逸失利益の計算方法を弁護士が徹底解説|後遺障害・死亡・職業別の具体例と早見表
2024.07.23
損害賠償請求

交通事故により後遺障害が残ってしまった場合、または被害者が亡くなってしまった場合には、
加害者に対して損害賠償を請求することができます。
その中でも、逸失利益という費目は損害賠償請求において金額的にもきわめて重要な意味を持ちます。
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 逸失利益の定義
- 後遺障害と逸失利益の関係
- 逸失利益の計算方法(具体例つき)
- 死亡逸失利益
- 逸失利益の請求の流れ
- 逸失利益がもらえないケース
- 逸失利益の請求を弁護士に依頼するメリット
などについて解説します。
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
逸失利益の計算について疑問をお抱えの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
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逸失利益とは?

逸失利益の定義
逸失利益(いっしつりえき)とは、交通事故などによって後遺障害が残ったり死亡したりしなければ、
将来にわたって本来得られたはずの収入や利益のことを指します。
現実として事故に遭ってしまっているわけですから、
逸失利益というのは事故に遭わなかった将来=フィクションを前提とした考え方になります。
だからこそ、実現可能性が高い将来であったということを立証することが、逸失利益請求のポイントになります。
逸失利益の重要性
逸失利益は損害賠償金全体の中でも大きな割合を占めることが多く、
特に重度の後遺障害が残ってしまったケースや、被害者が死亡してしまったケースなどは、億単位の金額になることがあります。
逸失利益は事故後の被害者本人やご家族の生活に対する経済的な支援になりますから、
適切な基準に従って漏れのない計算をすることが求められます。
後遺障害と逸失利益の関係

後遺障害とは?
後遺障害とは、交通事故などにより身体または精神に残ってしまった障害を指します。
交通事故に遭い、怪我を負うと治療が必要になります。
もちろん急性期と呼ばれる事故直後の状態から、治療を続けていく中で一定程度の回復がみられることと思いますが、
これ以上治療を続けても良くならないというような状態に至ってしまうことがあります。
この状態を症状固定と言い、この症状固定の時点で残っている症状を後遺障害(後遺症)といいます。
この後遺障害は、原則として将来にわたって残り続けるものという理解がされます。
後遺障害等級と逸失利益
逸失利益は「本来得られるはずであったのに、後遺障害が残ってしまったことで得られなくなった利益」を言いますから、
形態にかかわらず、被害者が労働している場合を前提としています。
|
では同じ骨折をして、同じような後遺症が残ってしまったからといって、 それぞれの被害者の労働に同じような支障が出るでしょうか? |
従事している職種や業務、労働形態などによって千差万別なはずです。
他方で、逸失利益の計算に何らの基準もないということになると、
判断者によって金額が大きく変わるということになり、被害者に不利益が生じるリスクも大きくなります。
こういった不利益を避けるために、実務上、同様の後遺障害が残ってしまった人については、
同一の後遺障害等級を定め、ある程度画一的に労働における支障を想定する運用が行われています。
後述するように、逸失利益の計算には労働能力喪失率というものが影響を与え、
この労働能力喪失率が、原則として後遺障害等級によって決まる、というかたちです。
逸失利益の計算方法

後遺障害逸失利益の計算式は以下のとおりです。
| 後遺障害逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数) |
以下では、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)(いわゆる「赤い本」)を参考にしつつ、各要素を詳しく解説します。
基礎収入の求め方
基礎収入とは、逸失利益の計算にあたってまさに基礎となる収入のことです。
繰り返しますが、逸失利益というのはその人が将来にわたって本来得られるはずであったのに、交通事故に遭ってしまったことで得られなくなった利益をいいますから、
「本来得られるはずであった」というためには、これだけの金銭を稼ぐ能力があった、ということを示す必要があります。
それが基礎収入であり、原則として事故前の現実収入が基礎とされます。
事故前にその収入を得ていた人は、その後事故に遭わなければ同じ程度の収入を得ていたという予測ができるからです。
具体的な計算や立証の方法は被害者の属性によって異なります。
ここでは簡単に触れたうえで後ほど具体例を挙げながら解説します。
- 給与所得者(会社員・公務員など) 原則として事故前年の源泉徴収票記載の「支払金額」(総支給額)を用います。
- 自営業者・個人事業主 事故前年度の確定申告書記載の所得金額(収入から必要経費を控除した額)を基礎とします。
- 専業主婦・主夫 実収入がない場合でも逸失利益は認められます。基礎収入は、厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)の女性学歴計全年齢平均賃金を用います。兼業主婦・兼業主夫の場合は、実収入と平均賃金のいずれか高い方を採用します。
- 学生・未成年者 将来の就労収入が基準となるため、原則として賃金センサスの男女別・学歴計全年齢平均賃金を用います。大学進学の蓋然性が高い場合は大学卒の平均賃金を採用することもあります。
労働能力喪失率の計算
労働能力喪失率とは、後遺障害が残ってしまったことによる働きにくさ、失われてしまった労働能力の割合をいいます。
実務上の運用としては、労働省労働基準局長通牒(昭32.7.2基発第551号)別表「労働能力喪失率表」を参照しつつ、
認定された後遺障害等級に応じた率を画一的に採用することが多いです。
ただし、先述のように、被害者の方の事故前の職業、年齢、性別等により、同じ後遺症が残った場合であっても、労働能力を喪失した割合が大きいこともあり得ます。
このような場合には、個別具体的な事情に基づいた正確な主張により、労働能力喪失率が原則より大きく認められ、逸失利益の額が上がることがあります。
例えば大阪地方裁判所平成23年4月26日判決(判例時報2118号60頁)では、
交通事故により左肩関節機能障害(後遺障害等級第10級10号)、脊柱変形(後遺障害等級第11級7号)、併合9級の後遺障害が残ってしまった歯科勤務医(症状固定時40歳の男性)につき、
左肩の関節機能障害及び痛みによって、左手で患歯の固定が行えず、今後歯科医として稼働する可能性を閉ざされたというべきであるとして、
70%の労働能力喪失率(労働能力喪失率表では9級の場合は原則35%)が認められています。
労働能力喪失期間の設定
労働能力喪失期間とは、文字どおり事故によって負った後遺障害のせいで労働能力を喪失したと認められる期間です。
労働能力喪失期間は原則として症状固定時から67歳まで
労働能力喪失期間の終期は原則として67歳とされています。
平均余命の2分の1を用いるケース
症状固定時の年齢が67歳を超えているが、働いていた方の場合、
原則に従うと労働能力喪失期間が0年となってしまうため、逸失利益の額も0円になってしまいます。
このような事態を避けるために、症状固定時の年齢が67歳を超える場合には、簡易生命表(厚生労働省ホームページより)をもとに、
症状固定時の年齢の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。
また、症状固定時の年齢から67歳までの期間と平均余命の2分の1とを比べた時に、
平均余命の2分の1の方が長い場合にも、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間として用いることになります。
概ね50歳以降の方が対象になる可能性がありますので、計算してみることをお勧めします。
むちうち症の場合の例外
ところで、赤い本においては、労働能力喪失期間について、
「むち打ち症の場合は、12級で10年程度、14級で5年程度に制限する例が多く見られる」という記述があります。
むち打ち症(頚椎捻挫・腰椎捻挫など)の場合には、
- 後遺障害等級第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
- 後遺障害等級第14級9号「局部に神経症状を残すもの」
に該当する可能性があります。
なぜむち打ち症の場合には労働能力喪失期間が制限される例がみられるかというと、
様々な裁判例上で指摘されていることとしては、「相当期間の経過による馴化」です。
つまり、「慣れ」です。
むち打ち症によって残ってしまう症状は痛みやしびれが主なものですが、
そういった痛みやしびれを抱えた状態の生活に慣れることで、次第に後遺症が労働能力に与える影響が小さくなるという考え方です。
他方で、労働能力喪失期間の考え方の原則は67歳までですから、むち打ち症=12級なら10年、14級なら5年、と安易に考えてよいものでもありません。
実際に赤い本においても、「後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断すべきである。」とされています。
保険会社担当者の中には、上のようにむち打ち症=12級なら10年、14級なら5年と考えていたり、
そもそもむち打ち症に限らず12級なら10年、14級なら5年と覚えている担当者もいます。
こういった担当と当たってしまった場合には、弁護士に相談などをしながら、
適切な労働能力喪失期間の主張をしていくことが求められます。
ライプニッツ係数の使用方法
最後に、「ライプニッツ係数」を使用して逸失利益を最終的に計算します。ライプニッツ係数とは、将来の収入を現在価値に引き直すための係数です。
例えば事故時30歳の方(年収500万円)が交通事故に遭った場合を考えてみます。
この方は交通事故で腕を骨折して痛みを残してしまい、後遺障害等級第12級13号の認定を受けました。
後遺障害等級第12級の労働能力喪失率は14%ですから、
逸失利益の請求をした場合、
- 31歳のときに発生するであろう逸失利益(500万円×14%=70万円)
- 32歳のときに発生するであろう逸失利益(500万円×14%=70万円)
- ・・・
- 66歳の時に発生するであろう逸失利益(500万円×14%=70万円)
- 67歳の時に発生するであろう逸失利益(500万円×14%=70万円)
を支払ってもらうことになります。
損害賠償金の支払いは一時金が原則とされています。
そうすると、67歳の時に発生するであろう逸失利益の70万円に関しては、本来であれば37年後にもらうはずだった70万円を今もらうということになります。
この70万円を銀行に預けておくと民法所定の利率3%で利息が付きます。
今70万円のものを年利3%で37年間運用すると、67歳になった時には70万円より多くなってしまいます。
これは被害者側に発生した損害を超えて利益が生じてしまいますから、67歳になった時にちょうど70万円になるように調整する必要があります。
この調整のために用いられるのがライプニッツ係数です。
18歳未満の未就労者への対応
症状固定時に18歳未満の場合、就労開始年齢を18歳と想定します。
そうすると、症状固定時の年齢から18歳までのライプニッツ係数を差し引く必要があります。
(例)15歳男子の逸失利益
基礎収入610万7000円(令和7年賃金センサスより男性学歴計全年齢平均)×5%(後遺障害等級第14級)×23.3376(15歳から67歳までのライプニッツ係数26.1662-15歳から18歳までのライプニッツ係数2.8286)=712万6136円
後遺障害の場合の目安・早見表
男性の場合
令和7年賃金センサスより、男性・学歴計・全年齢平均賃金である610万7000円を基礎収入とした場合の年齢層別逸失利益の早見表がこちらです。

女性の場合
令和7年賃金センサスより女性・学歴計・全年齢平均賃金である437万0700円を基礎収入とした場合の年齢層別逸失利益の早見表がこちらです。

※これはあくまで目安であり、むち打ち症の場合など、個別具体的な事情によって金額は大きく変動します。
ご自身の逸失利益額について疑問をお抱えの方は、弁護士に直接ご相談されることをお勧めします。
死亡逸失利益の場合の計算方法

被害者が死亡した場合の逸失利益(死亡逸失利益)の計算式は以下のとおりです。
| 死亡逸失利益 = 基礎収入 × (1 − 生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 |
基礎収入
後遺障害逸失利益と同様に、事故前1年間の収入を原則として用います。
- 給与所得者(会社員・公務員など) 原則として事故前年の源泉徴収票記載の「支払金額」(総支給額)を用います。
- 自営業者・個人事業主 事故前年度の確定申告書記載の所得金額(収入から必要経費を控除した額)を基礎とします。
- 専業主婦・主夫 実収入がない場合でも逸失利益は認められます。基礎収入は、厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」(賃金センサス)の女性学歴計全年齢平均賃金を用います。兼業主婦・兼業主夫の場合は、実収入と平均賃金のいずれか高い方を採用します。
- 学生・未成年者 将来の就労収入が基準となるため、原則として賃金センサスの男女別・学歴計全年齢平均賃金を用います。大学進学の蓋然性が高い場合は大学卒の平均賃金を採用することもあります。
生活費控除率
生活費控除率とは、読んで字のとおり、死亡逸失利益の計算において生活費を控除する割合です。
逸失利益とは簡単に言えば、事故に遭ってしまったことにより本来得られるはずであったのに得られなくなった収入のことですから、
「事故前の年収×事故後働くはずだった年数」が最も原始的な計算方法になるはずです。
ところが、事故により被害者が死亡してしまうような死亡事故の場合は、
事故に遭わなければ本来消費していたはずの生活費も、今後消費しなくなるということになります。
これを考慮せずに逸失利益を計算してしまうと、実態に則しておらず、被害者側が少なくとも金銭の面だけみれば得をしているという話になる可能性があります。
生活費控除率とは、被害者が事故に遭わなければ費消していたであろう生活費を、死亡逸失利益の計算の際に控除するための率ということになります。
原則的に設定されている生活費控除率は以下のようになります。
| 男性(独身、幼児等を含む) | 生活費控除率50% |
| 被扶養者が1人の一家の支柱 | 生活費控除率40% |
| 被扶養者が2人の一家の支柱 | 生活費控除率30% |
| 女性(主婦・独身・幼児等を含む) | 生活費控除率30% |
就労可能年数・ライプニッツ係数
就労可能年数の基本的な考え方は後遺症逸失利益における労働能力喪失期間と同じです。
原則として死亡時から67歳まで、死亡時既に67歳以上であるケースや、67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなるケースは、平均余命の2分の1となります。
なお、死亡逸失利益特有の事由として、年金があります。
年金は事故に遭わず生きていれば、寿命などでお亡くなりになるまでもらえるはずであったのに、事故に遭ってお亡くなりになってしまうとそこで支給が停止されてしまいます。
これは逸失利益として評価できるため、年金についても死亡逸失利益として請求ができるわけですが、
この年金部分については、就労可能年数というよりも、平均余命がそのまま死亡逸失利益の計算に用いられることになります。
【パターン別】逸失利益の計算例

被害者に後遺障害が残った場合
ケース①:会社員・50歳男性・後遺障害8級(年収600万円)
- 基礎収入:600万円
- 労働能力喪失率:45%(8級)
- 労働能力喪失期間:67−50=17年
- ライプニッツ係数:10.6350
この方の逸失利益の額は、
600万円×45%×10.6350=2871万4500円
となります。
ケース②:会社員・35歳女性・後遺障害12級(年収420万円)
- 基礎収入:420万円
- 労働能力喪失率:14%(12級)
- 労働能力喪失期間:10年(むち打ち症のため)
- ライプニッツ係数:8.5302
この方の逸失利益の額は、
420万円 × 14% × 8.5302 = 501万5758円
となります。
ケース③:専業主婦・50歳・後遺障害10級
- 基礎収入:賃金センサス女性学歴計全年齢平均賃金(令和7年)437万0700円
- 労働能力喪失率:27%(10級)
- 労働能力喪失期間:17年
- ライプニッツ係数:13.1661(17年)
この方の逸失利益の額は、
404万円 × 27% × 13.1661 = 1553万7170円
となります。
被害者が死亡した場合
ケース①:会社員・40歳男性・妻・子2人あり(年収550万円)
- 基礎収入:550万円
- 生活費控除率:30%(一家の支柱)
- 就労可能年数:27年
- ライプニッツ係数:18.3270(27年)
この方の逸失利益は、
550万円 × (1-30%) × 18.3270 = 7055万8950円
となります。
ケース②:自営業者・50歳男性・独身(年間所得800万円)
- 基礎収入:800万円
- 生活費控除率:50%
- 就労可能年数:17年
- ライプニッツ係数:13.1661(17年)
この方の逸失利益は、
800万円×(1-50%)×13.1661=5266万4400円
となります。
【職業別】逸失利益の計算例

会社員の場合
会社員の場合、基礎収入は事故前年度の給与収入から算出されます。
まず、1年あたりの給与収入を確認し、それを基に逸失利益の計算を行います。
具体的には、1年あたりの基礎収入に労働能力喪失率を掛け、それにライプニッツ係数を掛けることで逸失利益が算出されます。
具体例:会社員・40歳男性・妻・子2人あり(年収550万円)が亡くなってしまった場合
- 基礎収入:550万円
- 生活費控除率:30%(一家の支柱)
- 就労可能年数:27年
- ライプニッツ係数:18.3270(27年)
この方の逸失利益は、
550万円 × (1-30%) × 18.3270 = 7055万8950円
となります。
自営業者の場合
自営業者の場合、基礎収入の算出が少し異なります。
自己申告収入や財務書類を基に、事故前年度の収入から1年あたりの基礎収入(所得)を計算します。
会社員と同様に、基礎収入に労働能力喪失率とライプニッツ係数を掛け算することで逸失利益を求めます。
自営業者の場合、収入の変動が大きいことが多いため、過去数年分の収入を平均して計算することも多いです。
また、被害者本人の事故後も従業員等により営業が継続しているような場合には、本人の寄与度が考慮される場合もあります。
具体例:自営業者・50歳男性・独身(年間所得800万円)が亡くなってしまった場合
- 基礎収入:800万円
- 生活費控除率:50%
- 就労可能年数:17年
- ライプニッツ係数:13.1661(17年)
この方の逸失利益は、
800万円×(1-50%)×13.1661=5266万4400円
となります。
専業主婦・主夫の場合
専業主婦・主夫の場合も逸失利益を請求することができます。基礎収入は、厚生労働省が発表する賃金センサスから、
学歴計女性全年齢平均の平均賃金を基にすることとなっています。この金額に労働能力喪失率とライプニッツ係数を掛けて逸失利益を計算します。
いわゆる兼業主婦(兼業主夫)のような方の場合には、労働による収入と、先述の平均賃金のどちらか高い方を基礎収入として採用することとなっています。
具体例:専業主婦・50歳が後遺障害10級に該当する後遺症が残ってしまった場合
- 基礎収入:賃金センサス女性学歴計全年齢平均賃金(令和7年)437万0700円
- 労働能力喪失率:27%(10級)
- 労働能力喪失期間:17年
- ライプニッツ係数:13.1661(17年)
この方の逸失利益の額は、
404万円 × 27% × 13.1661 = 1553万7170円
となります。
学生・未成年の場合
学生や未成年の場合、将来の収入が基準となるため、計算が難しくなります。
基礎収入は、将来就く可能性の高い職業やその職業で得られる予測し、算出されます。したがって学歴や現在の成績、希望する職業なども考慮されることがあります。
この際に、予測収入として用いるのが、同じ学歴や同じ職業の方の平均賃金(賃金センサス)です。
具体例:20歳(男子・大学生)が後遺障害等級第5級に該当する後遺症が残ってしまった場合
- 基礎収入:賃金センサス男性大卒全年齢平均賃金(令和7年)710万1600円
- 労働能力喪失率:79%(5級)
- 労働能力喪失期間:22歳から67歳までの45年間
- ライプニッツ係数:23.1112(20歳から67歳までの47年間のライプニッツ係数25.0247-20歳から22歳までの2年間のライプニッツ係数1.9135)
この方の逸失利益の額は、
710万1600円×79%×23.1112=1億2965万9933円
となります。
逸失利益の請求の流れ
後遺症による逸失利益を請求する手続きは、概ね以下の流れで進みます。
治療・通院の継続
事故後は適切な医療機関で継続して治療を受け、症状・治療経過を記録します。
適切な治療を受けていないと、「本当に症状が残っているのか?」という疑念が生じる可能性があるので、通院はきちんと行いましょう。
症状固定の判断(後遺障害診断書の作成)
主治医が「症状固定」と判断した後、後遺障害診断書を作成してもらいます。
交通事故において後遺障害等級の認定を行ってくれる機関は、自賠責損害調査事務所になりますが、
この自賠責損害調査事務所における後遺障害等級の審査は、後遺障害診断書などをはじめとする書面審査です。
したがって、後遺障害診断書は後遺障害等級の認定に直結するといっても過言ではありません。
残存する症状が、後遺障害等級認定のポイントに沿って適切に診断書に記載されているかを確認する必要がありますので、
損害賠償請求を専門とする弁護士に確認してみることをお勧めします。
後遺障害等級の認定申請
後遺障害診断書をはじめとする必要書類を自賠責保険会社に提出し、そこから自賠責損害調査事務所へ送られて審査が行われます。
申請方法には、被害者が自ら手続を行う「被害者請求」と、加害者の任意保険会社が手続を代行する「事前認定」の2種類があります。
事前認定は被害者側が動く必要がなく、手間がかからないというメリットはありますが、
加害者側の任意保険会社に手続を代行してもらうということは、認定された後遺障害等級に応じて保険金を支払うことになる相手に代行してもらうということです。
つまり、任意保険会社としてはできるだけ低い等級がついてほしいわけですから、
被害者に不利な意見書を添付するなどして、適切な後遺障害等級の認定可能性を下げてくることもあり得ます。
提出書類の吟味を行うためにも、必ず被害者請求を行いましょう。
損害賠償請求を専門とする弁護士に確認し、提出書類についてサポートを受けることも有用です。
等級認定結果の受領・検討
申請から概ね3か月で等級認定結果が返ってきます。
一度目の申請で適切な後遺障害等級の認定が得られるに越したことはありませんが、
認定結果に不服がある場合には、
- 異議申立て
- 自賠責保険・共済紛争処理機構への申請
- 訴訟
といった手続により、適切な後遺障害等級の認定を目指すことができます。
ただし、いずれの方法も時間がかかります。
泣き寝入りというわけではないですが、ご自身のお身体の状態や時間、費用、主治医の見解、弁護士のアドバイスなどをよく考えながら、
示談交渉へ進むというルートもあり得ます。
加害者側の任意保険会社との示談交渉
認定を受けた後遺障害等級に基づき、逸失利益・慰謝料・その他損害の全項目について示談交渉を行います。
逸失利益の計算にあたっては、赤い本のルールに基づいているかを確認するのはもちろんのこと、
ご自身の従事する業務や、それにおける支障などを踏まえ、適切な金額かどうかをしっかり確認しましょう。
納得がいかない場合には弁護士への相談をお勧めします。
示談成立または訴訟提起
交渉で合意が成立した場合、示談書に署名・捺印して賠償金を受け取ります。
一度署名・捺印してしまうと原則として覆すことはできません。
納得がいかない場合には、署名する前に弁護士に相談しましょう。
合意に至らない場合は、裁判所への訴訟提起などを検討することになります。
後遺障害認定と逸失利益増額のポイント

後遺障害認定の重要性
例えば事故前のご年収が500万円の30歳男性が、交通事故に遭い、右手首を骨折してしまったとします。
男性は懸命にリハビリを行いましたが、手首の可動域角度に制限が残ってしまいました。
手首の可動域制限が残ってしまった場合に考えられる基本的な後遺障害等級は、
- 第8級6号「1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」
- 第10級10号「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」
- 第12級6号「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」
の3つです。
それぞれの後遺障害等級に定められている労働能力喪失率は、
- 第8級:45%
- 第10級:27%
- 第12級:14%
です。
それぞれの後遺障害が認定された場合の逸失利益の額は、
- 第8級の場合の逸失利益:500万円×45%×22.1672(37年間のライプニッツ係数)=4987万6200円
- 第10級の場合の逸失利益:500万円×27%×22.1672(37年間のライプニッツ係数)=2992万5720円
- 第12級の場合の逸失利益:500万円×14%×22.1672(37年間のライプニッツ係数)=1551万7040円
と、千万単位で金額に差が生じているのがお分かりいただけると思います。
残ってしまった後遺障害が同じでも、
認定される後遺障害等級が異なると、受け取れる逸失利益、賠償金額に大きな差が生じてしまいます。
だからこそ、適切な後遺障害等級の認定が受けられるようにすべきであって、
そのためには治療期間中から専門弁護士のアドバイスを受けることが有用になります。
- 治療期間中、継続して医療機関に通院し、症状を医師に伝え続けること
- MRI・CT・神経学的検査など、後遺障害の存在を客観的に示す検査を適切に受けること
- 後遺障害診断書の内容が実態を正確に反映しているかを確認すること
などをはじめ、しっかりとアドバイスを受けながら通院を継続しましょう。
遅くとも、後遺障害診断書の作成時点で弁護士のアドバイスを受けておくと安心です。
逸失利益増額のための注意点
逸失利益を増額するためには、いくつかの注意点があります。
まず、基礎収入を正確に算出することが重要です。基礎収入は事故前年度の収入を基に計算されるため、源泉徴収票や確定申告書などの適切な書類を準備しましょう。
次に、労働能力喪失率と労働能力喪失期間を正確に見積もることが必要です。
このためには、後遺障害等級に応じた具体的な数値を参照し、適切に計算することが求められます。
さらに、逸失利益の請求に関しては弁護士を活用することも有効です。
専門家のアドバイスを受けることで、請求手続きがスムーズに進むだけでなく、正確な計算方法を用いた適切な額の逸失利益を請求することができます。
これらのポイントを押さえた上で、後遺障害に伴う逸失利益の正確な計算を行い、適切な補償を得ることが大切です。
逸失利益が認められないケース

逸失利益が認められない、または大幅に制限されるケースとして、以下のものが挙げられます。
① 後遺障害等級が認定されなかった場合
後遺障害として認定されなければ(「非該当」の場合)、少なくとも示談交渉の場では後遺症逸失利益を請求することはできないと考えた方が良いでしょう。
裁判になった場合には、一部後遺症慰謝料として斟酌される可能性はありますが、なかなか難しいのが実情です。
やはり、後遺障害等級の認定を得られること(裁判においては後遺症の残存を認めてもらうこと)は重要になります。
② 後遺障害が労働能力の喪失を伴わない場合
大きな議論となるのが、醜状障害と呼ばれる後遺障害です。
醜状障害は、顔面部などに傷痕が残ってしまうことを言います。
もちろん、被害者本人としては非常に心を痛める出来事ですし、
後遺障害等級にも定めがあるわけですから、後遺障害となることは争いありません。
しかしながら、腕を切断してしまった場合に労働能力を喪失するであろうことは容易に想像がつきますが、
顔に傷がついたから仕事ができなくなった、というのは必ずしもそうというわけではありません。
ですから、このような場合には逸失利益の発生が否定ないしその額が減縮されることがあります。
脊柱の変形障害・その他体幹骨の変形障害・歯牙障害なども同様の争いがされることがあります。
このようなケースだと、実際に被害者が事故後どのような苦労をしているかなどを丁寧に立証することが求められます。
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③ 収入が現に減少していない場合
公務員の方であったり、事故後も就労を続けていて収入の減少がなかったりする場合も、
後遺症が残ってしまって、働きにくさが残っていたとしても、現に収入が減少していないのだから逸失利益は発生しない、と捉えられることがあります。
このような場合には、本人の努力や周りの配慮により収入減が抑えられていることや、
転職や昇給・昇進にあたっては不利益が生じているということを証明することで、逸失利益の請求が認められることがあります。
④ 時効(消滅時効)が完成している場合
交通事故の損害賠償請求権には消滅時効があります。
民法第724条の2により、人身損害については事故(または損害および加害者を知った時)から5年で時効が完成します。
時効が完成した後に加害者側が時効を援用(主張)した場合、逸失利益を含む損害賠償金の請求ができなくなる可能性があります。
| 民法第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 |
| 民法第724条の2
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。 |
逸失利益を請求する際の注意点

保険会社からの提示金額を鵜呑みにしない
加害者側の任意保険会社が被害者に提示する逸失利益の金額は、任意保険基準に基づいて算出されるものです。
任意保険基準は、弁護士(裁判所)基準と比べて低額に設定されることが一般的です。
- 労働能力喪失率を低く見積もる
- 労働能力喪失期間を短縮する
- 基礎収入の捉え方を被害者に不利に解釈する
などの方法で提示額が不当に下げられているケースがあります。
示談書に一度署名・捺印してしまうと、原則として再交渉や増額請求ができなくなります。
提示を受けた段階で必ず弁護士に相談し、内容の妥当性を確認することが重要です。
後遺障害等級の認定は慎重に進める
逸失利益の計算における労働能力喪失率が、後遺障害等級に応じて決定されるため、
後遺障害等級の認定が逸失利益、ひいては賠償額全体に大きな影響を及ぼすことはこれまで見てきたとおりです。
だからこそ、後遺障害等級の認定は慎重に進めましょう。
加害者の任意保険会社を通じた「事前認定」の方法では、被害者側からは申請書類を見ることができず、不利に働く可能性があります。
被害者側が直接自賠責保険会社に申請する「被害者請求」の方法を選択することで、提出資料を自ら確認し、適切な等級認定を受けやすくなります。
等級認定結果に不服がある場合には、
- 異議申立て
- 紛争処理申請
- 訴訟
などの方法が考えられますが、いずれも後遺症を専門としている弁護士でないと良い結果に期待することは難しいでしょう。
時効期間を考慮する必要がある
前述のとおり、交通事故による人身損害の損害賠償請求権の消滅時効期間は5年です(民法第724条の2、民法第166条1項)。
重篤な後遺障害の場合、症状固定まで1年以上を要するケースもあります。
治療に専念する一方で、時効完成の時期を意識し、早期に弁護士へ相談することが重要です。
逸失利益の請求を弁護士に依頼するメリット

逸失利益以外の損害賠償対応も行ってくれる
弁護士に依頼することで、逸失利益のみならず、
- 治療費
- 通院交通費
- 入院雑費
- 装具費用
- 休業損害
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
など、すべての損害項目について漏れなく適正額を請求することができます。
重篤な後遺障害が残るケースだと、
- 入通院付添費
- 将来介護費
- 将来治療費
なども発生することがあります。
こういった費目は、介護や治療の必要性を、現場を見てもらうなどして立証することが効果的で、
精力的に動いてくれる弁護士に依頼することが重要になります。
後遺障害等級認定に向けた支援を受けられる
弁護士は、後遺障害診断書の内容確認・必要な検査についての助言・被害者請求の手続サポートを行います。
症状に即した適正な等級認定を得るために必要な資料の収集・整理・提出を専門家の視点でサポートしてもらえるため、
認定率・認定等級の向上が期待できます。等級認定の結果は逸失利益の金額に直結するため、このサポートは非常に重要です。
弁護士基準での適正額を請求できる
弁護士に依頼することで、任意保険基準よりも高額な弁護士基準(裁判基準)での賠償金請求が可能となります。
後遺障害慰謝料・逸失利益いずれについても、
弁護士基準は自賠責基準・任意保険基準を大きく上回ることがほとんどで、
弁護士費用を差し引いても最終的に被害者が受け取れる賠償金額が増加するケースは非常に多くあります。
また、弁護士費用特約が利用できる場合だと、費用負担0で弁護士に依頼し、増額だけを享受すること可能なことが多いです。
交渉や訴訟対応を任せられる
逸失利益は計算方法が複雑なうえ、保険会社との間で基礎収入・労働能力喪失率・喪失期間について争いとなることが少なくありません。
弁護士に依頼することで、法的根拠に基づく主張・立証・交渉のすべてを任せることができます。
交渉が決裂した場合の訴訟対応も、弁護士が一貫してサポートをしてくれます。
逸失利益の増額が認められた事例(当事務所)

以下は弁護士の介入により逸失利益の増額が認められた事例の一部になります。
- 自賠責保険が非該当と判断した後遺症について弁護士の異議申立てにより後遺障害等級1級を獲得 裁判にて1億4000万円の賠償金を獲得した事例
- 高次脳機能障害について事前認定12級に対し異議申立てで5級を獲得 300万円の提示を7500万円まで増額させた事例
- 後遺障害診断書の訂正を行い醜状障害について後遺障害等級第12級14号を獲得 労働能力喪失率14%で20年の逸失利益など合計1200万円の賠償を認めさせた事例
- 被害者請求で非該当とされたものの異議申立てにより後遺障害等級第14級を獲得 事故後に退職していたが、退職前給与で逸失利益を獲得した事例
- 異議申立てにより後遺障害等級第14級9号を獲得し、裁判基準満額の示談解決をした事例
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、後遺症を専門とした弁護士によるサポートで、
逸失利益をはじめ賠償金を増額させた事例が数多くございますので、
お困りごとをお抱えの方は、ぜひご相談くださいませ。
逸失利益の計算方法に関するよくある質問

逸失利益はなぜ67歳までなのですか?
A. 日本における就労可能年齢の終期として、実務上67歳が基準とされているためです。
これは、もともと逸失利益の計算方法を考えるにあたり、就労可能年限をいつにすべきかという問題が生じました。
これを解決するために、当時の0歳の男子の平均余命が67.74歳であったことから、ひとまずこれを就労可能年限としたという背景があります。
これはもちろん当時のことであって、現代社会の実情を正確に反映しているわけではないこともあります。
ですから、たとえば、医師・弁護士・経営者など高齢まで就労が一般的な職種では、67歳以降の喪失分が認められるケースもあります。
。
逸失利益は誰が払うのですか?
A. 逸失利益は、交通事故の加害者が支払うべき損害賠償金の一部です。
実務上は、加害者が加入している任意保険会社が交渉・支払いを行うことがほとんどです。
自賠責基準や任意保険基準では被害者にとって適切な逸失利益が支払われることは少なく、
弁護士によるサポートが必要になります。
無職でも逸失利益は認められますか?
A. 状況によっては認められます。
求職中であった場合(失業者)には、
就労の意欲・能力があり、近い将来就労する可能性が高いと認められれば、
賃金センサスを用いた逸失利益が認められることがあります。
一方、就労意欲・能力がない場合や、重篤な病気・障害によって事故前から就労不能であった場合には、逸失利益が認められないことがあります。
無職の方でも、個別の事情によって逸失利益の認定に差が出るため、早期に弁護士に相談することをお勧めします。
【まとめ】逸失利益の計算方法について

逸失利益とは、交通事故により後遺障害が残ったり死亡したりしなければ将来得られたはずの収入・利益であり、損害賠償の中でも金額的に最も重要な費目の一つです。
後遺障害逸失利益の計算式
| 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 |
死亡逸失利益の計算式
| 基礎収入 × (1 − 生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 |
計算式自体は非常に明快かつ単純です。
ただし、実際に請求を行うとなると、フィクションの話ですから、的確な証拠とそれに基づく論理的な主張を行い、
「本来得られていたはず」「その利益がこれだけ喪失したのだ」と思わせなければなりません。
- 基礎収入は本当に事故前の年収をそのまま採用するだけで良いのか?
- 残ってしまった症状に見合う後遺障害等級の認定はされているか?
- 労働能力喪失率表どおりの労働能力喪失率で良いのか?
- 労働能力喪失期間は10年や5年に制限されて良いのか?
- 67歳以降も就労する可能性はないのか?
などの疑問について、一つ一つ個別具体的な事情を踏まえながら主張を組み立てていくことができるのは、
交通事故被害を専門とする弁護士だけです。
交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、損害賠償請求専門弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
逸失利益について疑問をお抱えの方はぜひお気軽にお問い合わせください。

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