交通事故コラム

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休業補償はいつまで?事故後の不安を解消する知識を徹底解説

2024.11.02

休業損害

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、

  • 休業補償(休業損害)とは?
  • 休業補償の支給が始まるタイミング
  • 休業補償の支給が終わるタイミング
  • 症状ごとの休業補償の相場
  • 休業補償を受け取るための手続き

等について解説します。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。

交通事故被害に遭い、休業補償の請求について疑問をお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

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休業補償(休業損害)とは何か?

休業損害とは、交通事故によって怪我を負い、仕事を休むことを余儀なくされた結果、減少した収入を填補するものです。

これは会社員や自営業者、専業主婦など幅広い職業の方が対象となります。

 

事故により通院が必要になったり、自宅で療養を続ける必要がある場合、その期間の収入が失われることは多くの人にとって大きな負担となります。

休業損害は、そうした状況を考慮し、事故の影響を受けた働けなかった期間の収入を補償するために支払われる重要な賠償金の一部です。

 

休業損害と休業補償の違い

休業損害と休業補償はよく似た言葉であり、被害者の方にとっては実質的な違いはあまりありません。

 

休業損害は、まさに交通事故被害に遭い休業をせざるを得なくなったために得られなくなった収入に対する填補であり、

これは、交通事故の相手方に対して賠償を請求することができます。

 

これに対して休業補償は、労災保険制度を通じて給付されるもので、業務中や通勤中の事故によって労働ができなくなった際に受け取ることのできる給付金です。

休業補償は事故の相手方がいるような場合でなかったとしても、業務中や通勤中であるという認定が下りれば支給がされます。

 

いずれのケースでも、適切に証明書類を提出し、適切な金額を受け取ることが、被害者の方にとっては重要になります。

 

ただし、繰り返しですが交通事故被害者の方にとって実質的な違いはあまりありませんから、

事故に遭い、休業せざるを得なくなった場合の賠償・補償という広い意味で休業補償(休業損害)について解説していきます。

 

休業補償(休業損害)がカバーされる期間

交通事故による休業損害は、事故が発生してから、最大で怪我の治療が終了するまでの期間をカバーします。

この期間中、仕事を休むことになり、その結果、収入が減少することを補償するのが休業損害の本来の目的です。

 

交通事故によって仕事ができない期間がいつまで続くのかは、怪我の症状や治療の進行状況によって異なります。

 

休業損害が認められる期間を一言で言うと、

「交通事故発生から症状固定日までの期間のうち、事故により休業をせざるを得ないと認められる期間」となります。

 

ただこれでは具体的ではないですから、それぞれの要素を順にみていきましょう。

 

交通事故発生時

交通事故発生時はまさに読んで字のとおりです。

 

朝の通勤中に交通事故に遭い、当日の勤務ができずに収入を得られなかった場合はその日から休業損害として賠償を受ける対象となります。

 

ここで1点だけ、休業損害と労災保険からの給付である休業補償(休業給付)とが異なる点があり、休業補償(休業給付)については待期期間というものがあります。

 

労働者災害補償保険法第14条休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、~」(及び第22条の2参照)

この第1日目~第3日目の期間が待期期間と呼ばれるものであり、休業給付の支給対象となりません。

 

症状固定日とは?

症状固定日は、これ以上治療を続けても怪我の症状がこれ以上大きく改善する見込みがないと医師によって判断された日を指します。

交通事故における休業損害では、この症状固定日が一つの区切りとなります。

 

交通事故の被害に遭った場合、事故に遭った瞬間がもっとも身体の状態が悪く、そこから治療を続けていく中でだんだんと身体の状態が改善していくという症状経過を辿るという実務上の考え方があります。

この考え方に基づき、事故直後(≒治療開始時)は身体の状態が悪くてできなかった仕事も、

治療を続けていく中でできるようになっていき、仕事ができるようになれば休業損害の対象ともならなくなると評価されます。

 

特に軽傷の場合には、通院をするためにお仕事を休まざるを得ないといった、治療と休業が密接に関係していることが多いため、

そもそも治療の必要性がなくなれば休業の必要性がなくなると評価されることとなり、

つまりは症状固定日(=これ以上治療を続けても良くならない日)以降は休業の必要性がないと考えられることになります。

 

ですから休業損害が認められるのは最大で症状固定日までになります。

ただし、後遺症が残るような場合には別途逸失利益というものを請求することができますが、これについては後述します。

 

 

事故により休業せざるを得ないと認められる期間

これも読んで字のとおりです。

 

通院に行くためにお仕事を休まざるを得ないというのが最も典型的ですが、

たとえば手を骨折していて現場作業ができなかったり、デスクワークもできなかったりといった場合には、

骨折部が癒合して手を動かせるようになるまでの期間が事故により休業せざるを得ない期間と認定されるでしょう。

 

具体例を見ると分かりやすいですが、怪我の態様や治療状況などにより、休業せざるを得ないかどうかが決まります。

だからこそ、適切な治療を受け、生活上の支障を適切に主治医に伝え、カルテに残してもらうことが重要となります。

 

後遺症が残った場合の休業損害は填補されないのか?

休業損害の対象となる日が最大で症状固定日までということは、それ以降の休業損害は填補されないのでしょうか?

症状固定日を迎えても労働に支障が出るような後遺症が残っている場合の補償はないのでしょうか?

 

この補償として支払われるのが逸失利益です。

 

逸失利益とは、後遺症が残ってしまったことで将来にわたって働きにくさが残ってしまい、

得られるはずであったのに得られなくなった収入に対する損害の填補を言います。

 

逸失利益についての詳しい解説は以下のページをご覧ください。

 

休業損害の申請方法

必要書類と提出手順

交通事故により休業損害を請求する際には、いくつかの必要書類を揃えて提出することが求められます。

まず、最も重要なのが「休業損害証明書」です。

 

これは、事故による怪我でどれだけの期間仕事を休んだかを証明する書類で、勤務先に作成してもらったり、や自営業の場合であれば自己申告で作成します。

これと併せて会社員の場合には実際にそこで従事していることの証明として源泉徴収票が必要となります。

 

これらの書類を揃えたら、保険会社に提出します。

提出する際には、正確な情報を記載することが重要です。誤った情報が含まれていると、支払いが遅れる原因になる可能性もありますので注意が必要です。

 

注意点とよくあるトラブル

休業損害の請求においては、いくつかの注意点があります。

まず、「いつまで」請求できるかをしっかり確認しておくことが大切です。

休業損害は事故発生から治療終了日(症状固定日)までカバーされるため、この期間を超えてしまうと損害の請求が認められないケースがあります。

 

また、注意すべきトラブルとしては、休業損害の額が適切に計算されていないことや、

保険会社から十分な補償が得られないことが挙げられます。

 

特に、自営業者の場合は収入を証明することが難しいため、計算に困難が伴うことがあります。

このような場合は、弁護士に相談することで適正な賠償額を受け取れる可能性が高まります。

 

 

さらに、通院の必要性や怪我の程度を証明する医師の診断書やカルテも重要です。

診断書に不備があった場合、保険会社からの補償を受ける際に問題となることがあります。

 

正しい手続きを行い、トラブルを未然に防ぐためには、各ステップでしっかりと確認を行い、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

 

休業損害の金額計算方法

給与所得者の場合

給与所得者の休業損害の計算は、事故前3か月の賃金総額をその期間の総日数(またはその期間の稼働実日数)で割った金額を基に計算します。

この日額に、事故により仕事を休んだ日数をかけることで休業損害の金額が計算されます。

 

事故前3か月の賃金総額、その期間の稼働実日数及び仕事を休んだ日数については会社に作成してもらう休業損害証明書により証明を行います。

 

この際有給休暇を取得した場合であっても休業損害として請求が可能ですので、その点も気を付けなければいけません。

(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)』2018年版37頁「給与所得者の休業損害を算定する上での問題点」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)参照)。

 

 

主婦(家事従事者)や自営業者の場合

主婦(家事従事者)や自営業者の場合も、交通事故による休業損害の請求が可能です。

主婦(家事従事者)の場合は、家事労働の価値を労働賃金に換算して損害額を求めます。

 

原則として厚生労働省が毎年実施している賃金構造基本統計調査から、女性・学歴計・全年齢平均の賃金額をもとにします。

 

関連記事:主婦にも認められる休業損害!その計算方法を詳しく解説

 

一方、自営業者は、事故前の所得証明や営業実績を基に日額が算定されます。この計算は、事故前の数カ月の平均収入から求められる「基礎日額」を利用します。

自営業者の場合、収入の変動があるため、過去の確定申告書や帳簿から稼働日数と時間給を元にした詳細な証拠が求められる場合があります。

 

 

交通事故の休業損害は、個々の収入状況に応じて計算され、適切な証拠を揃えることで適正な補償が受けられます。

 

弁護士に相談するメリット

適正な賠償額の計算

交通事故による休業損害の請求には、適正な賠償額の計算が重要です。

事故の影響で仕事ができなかった日数やケガの程度などを考慮に入れ、適切な補償が受けられるよう慎重に計算する必要があります。

 

しかし、これらには専門的な知識が要求されます。

弁護士に相談することで、法律の専門家が具体的な数値を分析し、休業損害請求の最大化を図ることができます。

 

また、収入の減少が伴う場合には、給与所得者から自営業者、専業主婦に至るまで、それぞれのケースに応じた的確な賠償額の計算が期待できます。

 

トラブル時の交渉力強化

休業損害の請求には、支払のタイミングや金額の計算、休業損害認定期間など、相手方との交渉が必要になるポイントがいくつもあります。

そうした場面で弁護士がいると、交渉力が強化され、より有利な条件を引き出せる可能性が高まります。

弁護士は法律知識を活かした説得力のある対応を行うため、被害者の方の利益を確保しつつ、スムーズな解決を図ることができます。

 

特に最終的な示談のタイミングではなく、治療期間中にひとまずその時点までの休業損害の支払をしてもらう内払の交渉などは、

冷静にお互いが納得できるラインを見極める必要があり、弁護士に相談することで事態が好転することも大いにあるでしょう。

 

まとめ

交通事故による休業損害は、事故で怪我をしたために仕事を休まざるを得なかった期間の収入減少を補償するための重要なものです。

事故発生から治療終了日または症状固定日までの間、適切に請求を行うことで、給与所得者だけでなく自営業者や専業主婦も含めたさまざまな方がこの制度の恩恵を受けることができます。

 

休業損害を請求する際には、複雑な手続きが必要になることもあるため、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士のサポートを受けることで、休業損害の打ち切り問題や賠償額の算定においても頼りになる存在となり、交渉力を高めることが可能です。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を行っております。

交通事故被害に遭い、休業損害の請求についてお困りの方はぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士とのご相談の流れについてはこちらから。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。