交通事故でむちうちになった…示談金はどのくらいになる?
交通事故
交通事故の被害に遭い、むちうち損傷を負傷してしまった場合、
きちんと治療はできるのか、後遺症は残ってしまうのか、仕事はどうしようか、…
不安に感じることがたくさん生じてしまい、肉体的苦痛だけでなく精神的苦痛にも悩まされることかと思います。
そのような悩みの中の一つに、
「どのくらい示談金を受け取ることができるのだろうか」
といった思いもあるかと思います。
本稿では、交通事故でむちうち損傷を負った場合に受け取ることができる示談金の目安について解説します。
さて、交通事故の損害賠償請求で請求することができる損害費目は大きく3つに分けられます。
被害者が実際に支出を余儀なくされた損害である積極損害、
交通事故がなければ被害者が将来的に得られたであろう利益の喪失である消極損害、
そして被害者の精神的苦痛を金銭に換算し償いを求める慰謝料の3つです。
むちうち損傷の場合に請求できる主な損害費目は次のとおりです。なお色分けは、前述の積極損害・消極損害・慰謝料に対応しております。
・治療費
・通院交通費
・損害賠償請求関係費用
・休業損害
・傷害慰謝料(入通院慰謝料)
また、後遺症が残存し、自賠責によって後遺障害等級が認定された場合には、次のような損害を追加で請求することができます。
・後遺症の逸失利益
・後遺症慰謝料
以下、順番に見ていきましょう。
まずは治療費ですが、これは文字通り、交通事故により受傷した傷病に対して行われた治療にかかった費用をいいます。
基本的には病院での医療行為について生じた治療費を請求することができます。
これに加え、医師により施術の必要性・相当性が認められた場合には、整骨院・接骨院等の柔道整復の費用も治療費として請求することができます。
また、薬局で処方された医薬品についても、その必要性が認められる範囲で請求を行うことができます。
なお、基本的には被害者が一度治療費を自費で払い、領収書等をもって相手方に請求するのが一般的な流れではありますが、
相手方保険会社が治療の必要性・相当性を認めている場合には、保険会社が医療機関に対して直接治療費の支払うこと(一括対応といいます)もあります。
一括対応が行われれば、被害者の自費負担が大きく下がりますので、被害者にとってもメリットがあるといえます。
通院交通費は、病院や整骨院等への通院に際して要した交通費をいいます。
バスや電車などの公共交通機関の場合はその運賃や料金を、自家用車での通院の場合は15円/L×通院日数×片道距離×2(往復分)で計算します。
また通院でタクシーを利用した場合ですが、症状等の観点からタクシー利用が必要・相当であると認められる時に損害として認定されます。
そのため、治療の全期間についてタクシーを利用して通院することは通常望ましくなく、
公共交通機関や自家用車などの代替手段があるようであれば、それらを用いることが推奨されます。
損害賠償請求関係費用は、損害賠償請求を行うに際して要した費用をいい、必要かつ相当な範囲で損害と認められます。
代表的なものとしては、後遺障害診断書の作成料金や、交通事故証明書の発行手数料、刑事記録謄写料金などが挙げられます。
事案に応じて請求できるものが異なってきますので、弁護士に依頼している場合は相談してみるのもよいかもしれません。
休業損害は、事故による通院等のために仕事を休まざるを得なくなったことにより生じた現実の減収分を請求するものです。
また休業による減収分だけでなく、事故に関連して有給休暇を使用した部分についても(減収がなくても)休業損害として請求することができます。
ロジックは、「本来なら別の用途で有給休暇を使用できたにも関わらず、事故のために有給休暇を使用せざるを得なくなった」ことを損害とみるわけですね。
加えて、事故による休業のために賞与の減額が生じた場合にも、減額された部分について請求することができます。
基本的な計算式は、休業が連続的であるか、断続的であるかにより異なっています。
前者の場合、 (事故前3か月の収入額÷事故前3か月の総日数)×休業期間の日数 となり、
後者の場合は (事故前3か月の収入額÷事故前3か月の実稼働日数)×実休業日数 となります。
サラリーマンなどの給与所得者の場合は、休業損害証明書を勤務先の会社で作成してもらい、証拠として提出する必要があります。
自営業などの事業所得者の場合は、現実の減収があったことを確定申告票や貸借対照表等の資料によって立証しなければなりません。
また、家賃や光熱費など、休業中に要した固定費用についても休業損害として請求することができる場合があります。
家事従事者についても休業損害が認められる場合があり、逓減方式を用いて算定されることが一般的です。
そして傷害慰謝料(入通院慰謝料)は、事故の怪我のせいで入通院せざるを得なくなったことや、怪我の症状による精神的苦痛について償いを求めるものです。
弁護士基準では、総治療期間に基づき、別表Ⅰもしくは別表Ⅱを用いて算定します。
実務上、原則的には別表Ⅰを用いて算定されますが、むちうち症で他覚的所見がない場合等には別表Ⅱを用いて算定する運用となっています。
むちうち損傷の場合、等級認定がなされれば別表Ⅰで算定し、非該当であれば別表Ⅱで算定して請求することが多いです。
詳しくは以下のページでも解説しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。
後遺症の逸失利益は、事故による後遺障害を原因とする労働能力の喪失によって生じた、将来的に得るはずであった収入の減収分をいいます。
逸失利益の計算方法は、以下のとおりです。
事故前年度の年収額×後遺障害等級に対応する労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(中間利息控除)
事故前年度の年収額によって逸失利益の金額も大きく異なってきますが、
むちうち損傷の場合、主に自賠責で認定される可能性がある等級は12級13号もしくは14級9号になりますので、
労働能力喪失率は、12級の場合は14%、14級の場合は5%になります。
また労働能力喪失期間は、原則的には労働能力喪失期間の終期である67歳-症状固定時の年齢で計算されますが、
裁判例の傾向を踏まえ、実務的には12級の場合は10年、14級の場合は5年とされることが多いです。
ここで逸失利益の算定例をいくつか見てみましょう。
①40歳男性・会社員・事故前年度の年収600万円・12級が認定されている場合
600万円×14%×労働能力喪失期間10年に対応するライプニッツ係数8.5302=716万5368円
②35歳女性・専業主婦・令和4年に症状固定・14級が認定されている場合
専業主婦の場合、一般的には症状固定した年度の賃金センサスにおける女性・学歴計・全年齢平均の金額を用いて算定されます。
令和4年度の賃金センサスを見ますと、女性・学歴計・全年齢平均の金額は394万3500円ですので、
394万3500円×5%×労働能力喪失期間5年に対応するライプニッツ係数4.5797=90万3002円
なお賃金センサスは、学生や幼児の逸失利益を算定する場合にも用いられています。
また、被害者の症状固定時の年齢が67歳を超える場合には、症状固定時の年齢における簡易生命表の平均余命の2分の1をもって労働能力喪失期間とします。
最後に後遺症慰謝料は、後遺障害が残存してしまったことに起因する精神的苦痛について金銭で償いをもとめるものです。
後遺症慰謝料の金額は、下表のとおり自賠責の後遺障害等級に応じて定められており、12級の場合は290万円、14級の場合は110万円になります。
なお、下表は弁護士基準の後遺症慰謝料の金額となります。
以上を踏まえて、次のようなモデルケースで損害賠償請求額を考えてみましょう。
ケース
被害者A…30歳男性・会社員・令和7年4月事故(過失10%)・治療費90万円(一括対応済み)・治療期間6か月(実通院日数130日)・自家用車で家から片道5㎞の病院のみ受診・後遺障害診断書作成料金1万円・事故前3か月の収入90万円・休業期間90日・事故前年度の年収420万円・むちうち損傷で14級9号認定
・治療費 90万円
・通院交通費 15円/L×130日×片道5.0㎞×2=1万9500円
・損害賠償請求関係費用 1万円(後遺障害診断書作成料金)
・休業損害 (90万円÷事故前3か月の総日数90日)×休業期間90日=90万円
・後遺症の逸失利益 420万円×5%×労働能力喪失期間5年に対応するライプニッツ係数4.5797=96万1737円
・傷害慰謝料 別表Ⅰより116万円
・後遺症慰謝料 14級の認定のため110万円
→小計:505万1237円
さて、損害額小計は505万1237円となりますが、この金額を請求できるわけではなく、
過失相殺と損益相殺を考慮する必要があります。
過失相殺は、事故の発生について被害者にも過失がある場合には、過失割合の部分だけ請求額を減算するというものです。
なぜならば、被害者にも過失がある以上、その過失部分についても加害者に損害賠償責任を負わせるのは損害の公平な分担の見地から公平性を欠くためです。
そのため、被害者Aの過失10%の部分だけ、請求額から減算しなければなりませんので、過失相殺後の金額は505万1237円×(100%-10%)=454万6113円となります。
また、損益相殺は、既に加害者や自賠責保険、人身傷害保険などから支払いがされているものについて控除するものです。
損益相殺をする理由としては、同一の損害について二重に利益を得ることを避けるためです。
モデルケースでは、まず治療費90万円について相手方保険会社が一括対応しているので、これを控除しなければなりません。
また、自賠責から保険金が支払われている場合には、その金額も控除する必要があります。
14級が認定されている場合、通常75万円が支払われていますので、これを控除することとなります。
したがって、損益相殺後の金額は454万6113円-90万円-75万円=289万6113円となり、
これが弁護士基準に基づいて計算した被害者Aの最終的な損害賠償請求額となります。
しかし、損害賠償請求の実務上、弁護士が介入していない場合は、保険会社のほうから示談提示案が送られてくることが通常です。
この金額は、弁護士基準よりも大きく低額となる任意保険会社基準に基づいて算定されたものとなっているため、
弁護士を入れず個人で交渉して金額が上がったとしても、弁護士基準での賠償額に及ばないことが多いです。
少しでも賠償金を獲得することを考える場合には、
弁護士を入れることを検討することをおすすめします。
交通事故に伴う示談交渉は複雑で、被害者自身が行うには負担が大きいことが少なくありません。
しかし、弁護士に依頼すれば、交渉のプロが全面的に対応してくれるため、被害者は煩雑なやり取りから解放されます。
特に相手方の保険会社との交渉は専門的な知識が必要となり、同意を得にくい場合もあるため、
経験豊富な弁護士に任せることで、有利な条件を引き出せる可能性が高まります。
交通事故の示談交渉を成功させるためには、信頼できる弁護士を選ぶことが重要です。
まず、実績や専門性を確認しましょう。交通事故の案件に多く携わっている弁護士は、
豊富な経験と知識を持っていることが多いため、より安心して任せることができます。
また、無料相談を提供している弁護士も多いので、相談の中でコミュニケーションの相性や弁護士のスタンスを確認するとよいでしょう。
信頼関係を築ける弁護士を選ぶことで、安心して交渉を任せることができます。
加えて、弁護士費用特約が付帯している保険に加入している場合は、これを活用することで弁護士費用の負担を軽減できます。
弁護士費用特約があると、交通事故に関する法律相談や交渉の費用が一定額までカバーされるため、被害者にとって経済的な負担が大幅に軽減されます。
特約が付いているかどうかを確認し、請求手続きがスムーズに進むようにしましょう。これにより、弁護士費用の心配をせずに、被害者として最適な損害賠償請求が行えます。
弁護士法人小杉法律事務所では、解決件数1000件以上の弁護士をはじめとして、交通事故被害を専門とする弁護士が初回無料の法律相談を実施しています。
裁判基準や後遺障害等級認定基準を熟知した弁護士によるサポートで、ご依頼者様が適切な慰謝料を獲得できるよう努めます。
また、弁護士費用特約が付帯されている保険にご加入の方に関しては、当該保険約款に従い弁護士費用を請求いたします。
ですからせっかく弁護士費用特約を付けていたのにあまり効果が無かった…ということにはなりません
(ただし、弁護士の介入により獲得した金額が高額になる場合は弁護士費用特約の上限額を超過する場合があり、その場合には獲得した賠償金からのご精算が発生いたします。)。
弁護士費用特約付帯の保険へのご加入が無い場合であっても、弁護士法人小杉法律事務所は相談料・着手金はございません。
報酬金についても相手から獲得した金額からのご精算となりますので、被害者の方のご負担なくご依頼いただくことが可能です。
実際に弁護士費用の方が高くついてしまい、結果として弁護士に依頼したことで損になるリスクがある場合には、
初回の法律相談(無料)の段階でそのリスクをお伝えいたします。ですから、ご安心・ご納得してご依頼いただくことが可能です。
さらに、弁護士法人小杉法律事務所では原則として被害者の方お一人に対して弁護士とスタッフ(パラリーガル)が担当をさせていただきます。
弁護士となかなか連絡がつかず状況が分からない…といった不安も、パラリーガルが対応いたしますのでご安心ください。
交通事故被害でむちうちを負い、後遺障害や示談交渉でご不安をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。