交通事故慰謝料の計算方法:通院日数の重要性を解説
2024.10.31
損害賠償請求
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 交通事故でもらえる慰謝料とは?
- 通院日数が慰謝料の計算に与える影響
- 適切な慰謝料を受け取るためのポイント
等について解説します。
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交通事故被害に遭い、慰謝料請求について疑問をお抱えの方はぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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交通事故慰謝料とは
慰謝料の種類と概要
交通事故における慰謝料とは、被害者が事故により受けた精神的苦痛に対する賠償金を指します。
民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
民法710条「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」
これは、他の損害賠償項目と同様に請求することができ、主に以下の3つの種類に分類されます。
入通院慰謝料
一つ目は、入通院慰謝料です。
これは、交通事故で怪我をした際、治療のために通院や入院した場合に支払われるものです。
後遺症慰謝料
二つ目は後遺症慰謝料で、事故によって後遺症が残った場合に対する賠償金です。
交通事故事案はほとんどの場合で自賠責損害調査事務所の審査により認定された後遺障害等級をもとに後遺症慰謝料の額が算定されます。
最も重度とされる後遺障害等級第1級から最も軽度とされる後遺障害等級第14級までがあり、
自賠責基準では第14級について支払われる32万円から、第1級(自動車損害賠償保障法施行令別表第1)について支払われる1650万円までで、各等級に応じて決定されます。
弁護士基準では第14級の後遺症慰謝料は110万円が一つの目安であり、第1級の後遺症慰謝料は2800万円が目安とされています。
慰謝料の算定基準
慰謝料の計算にはいくつかの基準があります。
最も低額な自賠責基準の計算式は「入通院慰謝料 = 4,300円 × 通院日数」です。
自賠責基準(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準)では、
慰謝料の対象となる日数は「被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とする。」とされています。
具体的な計算としては、実通院日数(実際に通院した日数)を2倍した値と総治療期間(治療開始から治療終了までの総日数)の少ない方を選び、これを通院日数とします。
この通院日数によって慰謝料の金額が決まるため、通院日数は非常に重要な要素となります。
たとえば、総治療期間が180日で実通院日数が72日(週3回通院を6ヶ月)の場合、通院日数は144日とされ、この場合の慰謝料は61万9200円(4300円×144日)となります。
一方弁護士基準では基本的には通院の実日数ではなく通院の期間が重要視されます。
弁護士基準はいわゆる赤い本『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)に定めのある基準ですが、
この赤い本において入通院慰謝料は、「原則として入通院期間を基礎として、」とされています。
先ほどの例でみると、総治療期間が180日であれば、これをもとに116万円(軽傷の場合は89万円)が一つの目安となります。
通院日数を最大限活かすためのポイント
治療期間中の通院日数
ここまで見てきた様に、弁護士基準における入通院慰謝料の計算は、原則として通院日数ではなく通院期間をもとに行いますから、
通院の頻度を増やせば増やすほど慰謝料が増額するというわけではありません。
では通院はしなくて良いのか?というとそうでもありません。
通称青い本と呼ばれる『交通事故損害賠償額算定基準-実務運用と解説-』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター研究研修委員会編)では、
通院実日数が少ない場合の入通院慰謝料の計算について、
「通院が長期化し、1年以上にわたりかつ通院頻度が極めて低く1ヶ月に2~3回程度の割合にも達しない場合、あるいは通院は続けているものの治療というよりむしろ検査や治癒経過の観察的色彩が強い場合などは、基準表をそのまま機械的に適用できない。このような事例においては、以下の算式により修正通院期間を求め、これを通院期間とみなして基準表を適用して通院慰謝料額を算出し、この金額を参考として妥当な金額を定めればよいと思われる。
修正通院期間(月)=通院実日数/標準通院率(=2/7)÷30 ※要するに通院実日数の3.5倍」
このように、通院が長期化するような場合に通院日数が極めて少ないと慰謝料額に影響を及ぼす可能性があります。
また、特に治療状況が認定の要件の1つとして挙げられている、むちうちについての後遺障害等級第14級9号などは、
実通院日数が少ない=そこまで治療が必要な怪我ではなかった=後遺症が残るような怪我ではない ということで後遺障害等級の認定が否定される要因になる可能性もあります。
だったら通院はするだけした方が良いのか?というわけでもありません。
相手方保険会社が治療費の一括対応を行っているような場合、相手方保険会社は支払った治療費について自賠責保険に対して求償を行います。
このとき、自賠責保険における治療費・通院交通費・休業損害・入通院慰謝料などについてのお支払をする「傷害による損害」は、
保険金支払の限度額が120万円とされています。
つまり、過剰に通院を行うことで治療費が多くなり、その120万円の枠を埋めるスピードが速くなると、
それだけ相手方保険会社は治療費の一括対応を早期に打ち切ったりしてくる可能性が高まります。
結局のところ、ご通院は主治医とご自身の身体の状況と相談しながら医学的に適切と思われる日数でご通院されるのが一番です。
ただし、むちうち症で後遺障害等級の認定を獲得する場合には、最低でも週2~3回の通院が要件とされますので注意が必要です。
むちうち症で後遺障害等級認定を獲得するためのポイントについての解説はこちら。
症状固定後の通院
交通事故で怪我を負った場合は、治療を続けていくことになりますが、その中でこれ以上治療を続けても良くならないという状態に達することがあります。
この時点を症状固定と言います。
基本的に、入通院慰謝料の計算の基礎となるのは「治療」期間ですから、
治療の効果がない期間については入通院慰謝料の計算の基礎とすることはできません。
ですから症状固定後に通院したとしても、入通院慰謝料が増額することはありません。
また、症状固定に至った場合は治療の効果がないということなので、治療費についても相手に賠償を求めることができません。
したがって基本的には症状固定後の通院が、少なくとも損害賠償請求実務上で被害者の方にとって利益となることはありません。
ただし、最も大切なのは被害者の方の身体ですから、治療を続けることで楽になるような場合には続けていただいて問題ございません。
また、むちうち症で後遺障害等級第14級9号の認定を目指す場合には、
症状固定後にも自費で通院しているという事実が、等級認定において有利に働く可能性もあります。
等級認定の獲得のために通院を継続するのはやめた方が良いですが(治療費だけ損をするリスクがある)、
ご自身の身体と医師と相談して通院を続けた方が楽になる場合は通院していただき、あわよくば賠償請求に有利になるように動いていく方が良いと思います。
慰謝料計算におけるポイント
ここまで見てきたように、弁護士基準で慰謝料を計算する場合には通院日数よりも通院期間の方が重要です。
ですから相手方保険会社が治療費対応の打ち切りを言ってくるような場合であっても、主治医が治療の必要性を認めているのであれば続けるべきです。
示談交渉の場合、基本的には医師が症状固定日と判断した日までを通院期間として入通院慰謝料を計算することについて争われることは少ないです。
通院が必要で、お仕事を休む必要がある場合などもあり、自費での通院が厳しいことも考えられますが、
適切な慰謝料を獲得するためには、適切な通院期間の通院をする必要があります。
相手方保険会社が治療費の一括対応を打ち切るという連絡をしてきた場合には、
弁護士に依頼することで医師の意見を取り付け、治療費対応を延長できる場合もあります。
また、単純に入通院慰謝料の計算も自賠責基準や任意保険基準で計算するよりも弁護士基準で計算した方が高額になります。
適切な慰謝料の獲得にあたっては弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
交通事故被害に遭い、慰謝料の請求や計算について疑問をお抱えの方は、
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