後遺障害等級の解説

後遺障害等級一般論 上肢 下肢 神経症状

カウザルギー(弁護士法人小杉法律事務所監修)

こちらの記事では、CRPSのうちCRPS type Ⅱのカウザルギーについて整理しています。

CRPS(複合性局所疼痛症候群)とは

(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、547頁)

基本的には、打撲、切創、捻挫、閉鎖性骨折、小・低侵襲手術など比較的マイナーな外傷に続発して、高度で持続性の局所性疼痛を生じる疾患のことを言います。

アロディニアなどの感覚障害に加え、血管活動性異常、浮腫・局所性多毛、骨・関節・軟部組織の異栄養性変化、運動制御異常・情緒障害など多様な異常が出現します。

crps一般についてはこちらの記事で整理しています。

カウザルギーはCRPSの1つの分類

CRPSは2つに分類されます。

末梢神経損傷が認められるものをCRPS type Ⅱ(カウザルギー)、は末梢神経損傷が認められないものをCRPS type Ⅰ(RSD)と言います。

rsdについてはこちらの記事をご覧ください。

rsdとの区別

上記の通り、crpsは末梢神経損傷の有無によって分類されるのですが、国際疼痛学会(IASP)が2004年に発表した診断基準上では、両者の区別はありません

損害賠償関連で区別が有用になる理由は、自賠責保険の後遺障害認定時の要件が両者で多少異なってくるという点です。

カウザルギーの症状

疼痛(灼熱痛)、アロディニア(誘発痛)、浮腫(腫れ)、皮膚の変化(色、温度、形態など)、発汗異常、関節可動域制限、骨委縮など

カウザルギーの原因

(複合性局所疼痛症候群(CRPS)をもっと知ろう(全日本病院出版会)、83頁)

神経損傷後に灼熱痛と呼ばれるような強い疼痛を生じる原因として、一般に理解されているものは、神経断裂後の断端神経腫による疼痛です。神経の損傷様式としては、完全断裂のほか、部分断裂のこともあります。また、太い主要神経の損傷のみではなく、細い皮神経の損傷でも同様の症状が生じます。

刃物による開放性損傷や切断肢では、神経損傷の存在は容易に想像可能です。ただ、切断肢を除き、神経損傷の病態を判断することは必ずしも容易ではありません。画像診断は、太い神経の断端神経腫はMRIで描出できる場合がありますが、多くの場合は無効です。

その他、手術の際の皮神経損傷で生じる可能性もあります。

カウザルギーの治療

手術

(複合性局所疼痛症候群(CRPS)をもっと知ろう(全日本病院出版会)、83~84頁)

神経損傷が原因であるカウザルギーには、手術療法が奏功する場合があります。

但し、明らかな外傷・手術の既往があり、局所症状から神経損傷・障害が原因と考えられ、異常な痛みで患者のADLが著しく障害されているにもかかわらず、保存療法が無効な場合の最後の方法す。

有連続性の神経損傷・障害については、神経剥離術等の手術があります。

完全断裂した神経については、神経縫合術・神経移植術等の手術があります。

自賠責での後遺障害等級の認定について

腕神経叢損傷や正中神経損傷等の末梢神経障害が外傷で生じたことが明らかな場合は、あとは残存した症状の程度により、7級、9級、12級のいずれかで認定がなされます。

とはいえ問題になるのは、そもそも「腕神経叢損傷や正中神経損傷等の末梢神経障害が外傷で生じたことが明らか」と立証できるのかというところです。

ですので、刃物による開放性損傷や切断肢等の神経損傷の存在を容易に想像しやすい受傷態様でない限りは、念のため(神経損傷のない)rsdとして扱われるリスクを予測し、3要件が必須になること(それと、可動域の測定は自動値だけでなく他動値でも行っておくこと。)を見越したうえで早めに対策を立てるのが寛容だと考えます。

別表第二第7級4号 軽易な労務以外の労働をするには差し支える程度の疼痛があるもの
別表第二第9級10号 通常の労務に服することはできるが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
別表第二第12級13号 通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの

rsd認定の3要件等についてはこちらの記事をご覧ください。

末梢神経損傷一般について必要な検査方法等はこちらの記事をご覧ください。

腕神経叢損傷の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

正中神経損傷の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

後遺障害申請時の注意点

(複合性局所疼痛症候群(CRPS)をもっと知ろう(全日本病院出版会)、100頁 ※ただし、労災での等級認定を念頭においた記載です。)

カウザルギーの場合、損傷された末梢神経の名称、部位の記載が必須です。また、運動・知覚神経の混在する混合神経の損傷で、疼痛のみならず運動障害が残存する場合には、神経損傷に起因する筋力低下の程度を徒手筋力検査で評価し記載するのと同時に、自動での関節可動域を記載します。

弁護士に相談を

交通事故や労災事故等で末梢神経損傷を受傷し、カウザルギー症状が発生し残存した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、受傷部位や態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。そもそも末梢神経損傷が明らかかという問題があり、そのために十分な検査がなされているのか。あるいは、カウザルギー含むcrpsはは特殊かつ複雑な病態のため、かかっているお医者様が必ずしもカウザルギーについて理解があり、適切な診断・治療をすることができるとは限らないケースもあり得ます。そのような場合、例えばペインクリニックへのセカンドオピニオンや転院等も検討しなければいけませんが、そのような点も含め、ご不明点があれば相談時にお問い合わせください。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。