後遺障害等級の解説

後遺障害等級一般論 上肢 下肢

切断(弁護士法人小杉法律事務所監修)

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この記事では、上肢や下肢、手指や足指の切断について整理しています。

切断とは

上肢(肩~手関節、手指)や下肢(股関節~足首、リスフラン関節、足指)が切断され、欠損することを言います。

切断の原因は、外傷で直接切断される場合と、受傷後の手術療法として切断術が選択される場合が考えられます。

外傷による切断

(標準整形外科学第15版(医学書院)、211頁)

態様により切断部再接着の成功率や治療方針が異なります。

断裁切断

カッターやナイフによる切断です。再接着成功率は90~95%と最も成績良好です。

挫滅切断

切断部の挫滅を伴っているためデブリドマンを要します。再接着術を行うためには骨短縮、あるいは静脈移植が必要です。

挫滅:外力による内部組織の破壊

デブリドマン:患部の洗浄で除去できなかった異物の除去や、将来感染源となりうる結構の絶たれた組織を切除すること

引き抜き切断

引き抜きによる切断で、動脈・神経が広範囲に損傷されます。再接着術の成功率が最も低いばかりでなく、術後の機能的回復も劣ります。

たとえば、ローラーなどに挟まれその部位から抹消にかけて皮膚及び軟部組織が剥脱されるもの(デグロービング損傷)があります。

デグロービング損傷の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

手術療法としての切断

手術

外傷や末梢循環障害、感染、腫瘍などが切断に至る原因です。

上肢切断者では外傷による切断が多くを占めます。

虚血時間が長く皮膚・筋人の壊死が明らかな症例や、広範な軟部組織の挫滅・汚染を伴うなどの症例は、切断が適用されることが明らかな症例と言えます。

そのような症例でない場合、局所および全身状態を考慮して決定することになります。切断すべきか否か、客観的な指標に基づき決定する試みがなされてきている状況ですが、現場で治療行う医師の経験や技量が異なるため、担当医の主観や医療機関の設備などに左右され、切断決定の判断に普遍性は得られていません。

(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、74頁)

切断に関連して認定されうる後遺障害

自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として「欠損又は機能障害」に該当し、以下のようなものが予想されます。

全身骨格

上肢の三大関節、手指、下肢の三大関節、足指の区別等はこちらの記事で整理しております。

上肢の3大関節(肩関節~手首関節)

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、肩関節からひじ関節までの間で切断し失ったものをいい、肩関節またはひじ関節において離断したものも含まれます。両上肢をひじ関節以上で失ったものは組み合せ等級で別表第二第1級3号、1上肢をひじ関節以上で失ったものは別表第二第4級4号となっています。

「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、ひじ関節を残し、手関節までの間で切断し失ったものをいいます。手関節において離断したものも含まれます。
両上肢を手関節以上で失ったものは組み合せ等級で別表第二第2級3号、1上肢を手関節以上で失ったものは別表第二第5級4号となっています。

腕の切断についてはこちらの記事でも整理しております。

手首の切断についてはこちらの記事でも整理しております。

別表第二第1級3号 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
別表第二第2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
別表第二第4級4号 1上肢をひじ関節以上で失ったもの
別表第二第5級4号 1上肢を手関節以上で失ったもの

手指

指を失ったもの」とは、おや指では指節間関節(IP関節)、その他の四本の指では近位指節間関節(DIP関節)以上で指を失ったものをいいます。

指骨の一部を失ったもの」とは、1指骨の一部を失ったものをいいます。その程度は、指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含む)ことがエックス線写真で明確であるものをいいます。

手指の用を廃したもの」とは、指の末節骨の長さの1/2以上を失ったものをいいます。
ただし、末節骨の欠損がその長さの1/2に達しなければ、「手指の用を廃したもの」ではなく、「指骨の一部を失ったもの」として認定します。

種類が多く、本数や切断部分によっても異なります。ややこしい部分ですので、確認のためにも弁護士への相談をお勧めします。

交通事故による手指の切断についてはこちらの記事でも整理しております。

労災事故による手指の切断についてはこちらの記事でも整理しております。

別表第二第3級5号 両手の手指の全部を失ったもの
別表第二第4級6号 両手の手指の全部の用を廃したもの
別表第二第6級8号 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの
別表第二第7級6号 1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
別表第二第7級7号 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
別表第二第8級3号 1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの
別表第二第8級4号 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
別表第二第9級12号 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
別表第二第9級13号 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
別表第二第10級7号 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
別表第二第11級8号 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
別表第二第12級9号 1手のこ指を失ったもの
別表第二第12級10号 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
別表第二第13級6号 1手のこ指の用を廃したもの
別表第二第13級7号 1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
別表第二第14級6号 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

下肢の三大関節(股関節~足首関節)とリスフラン関節

上肢の場合は肩関節~手首関節でしたが、下肢の場合は股関節~足首関節に加え、リスフラン関節まで範囲に加わります。

「下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは、股関節からひざ関節までの間で切断し失ったものをいい、股関節またはひざ関節において離断したものも含まれます。両下肢をひざ関節以上で失ったものは組み合せ等級で別表第二第1級5号、1下肢をひざ関節以上で失ったものは別表第二第4級5号です。

「下肢を足関節以上で失ったもの」とは、ひざ関節を残し、足関節までの間で切断し失ったものをいい、足関節において離断したものも含まれます。
両下肢を足関節以上で失ったものは組み合せ等級で別表第二第2級4号、1下肢を足関節以上で失ったものは別表第二第5級5号です。

「下肢をリスフラン関節以上で失ったもの」とは、足関節を残し、リスフラン関節までの間で切断し失ったものをいい、リスフラン関節において離断したものも含まれます。両下肢をリスフラン関節以上で失ったものは組み合せ等級で別表第二第4級7号、1下肢をリスフラン関節以上で失ったものは別表第二第7級8号です。

※リスフラン関節は前足部の中足骨と中足部の楔状骨、立方骨で構成されます。詳細には、第1~3中足骨と第1~3楔状骨、第4~5中足骨と立方骨の関節で形成されます。足根中足関節ともいいますが、蹴り出し時には大きな力がかかり、第2中足骨近位が3つの楔状骨で形成されたほぞ穴のなかに入り込んでいることで足根骨全体の安定性に寄与しています。

リスフラン関節の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

股関節~リスフラン関節での切断についてはこちらの記事でも整理しております。

別表第二第1級5号 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
別表第二第2級4号 両下肢を足関節以上で失ったもの
別表第二第4級5号 1下肢をひざ関節以上で失ったもの
別表第二第4級7号 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
別表第二第5級5号 1下肢を足関節以上で失ったもの
別表第二第7級8号 1足をリスフラン関節以上で失ったもの

足指

足指を失ったもの」とは、原則として中足指節関節(MTP関節)以上を失ったものをいいます。ただし、基節骨の一部を残したとしても、足指を基部(足指の付け根)から失った場合には、「足指を失ったもの」として取り扱います。

足指の用を廃したもの」とは、つぎのうちのいずれかに該当するもののことです。まず、第1指では末節骨の長さの1/2以上、その他の四本の指では、遠位指節間関節(PIP関節(母趾はIP関節))以上を失った場合です。

※↑のイラストでは、MTP関節をMP関節と表記しています。

足指に関しても手指と同様、種類が多い上に何本か、どの部位か、等で区別されますし、微妙に手指と異なるところもあり、ややこしく感じます。確認のためにも弁護士への相談をお勧めします。

足指の切断についてはこちらの記事でも整理しております。

別表第二第5級8号 両足の足指の全部を失ったもの
別表第二第7級11号 両足の足指の全部の用を廃したもの
別表第二第8級10号 1足の足指の全部を失ったもの
別表第二第9級14号 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
別表第二第9級15号 1足の足指の全部の用を廃したもの
別表第二第10級9号 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
別表第二第11級9号 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
別表第二第12級11号 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
別表第二第12級12号 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
別表第二第13級9号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
別表第二第13級10号 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
別表第二第14級8号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

弁護士に相談を

交通事故や労災事故等の外傷で上肢や下肢、あるいは手指や足指を切断してしまうことがあり得ます。慰謝料等の損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、受傷の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。