死亡事故コラム

コラム

相続手続きの期限一覧 被害者の死亡後にやるべきことをスケジュールで解説

2026.09.04

相続

交通事故などで身内が亡くなってしまった直後は、深い悲しみの中で、葬儀の準備から始まり、行政手続きや遺産相続に関するさまざまな対応に追われることになります。

とはいえ、相続に関する手続の多くには期限が定められており、期限を過ぎてしまうと、選択できたはずの手段が使えなくなったり、ペナルティが科されたりすることがあります。

 

このページでは、死亡事故被害を専門としている弁護士が、相続に関する主な手続きを、期限が近いものから順にスケジュール形式で整理して解説します。

「何から手をつければよいかわからない」という方は、ぜひ参考にされてください。

 

交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通死亡事故被害専門を専門としている弁護士による無料相談を実施しております。

交通事故で大切な方を亡くされ、相続をはじめさまざまな手続についてお困りの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

交通死亡事故被害専門弁護士によるサポートの内容についてはこちら。

 

相続以外に死亡事故直後にやるべきことについてはこちらのページで解説しております。

 

相続手続きに期限があるのはなぜか

裁判の様子

相続に関する手続きに期限が設けられているのは、主に次のような理由によります。

  • 相続人や関係者の利害を早期に確定させるため(相続放棄・限定承認など)
  • 国や自治体の税収・行政事務を安定させるため(相続税の申告・納税など)
  • 不動産の権利関係を明確にし、社会的な問題を防ぐため(相続登記の義務化など)

 

期限を意識せずに手続きを進めてしまうと、後になって「もっと早く対応していれば選べた選択肢」を失ってしまうことがあります。

以下では、死亡後の時系列に沿って、主な手続きとその期限を整理します。

 

死亡直後から14日以内に行う手続

相続そのものとは別に、まず行う必要がある行政手続には、期限が短いものが多くあります(公益財団法人生命保険文化センターホームページ「家族が亡くなった場合、どのような手続きが必要?」を参照)

死亡診断書の受け取り、死亡届の提出 死亡の事実を知った日から7日以内
火葬許可申請  死亡届と同時に行うのが一般的
世帯主の変更届  死亡日から14日以内
健康保険・介護保険の資格喪失手続き  死亡日から14日以内(国民健康保険・後期高齢者医療の場合)
年金受給停止の手続き 厚生年金:死亡日から10日以内  国民年金:死亡日から14日以内

 

これらの手続きは相続手続きそのものではありませんが、後の相続手続きにも影響するため、早めに済ませておく必要があります。

また、公共料金や携帯電話などの名義変更・解約や、ネット回線やサブスクリプション、クレジットカードなどの解約も必要になります。

 

3か月以内:相続放棄・限定承認

被害者に多額の借金があった場合など、相続によって不利益を受けたくない場合には、「相続放棄」または「限定承認」の手続をとるかどうかを検討する必要があります。

 

相続放棄

相続放棄とは、文字どおり相続権を放棄することです。

この手続をとると、初めから相続人ではなかったものとして扱われるので、被害者のプラスの財産も、マイナスの財産も一切相続しないということになります。

 

民法939条相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

 

  • 被相続人に、プラスの財産よりも借金などの債務が多いことが明らかな場合
  • 被相続人が誰かの連帯保証人になっており、保証債務を引き継ぎたくない場合
  • 相続財産の調査が難しく、債務の有無がはっきりしないため、リスクを避けたい場合
  • 特定の相続人(配偶者や跡を継ぐ子など)に遺産を集中させたいため、他の相続人が財産を受け取らない意思を明確にしたい場合
  • 疎遠な親族の相続に関わりたくない、相続トラブルに巻き込まれたくない場合

 

等の場合には、相続放棄をすべきかどうかを検討した方が良いでしょう。

なお、相続放棄をした場合には次の相続順位の相続人に相続権が引き継がれるので、事前にその旨は伝えておいた方がトラブルの種になりません。

 

限定承認

限定承認とは、相続財産の範囲内でのみ債務を負担することができる制度です。

例えば相続によって得られる利益が1000万円、相続によって課せられる不利益(債務)が1200万円の場合、

限定承認を行っていれば、この利益1000万円の限度で債務を引き継ぐことになりますので、差額200万円については支払う義務がなくなります。

 

また、限定承認の場合には、例えば実家などのように、被害者が所有権を有していた、どうしても手放したくない財産があるようなケースで、

先買権を行使することができます。

 

このように、一見するとメリットが大きそうな限定承認ですが、相続放棄の場合と比べると、

  • 相続人全員の申述が必要になる
  • 財産目録の作成や、債権者に対する公告など、清算手続きが煩雑になる

など、手間が多くなるというデメリットがあります。

 

 

これらの手続きは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間)に、家庭裁判所に申述する必要があります。

財産・債務の調査に時間がかかり、期間内に判断ができない場合は、家庭裁判所に「期間伸長」の申立てを行うことで、期限を延ばせる場合があります。

 

熟慮期間を過ぎると、原則として「単純承認」(プラス・マイナスの財産をすべて相続する)をしたものとみなされてしまうため、

借金の有無が不明な場合は早めに調査を進めることが重要です。

 

 

4か月以内:準確定申告

被相続人が生前に一定の所得(事業所得、不動産所得、給与所得者で確定申告が必要な場合など)を得ていた場合、

相続人が代わりに所得税の申告・納税を行う必要があります。これを「準確定申告」といいます。

 

準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に対して行う必要があります。

相続人が複数いる場合は、原則として連署(または各自が同内容で申告)で提出します。

 

10か月以内:相続税の申告・納付

相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告・納付が必要になります。

申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

 

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、多くの控除・特例は、

この期限までに遺産分割が完了しており、相続税の申告書を提出することが適用の前提となっているため、期限内に遺産分割協議をまとめることが望ましいといえます。

 

1年以内:遺留分侵害額請求

遺言や生前贈与によって最低限の取り分(遺留分)を侵害された相続人は、財産を多く受け取った人に対して金銭の支払いを請求することができます(遺留分侵害額請求)。

 

この請求権には、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年という短い時効が定められています

(相続開始の時から10年が経過した場合も、知らなかったとしても請求できなくなります)。

 

遺言の内容に納得がいかない場合は、早めに内容を確認し、必要であれば時効完成前に請求の意思表示をしておくことが重要です。

また、当事者間で話し合いがつかない場合や話し合いができない場合には、家庭裁判所の調停手続を利用することができます。

 

民法1048条

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

 

3年以内:相続登記、生命保険金・自賠責保険金の請求など

相続開始から少し時間が経ってからの期限としては、次のようなものがあります。

 

相続登記の申請

2024年4月の法改正により、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されました。

正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。

 

不動産登記法第76条の2第1項

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

生命保険金(死亡保険金)の請求

生命保険金(死亡保険金)の請求権には、保険法上、原則として3年の消滅時効が定められています(保険会社の約款によって異なる場合があります)。

保険法95条

1 保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。

 

受取人が被害者ではなくあなたに指定されているような生命保険金は、相続財産になりませんから、あなた自身で受け取りの手続きを進めて受け取ることが可能です。

なお、保険の契約者などの組み合わせにより、相続税・所得税・贈与税のいずれかがかかることがあります。

 

自賠責保険金の請求

交通事故で被害者が亡くなってしまった場合、自賠責歩家への被害者請求の時効は、「死亡日の翌日から3年」です(国土交通省ホームページ自賠責保険・共済ポータルサイトより)。

加害者が任意保険に加入しているようなケースでは、後述するように5年の時効を気にすることになることが多いですが、

加害者が任意保険未加入である場合など、被害者請求を自身で行わなければいけないケースなどでは、時効を気にしておく必要があります。

 

自賠責保険金の請求にあたっては、交通事故証明書や死体検案書をはじめ、被害者本人の収入を表す資料や、相続関係を示す書類など、

様々な書類を集める必要があります。

 

時効完成が間近になって焦るよりも、十分な余裕をもって弁護士に相談し、手続きを進めてもらうのがお勧めです。

なお、時効完成が間近なケースでは、時効更新申請書を自賠責保険会社へ提出することで、時効の更新ができます。加害者が加入する自賠責保険に問い合わせてみることをお勧めします。

 

5年以内:損害賠償請求・遺族年金の請求など

被害者の方が亡くなってしまってから5年が経過すると、損害賠償請求や遺族年金の請求などについても時効が到来してしまいます。

損害賠償請求金や遺族年金は、遺されたご家族の方の今後の生活を支えていく重要なお金になりますから、

時効になってしまう前に請求を行いましょう。

 

交通事故被害を専門としている弁護士に相談することで、この点については手厚いサポートを受けながら進めることが可能です。

 

期限を過ぎた場合のリスク

相続手続きの期限を過ぎてしまった場合、次のようなリスクが生じる可能性があります。

相続放棄・限定承認 原則として単純承認したものとみなされ、借金も含めてすべて相続することになる
相続税の申告・納付 無申告加算税・延滞税等のペナルティが科され、各種特例が使えなくなる場合がある
遺留分侵害額請求  時効・除斥期間の経過により請求権そのものが消滅する
相続登記  10万円以下の過料の対象となる可能性がある
自賠責保険金・生命保険金・損害賠償・遺族年金などの請求 時効により請求権そのものが消滅する

 

このように、手続きによってリスクの内容は異なりますが、いずれも「知らなかった」では済まされないケースが多く、早めの対応が重要です。

 

手続きをスムーズに進めるためのポイント

多くの手続きを限られた期間内に進めるためには、次のような点を意識すると良いでしょう。

  • 相続財産・債務の全体像を早めに把握する:預貯金、不動産、有価証券、借金などをリストアップする
  • 戸籍謄本など必要書類の収集を早期に開始する:被相続人の出生から死亡までの戸籍収集には時間がかかることがあります
  • 専門家に役割分担を相談する:相続税は税理士、不動産登記は司法書士、遺産分割協議や紛争対応は弁護士など、専門家ごとに得意分野が異なります
  • 全体のスケジュールを一度整理する:どの手続きにどの期限があるかを一覧化しておくと、対応漏れを防げます

 

特に相続人が複数いる場合や、遺産分割で意見が対立しそうな場合は、早い段階で弁護士に相談し、全体のスケジュールを見据えたアドバイスを受けることをおすすめします。

まずは相続人間でしっかりと意思統一を図ってから損害賠償請求を行うことで、適切な賠償金が得られる可能性が高まります。

 

交通事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通死亡事故被害を専門としている弁護士による無料相談を実施しております。

交通事故で大切な方を亡くされ、お困りごとをお抱えの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

交通死亡事故被害専門弁護士へのお問い合わせはこちらのページから。

 

よくある質問

相続手続きの期限は、亡くなった日から数えるのですか?

多くの手続きは、「相続の開始があったことを知った日」を起算点としています。

通常は被相続人が亡くなった日と同じになりますが、離れて暮らしていて死亡の事実をすぐに知らなかった場合など、知った日が異なるケースもあります。

 

手続きが期限に間に合いそうにない場合、どうすればよいですか?

手続きによっては、期間の伸長や猶予が認められる制度があります(相続放棄の熟慮期間の伸長など)。

また、遺産分割が未了のまま相続税の申告期限を迎える場合は、いったん法定相続分で申告する方法もあります。

期限が迫っている場合は、自己判断で放置せず、早急に弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。