コラム
自転車事故で死亡した場合の賠償金はいくら?内訳や金額相場・事例から請求方法まで解説
2026.06.19

自転車事故は自動車事故と比べて軽く考えられがちですが、死亡事故に至るケースも少なくなく、賠償金額が高額になることもあります。
一方で、加害者が任意保険に加入していないケースが多いことや、事故状況の客観的な記録(ドライブレコーダー等)が乏しいことなど、
自動車事故とは異なる難しさを抱えているのも自転車事故の特徴です。
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 自転車での死亡事故の賠償金の算定基準
- 賠償金の金額相場・内訳
- 高額になった事例
- 賠償金の支払い方法と注意点
- 過失割合の考え方
- 賠償金を払えない場合の対処法
- 遺族がすべきこと
- 弁護士に相談するメリット
等について解説します。
交通死亡事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による無料相談を実施しております。
ご家族が自転車事故で亡くなられた方は、お亡くなりになった方の無念を晴らすためにも、ぜひ一度ご相談ください。
自転車での死亡事故の賠償金の算定基準

自転車事故であっても、自動車事故と同様に、賠償金(慰謝料)の算定には、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
の3つの基準があります。
自賠責基準
自動車事故と自転車事故の最も大きな違いは、自賠責保険という強制加入保険の有無です。
自動車事故であれば自賠責保険が利用できますが、加害者側が自転車の場合には自賠責保険のような強制加入保険制度がありません。
したがって、自転車事故においては自賠責基準そのものが直接適用される場面は少なく、加害者が加入している任意の保険(個人賠償責任保険等)の基準や、弁護士基準が重要な意味を持ちます。
ただし、慰謝料の相場を考える際の一つの目安として、自賠責基準の死亡慰謝料が参考にされることがあります。
自賠責基準の死亡慰謝料の算定は、
請求権者の数や被扶養者の数によって決まります。
| 請求権者1名 | 死亡した本人の慰謝料400万円+550万円=950万円 |
| 請求権者2名 | 死亡した本人の慰謝料400万円+650万円=1050万円 |
| 請求権者3名以上 | 死亡した本人の慰謝料400万円+750万円=1150万円 |
| 被害者に被扶養者がいるとき | 上記金額に200万円を加算 |
なお、自賠責保険全体の死亡保険金の上限は3,000万円です。
任意保険基準
任意保険基準とは、加害者が加入している保険会社が独自に設定している算定基準です。
自転車事故の場合、加害者が
- 個人賠償責任保険
- 自転車保険
- 自動車保険の特約
などに加入していれば、保険会社はこの基準に基づいて示談金額を提示してきます。
任意保険基準の金額は、自賠責基準を多少上回る程度であることが多く、被害者にとって十分な金額とは言えないケースがほとんどです。
保険会社の担当者は専門知識を持って交渉してくるため、被害者側が知識のないまま示談に応じてしまうと、適切な金額を得られないことになります。
弁護士基準
弁護士基準(裁判基準)とは、過去の裁判例の積み重ねをもとに算出された賠償金の目安であり、
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(通称「赤い本」)に基準額がまとめられています。
3つの基準の中で最も被害者に有利かつ公正な基準であり、自転車事故であっても自動車事故と同様にこの基準を用いて請求することができます。
弁護士が交渉に介入することで、この弁護士基準に基づいた賠償金の請求が可能となり、受け取れる金額が大幅に増える可能性があります。
自転車での死亡事故の賠償金の金額相場・内訳

自転車事故で被害者が死亡した場合、遺族は以下のような費目について損害賠償を請求することができます。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、被害者ご本人が亡くなってしまったという無念や、被害者を失った近親者の方の苦痛に対して支払われるものです。
弁護士基準における死亡慰謝料は、被害者の属性に応じて次のような目安が設定されています(近親者慰謝料を含む)。
| 被害者が一家の支柱である場合 | 2800万円 |
| 被害者が母親や、配偶者である場合 | 2500万円 |
| 被害者がその他(独身の男女、子供、幼児等)である場合 | 2000万円~2500万円 |
また、「具体的な斟酌事由により、増減されるべきで、一応の目安を示したものである。」という注意があります。
慰謝料の金額は、精神的苦痛の大きさによって変わるため、どれだけの苦痛を受けたかをしっかりと主張・立証することが重要です。
死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、被害者の方が交通事故に遭わずに生きていれば将来得るはずだったのに、
得られなくなってしまった利益を指します。
計算式は以下のとおりです。
| 死亡逸失利益 = 基礎収入 × (1− 生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 |
死亡逸失利益は、実質的には遺されたご家族の生活を支えていくものになることも多く、
かつ金額も非常に高額になることが多いです。
不当に低く見積もられないよう、しっかりと請求していく必要があります。
葬儀費用
遺族が負担した葬儀関係費用も損害賠償として請求可能です。
一般的に葬儀費用として損害賠償の対象として認められるものは以下のようなものがあります。
- 通夜・告別式費用: 祭壇代、斎場使用料、棺・骨壺代、遺影作製費など。
- 宗教者への謝礼: お布施、読経料、戒名料(法名料)など。
- 火葬・埋葬費用: 火葬料、納骨にかかる実費。
- 飲食・接待費: 通夜振る舞いや精進落としなどの飲食代(過度でないもの)。
- 供養・装飾費: 供花代、葬儀広告代、看板代など。
- 事務的費用: 死亡通知の郵送費、電話代、会葬御礼(粗供養)など。
- 遺体関連: 遺体の捜索費、処置費、搬送料(霊柩車、遠方からの搬送など)。
- 法要費用: 四十九日までの法要(初七日など)にかかる費用。
これらは、故人を弔うために必要不可欠と見なされ、賠償対象の範囲として認められることが多い項目です。
また、別枠になりますが、ご遺族が病院や葬式に駆け付けるために生じた交通費も「駆け付け費用」という項目での請求が可能です。
弁護士基準では150万円までが一つの目安とされており、
これを超えることに相当な理由がある場合にはさらに高額が認められることもあります。
例えば、神戸地方裁判所平成28年10月27日判決(交通事故民事裁判例集49巻5号1304頁)では、被害者が19歳大学生であった交通事故につき、
葬儀が実家のある神戸ではなく、大学のある広島市で行われ、200名を超える友人らが弔問に訪れたことや、葬儀費用として支出した額が170万を超える金額であったことなどから、
170万円の認定がされています。
大阪地方裁判所平成28年10月26日判決(交通事故民事裁判例集49巻5号1204頁)では、
単身赴任先の交通事故で無くなった50歳男性会社員について、単身赴任先で葬儀を行い、改めて地元でも葬儀を行ったことなどを理由に、
200万円の認定がされています。
東京地方裁判所平成20年8月26日判決(交通事故民事裁判例集41巻4号1015頁)では、
大手監査法人に勤務していた34歳男性が亡くなった交通事故につき、奥様やご両親が、700万円超の葬儀関係費や墓碑建立費等を支出したことなどを踏まえ、
被害者の身上や事故態様等から、手厚く対応しようとしたことは無理からぬとして、250万円の認定がされています。
このように、被害者個人に特有の事情などによって、上限額を超える認定がされることもあります。
自転車での死亡事故の賠償金が高額になった事例

自転車事故であっても、過去には数千万円規模の高額な賠償が認められた裁判例が複数あります。代表的な事例をご紹介します。
東京地方裁判所平成26年1月28日判決(交通事故民事裁判例集47巻1号95頁)では、
横断歩道を歩行中に赤信号無視の自転車と衝突して死亡した75歳の女性について、約4700万円の請求が認められています。
東京地方裁判所平成19年4月11日判決(自保ジャーナル1710号21頁)では、
横断歩道を歩行中に赤信号無視の自転車と衝突して死亡した55歳の被害者について、約5400万円の請求が認められています。
このように、自転車事故であっても、適切な請求を行った場合には、自動車事故と同様の請求が認められます。
自転車事故だから低額になるという思い込みで、適切な賠償が得られないことにはならないようにしましょう。
自転車での死亡事故の賠償金の支払い方法

自転車事故で被害者が死亡した場合、遺族は示談交渉の相手や賠償金の支払い元を正確に把握しておく必要があります。
加害者が加入する任意保険・自賠責保険から支払われるケース
加害者が個人賠償責任保険・自転車保険・自動車保険の特約等に加入している場合には、
加害者が加入している保険会社の担当者と示談交渉を行うことになります。
自動車事故と同様、保険会社が窓口となるため比較的スムーズに交渉を進めやすいケースです。
なお、自転車には自動車のような強制加入保険(自賠責保険)はありません。
そのため、自転車保険等への加入状況によって遺族の交渉相手や回収可能性が大きく変わってくる点に注意が必要です。
加害者本人に直接請求するケース
加害者が保険に未加入の場合には、加害者本人に対して直接損害賠償を請求することになります。
この場合、示談交渉の相手は保険会社ではなく加害者個人(または未成年者であればその保護者)となるため、感情的な対立が生じやすく、交渉が難航する傾向があります。
また、加害者本人に請求しても、十分な資力がなければ実際に賠償金を回収できないという問題も生じます。
被害者側の保険から補償を受けるケース
被害者自身が人身傷害保険などに加入していた場合には、自身の保険からの補償を受けることができます。
特に人身傷害保険は、加害者側との示談を待たずに先行して保険金を受け取ることができるほか、
過失割合にかかわらず、補償を受けられるというメリットがあります。
加害者の資力に不安がある場合には、被害者側の保険の活用を積極的に検討すべきです。
- 関連記事:人身傷害保険請求のすすめ
自転車での死亡事故の賠償金における注意点

加害者が賠償金を支払えないことがある
自転車事故の最大の特徴の一つが、加害者が任意保険に加入していないケースが多いという点です。
自動車であれば自賠責保険への加入が法律で義務付けられていますし、
任意保険といっても、75.5%ほどが加入しています(損保料率算出機構「自動車保険の概況」より)。
他方で、自転車には強制加入保険はありませんし、個人賠償責任保険も未だ普及しているとは言えません。
加害者が個人で、かつ十分な資産がない場合には、高額な請求が認められたとしても実際には支払い能力がなく、回収できないという事態に陥ることがあります。
過失割合に関するトラブルが起きやすい
自転車事故は、自動車事故と比較してドライブレコーダーのような客観的な記録が残りにくく、
目撃者の証言や当事者同士の主張に頼らざるを得ない場面が多くなります。
そのため、事故状況の立証が難しく、過失割合をめぐってもめやすいという特徴があります。
被害者が死亡している場合には、被害者本人の証言を得ることができないため、加害者側の言い分が一方的に通ってしまうリスクもあります。
事故直後の実況見分の内容や、現場に残された痕跡、目撃者の確保などが極めて重要になります。
加害者からの提示金額が低い場合が多い
加害者本人や、その加入する保険会社から提示される金額は、弁護士基準よりも大幅に低額であることがほとんどです。
特に加害者本人と直接交渉する場合には、相手方に法律の専門知識がないことも多く、適正な金額の算定根拠を示さないまま低い金額を提示してくるケースも見られます。
提示された金額をそのまま受け入れず、必ず弁護士に相談し、弁護士基準に基づいた適正な金額を確認することが重要です。
自転車での死亡事故の過失割合

交通事故において、過失割合は非常に重要です。
発生した損害の額が1000万円と認められたとして、被害者の過失が20%あると、
加害者に請求できるのは1000万円×(100%-20%)=800万円となってしまいます。
自転車対歩行者の事故では、基本的に自転車側の過失が大きく認定される傾向にあります。
歩行者は交通弱者として保護される立場にあるため、自転車側に重い過失が認められやすいのが特徴です。
一方で、被害者である歩行者の側にも、信号無視・横断禁止場所での横断・著しい不注意などがあった場合には、一定の過失が認められることがあります。
自転車同士の事故の場合は、自動車同士の事故とは異なる独自の過失割合の基準が用いられることもあり、判断が複雑になりがちです。
2026年3月30日に発行された『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕別冊判例タイムズ39号』(判例タイムズ社)では、
自転車同士の事故の過失割合が示されました。
また、前述のとおり自転車事故は客観的な証拠が乏しくなりやすいため、
当事者の主張のみで過失割合が決まってしまうことを避けるためにも、早期に弁護士へ相談し、事故直後から証拠を確保しておくことが極めて重要です。
自転車での死亡事故の賠償金を払えない場合の対処法

加害者に賠償金の支払い能力がない場合、遺族としては以下のような対処法を検討することになります。
加害者の保護者・親族への請求
加害者が未成年者の場合、監督義務違反が認められれば保護者(親)に対して損害賠償を請求できます。
被害者側の保険の活用
人身傷害保険等、被害者側が加入していた保険から補償を受けることで、加害者の資力に左右されずに賠償を得られる場合があります。
分割払いでの合意
一括での支払いが難しい場合には、分割払いによる支払い合意を結ぶことも選択肢の一つです。
このように、加害者から確実に賠償金を回収するためには複数の選択肢を組み合わせて検討する必要があり、専門的な知識が求められます。
早期に弁護士に相談し、最も現実的な回収方法を一緒に検討することをお勧めします。
自転車事故で家族が死亡した場合に遺族がすべきこと

自転車事故で家族が死亡した場合、遺族が早期に取り組むべき対応は以下のとおりです。
① 警察への届出・実況見分への立ち会い
事故発生後、警察への届出を行い、可能な限り実況見分に立ち会い、現場の状況を正確に記録してもらいます。
自転車事故は証拠が乏しくなりやすいため、この初動対応が極めて重要です。
② 目撃者の確保
事故の目撃者がいる場合には、連絡先を確保しておきましょう。過失割合が争点になりやすい自転車事故では、目撃証言は重要な証拠となりえます。
③ 加害者の保険加入状況の確認
加害者が任意保険(個人賠償責任保険・自転車保険等)に加入しているかどうかを確認します。
加入状況によって、その後の交渉相手や回収可能性が大きく変わります。
④ 被害者自身の保険内容の確認
被害者本人が人身傷害保険等に加入していたかを確認します。加入していれば、加害者側との交渉を待たずに保険金を請求できる場合があります。
⑤ 弁護士への早期相談
できる限り早い段階で交通事故被害を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。証拠収集・過失割合の主張・加害者の資力調査など、初動の対応が賠償金額に大きく影響します。
⑥ 損害の整理・証拠収集
葬儀費用の領収書、被害者の収入を証明する書類(源泉徴収票・確定申告書等)、遺族の戸籍謄本など、請求に必要な資料を収集します。
⑦ 示談交渉または訴訟
弁護士が窓口となり、加害者本人または加害者側の保険会社と示談交渉を行います。
交渉がまとまらない場合や、過失割合に大きな争いがある場合には、訴訟提起を検討します。
⑧ 賠償金の受領・必要に応じた強制執行
示談成立または判決確定後、賠償金を受け取ります。加害者が任意に支払わない場合には、強制執行の手続きを検討することになります。
自転車での死亡事故の賠償金請求を弁護士に相談するメリット

加害者や保険会社とのトラブルを避けられる
自転車事故は加害者本人と直接やり取りをする場面が多く、感情的な対立が生じやすい分野です。
弁護士が窓口となることで、遺族が加害者と直接顔を合わせたりやり取りをしたりする精神的負担を大きく軽減できます。
また、保険会社が相手の場合でも、専門知識を持つ弁護士が交渉することで不当な対応を防ぐことができます。
弁護士基準で賠償金を算定・増額できる
加害者本人や保険会社が提示する金額は、弁護士基準を大幅に下回ることがほとんどです。
弁護士が介入することで、過去の裁判例に基づいた弁護士基準での請求が可能となり、慰謝料を含む賠償金全体を増額できる可能性が高まります。
過失割合の主張を有利に進められる
自転車事故は客観的な証拠が乏しくなりがちであり、過失割合をめぐる争いが起こりやすい分野です。
弁護士は事故状況を法的・客観的な視点から分析し、適切な過失割合を主張することができます。
被害者本人の証言が得られない死亡事故では特に、専門家による的確な主張立証が賠償金額を大きく左右します。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
被害者ご遺族にとって最も適切な解決となるよう尽力いたします。
自転車事故で大切なご家族を亡くされた方は、ぜひ弁護士法人小杉法律事務所へお問い合わせください。
死亡事故被害者専門弁護士によるサポートの詳細についてはこちら。
自転車での死亡事故の賠償金に関するよくある質問

死亡事故の賠償金は誰が払いますか?
自転車事故で被害者が死亡した場合、賠償金の支払い義務を負うのは原則として加害者本人です。
加害者が未成年者であり、かつ責任能力がないと判断されるような場合には、監督義務を負う保護者(親権者)が代わりに賠償責任を負うことになります。
加害者が任意保険(個人賠償責任保険等)に加入している場合には、保険会社が保険金の範囲内で賠償金を支払うことになります。
一方、保険未加入の場合には加害者本人(または保護者)の個人資産から支払われることになるため、十分な資力がなければ賠償金を回収できないリスクがあります。
小5の自転車事故で9500万賠償請求されたのは誰ですか?
2008年に神戸市で発生した事故で、当時小学5年生だった男児が夜間に自転車で坂道を下っていた際、歩行中の62歳女性と正面衝突しました(日本経済新聞ホームページ「親に9500万円賠償命令 小5自転車が女性はねる」)
女性は頭部を強く打ち、意識障害・四肢拘縮の重い後遺障害を負いました。
神戸地裁は平成25年7月4日、加害児童本人ではなく、その母親に対して約9,500万円の支払いを命じました。
これは、母親が子どもに対する日常的な監督義務を十分に果たしていなかったと認定されたためです。
なお、この事例は後遺障害が残ってしまったケースであり、死亡事故の場合とは異なります。
弁護士