ということになりますが、保険会社はなるべく損害賠償額を低く抑えたい立場にありますので、②に立脚して損害額を計算してくることがありますので注意が必要です。
保険会社が②の考え方から譲らないという場合は、裁判をすることをおすすめします。
また、③の考え方というのは、素因減額によって処理するというものですが、加重障害と素因減額とはまったく考え方が異なります。
素因減額というのは、元々有していた疾患によって拡大された損害を減額することにより、損害の公平な分担を図るものですので、昔の後遺障害等級と現在の後遺障害等級を単純比較する加重障害とは体系の違う話ということになります。
既存障害・加重障害に関する総括

以上見てきましたとおり、既存障害・加重障害については、自賠責の運用や損害賠償額の算定ともに、課題を多く抱えています。
しかも、その課題というのは、元々障害を有している人ほど不利になるといったような内容のもので、法律家として是認できるものではありません。
弁護士法人小杉法律事務所は、こうした障害者への差別的取扱いの根絶を目指しながら、交通事故被害者の方が適正な慰謝料額などの損害賠償金を得られるよう努めてまいります。
当事務所は、既存障害・加重障害に関する多くの交通事故事件を解決してきております。
無料相談を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。
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