その他分類
任意保険未加入の相手との交通事故は泣き寝入りするしかないの?対処法を弁護士が解説
2026.10.02

損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2025年度版」によれば、
2025年3月末時点の任意対人賠償責任保険の加入率は75.4% 対物賠償責任保険の加入率は75.6%です。
単純計算で交通事故被害者の約4人に1人が、任意保険未加入者(無保険者)との交通事故に遭うということになります。
任意保険未加入者との交通事故の場合、加害者本人に請求することが原則になりますが、
加害者本人の資力がないことも多いです。
| このような場合には、泣き寝入りするしかないのでしょうか? |
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門としている弁護士が、加害者が任意保険未加入の場合の交通事故の対処法について解説します。
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
任意保険未加入の加害者との事故に遭い、お困りの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士への初回無料の法律相談はこちらのページから。
任意保険未加入者との事故の対処法① 自賠責保険への被害者請求

自賠責保険とは? その特徴
任意保険未加入との事故の対処法として真っ先に上がるのは、自賠責保険の利用です。
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法第5条で、車両の運行供用者に加入が義務付けられている強制保険です。
| 自動車損害賠償保障法第5条
自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。 |
任意保険未加入の場合であっても、自賠責保険には加入しているはずですので、自賠責保険の利用をまずは検討しましょう。
自賠責保険は、被害者側の保護を目的とした保険であり、通常の保険とは異なるシステムが複数あります。
その典型が、被害者請求の制度です。
基本的に、保険というのは、当然のことかもしれませんが、保険者と被保険者との間に契約があります。
交通事故で言えば、被保険者が加害者になってしまい、誰がに支払いをしなければならないとなった時は、自分の保険会社からその分の支払いをお願いするということになります。
ですから、加害者である被保険者が保険を使わないという場合には、被害者側が保険金を受け取ることはできないというわけです。
しかし、自賠責保険は違います。
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法第16条により、被害者の直接請求権が認められています。
| 自動車損害賠償保障法第16条
1 第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、保険金額の限度において、損害賠償額の支払をなすべきことを請求することができる。 |
この直接請求権の存在により、例えば加害者本人が、
- 「そんな事故はなかった」
- 「自分は悪くないから払わない」
などと言って損害賠償金の支払いを拒否したとしても、自賠責保険金については被害者側から直接の請求が可能なわけです。
以上の理由なども踏まえ、まず検討したいのは自賠責保険金への請求ということになります。
自賠責保険が抱える問題:支払い保険金額が低い
ただしこの自賠責保険、被害者側にとっては大きな問題もあります。
それは、支払われる保険金額では発生した損害の全てを賄うことができない場合が多いということです。
慰謝料をはじめとする交通事故によって発生した損害の計算にあたっては、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 裁判基準(弁護士基準)
の大きく3つの基準があります。
自賠責基準はこの3つの基準の中で最も低額な基準です。
自賠責保険は被害者保護の観点から、迅速かつ平等な支払をしてくれる一方で、発生した損害の全てに対する満足な賠償を得ることが難しいケースも多いです。
自賠責保険では賄いきれない損害が発生した場合には、次の選択肢を検討することになります。
政府補償事業:自賠責保険未加入者との事故の場合の補償
なお、加害者が自賠責保険にも加入していなかったという場合には、政府保障事業への請求が可能です。
自賠責保険と同様の水準での支払いを受けることができます(自賠責保険・共済ポータルサイト「政府保障事業」)。
任意保険未加入者との事故の対処法② 人身傷害保険等の利用

人身傷害保険とは
任意保険未加入者との事故、というよりも、交通事故全般に対して備えとなるのが人身傷害保険です。
| 一般社団法人日本損害保険協会 損害保険Q&A「人身傷害保険は、どのような保険ですか。」
人身傷害保険とは、 被保険者が自動車事故により、契約の自動車に乗車中の方が死傷した場合に、保険金額の範囲内で、保険約款に定める基準・計算方法に基づいて計算された損害額を、過失相殺による減額をせずに、被保険者自身が契約している保険会社から保険金を受け取ることができる保険です。 |
つまり、人身傷害保険は、自分が被害に遭った交通事故について、自分が契約している保険から一定の基準で支払いを受けることができる保険ということです。
仮に加害者が任意保険に未加入であっても、被害者自身が人身傷害保険に加入していれば、
自賠責保険を超える水準での保険金の支払を受けることができます。
その他、無保険車傷害特約・搭乗者傷害保険特約などで填補を受けられる可能性もあります。
人身傷害保険の注意点① 補償内容によって使える場面が異なる
うえでみたように、人身傷害保険は自分が被害に遭った事故であれば自分の保険から保険金を受け取れるということで、
大きなメリットがあります。
ただし、注意点として補償内容によって使える場面が異なることが挙げられます。
原則として、人身傷害保険は自分が契約している保険車両に乗車中の事故以外には使用できません。
ですから、歩行中や、自転車運転中などの事故では使用できない可能性があります。
ご自身の自動車保険に人身傷害保険が付帯されている方は、その補償内容が、歩行中や自転車運転中等も使えるものかを確認し、
使えないものであった場合はご自身のライフスタイルと併せて追加を検討してみることをお勧めします。
人身傷害保険の注意点② 裁判基準満額を受け取ることが難しいが、裁判を行えば可能なこともある
人身傷害保険の注意点その2は、裁判基準満額を受け取ることが難しいということです。
裁判基準は、裁判所が交通事故被害者に適切な金額として認めた金額をもとにしている基準となり、
最も高額かつ、被害者にとって最も適切な金額になります。
人身傷害保険は自賠責基準よりは高額な計算がされることが多いですが、
保険契約時の約款に基づいて計算がされ、裁判基準と同額が認められることはほとんどありません。
では、人身傷害保険を利用しても、適切な賠償金(保険金)を受け取ることはできないのか、というとそうではありません。
人身傷害保険には、「読替規定」と呼ばれる規定が存在することが一般的です。
「読替規定」とは、文字どおり「規定を読み替える規定」のことです。
どういうことかというと、
人身傷害保険金の支払にあたり、判決又は裁判上の和解において人身傷害保険約款に定める保険金額を上回る損害額が認められた場合に限り、
その損害額を人身傷害保険における損害額と読み替えて支払いを行う、
という規定が定められています。
例えば人身傷害保険の支払い基準で計算した場合の保険金額が6000万円であるときに、
被害者が加害者に対して損害賠償請求の裁判を起こし、裁判の中で損害額が1億円と認められたとします。
この場合、判決又は裁判上の和解において、人身傷害保険約款に定める保険金額(6000万円)を上回る損害額(1億円)が認められていますから、
人身傷害保険の支払額は6000万円→1億円に読み替えられ、被害者は1億円を受け取ることができます。
このように、裁判を提起し、その中で裁判基準での支払いを認めさせる判決が出たり、和解が成立したりすれば、
人身傷害保険から裁判基準での支払いを受けることができます。
ただし、加害者側が出廷せず被害者側の請求がすべて認められてしまうような認容判決が出るようなケース等では、
認定された損害額が「社会通念上妥当であると認められない」として支払いを断られることもあります。
この「読替規定」の利用に当たっては、ご自身が契約している保険の約款を正確に確認することはもちろんのこと、
裁判が必須になりますから、弁護士に相談することをお勧めします。
人身傷害保険等を利用して任意保険未加入者との事故で裁判基準の賠償金を獲得した事例
以下は弁護士法人小杉法律事務所にて人身傷害保険等を利用して任意保険未加入者との事故で裁判基準の賠償金を獲得した事例の一部です。
このような経験や知識があるのとないのとでは、最終的に受け取れる金額が大きく変わることもあります。
- 関連記事:加害者が任意保険未加入の交通事故でむち打ちになった被害者につき、無保険車傷害特約を利用して約520万円を獲得した事例
- 関連記事:加害者が任意保険未加入の交通事故でむち打ちになった被害者につき、自賠責保険で14級9号の認定を獲得し、裁判を行い、裁判基準を超える慰謝料と逸失利益を人身傷害保険から回収した事例
- 関連記事:加害者が任意保険未加入で無資力だったものの、無保険車傷害特約を利用して、損害額の満額である約650万円を回収した事例
任意保険未加入者との事故の対処法③ 労災保険の利用

ご自身が被害に遭ったのが通勤中や業務中である場合、労災保険を利用できます。
労災保険は加害者が任意保険に加入しているかどうかにかかわらず利用でき、
- 療養(補償)給付
- 休業(補償)給付
- 障害(補償)給付
などを受け取ることができるため、利用できる場合には積極的に利用しましょう。
通勤災害であれば労災保険料が上がることもありません。
任意保険未加入者との事故の対処法④ 加害者側との交渉

自賠責保険から被害者請求により一部損害賠償金を獲得したものの、まだ発生した損害の全てが填補されているわけではない、
ただ人身傷害保険など自分が契約している保険から支払いを受けられるものはない、
というケースでは、基本的には加害者本人と交渉をせざるを得ません。
加害者本人との交渉の流れ
加害者本人との交渉はおおむね以下のような流れで進みます。
- 内容証明郵便を送り返答を待つ
- 返答があれば示談交渉での解決を探り、公正証書を作成する
- 返答がない・示談交渉が決裂した場合には裁判を提起する
- 裁判上の和解による解決
- 和解が成立しない場合には判決を得る
- 判決に基づき強制執行を行う
公正証書の作成や、裁判の提起、強制執行の手続きなどを被害者の方がご本人で行うのは難しいです。
そもそも交通事故の加害者とやり取りをするということ自体がストレスとなる方もいらっしゃるでしょう。
このような場合には、弁護士に相談し、アドバイスやサポートを受けながら進めることが重要になります。
加害者の勤務先等との交渉
加害者個人が無保険であっても、例えばその事故が勤務先であったり、通勤中であったりする場合には、
民法715条に定めのある「使用者責任」や、自動車損害賠償保障法第3条に定めのある「運行供用者責任」を追及し、
加害者の勤務先等にも損害の賠償を求めることができることがあります。
| 民法715条第1項
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。 |
| 自動車損害賠償保障法第3条
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。 |
実際に勤務先などを相手方とできるかどうかは事故当時の状況によって大きく変わるため、
弁護士に相談することをお勧めします。
- 関連記事:任意保険未加入者との事故により外傷性クモ膜下出血・顔面骨折を負った被害者につき、加害者の勤務先との交渉により1400万円を獲得した事例
- 関連記事:加害者の会社の土地建物や加害者の自宅の土地建物を仮差押えして裁判を行い、後遺障害12級などで裁判で認定された900万円を全額回収した事例
任意保険未加入者との交通事故は弁護士に相談しましょう

任意保険未加入者との事故に遭った場合には、任意保険以外の様々な保険を活用し、
裁判なども視野に入れて行動しながらできるだけ高い賠償金の獲得を目指していく必要があります。
加害者本人とやり取りしなければならないタイミングも多く、被害者の方ご本人が行うのは困難かつストレスがかかることもあります。
任意保険未加入者との交通事故に遭った場合は、弁護士に相談しましょう。
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
交通事故被害に遭い、お困りごとをお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
弁護士