コラム
交通事故で死亡した被害者の遺族がすべき手続きは?加害者への損害賠償請求やその後について解説
2026.05.29

交通事故で突然大切なご家族を失った。
その怒りと悲しみは、言葉では到底言い表せないものだと思います。
そのような辛い気持ちの中で、亡くなった方の無念を少しでも晴らすために前を向き、このページを訪れてくださりありがとうございます。
交通死亡事故の遺族は、葬儀や行政手続きなど直後の対応に追われる一方で、
- 加害者への損害賠償請求
- 刑事裁判への参加
- 各種支援制度の利用申請
といった、
法的にも重要な手続きを進めていく必要があります。
「お金の問題じゃない」「早く終わらせたい」という気持ちは、多くの遺族が抱かれる自然な感情です。
しかしながら、加害者側の保険会社に言われるがままに示談書へ署名してしまうと、被害者やご遺族の方が本来受け取るべき正当な賠償を取り逃がすことになりかねません。
このページでは、交通事故で被害者が死亡した場合に遺族ができる損害賠償請求の範囲・相場・手続きの流れから、
示談交渉のポイント・利用できる支援制度・刑事手続きの流れまでを、交通死亡事故被害者側専門弁護士が順を追って解説します。
交通死亡事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、交通死亡事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による無料の法律相談を実施しております。
交通事故で大切な方を亡くされたご遺族の方々の一助となれるよう、誠心誠意尽力させていただきます。
交通死亡事故被害者側損害賠償請求専門弁護士への無料相談はこちらのページから。
交通事故の死亡事故で被害者の代わりに遺族は請求できる?

交通死亡事故では、被害者本人が亡くなっているため、自ら損害賠償を請求することができません。
では、遺族は泣き寝入りするしかないのでしょうか。そうではありません。
被害者の相続人(遺族)は、被害者に代わって、そして自分自身で加害者に対し損害賠償請求を行うことができます。
1 被害者の損害賠償請求権の相続
被害者には、交通事故による被害を受けた瞬間に、民法709条、自動車損害賠償保障法3条に基づき、加害者に対する損害賠償請求権が発生します。
| 民法709条
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」 |
| 自動車損害賠償保障法3条
「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。」 |
この損害賠償請求権は、被害者が亡くなった場合には相続人らに相続されることになります。
| 民法896条
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」 |
したがって、被害者本人に発生した損害(葬儀費用・死亡逸失利益・死亡慰謝料など)についても、
ご遺族が相続人の場合には請求が可能になります。
法定相続人の範囲は以下のような順位で決定されます。
上の順位に相続人となれる人がいない場合には、下の順位の人が相続人となります。
| 常に相続人 | 配偶者 |
| 第1順位 | 死亡した人の子供 |
| 第2順位 | 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など) |
| 第3順位 | 死亡した人の兄弟姉妹 |
2 遺族固有の慰謝料請求権
ところで、相続とは別に、被害者の、
- 父母
- 配偶者
- 子
には、固有の慰謝料請求権が認められています(民法第711条)。
| 民法711条
「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」 |
これは、大切な家族を突然失ったことによる精神的苦痛に対するものであり、相続人となるかにかかわらず請求ができます。
また、父母、配偶者及び子でなかった(例:兄弟姉妹)としても、大切な方を亡くされた場合には、
当然大きな精神的苦痛を受けるはずです。
それが民法上に規定されていないからといって、慰謝料の請求が認められない、となると不合理な気もします。
そこで、
最高裁判所第三小法廷昭和49年12月17日判決(民集28巻10号2040頁)では、上記の条件に当てはまる近親者と実質的に同等の関係にある者にも、近親者固有慰謝料請求権が認められています。
| 不法行為による生命侵害があつた場合、被害者の父母、配偶者及び子が加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうることは、民法七一一条が明文をもつて認めるところであるが、右規定はこれを限定的に解すべきものでなく、文言上同条に該当しない者であつても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰藉料を請求しうるものと解するのが、相当である。 |
民法711条に規定がない近親者の方の慰謝料請求を認めさせるために重要なのは、被害者と近親者との特別な関係性です。
例えば、同居しているといった、父母や子供と同視できるほどに、日常的に深く関わり合っている関係がある場合、慰謝料が認められる確率が高いです。
また、形式上の家族でなくとも、内縁の夫婦や長期間被害者を介護していた者など、特別な密接な関係が証明できる場合には、近親者慰謝料として認められることもあります。
大阪地方裁判所平成9年3月25日判決(交通事故民事裁判例集30巻2号470頁)では、約9年間事実上夫婦として暮らしていた相手を失った内縁配偶者について、
1000万円の近親者慰謝料が認められています。
大阪地方裁判所平成14年3月15日判決(交通事故民事裁判例集35巻2号366頁)では、妹と二人暮らしをしていた男性(61歳)が亡くなった交通事故について、
妹の固有慰謝料として300万円が認められています。
このように、被害者と近親者の方との間に密接な関係性があること、そしてそれを立証していくことが、近親者慰謝料を請求するうえで大きなポイントとなります。
交通事故の死亡事故で遺族が請求できる損害賠償の範囲

交通死亡事故の遺族が加害者に対して請求できる損害賠償は、大きく
- 死亡慰謝料
- 積極損害
- 消極損害
の3つに分類されます。
順に見ていきましょう。
相場についてはのちほど解説します。
なお、損害賠償金=慰謝料という認識の方は多くいらっしゃると思いますが、
慰謝料というのは精神的苦痛に対して支払われる金銭を指します。
損害賠償金は慰謝料+積極損害に対する賠償+消極損害に対する賠償をすべて含んだものなので、
慰謝料よりも広い概念です。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、被害者が交通事故で死亡したことによる精神的苦痛に対する賠償金です。
死亡慰謝料には以下の2種類があります。
被害者本人の慰謝料(相続分)
被害者本人は、交通事故により生命を奪われ、突然前途を絶たれ、未来を失い、
無念や憤りなど筆舌に尽くしがたいような苦痛を受けています。
被害者本人の死亡慰謝料の請求は当然に認められるべきであり、
その請求権は相続人に承継されることになります。
遺族固有の慰謝料
民法第711条に基づき、父母・配偶者・子に、
そして先ほど見たように、これに類するような関係性を持つ方に認められるものです。
大切な方を亡くしたという精神的苦痛についても慰謝料が認められなければなりません。
積極損害
積極損害とは、死亡事故の発生によって実際に支出を余儀なくされた費用に相当する損害です。
主に、
- お亡くなりになるまでの治療費・入院雑費
- 葬儀関係費用
- 近親者の駆け付け交通費
などが考えられます。
お亡くなりになるまでの治療費・入院雑費
交通事故被害に遭われた後、病院に救急搬送され、懸命の治療を受けたものの、
残念ながら亡くなってしまう、というケースがあります。
このようなケースでは、亡くなってしまうまでの病院での治療費や、入院にあたり支出した雑費などを、
加害者側に請求することが可能です。
葬儀関係費用
一般的に葬儀費用として損害賠償の対象として認められるものは以下のようなものがあります。
- 通夜・告別式費用: 祭壇代、斎場使用料、棺・骨壺代、遺影作製費など。
- 宗教者への謝礼: お布施、読経料、戒名料(法名料)など。
- 火葬・埋葬費用: 火葬料、納骨にかかる実費。
- 飲食・接待費: 通夜振る舞いや精進落としなどの飲食代(過度でないもの)。
- 供養・装飾費: 供花代、葬儀広告代、看板代など。
- 事務的費用: 死亡通知の郵送費、電話代、会葬御礼(粗供養)など。
- 遺体関連: 遺体の捜索費、処置費、搬送料(霊柩車、遠方からの搬送など)。
- 法要費用: 四十九日までの法要(初七日など)にかかる費用。
これらは、故人を弔うために必要不可欠と見なされ、賠償対象の範囲として認められることが多い項目です。
また、仏壇仏具の購入費や、墓碑の建立費などについても、最高裁判所第二小法廷昭和44年2月28日判決で、しっかりと加害者側に請求できることが認められています。
| 最高裁判所第二小法廷昭和44年2月28日判決「人が死亡した場合にその遺族が墓碑、仏壇等をもつてその霊をまつることは、わが国の習俗において通常必要とされることであるから、家族のため祭祀を主宰すべき立場にある者が、不法行為によつて死亡した家族のため墓碑を建設し、仏壇を購入したときは、そのために支出した費用は、不法行為によつて生じた損害でないとはいえない。死が何人も早晩免れえない運命であり、死者の霊をまつることが当然にその遺族の責務とされることではあつても、不法行為のさいに当該遺族がその費用の支出を余儀なくされることは、ひとえに不法行為によつて生じた事態であつて、この理は、墓碑建設、仏壇購入の費用とその他の葬儀費用とにおいて何ら区別するいわれがないものというべきである(大審院大正一三年(オ)第七一八号同年一二月二日判決、民集三巻五二二頁参照)。したがつて、前記の立場にある遺族が、墓碑建設、仏壇購入のため費用を支出した場合には、その支出が社会通念上相当と認められる限度において、不法行為により通常生ずべき損害として、その賠償を加害に対して請求することができるものと解するのが相当である。」 |
近親者の駆け付け交通費
ご家族が事故に遭い、病院に搬送されたとなれば、駆け付けるのは当たり前です。
その駆け付けに当たり要した費用についても、加害者側に請求ができます。
領収証を保管しておくに越したことはないですが、平常心を保てない状態で、
「損害賠償請求を行うにあたって領収証が大事だから保管しておくべき」というのも酷な話です。
その場合は、公共交通機関のルートやクレジットカードの支払い履歴などからの立証を行うことになります。
消極損害
消極損害とは、交通事故に遭わなければ将来にわたって得られたであろう利益を失ったという損害です。
死亡事故の場合には、基本的には死亡逸失利益というかたちで請求されます。
相続人が配偶者やお子様となるケースでは、
死亡逸失利益は、被害者の方が今後働いて得るはずであった収入、
つまりはご家族の生活を支えていくために得るはずであったお金になりますから、
低く算定されないよう適切な賠償を求めていく必要があります。
交通事故の死亡事故で遺族が請求できる損害賠償の相場

死亡慰謝料の相場
死亡慰謝料の算定には、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
の3種類があります。
1 自賠責基準
自賠責基準は、3つの基準の中で最も低額な基準であり、自賠責保険金の支払基準(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準)です。
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法に基づき、自動車の運行供用者に加入が義務付けられている強制保険です。
交通事故被害者に迅速かつ平等に支払がされるように、自賠責基準における慰謝料の計算は、画一的に行われる低額なものになるのが特徴です。
自賠責基準による死亡慰謝料は、請求権者の数や被扶養者の数によって決まります。
| 請求権者1名 | 死亡した本人の慰謝料400万円+550万円=950万円 |
| 請求権者2名 | 死亡した本人の慰謝料400万円+650万円=1050万円 |
| 請求権者3名以上 | 死亡した本人の慰謝料400万円+750万円=1150万円 |
| 被害者に被扶養者がいるとき | 上記金額に200万円を加算 |
自賠責の死亡保険金全体の支払限度額は3,000万円です。
2 任意保険基準
任意保険基準は、3つの基準の中で真ん中に位置する基準であり、文字どおり、任意保険会社が定める基準です。
任意保険は自賠責保険の上乗せとして存在する保険ですから、自賠責基準よりは高い金額になります。
しかし、任意保険会社は、支払う保険金額が低額であればあるほど、自社の利益が大きくなりますから、
任意保険基準に基づき計算される交通事故の慰謝料は、被害者側から見れば低額で不適切であることが多いです。
3 弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準(裁判基準)は、3つの基準の中で最も高額な基準です。
過去の裁判例の集積であるいわゆる赤い本『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)に定めのある基準です。
裁判で被害者側に支払われるべき慰謝料額ということで裁判所が決めた支払額をもとにした基準ですから、
当然被害者側にとっては最も適切(かつ高額)な基準ということになります。
弁護士基準における死亡慰謝料は、被害者の属性に応じて次のような目安が設定されています(近親者慰謝料を含む)。
| 被害者が一家の支柱である場合 | 2800万円 |
| 被害者が母親や、配偶者である場合 | 2500万円 |
| 被害者がその他(独身の男女、子供、幼児等)である場合 | 2000万円~2500万円 |
また、「具体的な斟酌事由により、増減されるべきで、一応の目安を示したものである。」という注意があります。
死亡慰謝料は近親者の方もそうですが、本来的にはお亡くなりになった被害者本人の精神的苦痛を評価したもののはずですから、
金額に差異があるのは少し違和感があるかもしれません。
この基準の1つ前の基準が示された時代の背景には、「昭和時代の家族構成のイメージを、『老夫婦、働き盛りの夫(一家の支柱)、主婦の妻(母親、配偶者)、子供』とし、
それぞれが死亡した場合に遺された家族・家計への影響を考え、人ひとりの価値に差があるものではなく、慰謝料の補完性の観点から差を設けるとの考え」
(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準下巻(講演録編)2014年版』慰謝料基準に関する慰謝料検討PT報告 より引用)がありました。
ところが、「人生を全うして生きてきた年齢の高い人と人生を享受することなく命を失った若年の人を同列には評価できないという点、
現在の核家族化のなかで子供を失った両親の悲嘆、精神的苦痛は極めて大きなものであることなどの点」から、
もちろん1つ前の基準同様に遺された家族・家計への影響は無視できないものの、子供を含む若年者の精神的苦痛がより評価されるようになり、
母親、配偶者及びその他の方の慰謝料基準が増額する形となりました。
昨今は現在の基準が示された2014年よりさらに共働きの家庭が増えていますから(厚生労働省 共働き等世帯数の年次推移より)、
そもそも一家の支柱と母親、配偶者を区別する基準がそのまま妥当しない時代に入っているのかもしれません。
このように、弁護士(裁判)基準は、注意書きのとおり言ってしまえば一応の目安にすぎず、時代に合わせた変化が必要なものでもあると思います。
だからこそ、具体的な斟酌事由(被害者の方お一人お一人の生前の生活)を適切に主張していくことで、金額は大きく変わります。
死亡逸失利益の相場と計算方法
死亡逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
| 死亡逸失利益 = 基礎収入 × (1− 生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 |
基礎収入
死亡逸失利益の計算における基礎収入は、被害者の方が将来にわたってどれだけの収入を得られる能力があったか、という話になります。
基本的には事故前年の収入を用いることが多いですが、
- 亡くなった方が家事従事者の場合:女性全労働者の平均賃金
- 亡くなった方が未成年者の場合:男女別全年齢の労働者の平均賃金
など、事故前年の収入が算定不能な場合に平均賃金を用いることもあります。
また、
- 亡くなった方が若年労働者の場合:男女別全年齢の労働者の平均賃金
など、今後の収入の増加が見込まれるケースでは、それを考慮して基礎収入を定めることもあります。
| 仙台地方裁判所平成20年2月27日判決(自保ジャーナル1761号8頁)では、
ホームセンターとコンビニエンスストアでアルバイトをしていた17歳男性が死亡した交通事故について、 就労意欲が認められ、その就労能力の向上も十分に見込まれる年齢であったとして、男性学歴計全年齢平均の542万7000円を、 死亡逸失利益算定の基礎収入として採用しています。 |
さらに、国民年金、老齢厚生年金の受給者の方が亡くなってしまった場合には、これらも基礎収入となります。
生活費控除率
事故により被害者が死亡してしまうような死亡事故の場合は、
事故に遭わなければ本来消費していたはずの生活費も、今後消費しなくなるということになります。
これを考慮せずに逸失利益を計算してしまうと、実態に則しておらず、被害者側が少なくとも金銭の面だけみれば得をしているという話になる可能性があります。
これを調整するために用いられるのが生活費控除率です。
生活費控除率の決定方法の大原則は、やはり生前の被害者の生活スタイルの反映です。
損害賠償請求実務において一般に支持されている、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)では、
「扶養」という点を前提に基準が設定されています。
被害者が誰かを扶養していた場合、収入の一部を自身だけでなく、その被扶養者の生活費にも充てていたはずです。
ということは、必然的に被扶養者がいない方に比べると、収入のうち、自身の生活費に充てていた額(割合)は小さくなるはずです。
といった考え方を前提に、原則的に設定されている生活費控除率は以下のようになります。
| 男性(独身、幼児等を含む) | 生活費控除率50% |
| 被扶養者が1人の一家の支柱 | 生活費控除率40% |
| 被扶養者が2人の一家の支柱 | 生活費控除率30% |
| 女性(主婦・独身・幼児等を含む) | 生活費控除率30% |
就労可能年数・ライプニッツ係数
死亡逸失利益は、その人が事故に遭わなければ将来にわたって得られていたであろう利益のことであり、
被害者が事故時に就労していたことがいわば前提になっています。
健康寿命という考え方があるように、ご存命の期間すべてが就労可能なわけではありません。
給与所得者の場合は退職という制度もあります。
また逆に、亡くなった方が10歳に満たないような場合は、その時から収入が発生しているわけではなく、
就職等をしたタイミングから収入が発生します。
このように、単に亡くなった年齢から平均余命までの期間を死亡逸失利益の計算において基礎とするのは適切ではないですから、
これらを考慮したものを就労可能年数といい、死亡逸失利益の計算の基礎とします。
原則として亡くなった年齢から67歳までの期間とされますが、
67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる場合や、67歳以上の場合には、平均余命の2分の1が就労可能年数とされます。
また、未就労者の場合には原則として就労の始期が18歳とされますが、大学卒業を前提とする場合には大学卒業予定時となります。
年金については就労可能年数という考え方は適切ではないので、平均余命までとなります。
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための係数です。
葬儀費用の相場
裁判基準(弁護士基準)における葬儀費用認定基準は、『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)に記載があります。
|
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編) 「葬儀費用は原則として150万円。但し、これを下回る場合は、実際に支出した額。」 |
このように、裁判基準(弁護士基準)上も、150万円が上限とされています。
葬儀自体の費用だけでなく、仏壇仏具の購入費や墓碑建立費なども含めたうえでと考えると、不慮の事故で命を落とされた被害者を弔うには安いと感じられるかもしれません。
しかしながら、「原則」と記載があるように、これを超える金額が認められている裁判例も複数あります。
例えば、神戸地方裁判所平成28年10月27日判決(交通事故民事裁判例集49巻5号1304頁)では、被害者が19歳大学生であった交通事故につき、
葬儀が実家のある神戸ではなく、大学のある広島市で行われ、200名を超える友人らが弔問に訪れたことや、葬儀費用として支出した額が170万を超える金額であったことなどから、
170万円の認定がされています。
大阪地方裁判所平成28年10月26日判決(交通事故民事裁判例集49巻5号1204頁)では、
単身赴任先の交通事故で無くなった50歳男性会社員について、単身赴任先で葬儀を行い、改めて地元でも葬儀を行ったことなどを理由に、
200万円の認定がされています。
東京地方裁判所平成20年8月26日判決(交通事故民事裁判例集41巻4号1015頁)では、
大手監査法人に勤務していた34歳男性が亡くなった交通事故につき、奥様やご両親が、700万円超の葬儀関係費や墓碑建立費等を支出したことなどを踏まえ、
被害者の身上や事故態様等から、手厚く対応しようとしたことは無理からぬとして、250万円の認定がされています。
このように、被害者個人に特有の事情などによって、上限額を超える認定がされることもあります。
損害賠償金の総額の目安
死亡慰謝料・逸失利益・葬儀費用を合算した損害賠償金の総額は
、被害者の年齢・収入・家族構成によって大きく異なりますが、数千万円から1億円を超えるケースも少なくありません。
なお、自賠責保険の支払上限は死亡事故の場合3,000万円です。
任意保険は自賠責保険の上乗せとして存在している保険ですから、自賠責保険と同じかそれ以上の金額の支払いを行います。
他方で、被害者側に支払う金額が少なければ少ないほど、自社の利益が大きくなる立場でもあります。
ですから、自賠責保険をやや超えるくらいでの示談を進めてくることが多いです。
しかしそれでは、被害者の方はもちろん、ご遺族が受けた苦痛や損害に対しての適切な賠償とは到底言えません。
示談書に署名捺印をしてしまう前に、一度専門弁護士に相談することを強くお勧めします。
交通事故での死亡事故直後の遺族の対応の流れ

死亡事故の直後は気が動転している中かと思います。
ですが、それでもしっかりと適切な賠償金を受け取るためには以下のような対応を進めていただくことが必要となります。
- 警察・医療機関と連携する
- 死亡診断書・死体検案書を受領する
- 事故の経緯や関係情報を整理・確認する
- 加入している保険会社へ連絡する
- 葬儀の手配と死亡届の提出を行う
- 慰謝料・損害賠償額の目安を把握する
- 交通事故に精通した弁護士へ相談する
警察や、葬儀社、弁護士などに相談しながらアドバイスを受けつつ進めていくと、不手際を防ぐことができます。
交通事故の死亡事故における示談交渉の流れ

死亡事故の示談交渉は、概ね以下の流れで進みます。
- 損害額の確定
- 保険会社からの示談提示
- 弁護士による交渉
- 示談成立または訴訟提起
- 賠償金の分配
1 損害額の確定
葬儀費用・治療費・逸失利益・慰謝料などすべての損害項目が確定した後に示談交渉を行うことになります。
基本的には、四十九日法要以後に加害者側保険会社から示談提示があります。
2 保険会社からの示談提示
加害者側の任意保険会社から損害賠償金の提示がなされます。
この段階の提示額は任意保険基準に基づくものであり、弁護士基準(裁判基準)と比べて大幅に低いことが多いため、
提示額をそのまま受け入れてはいけません。必ず弁護士に相談したうえで内容の妥当性を確認すべきです。
3 弁護士による交渉
ご依頼を受けた場合には、弁護士が弁護士基準(裁判基準)に基づいて損害額の計算を行います。
その計算ののち、保険会社からの示談提示との差額について交渉を進めていくことになります。
4 示談成立または訴訟提起
お互いが納得するラインで示談交渉が成立するに越したことはないです。
他方で、損害額が大きく、保険会社側の決済が下りないケースや、裁判基準満額をいただかないと(いただいてもなお)納得がいかないケースでは、
訴訟提起をすることも考えられます。
この場合、時間と費用がかかるというデメリットは生じますが、裁判所にしっかりと損害額の算定をしてもらうことができます。
5 賠償金の相続人間での分配
被害者本人分の賠償金(慰謝料・逸失利益等)は、原則として法定相続分に従って相続人間で分配されます(民法第900条)。
遺族固有の慰謝料については、各自が直接請求権を持ちます。
相続人間でのトラブルを防ぐため、分配方法について事前に遺産分割協議書を作成しておくことをお勧めします。
交通事故の死亡事故で遺族が利用できる支援制度

交通死亡事故のご遺族・遺児には、さまざまな公的・民間支援制度があります。主なものを以下にご紹介します。
1 交通遺児等貸付制度(ナスバ)
自動車事故で保護者が死亡した場合、子(中学校卒業まで)に対して無利子の貸付を行う制度です。
2 交通遺児等育成基金
| 公益財団法人交通遺児等育成基金ホームページより
「交通遺児育成基金事業は、国内で発生した自動車事故で亡くなられた方の残された16歳未満のお子様が、損害保険会社などから支払われる損害賠償金等の中から、拠出金を交通遺児等育成基金に払い込んで基金に加入します。基金は拠出金を公社債等で安全・確実に運用し、これに毎年の国の補助金や民間からの援助金を加えて、お子様が満19歳に達するまで育成給付金を支給していく事業です。」 |
3 遺族年金
亡くなられた方の加入していた年金の種類などによっても変わりますが、
遺族厚生年金・遺族基礎年金などを受給できる場合があります。
- 参照ページ:日本年金機構 遺族年金
4 地方自治体の見舞金・奨学金
各地方公共団体には、交通事故相談窓口が設けられており、
見舞金や奨学金、生活一時金などの給付を受けられる場合があります。
支援制度は複数にわたり、申請の要件・窓口・手続きがそれぞれ異なります。弁護士や各機関の相談窓口を通じて、利用できる制度を漏れなく確認することをお勧めします。
交通事故の死亡事故における刑事手続きの流れ

刑事手続は、まず警察の捜査から始まります。
警察の捜査では、加害者・ご遺族の供述調書の作成や実況見分などが行われます。
次に、警察の捜査書類が検察に送致され(書類送検)、
検察での補充捜査などが行われたのち、起訴・不起訴の判断が行われます。
交通死亡事故の場合には、起訴となることが多いですが、
事故状況などによっては不起訴となる可能性もあります。
不起訴となってしまった場合で、ご遺族の方が納得できない場合には、検察審査会への申立てなどの手続をとることも可能です。
起訴となると、刑事裁判が開かれます。
この刑事裁判については、平成19年の刑事訴訟法の改正により新設された被害者参加制度により、
ご遺族が参加することができるようになりました。
被害者参加制度の利用によりご遺族ができることは大きく分けて4つです。
- 証人尋問
- 被告人質問
- 心情意見陳述
- 論告意見
これらの手続はいずれも事故の瞬間の正確な状況を把握することや、
ご遺族の気持ちを直接加害者や裁判官に伝えることなどに大きく寄与しますが、
民事の損害賠償請求においても極めて重要な意味を持ちます。
当事務所では、被害者参加制度の利用を強くお勧めしており、そのための充実したサポートも行っております。
- 関連記事:刑事裁判参加サポート
- 関連記事:死亡事故刑事裁判への被害者遺族の参加(弁護士小杉晴洋の講演内容抜粋)
交通死亡事故での被害者の遺族に関するよくある質問

交通事故で亡くなった場合いくらくらいお金がもらえますか?
A.被害者の方の属性や生前のご収入などにもよりますが、数千万円~1億円を超えるような場合もあります。
交通死亡事故の被害者の遺族が請求できる損害賠償金のうち、大半を占めるのは、
- 死亡慰謝料
- 死亡逸失利益
です。
死亡慰謝料は、2000万円~2800万円程度が相場とされております。
死亡逸失利益は、被害者の方のご収入や被扶養者の数などによっては、億近い金額になることもあります。
いずれにしても、加害者側の任意保険会社が用いる任意保険基準では到底被害者側に適切な賠償はされませんし、
個別具体的な事情に応じた、「その人」の適切な賠償を受けるためには、専門弁護士への相談が必須と言えます。
加害者のゴネ得とは何ですか?
A. 「加害者のゴネ得」とは、加害者(または加害者側の保険会社)が交通事故の過失割合や金額について譲らず、
示談交渉を引き延ばすことで、最終的に被害者側が不利な条件で合意せざるを得なくなる状況を指します。
死亡事故の遺族にとっては、被害者を失った後、金額の話を行うこと自体が苦痛です。
また、被害者に被扶養者がいた場合などは、収入が途絶えることになるため、
だんだんと生活が苦しくなっていきます。
このような場合だと、被害者側が精神的に疲弊してしまい、不利な条件での合意を余儀なくされることがあり得ます。
加害者としては、譲らなかったことで支払う賠償金額を少なくでき、ゴネ得というわけです。
これを防ぐためには、早期に専門弁護士に相談し、根拠に基づいた適切な主張をしてもらうことが重要と言えます。
交通死亡事故でトラブルになりやすいことはありますか?
A. 交通死亡事故の民事交渉においては、以下の点でトラブルになりやすいです。
過失割合の争い
加害者側が「被害者にも過失がある」として損害賠償金を減額しようとするケースが多く見られます。
特に死亡事故の場合だと、被害者本人が事故態様について考えを述べるということができませんから、
早期に証拠を収集し、加害者側の意見のみで過失割合が動いてしまわないよう進めていく必要があります。
逸失利益の算定方法に関する争い
死亡逸失利益は、賠償金の大半を占めるような大きな金額になることがあります。
- 基礎収入が単に事故前の収入を指すものではなく、しっかりと将来にわたってその人が得られるはずであった収入となっているのか、
- 生活費控除率は妥当か、
- 被害者の職業に応じた就労可能年数の設定になっているか
など、個別の事情に合わせてしっかりと検討をすることが重要です。
死亡慰謝料の算定に関する争い
慰謝料というのは、精神的苦痛を金銭で評価するものであり、本質的には不可能なものです。
とはいえなんらの補償もされないということがあってはならないため、金銭での評価が行われているわけです。
ですから、画一的に相場に当てはめて計算するようなものではなく(もちろん相場は重要ではありますが)、
被害者の方、ご遺族が受けた精神的苦痛をしっかりと主張して、それに見合うだけの慰謝料を受け取るために全力を尽くすべきです。
相続人間での賠償金分配に関するトラブル
複数の相続人がいる場合、賠償金の分配をめぐって遺族間でのトラブルに発展することがあります。
相続人全員の合意のもとで遺産分割協議書を作成することをお勧めします。
保険会社による早期低額示談の誘導
先ほども述べたように、葬儀費用や生活費の工面を急いだり、紛争から早く逃れたいというご遺族の心理を利用して、
保険会社が早期の低額示談を迫ってくることがあります。
示談書に一度署名・捺印してしまうと、原則覆せません。
その後の保険会社との交渉をそのまま代行してもらうこともできますし、示談書の内容については弁護士に確認してもらうことをお勧めします。
弁護士のコメント

このページをお読みになっているご遺族の方は、辛い悲しみの中でも、亡くなった方の無念を晴らすためになにかしたい、という気持ちを持った方々だと思います。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通死亡事故の被害者側に特化した事務所として、遺族の皆さまが適正な賠償を受け取り、
刑事裁判において亡くなった方の無念を少しでも晴らせるよう、全力でサポートいたします。
死亡事故の損害賠償請求は、逸失利益の計算・過失割合の交渉・刑事裁判への参加対応など、高い専門知識が求められます。
保険会社の提示をそのまま受け入れることなく、まずは弁護士にご相談ください。
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ぜひ一度ご相談ください。
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