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10対0事故で怪我なしの場合の示談金の相場は?弁護士が解説!
2025.03.19
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 10対0事故とは?
- 怪我なしの場合慰謝料請求
- 示談金の相場と具体例
- 示談交渉の進め方と重要なポイント
- 弁護士の役割と依頼するメリット
などについて解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による交通事故解決サポートを行っております。
交通事故被害に遭い、お困りの方やそのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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10対0事故で怪我なしの場合の示談金の基本知識
10対0事故とは?過失割合の意味を解説
10対0の事故とは、交通事故における過失割合が完全に加害者側にある場合を指します。
つまり被害者側には過失が全くなく、責任が問われることはありません。
被害者の加害者に対する損害賠償請求は、加害者がその事故について責任を負う部分についてのみ(≒被害者の自己過失分を差し引いた部分についてのみ)請求することができますから、
10対0の場合、被害者は自身の被った損害をすべて加害者に請求することが可能です。
怪我なしの場合、慰謝料は請求できる?
交通事故被害では、通常怪我に対して慰謝料を請求できますが、怪我なしの場合は基本的に慰謝料の請求はできません。
交通事故事案の損害賠償請求について、過去の裁判例の蓄積を基に定められている、
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)では、
「物損に関する慰謝料は、原則として、認められない。」とされています。
慰謝料は基本的には身体的あるいは精神的な苦痛に対する補償であると解されることが多いため、
怪我がない場合には慰謝料の請求を行うことはできません。
事故に遭って加害者と話したり、警察の対応をしたりすること自体が精神的苦痛を発生させる、という見方もできますが、
交通事故被害の慰謝料は、入通院慰謝料(傷害慰謝料)という形になっているため、怪我をして入通院をしていないと請求ができません。
物損事故としての示談金に含まれる項目
10対0事故で怪我なしの場合、示談金の請求対象は物損に限定されます。
事故時被害者が自転車や自動車、バイクに乗車中であった場合、
それらの車両の修理費か、車両時価額+買替諸費用のどちらか低い額での賠償がされます。
その他にも、場合によっては代車費用、レッカー費用、評価損、その他積載物の損害などについても請求が可能な場合があります。
示談金の相場と具体例
怪我なし物損事故の示談金相場とは
10対0の交通事故において、怪我がなく物損事故として扱われる場合、一般的な示談金の相場は数万円から30万円程度となることが多いです。
ただし、先ほど見たように物損事故として扱われる場合に示談金の大半を占めるのは、
修理費と車両時価額+買替諸費用のいずれか低い額になりますから、事故時乗車していた車両の価値によっては百万円単位となることもあります。
とはいえ、怪我がない事故ということは修理費もそこまで高くならないことが多いため、
そこまで高額になる事案は多くありません。
慰謝料は一切認められないのか?
ところで、交通事故による怪我がない場合には、本当に一切慰謝料の請求は認められないのでしょうか。
認定の余地が一切ないかというとそういうわけではありません。
物的損害についても慰謝料が認められる場合があることにはあります。
東京地方裁判所平成元年3月24日判決(交通事故民事裁判例集22巻2号420頁)では、
メルセデスベンツの車両損害に対して慰謝料を請求した事案で、「財産的権利を侵害された場合に慰謝料を請求し得るには、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情が存することが必要」と判示されています(この事案では慰謝料を否定)。
逆に言えば、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情があれば慰謝料の請求が認められる余地があるということです。
大阪地方裁判所平成12年10月12日判決(自保ジャーナル1406号4頁)では、
墓石等に対する衝突事故により墓石が倒壊した事案について、「墓地等が先祖・個人の眠る場所として通常その所有者にとって強い敬愛追慕の念の対象となるという特殊性」に鑑み、
慰謝料として10万円が認められています。
また、東京地方裁判所平成15年7月28日判決(交通事故民事裁判例集36間4号969頁)では、
乗用車が被害者の陶芸作品を損壊した事案について、「被害物件が代替性のない芸術作品の構成部分であり、被害者が自らそれを制作した芸術家であること」などから、
慰謝料100万円の認定をしています(財産的損害は否定)。
このように、特段の事情がある場合には慰謝料の請求が一定程度認められる場合があります。
ただし、示談交渉においてはまず認められません。
また、慰謝料という形ではありませんが、車両本体の価値が下がったことに対して支払われる「評価損」という賠償もあり得ます。
評価損とは、「修理しても外観や機能に欠陥を生じ、または事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合」に損害として認められるものです。
金額としては修理代の1割~5割程度の認定がされることが多いです。
しかし、この評価損は、
- 走行距離が短い
- もともと市場での取引価格が高い車両
- 初度登録からあまり日が経っていない
などの事情がなければ認められにくい傾向にあります。
裁判はまだしも示談交渉では認定が非常に難しいと言えるでしょう。
示談交渉の進め方と重要なポイント
保険会社との交渉時の注意点
10対0の交通事故の場合、被害者に過失は一切ありませんが、相手の保険会社と交渉する際にはいくつかの注意点があります。
まず、保険会社の提示する示談金の金額が必ずしも適切とは限らないということです。
修理費は実際に修理見積もりをとってみて金額の認定をすることになります。
この修理見積もりを取る際には、修理工場に加害者側保険会社のアジャスターが赴き、
修理が必要な箇所について、本件事故により発生した損害か?ということを確認することになります。
例えば被害者が直進車で、加害者が右折車のいわゆる右直事故により、
被害車両の前面と加害車両の側面が衝突したとします。
実際に被害車両の修理見積もりを取ってみると、後面の修理箇所も計上されていました。
このような場合には、後面の修理は本件事故により必要性が生じたわけではないということで、認定がされないこともあります。
全ての修理費についての認定を受けるためには、事故状況などから破損が生じたことを証明する必要があります。
なお、現実にはこの修理費の必要性・相当性が争われることはほとんどありません。
また、保険会社は車両時価額の認定にあたり、通称「レッドブック」と呼ばれる書籍を参考にします。
このレッドブックは中古車市場における車両の取引価格についての月報であり、車両時価額の算定にあたり非常に有用です。
しかし、実際にインターネットで中古車サイトを調べてみると、レッドブックにより算定された車両時価額よりも高額になることも多いです。
ですから、加害者側保険会社から提示された金額を鵜呑みにせず、ご自身でも調べながら交渉を進めていく必要があります。
さらに、評価損や代車費用、買替諸費用が発生している場合には、それらの請求も忘れずに行う必要があります。
実際の交渉の流れ
示談交渉の一般的な流れとしては、まず事故内容をしっかりと記録し、証拠を揃えることから始まります。
次に、相手保険会社から示談金や修理費用についての提示があり、それをもとに具体的な交渉を行います。
この際、自分が請求する費用を明確にし、修理費用の見積もりや代車費用、評価損に関する資料を揃えて根拠を示すことが大切です。
保険会社の初回提案にすぐ同意せず、必要な場合は専門家へ相談しながら進めるのが理想です。
最終的に、お互いが合意した内容を示談書に記載し、署名・捺印することで示談が成立します。
交渉を有利に進めるための準備
10対0事故の場合、過失割合は争いになりませんから、専ら発生した損害の大きさについての交渉がされることになります。
車両時価額については中古車市場における価格の調査の緻密さが物を言うこともあるため、しっかりと調査しましょう。
また、代車費用やレッカー費用などの領収証を保管しておくことを忘れないようにしましょう。
さらに、携行品や積載品、ヘルメットなどが損害を被った場合には、
損害の程度について写真を撮影しておくことをお勧めします。
実際に今回の事故で使えなくなったため、買い替えが必要になるということを示す必要があるからです。
そして、これら携行品等は購入時期や購入時の金額が重要になりますが、
レシートなどを保管していない場合がほとんどだと思われますので、記憶を頼りに損害品明細書の作成を行いましょう。
弁護士を利用すべき場合の判断
弁護士を利用すべきかどうかの判断基準としては、示談交渉が難航しているかどうかが重要です。
例えば、相手保険会社からの示談金提示額が明らかに低い場合や、請求内容が認められない場合には、弁護士に相談することで状況が改善する可能性があります。
また、評価損や代車費用の認定に関する交渉が複雑化した場合にも、弁護士の専門的な知識が役立ちます。
さらに、被害者が交渉にかかる時間や精神的な負担を軽減するために弁護士を活用するのも有効と言えるでしょう。
怪我が判明した場合の対応
ところで、最初は大したことがない事故だと思っていたが、数日経ってから首や腰に痛みや張りが出るようになった。という場合にはどうしたら良いでしょうか?
まず真っ先に行うべきことは、整形外科を受診することです。
これは、ご自身が気づいていないお怪我がないかを早期に発見することができるという意味でも重要ですが、
損害賠償請求においても重要です。
事故日から初診日の間が空いてしまうと、加害者側保険会社から「その治療は本当に事故によって負った怪我に対する治療なのか?」ということで疑義を持たれる場合があります。
そうすると、例えば治療費の支払を拒否されたり、慰謝料の認定が下りなかったりといった不利益が生じる可能性があります。
お身体のためにも、損害賠償請求のためにも、不安があれば速やかに整形外科を受診することをお勧めします。
実際にはお怪我をしていたという場合の慰謝料の相場については以下のページをご覧ください。
弁護士の役割と依頼するメリット
弁護士がサポートできるポイントとは
過失割合が10対0の交通事故では、被害者の負担が軽減されるケースが多いですが、示談交渉や請求手続きがスムーズに進まない場合もあります。
弁護士は、被害者が適切な示談金を受け取れるよう、法律の専門知識を活用してサポートします。
具体的には、示談交渉の代行や請求資料の作成、修理費や評価損、代車費用やレッカー費用などの請求項目の漏れを防ぐこと、そして加害者側の保険会社との直接交渉を行います。
費用倒れを防ぐ工夫
ここまで見てきたように、10対0事故で怪我をしなかった場合、請求できるのは物的損害のみです。
物的損害は、もともと事故時に利用していた車両や、携行品などの価格によって発生した損害額も決定されます。
したがって、弁護士に依頼したとしても、大幅な示談金額の上昇に繋がらない事案も多いです。
また、仮にどれだけ増額したとしても、上限として認定されるのは事故に遭う前の原状に回復させるに足りる分までです。
物的損害のみの請求は、費用倒れになることも多く、弁護士事務所によっては受けてもらえない可能性もあります。
しかし、弁護士費用特約を使用することで、ご加入の保険会社が代わりに弁護士費用を支払ってくれるため、
費用倒れのリスクを気にすることなく依頼をすることが可能になります。
弁護士費用特約の利用の可否を確認したうえで、初回無料の法律相談を実施している事務所に相談し、
弁護士を入れるべきなのかを聞いてみることをお勧めします。
早期解決を目指すためのアドバイス
交通事故の示談を早期解決するためには、弁護士のサポートが有効です。
弁護士に依頼することで、複雑な交渉や書類作成の時間を削減でき、交渉が滞るリスクを回避できます。
また、保険会社からの提示額に対し、適正な金額かどうか迅速に判断してもらうことが可能です。
さらに、専門知識を持つ弁護士が手続きを進めることで、被害者自身の精神的な負担を軽減し、スムーズな解決を目指せます。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
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