後遺障害等級の解説

むちうち 神経症状

首のむち打ち(鞭打ち)|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本記事では、首のむち打ち(鞭打ち)の症状と自賠責における後遺障害等級について解説しております。

なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事の監修をいただいております。

また、頸椎/頚椎や、頸部/頚部で用いられる「」と「」の漢字表記につき、近年、日本医学会は印刷標準字体である「」の使用を推奨する旨の方針を示していることから、本記事においても日本医学会の方針に則り、「」を用いるものとします。この漢字表記の取り扱いに関する変遷については、以下のページにて取り上げておりますので、よろしければご覧ください。

髄損傷」と「髄損傷」。漢字が違うが意味も異なるのか?

首のむち打ち(鞭打ち)とは?

⑴首のむち打ち(鞭打ち)とはどのような怪我なのか?どのようにして起こるのか?

首のむち打ち(鞭打ち)は、いわゆる頸椎捻挫を指す言葉であり、むち打ちの他にも「外傷性頸部症候群」や「むち打ち損傷」等の多彩な呼称があります。医師によって診断名が異なることもありますが、頸椎捻挫/むち打ち/外傷性頸部症候群/むち打ち損傷はどれも同じ傷病を表していると考えて差し支えありません。

さて、そんな首のむち打ちですが、頸部や肩の筋肉、靱帯、関節に強い衝撃が加わることで起こります。この怪我は交通事故で特によくみられる傷病であり、具体的には、交通事故による衝撃によって頸部が激しく前後に揺さぶられることにより負傷します。たとえば追突事故で考えてみますと、自動車に乗り赤信号で停止していたところに後ろから追突されると、下図のように頭部は激しく前後に揺さぶられます。

この時、首が不自然に後ろに反り返った状態(過伸展といいます)が生じたり、その後頭部が前に振られて首が過度に彎曲してしまう(過屈曲といいます)が生じることで、頸部の筋肉や靭帯、神経などが無理やり引っ張られるようなかたちとなり、その結果これらの組織を損傷してしまうのです。特に追突事故の場合は衝撃に備えて身構えてないことが殆どですから、より身体への衝撃も大きくなります。

余談ですが、上図のように、追突事故では頭部が前後に大きく揺れることによって首も前後にしなるような動きになります。この光景が、まるでむちがしなるような動きをしていることから、頸椎捻挫について「むち打ち」という表現がなされるようになったと言われています。このような由来であることから、頸椎捻挫と同じくらい交通事故での発症例が多い腰椎捻挫(腰の捻挫)については「腰のむち打ち」などと表現することは殆どなく、あくまで頸椎捻挫(首の捻挫)での限定的な表現といえます。

⑵首のむち打ちの症状

首のむち打ちの主な症状としては、頸部痛肩の痛みといった神経症状が挙げられます。交通事故の衝撃によって頸椎を支える筋肉や靱帯が損傷を受けると、炎症や筋緊張が引き起こされ、これにより痛みや不快感が生じます。またむち打ちによって神経根の障害が惹起されると、障害された神経根の神経支配領域に上肢や手指にしびれが生じたり、筋力低下や握力低下、場合によっては筋萎縮といった症状が現れることもあります。

下図は、神経根ごとの神経支配領域を示した図であり、一般にデルマトーム図と呼ばれます。むち打ちによる頸椎の神経根症の場合、Cがつく数字の領域に神経症状が現れます。たとえば第4頸椎・第5頸椎間の神経根が障害された場合には、C5の領域(上腕上部)辺りに神経症状が現れる、ということです。また、むち打ちにより頸部の血流や神経機能の変化を引き起こすことがあり、頭痛やめまい、吐き気といった全身症状に繋がることもあります。酷い場合には、自律神経系にも影響を及ぼし、倦怠感や耳鳴りを伴うこともあります(このような症状が複合的に生じるものについて、特にバレリュー症候群と呼ばれます)。

⑶首のむち打ちの治療

首のむち打ちの治療において、整形外科での専門的な医療対応は不可欠です。事故後はなるべく早めに整形外科を受診し、傷病の診断を受けるとともに自覚症状をもれなく医師に伝え、カルテ等の医療記録にしっかりと記録を残してもらうことが大切です。事故直後は興奮状態になりアドレナリンが分泌されることも相まって症状を感じない(自覚していない)時間がありますが、その後何か異変や違和感が生じたら、すぐにでも整形外科にかかりましょう。

また、レントゲンやCT、MRI等の画像検査を必要に応じて行い、客観的な異常所見の有無及び身体の状態を確認しておくことも重要となります。交通事故においては、相手方が自賠責保険に加入している場合には、自賠責に対して自賠責保険金請求や後遺障害の申請を行うことができますが、自賠責の損害調査事務所で調査が行われるにあたって画像所見は不可欠のものとなりますので、そのような観点からも画像検査は欠かせないといえるでしょう。そして、整形外科への通院頻度については、週2~3回以上が望ましいです。もちろん、仕事や学校などの都合との兼ね合いもあるかとは思いますが、少なくとも週1回は受診し、症状経過を伝えて治療を行っていくことをお勧めします。

むち打ちの症状について医療機関でどのように伝えたらよいか、以下のページにて解説しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

むちうちの症状の伝え方を知りたい!

他方、整骨院・接骨院での施術については、整形外科の主治医に許可を取ってから通院するのが良いでしょう。理由としましては、損害賠償請求の実務上、治療は西洋医学に基づいて行われることが望ましいとされているからです。東洋医学は科学的根拠に乏しい部分もあるとされており、医学的に症状への有効性があると言い難いものもあります。整骨院・接骨院での施術というのは主に東洋医学に立脚していますから、治療における有効性についても疑義が生じやすいところになります。また損害賠償請求においては整骨院・接骨院での施術に必要性・相当性があったことが求められるところ、主治医の許可なく整骨院・接骨院に通院した場合、整骨院・接骨院の治療費について加害者側が支払を否定する恐れもあります。これらの点も踏まえて、整形外科の主治医の許可をもらった上で、整骨院・接骨院に通院することが望ましいと言えます。

なお、治療のメインはあくまで整形外科になりますので、整骨院・接骨院に通院をする場合でも、整形外科への通院は欠かさないようにしましょう。

首のむち打ちの後遺症と後遺障害等級

交通事故で首のむち打ちを負い、治療の結果痛みやしびれ等の後遺症が残存してしまった場合、自賠責に後遺障害等級の申請を行うことができるときがあります。

首のむち打ちによる後遺症について、認定される可能性がある等級は、別表第二第12級13号と別表第二第14級9号の二つになります。以下、認定要件を見ていきましょう。

⑴別表第二第12級13号

首のむち打ちの後遺症について、「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当すると認められた場合には、別表第二第12級13号が認定されます。

具体的には、画像所見や神経学的所見等の客観的な医学的所見によって神経症状の残存を他覚的に立証できることが求められます。そのため、12級の認定を目指すにあっては、事故直後には医療機関でXPやCT、MRI等の画像を撮影してもらい、画像所見の存否をしっかりと確認しておくことが重要となります。また、治療終盤や症状固定時にも画像を撮影し、やはり異常所見の存否について把握しておくことが望ましいでしょう。これに加えて、神経学的所見も重要となりますから、ジャクソンテストやスパーリングテスト等の徒手検査による所見の有無や徒手筋力テスト(MMT)を施行してもらい、神経学的所見を押さえておきましょう。

⑵別表第二第14級9号

首のむち打ちの後遺症について、「局部に神経症状を残すもの」と認められた場合には、別表第二第14級9号が認定されます。

具体的には、症状経過や治療状況などから将来的にも回復困難と認められる症状が残存していることが説明可能であると認められることが求められ、事故態様や症状経過、治療状況、客観的異常所見の有無及びその内容等を総合的に考慮して、後遺症の残存について相当程度説得的であることが重要となります。

第14級9号認定に向けて押さえておくべきポイントにつきましては以下のページにて詳しく解説しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

後遺障害等級14級9号の認定率を上げるには?

おわりに

本記事では、首のむち打ちの症状と自賠責の後遺障害等級について解説いたしました。

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交通事故での首のむち打ちの症状にお悩みの方、また後遺障害や損害賠償請求についてお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。