脳損傷 神経症状
脳挫傷と意識不明(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらの記事では、脳挫傷と意識障害(意識不明状態)の関係について整理しています。
脳挫傷とは
(標準脳神経外科学(医学書院)、267頁、276頁)
脳損傷のうち、脳の損傷が限局的で脳全体への波及が少ないものを脳挫傷(局所性脳損傷)と言います。
他方、脳の広範位にわたる損傷を起こした状態がびまん性軸索損傷と呼ばれます。
交通事故等で発生することがあります。
(標準脳神経外科学(医学書院)、266~267頁、275頁)
脳挫傷は穿通外傷のように外力が極めて限局的に加わってできる場合もありますが、多くの場合は頭部に加速あるいは減速の衝撃が生じて発生します。
→脳挫傷受傷の原因(「穿通外傷」、「加速あるいは減速の衝撃」の具体例など)についてはこちらの記事で詳細をご確認ください。
脳挫傷により意識不明になることも
意識障害全般について
(標準脳神経外科学第16版(医学書院)、135~136頁)
意識は意識レベル(覚醒度)と認識機能の2つの要素で捉えることができます。
2つとも両方が正常に保たれている状態を意識清明といい、どちらか一方、あるいは両方が障害された場合を意識障害といいます。
意識のうち、意識レベルの維持は主に脳幹網様体と間脳の視床下部が、認識機能の維持には主に大脳半球が関与しています。
ですので、脳幹障害、両側間脳障害、大脳半球の広範の障害のいずれか、またはこれらの病変が混在した場合に、意識障害が生じます。
「意識不明」と表現する場合は、意識レベル(覚醒度)に関する意識障害のことを指すことが多いと思われます。
※補足(脳幹、間脳について)
脳幹は、上から中脳、橋、延髄の3つが重なって構成されています。↑のイラストだと、見えているのは橋の下部と延髄の部分だけ(紫色)で、橋の中部より上と中脳は側頭葉に隠れている状態です。
間脳は脳幹の上部に位置し、大脳眼球の中心部にありますので、↑のイラストでは図示されていません。強引に表現すれば、側頭葉の緑色と頭頂葉の赤色が交わるあたりにあります。視床上部、視床、視床下部から構成されます。
→脳幹や間脳含む脳全体の構造や各部位の機能についてはこちらの記事をご覧ください。
→脳挫傷後に生じる症状としては様々ありますが、一般的なものはこちらの記事でご確認ください。
「意識不明」について
意識障害の評価方法として多用されるのはJCS(Japan Coma Scale:ジャパンコーマスケール)とGCS(Glasgow Coma Scale(グラスゴーコーマスケール))の2つですが、JCSについては次のような評価方法になっています。
JCSで評価した際、「意識不明」の場合とは、Ⅲのいずれかの状態が該当するものと思われます。
JSC
覚醒の程度によって、Ⅰ(1桁)、Ⅱ(2桁)、Ⅲ(3桁)の三段階に大きく分け、さらにそれを3段階に分けます。
点数は「Ⅱ-20」などと表記します。健常者(意識清明)は「0」と表記されます。
点数が高いほど状態が悪いということになります。
Ⅰ:刺激しないでも覚醒している状態
0 | 意識清明 |
1(Ⅰ-1) | 意識清明とは言えない |
2(Ⅰ-2) | 当見識障害がある |
3(Ⅰ-3) | 自分の名前、生年月日が言えない |
Ⅱ:刺激すると覚醒
10(Ⅱ-10) | 普通の呼びかけで容易に開眼する |
20(Ⅱ-20) | 大きな声または体を揺さぶることにより開眼する |
30(Ⅱ-30) | 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する |
Ⅲ:刺激しても覚醒しない状態
100(Ⅲ-100) | 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする |
200(Ⅲ-200) | 痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる |
300(Ⅲ-300) | 痛み刺激に全く反応しない |
認定されうる後遺障害について
頭部外傷後に意識障害が発生する場合がありますが、意識障害の程度が重く、あるいは重度でなくても1週間以上続いている場合などでは高次脳機能障害の発生リスクが高まります。高次脳機能障害が残存した場合、1,2,3,5,7,9級での認定可能性があります。
→意識障害と高次脳機能障害の関連性、高次脳機能障害で認定される可能性のある障害等級についてはこちらの記事でご確認ください。
他方、昏睡レベルの意識状態が発生したあと、生命の危機を脱したのちに開眼できる状態にまで回復したものの、周囲との意思疎通能力を喪失した状態のことを、遷延性意識障害(植物状態)と言いますが、この場合には後遺障害等級1級の評価がなされることになります。
弁護士へ相談を
交通事故等で頭部外傷を負い意識不明の重体に陥る可能性があります。その後回復するのが一番良いのですが、万一なんらかの後遺障害が残った場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うためには、受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。