慰謝料
専門弁護士が解説する交通事故慰謝料の適切な計算方法!
2024.11.01
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 交通事故被害に遭った場合に請求できる慰謝料の種類
- 慰謝料の計算基準
- 具体的な慰謝料の計算方法
- 慰謝料請求を弁護士に相談するメリット
等について解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
交通事故被害に遭い、慰謝料請求について疑問をお抱えの方はぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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交通事故慰謝料の種類
交通事故の被害に遭った場合には、被害者は加害者及び加害者が加入する保険会社に対して、受けた損害についての賠償を請求することができます。
これは民法710条に規定があります。
民法710条「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」
ここでいう「財産以外の損害」が精神的損害を表しており、被害者はこの条文をもとに慰謝料の請求をすることができます。
ですから慰謝料というのは精神的苦痛に対する賠償を言います。
交通事故被害に遭い、請求できる慰謝料の種類は、
- 「入通院慰謝料」
- 「後遺症慰謝料」
- 「死亡慰謝料」
の3つです。
順に解説します。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、交通事故により治療を受ける必要が生じたときに支払われる慰謝料です。
交通事故被害に遭って怪我をし、治療をある程度の期間続けていく際には、
怪我を負ったことによる苦痛はもちろんのこと、入通院を継続的に行ったり、損害賠償請求について相手方とやり取りしたりと言った様々な苦痛が被害者に発生します。
これらの精神的苦痛に対して支払われるのがこの入通院慰謝料であり、
入通院慰謝料は通院や入院の期間を考慮して計算されることとなります。
後遺症慰謝料
後遺症慰謝料は、交通事故による怪我が治った後も後遺症が残った場合に受け取ることのできる慰謝料です。
後遺症が残ると将来にわたってその後遺症による日常生活や業務上の苦痛と付き合いながら生活することを強いられることになります。
当然後遺症と付き合いながらの生活は苦痛を生じさせるわけですから、その精神的苦痛は少なくとも慰謝料という金銭として賠償を受けなければなりません。
この慰謝料は、後遺障害の等級によって金額が異なります。
被害者の方お一人お一人にとって、後遺症が日常生活に与える支障はまさに千差万別です。
ただしそれでは同じような交通事故に遭い、同じような診断を受けた人の間で平等性が担保されないので、
損害賠償請求実務上は身体に残存する後遺症を14の等級に分類した後遺障害等級に基づく慰謝料の認定を原則としています。
死亡慰謝料
死亡慰謝料は、交通事故により被害者が死亡した場合に遺族に対して支払われる慰謝料です。
この慰謝料の中には死亡した被害者が受けた苦痛はもちろん、大切なご家族を失った遺族の心情も含まれており、
金額は家庭内での立場や経済的支援の有無などを考慮して決定されます。
死亡慰謝料に関しては、民法711条に基づき、亡くなった被害者だけでなく遺族固有の慰謝料も請求することができます。
民法711条「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」
基本的に損害賠償請求権は被害を受けた本人にしか認められないものですが、被害者が死亡した場合には、
その近親者についてはそれぞれが損害賠償請求権を有することになります。
慰謝料の計算基準
ここまで見てきた、
- 入通院慰謝料
- 後遺症慰謝料
- 死亡慰謝料
については精神的苦痛を金銭で評価することになりますから、ある程度の基準は必要となります。
損害賠償請求実務上はその基準として、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
の3つの基準があり、それぞれに特徴があります。
順にみていきましょう。
自賠責基準
交通事故慰謝料計算の3つの基準の中で最も明確かつ低額な基準が自賠責基準です。
自賠責基準とは、自動車損害賠償責任保険における保険金お支払基準のことを言い、
自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準
と、
自動車損害賠償保障法施行令第2条並びに別表第1及び別表第2
に定められています。
そもそも自賠責保険は、自動車損害賠償保障法第1条の目的に基づいて、自動車を運転する場合は強制加入が義務付けられている保険です。
自動車損害賠償保障法第1条「この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立するとともに、これを補完する措置を講ずることにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。」
被害者の保護のために自動車側に付帯されている保険になりますから、迅速かつ平等に被害者側が保険金を受け取ることができるといったメリットはあるのですが、
それゆえに最低限度のお支払しかなく、被害者側にとって適切な慰謝料額が支払われているとは到底言えません。
3つの慰謝料それぞれについての具体的な基準は以下のとおりです。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は1日につき4300円とされています。
対象となる日数は、「被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とする。」とされており、
具体的には総治療期間と実治療日数の2倍のいずれか短い方とされています。
例えば総治療期間が180日、実治療日数が72日である方の場合には、
72日×2=144日<180日ですから、
この方の自賠責基準における入通院慰謝料は4300円×144日=61万9200円となります。
後遺症慰謝料
さきほどみたように後遺症慰謝料は自賠責損害調査事務所の審査において認定された後遺障害等級に基づいて決定されます。
具体的には以下のとおりです。
(別表第1)
後遺障害等級第1級 | 1650万円 |
後遺障害等級第2級 | 1203万円 |
(別表第2)
後遺障害等級第1級 | 1150万円 |
後遺障害等級第2級 | 998万円 |
後遺障害等級第3級 | 861万円 |
後遺障害等級第4級 | 737万円 |
後遺障害等級第5級 | 618万円 |
後遺障害等級第6級 | 512万円 |
後遺障害等級第7級 | 419万円 |
後遺障害等級第8級 | 331万円 |
後遺障害等級第9級 | 249万円 |
後遺障害等級第10級 | 190万円 |
後遺障害等級第11級 | 136万円 |
後遺障害等級第12級 | 94万円 |
後遺障害等級第13級 | 57万円 |
後遺障害等級第14級 | 32万円 |
別表第1と別表第2の違いは、神経系統の機能又は精神か、胸腹部臓器の機能に障害を残し介護を要するかどうかです。
同要件に該当する場合は別表第1の保険金が支払われます。
死亡慰謝料
自賠責基準における死亡慰謝料の金額は以下のとおりです。
死亡慰謝料の請求権者が1名 | 550万円(ただし被害者に被扶養者がいるときは750万円) |
死亡慰謝料の請求権者が2名 | 650万円(ただし被害者に被扶養者がいるときは850万円) |
死亡慰謝料の請求権者が3名 | 750万円(ただし被害者に被扶養者がいるときは950万円) |
任意保険基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に定めた基準であり、明確な基準が公開されているわけではありません。
しかし、結果として先ほどの自賠責基準とこの後ご説明する弁護士基準の間に収まることがほとんどです。
任意保険というのは自賠責基準での保険金の支払では、被害者が受けた損害が到底填補できないような場合のために備えている保険です。
任意保険基準が自賠責基準を下回ってしまうと、加害者は任意保険に加入していた意味がなくなりますから、
任意保険基準は自賠責基準を下回りません。
一方で、任意保険会社からすれば、自社がお支払する金額が自賠責基準に近づけば近づくほど自社で支払う保険金額が小さくなり、
それだけ自社の利益が大きくなるわけですから、自賠責基準を下回らない範囲でできるだけ金額を低くしようとします。
当然被害者側にとって最も適切な金額の基準である弁護士基準を上回るようなことはなく、結果的に任意保険基準は弁護士基準を下回るラインで設定されます。
弁護士基準
弁護士基準は、過去の判例を参考にした計算方法であり、被害者側にとって最も適切な慰謝料基準であるということができます。
過去の判例を参考にした計算方法であることから裁判基準ともよばれますが、内容は同じです。
この弁護士基準は、実務上赤い本と呼ばれる『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)にまとめられています。
3つの基準の中で最も高額になることがほとんどですから、さっそくそれぞれの慰謝料についてみてみましょう。
入通院慰謝料
弁護士基準における入通院慰謝料は、治療日数ではなく治療期間で計算することを原則としています。
- 通院1ヶ月の場合は28万円(軽傷の場合は19万円)
- 通院3か月の場合は73万円(軽傷の場合は53万円)
- 通院6ヶ月の場合は116万円(軽傷の場合は89万円)
が目安になります。
ですから治療期間をどこからどこに設定するかが金額と密接にかかわるので重要になるわけなのですが、
一般には事故日~症状固定日とされることが多いです。
症状固定日とは、医師がこれ以上治療を続けても効果がないと判断した時点を言います。
治療を続ければ続けるだけ慰謝料額が上がるという側面もあることにはありますが、
実質的に症状固定に至っていたと判断されると、その実質的に症状固定に至っていた日から通院終了日までの期間について慰謝料計算の基礎とすることができないばかりか、
その期間の治療費についても相手方に請求することができず、損になるということもあります。
結局のところ主治医とご自身の身体と相談しながら適切な治療を受けていただくのが最も適切な慰謝料請求の近道です。
弁護士に依頼するだけで自賠責基準や任意保険基準と比較して高額の慰謝料を請求することができます。
また相手方保険会社から治療費の一括対応を打ち切る連絡が来たとしても、弁護士に依頼することで治療費対応を延長でき、結果として慰謝料算定期間を長くできる可能性もあります。
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後遺症慰謝料
弁護士基準においても後遺症慰謝料は後遺障害等級と連動しています。
後遺障害等級第1級 | 2800万円 |
後遺障害等級第2級 | 2370万円 |
後遺障害等級第3級 | 1990万円 |
後遺障害等級第4級 | 1670万円 |
後遺障害等級第5級 | 1400万円 |
後遺障害等級第6級 | 1180万円 |
後遺障害等級第7級 | 1000万円 |
後遺障害等級第8級 | 830万円 |
後遺障害等級第9級 | 690万円 |
後遺障害等級第10級 | 550万円 |
後遺障害等級第11級 | 420万円 |
後遺障害等級第12級 | 290万円 |
後遺障害等級第13級 | 180万円 |
後遺障害等級第14級 | 110万円 |
自賠責基準と見比べていただくとかなり高額になっているのがお分かりになると思います。
また、弁護士基準の場合、被害者の方におおむね後遺障害等級第1級~第3級に該当するような重度後遺障害が認定された場合には、
近親者の方についても固有の慰謝料を請求できる可能性があります(最高裁判所第三小法廷昭和33年8月5日判決 民集12巻12号1901頁 判例時報157号12頁)
後遺症が残ってしまうような事案では、後遺障害等級に応じて後遺症慰謝料の金額や、逸失利益の金額が変わりますから、
まずは適切な後遺障害等級の認定を目指すべきであり、そのためには弁護士に相談されることをお勧めします。
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死亡慰謝料
弁護士基準における死亡慰謝料は、被害者の属性によって大体の基準が設定されています。
被害者が一家の支柱と評価される場合 | 2800万円 |
被害者が母親・配偶者と評価される場合 | 2500万円 |
被害者がその他(独身の男女・子供・幼児等)と評価される場合 | 2000万円~2500万円 |
この基準金額には近親者慰謝料も含まれています。
なお、「本基準は具体的な斟酌事由により、増減されるべきで、一応の目安を示したものである」とされていますので、
この具体的な斟酌事由(被害者の生前の様子や近親者にとって被害者がどれだけ大切な存在であったか等)を示すことで、
慰謝料金額が増額する可能性があります。
弁護士に相談するメリット
慰謝料の増額交渉
交通事故による損害賠償を請求する際、保険会社から提示される慰謝料の額は、通常の相場よりも低く設定されていることが多いです。
このため、弁護士に相談することが重要です。弁護士は、過去の判例や法律(弁護士基準)に基づき、適正な慰謝料の計算を行い、公平な額を主張することができます。
基準での計算を活用することで、事故によって生じた本当の損害をカバーすることができます。
トラブルの回避
慰謝料請求は感情が絡み合うデリケートな問題で、交渉の過程でトラブルが発生することもあります。
弁護士に相談することで、こうしたトラブルを未然に防ぐことができます。
弁護士は法律の専門知識と交渉のスキルを駆使して、保険会社との間での複雑な交渉をスムーズに進めるよう努めます。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
交通事故被害者の方お一人お一人にとって最も良い解決になるようサポートさせていただきます。
交通事故被害に遭い、慰謝料請求について疑問をお抱えの方はぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。