後遺障害等級の解説

むちうち 神経症状

神経根症|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、神経根症について解説しております。

なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事の監修をいただいております。

神経根症とは?

⑴そもそも神経根とは…

人間の神経は、脳および脊髄からなる中枢神経と、中枢神経から身体各部に伸びている末梢神経とで構成されています。その末梢神経の根元の部分を神経根といいます。

とはいえ、文字だけでは分かりづらいと思いますので、図を用いてみてみましょう。

これらの図は、人間の脊椎(俗にいう背骨)と脊髄の一部について描かれたものになります。

まず上の図は、脊椎・脊髄を横から見たものになります。白い部分は脊椎で、脊椎と脊椎の間にある水色の部分が椎間板です。縦に伸びた太い黄色の部分が脊髄で、脊髄の途中が細い管が伸び出ているのが見えると思いますが、これが末梢神経であり、その根元の少し膨らんだ形になっている部分が神経根になります。

一方、下の図は脊椎・脊髄を断面的に見たものになります。下図でも同様に、だいだい色の斑点がある部分が脊髄で、脊髄から伸び出ている2本の末梢神経の根元の膨らんだ部分が神経根ですね。

 

 

⑵神経根症とは?

神経根症とは、何らかの原因によって神経根が圧迫・障害された時に発生する症状のことをいいます。

神経根症の原因として多く見られるものに、椎間板ヘルニア骨棘形成脊柱管狭窄が挙げられます。

下図は、椎間板ヘルニアによる神経根圧迫を模した図になります。左の図が正常な状態の椎間板であり、脊椎と脊椎の間にクッションとして存在しています。この椎間板が、交通事故等による外傷によって脊椎と脊椎の間から飛び出してしまうと、右図のようになります。飛び出した椎間板が神経根を圧迫してしまい、圧迫されている神経根がある末梢神経の支配領域に神経症状が生じることとなります。

骨棘形成や脊柱管狭窄は、外傷を原因として生じることはあまり多くなく、どちらかというと加齢変性によるものが多い印象です。ですが、加齢によって骨棘や脊柱管狭窄が生じていたとしても、必ずしも神経根が圧迫されるわけではないので、無症状である場合があります。そうした無症候性の骨棘や脊柱管狭窄等を有していた人が、交通事故等での外傷を契機として骨棘等による神経根圧迫が生じることで、神経根症を発症してしまうこともあります。

⑶神経根症の症状

神経根症でよくみられる症状は、疼痛やしびれ、感覚鈍麻、筋力低下、筋萎縮、脱力感等が挙げられます。また臨床所見として腱反射の減弱が見られることがあります。

⑷神経支配領域と神経根症の関係

下図は、神経支配領域について示しているデルマトーム図になります。

図中において、C2、T1、L3、S4等の記載が見られるかと思います。これは脊髄の分節を意味するものであり、Cは頸髄、Tは胸髄、Lは腰髄、Sは仙髄です。すなわち、C2は第2頸髄、T1は第1胸髄、L3は第3腰髄、S4は第4仙髄を指しています。

そして、脊髄分節の記号が記載されているエリアが、その脊髄分節から伸びる末梢神経の神経支配領域を表しています

具体例を考えてみましょう。

たとえば、交通事故によって頸椎椎間板ヘルニアを発症し、C5(第5頸髄)の神経根が圧迫されることになったとします。そうすると、上図のC5と書かれているエリアに神経症状が生じますので、この場合は肩~上腕にかけての範囲に疼痛やしびれ、筋力低下等の神経症状がみられることとなります。

また、腰椎椎間板ヘルニアによってL2(第2腰髄)の神経根が圧迫されたとすると、L2と書かれたエリア(大腿部前面~側面)に、やはり疼痛やしびれ等が生じることとなるでしょう。

⑸神経根症に関する検査

交通事故で頸椎捻挫(むち打ち損傷)や腰椎捻挫を負傷すると、神経根圧迫の原因である椎間板ヘルニアや骨棘形成、脊柱管狭窄が誘発され、または事故前は無症候性であったところから症候性に転じることがあります。神経根圧迫が生じているかどうかは、被害者が愁訴している症状の内容に加え、画像検査や神経学的検査などの結果も踏まえて総合的に判断されることとなります。

①画像検査

頸椎捻挫や腰椎捻挫を負傷した際の画像検査としてよく用いられるのは、レントゲン(XP)、CT、MRIになります。とりわけ、事故後の初診時などにはレントゲン画像検査が用いられることが非常に多いです。レントゲン画像は、骨や臓器の状態を簡便に確認することができますから、初診時で身体の内部の状況が判然としない段階において、骨折の有無や内臓の状態を確認するにあたりうってつけとされています。またレントゲンで脊柱管狭窄や骨棘の有無等も確認することもできます。

その後は、治療や症状経過などに応じて、再度レントゲンを撮影したり、CTやMRI画像の撮影が行われることがあります。CTはレントゲンと同様、主に骨や臓器の状態を確認することができる撮影方法ですが、レントゲンが二次元的であるのに対してCTは三次元的にこれらの組織を描出することができます。そのため、レントゲンに比べてより細かな病変や傷病を確認することに適しているといえます。

MRIは、レントゲンやCTと異なり、磁力を利用して画像撮影する検査手法です。その特徴としてはやはり、レントゲンやCTでは確認できない靭帯や腱、筋肉等の軟部組織や、脊髄の病変等を確認することができる点になります。また、下図のように、矢状面・水平面・冠状面での断面撮影ができるため、椎間板の高位で水平面画像を撮影し、椎間板の突出があるかどうか等も確認することが可能となります。

②神経学的検査

検査部位に応じて種々の神経学的検査が行われることがあります。

頸椎捻挫(むち打ち損傷)の場合には、ジャクソンテストスパーリングテストが行われることが多いです。これらは徒手による検査となっており、神経根症を誘発させるような体位を徒手によって再現し、これにより疼痛が再現される場合には神経根症の疑いがあると判断することができます。また、放散痛が生じた部位を確認することで、神経根症の可能性がある高位を推測することができます。

腰椎捻挫の場合には、SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)FNSテスト(大腿神経伸長テスト)が行われることが多いです。SLRは仰向けに寝た状態で伸ばした状態の下肢を挙上させていき、放散痛が生じる角度を測定します。一般に、挙上角度が70度以下の場合に陽性と評価されているようです。FNSは、うつ伏せで膝関節を屈曲させていき、大腿前面に放散痛が生じた場合に陽性と評価され、L2~L4の神経根症の可能性が疑われることとなります。これらのほか、ラセーグテストやブラガードテストが行われることもあります。

また、腱反射検査が用いられることもあります。有名なのは膝蓋腱反射(いわゆる「かっけ検査」)で、これをイメージしてもらえると分かりやすいかと思います。腱反射検査を行うことで、障害部位が脊髄にあるのか、それとも末梢神経にあるのかを判断することができます。神経根症の場合、対応する部位の腱反射の減弱が認められる場合があります。たとえば、上腕二頭筋の腱反射の反射中枢はC5~C6に存在しているため、上腕二頭筋腱反射を行ったときに反射減弱が認められれば、C5~C6神経根症の可能性を考えることができます。このほかの腱反射としては、腕橈骨筋腱反射、上腕三頭筋腱反射、腕筋反射、回内筋反射、下肢内転筋反射、膝屈筋反射、アキレス腱反射があります。

更に、徒手筋力テスト(MMT)と呼ばれる検査があり、これは個々の筋や筋力の強さとその機能を評価するための検査になります。前述のとおり、神経根症では筋力低下や筋萎縮が生じることがあるため、それを評価するために行われます。MMTの評価は5~0の6段階評価となっており、5がnormal(正常)、4がgood、3がfair、2がpoor、1がtrace、0がzeroとして、数字が小さいほど筋力が低下していることを意味しています。

機械を用いたものとしては、筋電図検査神経伝導速度検査が挙げられますが、頸椎捻挫(むち打ち損傷)や腰椎捻挫で積極的に行われることはあまり多くなく、どちらかというと、橈骨神経損傷などのような、末梢神経損傷がある場合に用いられているようです。

以上に述べたもののほかに、仮に脊髄損傷の可能性も疑われるような場合には、その可能性を排除するために病的反射の検査が行われることもありえます。病的反射は、神経根症のような末梢神経障害の場合には発現せず、専ら脊髄損傷がある場合に発現するものであることから、スクリーニング的に用いられるわけですね。

神経根症の後遺障害等級

交通事故で頸椎捻挫(むち打ち損傷)や腰椎捻挫等の怪我を負い、治療の結果として神経根症による後遺症が残存してしまった場合、自賠責に後遺障害等級の申請を行うことができるときがあります。

自賠責の補償対象となる後遺障害については、自動車損害賠償保障法施行令の別表第一及び別表第二に定められており、別表第一には介護を要する後遺障害として第1級及び第2級が整えられています。一方、別表第二には第1級~第14級まで14段階の等級が用意されており、等級の数字が小さいほど重い後遺障害となります。神経根症による後遺症について認定される可能性がある等級は、第12級13号と第14級9号の二つになります。以下、認定要件を見ていきましょう。

⑴第12級13号

神経根症の後遺症について、「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認められた場合には第12級13号が認定されます。

具体的には、画像所見や神経学的所見等の客観的な医学的所見によって神経症状の残存を他覚的に立証できることが求められます。そのため、等級認定を目指すにあたっては、事故後速やかにレントゲンやCT、MRI等の画像を撮影してもらい、異常所見の有無などをしっかりと確認しておく必要があります。また、治療終盤や症状固定時にも画像を撮影し、やはり異常所見の存否について把握しておくことが望ましいでしょう。加えて、ジャクソンテストやSLRテスト等の徒手検査や徒手筋力テスト(MMT)も行ってもらい、神経学的所見を押さえておくことが肝要になります。

⑵第14級9号

局部に神経症状を残すもの」と認められた場合には、第14級9号が認定されます。

具体的には、症状経過や治療状況などから将来的にも回復困難と認められる症状が残存していることが説明可能であると認められることが求められ、事故態様や症状経過、治療状況、客観的異常所見の有無及びその内容等を鑑み、後遺症の残存について一定程度説得的であることが重要となります。

第14級9号認定に向けて押さえておくべきポイントにつきましては以下のページにて詳しく解説しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

後遺障害等級14級9号の認定率を上げるには?

おわりに

本記事では、神経根症について解説いたしました。

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。