- 刑事裁判参加
- 歩行者vs四輪車
- 死亡慰謝料
- 民事裁判
- 過失割合
- 遺族の損害(慰謝料など)
【赤い本・判例誌 掲載事例】母子が車にはねられ2歳のお子様が亡くなった事故で、母の精神的苦痛も加味された判決が下り、約9000万円を獲得。意義ある判決として複数の書籍にも掲載された事例。
交通事故被害者Fさん(30代、女性)

今回ご紹介するのは、2歳のお子様とともに車にはねられ、お子様が亡くなる事故に遭った交通事故被害者Fさん(30代、女性)の事例です。
本件は、弊所代表弁護士小杉晴洋・弁護士木村治枝・弁護士大澤健人が担当し、
刑事裁判では禁錮1年4か月、執行猶予3年の判決、
民事でも裁判を行い、合計約9000万円を獲得しました。
本件は、先例的意義のある事例として、自保ジャーナルという交通事故判例雑誌や、
実務の基準とされている『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)』という書籍にも掲載されました。
死亡事故に強い弁護士法人小杉法律事務所では、死亡事故ご遺族の方々の無料法律相談を受け付けております。
真相を究明したい、少しでも加害者に適正な刑罰を受けて欲しい、少しでも賠償額を多くしたい、などのご希望がございましたら、まずは弊所の無料法律相談をご検討ください。
死亡事故被害者専門弁護士が、ご希望について解説いたします。
事故の概要

本件事故は、駅前のロータリー出口(丁字路交差点)で起きました。
被害者母子が、ロータリー前の横断歩道のない道路を渡り終えようとしていた時に、ロータリーから右折で出てきた車両が親子をはねたという事故でした。
この事故で、2歳のお子様が亡くなりました。
また、母であるFさんも左橈骨遠位端骨折、左尺骨茎状突起骨折、左母子基節骨裂離骨折などの大けがを負い、
左手関節機能障害で12級6号、左尺骨変形障害で12級8号、右母子の骨の欠損障害で13級7号、併合第11級の後遺障害が残りました。
さらに、目の前で子を失ったFさんはPTSDにも酷く苦しみ、心的外傷及びストレス因関連障害という傷病名で、精神障害にも後遺障害等級12級が認定されました。
突然の事故に苦しみ、対応を専門の弁護士に任せたいと考えたご家族様は、刑事と民事の両方の手続きを弁護士に依頼しました。
刑事裁判に被害者参加し、禁錮1年4か月、執行猶予3年の判決を獲得

死亡事故では、まず先に刑事事件の対応をしていくことになります。
刑事裁判には被害者参加をすることができ、被害者家族が裁判に出席して意見を述べることができます。
具体的には、公判期日で被告人質問を行い、加害者の過失や、供述の不自然な点などを追及することができるほか、被害者家族が今の思いを話す機会などが設けられます。
こういった活動を通して、できる限り量刑に被害者側の意見を反映してもらえるように動いていきます。
そして、刑事事件終了後には、刑事事件手続きの中で得られた情報も踏まえて、民事の賠償請求を行っていくことになります。
本件でも、受任後まずは刑事裁判への被害者参加から対応していきました。
事前に弁護士とご両親様で協議を行い、お子様との思い出や事故の時の思い、現在の苦しみなどについて、ご両親様の思いを反映した陳述書を準備しました。
そのうえで刑事裁判に臨み、心情意見陳述の場で、ご両親様に陳述書を読み上げていただきました。
また、被告人質問では、弁護士の小杉晴洋が、
- 進路遠方ばかりみて右折したため被害者に気づかなかったとの供述があるが、間違いないか。
- 被害者と衝突するまでの間、一度も被害者が目に入らなかったのか。
- 事故の時どこをどう見ていたのか。
- 記録上、ある程度の速度が出ていたと推察されるが、徐行はしていなかったということで間違いないか。
- 今後車を運転しないと、被害者に向かって誓えるか。
など細かく追及し、事故の詳細を把握するとともに、加害者の過失が大きかったことが刑事記録残るように対応していきました。
これらの対応の結果、禁錮1年4か月、執行猶予3年の判決が下りました。
民事裁判での主張立証

刑事裁判の判決が出た後は、民事の賠償請求を行います。
本件では、示談交渉の前に訴状作成まで行い、良い回答が得られないなら裁判予定であることを示したうえで保険会社に賠償請求をしました。
保険会社の提示額は納得できるものではなかったため、すぐに提訴に進みました。
裁判での請求内容
子の損害
治療費、逸失利益、死亡慰謝料
子の死亡に関するFさんの損害(精神障害分)
精神科の治療費、通院交通費、休業損害、逸失利益
近親者慰謝料(精神科への通院慰謝料+非器質性精神障害の後遺障害慰謝料)
父の損害
葬儀代、駆け付け費用、休業損害、近親者慰謝料
祖母の損害
休業損害、近親者慰謝料
Fさん自身が怪我をした分の損害(受傷分)
着衣損、怪我の治療費、入院雑費、通院交通費、診断書代、休業損害、逸失利益
入通院慰謝料、怪我の後遺障害慰謝料
Fさんは目の前で子供を失ったことで非常に強いショックを受け、精神障害で後遺障害認定までされている状況でした。
この点を考慮し、Fさん自身の受傷に関する慰謝料だけでなく、精神障害に対する慰謝料も別途認められるべきだと主張して、Fさんの近親者慰謝料は高めに請求しました。
事故態様・過失割合が主な争点に
裁判では、主に事故態様と過失割合が争点となりました。
事故状況に関して、弁護士は以下のような点を指摘し、加害者の全面的な過失による事故だと主張していました。
- 母子が手をつないで横断していた際の事故である。
- 事故現場は駅前のロータリーであり、事故の時間帯は人通りも多かったため、加害者は一層歩行者の動静に注意を払って運転すべきであった。
- 事故現場は見通しの良い道路であり、前方を見ていれば被害者らに気づけた可能性が高く、加害者に著しい前方不注意があった。
- 被害者らの受傷状態や、刑事記録からすると、加害者は徐行運転もしていなかった。
これに対し、加害者側代理人は、
「本件事故は、母子が手をつないでおらず、子供が道路に飛び出したことが原因で発生した事故である。
加害者はきちんと前方を注視していた。」
として、被害者40:加害者50の過失を主張してきました。
しかし、本件事故は、信号機も横断歩道も設置されていない、狭い道路の交差点で起きた事故に分類されますので、基本過失割合は被害者10:加害者90と考えられます。
さらに、被害者に有利な過失の修正要素として以下の事情があります。
- 住宅街・商店街等 -5%
事故現場は、駅前のロータリーであり、人も多い時間帯であった。
住宅街・商店街等に準ずる場所として、運転者は一層注意を払って走行すべきであった。 - 被害者は幼児である -10%
- 加害者に著しい過失〜重過失がある -10%~-20%
・加害者には著しい前方不注意があり、刑事裁判でも「わずかな注意を払いさえすれば被害者らを容易に発見できた場所」だと認定されている。
・加害者は衝突後すぐに停止できておらず、進行を続けて被害者を轢過しており、その過失は重大である。
・加害者は徐行をしていない。
・本件ロータリーは一般車両の進入が禁止されていた。
といった事情を考慮すれば、本件事故は加害者の重過失ないしは著しい過失によって起きたものだと考えられる。
弁護士は上記の点を指摘して、被害者側に過失はないと反論していきました。
第一審は加害者の過失95%、損害賠償金約6930万円で判決
裁判所の判断
第一審では、Fさんに対して約4310万円、父に対して約2560万円、祖母に対して約60万円、合計約6930万円の判決が下りました。
裁判所は、事故態様と過失割合について次の通り判断しました。
- 本件事故は、母子が手をつないで交差点を横断していた際に起きた事故である。
実況見分や刑事裁判でも、手をつないでいたことが前提となっており、母子が同じ位置で車に衝突されていることから考えても、子が飛び出したと考えるのは不自然である。 - 被害者側も、ロータリーからの車両の進出は予見することができたし、横断時にはある程度慎重に安全確認を行うべきではあったが、
加害者は見通しの良い道路にもかかわらず衝突まで被害者らに気づいていないこと、気づいていれば死亡事故にまでは至らなかった可能性が高いことを考慮すれば、
被害者側の過失が皆無とまでは言えないものの、加害者の過失が極めて大きい。 - 過失割合は、被害者5%:加害者95%とする。
慰謝料については、次の通り判断されました。
- 子が2歳で他界していること、事故態様、その後刑事事件および親族の供述調書・陳述書などを考慮すれば、両親に生じた精神的苦痛は極めて甚大である。
- また本件事故が、祖母が母子を車で送り降車させた直後に起きたものであることを考慮すれば、祖母にも固有の慰謝料が認められるべきである。
- 合計2650万円(子本人2100万円、両親各250万円、祖母50万円)の慰謝料を認める。
控訴審へ
判決の内容を弁護士が精査しましたが、本件は被害者側に過失があるような事案ではないこと、事故態様からして慰謝料が低すぎることに加え、計算ミスや計上漏れと思われる合計額の誤りで賠償額が少なくなっていたこともあり、控訴をすることにしました。
また、加害者側も、子が飛び出したことによる事故である、損害額も高すぎると再度強く主張して控訴してきました。
控訴審では賠償額が少し増額し、最終的には合計9000万円を獲得して解決へ

控訴審は、ほとんど一審と同じ判断をし、一審の計算ミスを修正したほか、細かな損害が追加で認められ、Fさんの賠償額が若干増額したのみで判決となりました。
加害者側の主張は全面的に退けられました。
最終的な金額は、Fさんに対して約4590万円、父に対して約2560万円、祖母に対して約60万円、合計約7210万円の判決となりました。
弁護士としては、Fさんに過失があるような事故ではありませんし、事故によって現在も苦しまれているFさんのことを考えれば、もっと高い慰謝料が払われるべきだと感じた部分もございましたが、
Fさん含むご家族様はこの結果に納得されており、上告は望まないということでしたので、このまま判決確定とすることになりました。
遅延損害金を加算した最終支払額は、約8700万円程でした。
このほか、自賠責から払われた金額なども含めると、合計約9000万円を獲得しての解決となりました。
裁判基準を超える入通院慰謝料の認定事例として赤い本等に掲載

Fさんの慰謝料について、当方は、怪我とは別の損害として、子の死亡による精神障害の慰謝料を認めるべきだと主張して、近親者慰謝料を高めに請求していました。
この点について裁判所は、「受傷分も精神分も本件事故に起因して発生した一つの損害と言わざるを得ず、両損害を全く別個の損害として捉えることはできない」と判断して、近親者慰謝料は両親ともに同じ金額で認定しました。
代わりに、Fさんの精神的苦痛に対する慰謝料は、Fさんの入通院慰謝料の費目で評価されました。
裁判基準で入通院慰謝料を算定すると176万円余りとなりますが、本件では精神的苦痛が考慮され、基準額を超える250万円で認定されています。
この点で、本判決は先例的意義があると判断され、自保ジャーナルや、実務の基準とされている『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)』に掲載されました。
赤い本では、入通院慰謝料(傷害慰謝料)について、「傷害の部位、程度によっては、別表Ⅰの金額を20%~30%程度増額する。」と記載されており、本事例はこの具体例として掲載されております。
赤い本は、裁判所・保険会社・弁護士の3者がすべて利用しているような実務の基準とされている書籍です。
そのため、赤い本に掲載されたことによって、今後似たような被害に遭われた方が精神的苦痛に見合った慰謝料を請求しようとする際に、本判決が重要な参考事例となることが期待されます。
弁護士小杉晴洋のコメント

本件は、弁護士の木村治枝、大澤健人と共同して勝ち取った判決でした。
このような判決を得ることは、ご依頼者様に良い結果をもたらせるだけでなく、今後、同様の事故に遭われた被害者の方が慰謝料を請求する際の参考となり、被害者全体の救済にもつながると考えています。
今後も、各所で参考にしていただけるような先行事例となる判決の獲得・掲載を目指し、自他ともに損害賠償請求分野のトップと認識されるよう、日々研鑽を積んでまいります。
弊所は交通事故の被害者専門の法律事務所として、様々な交通事故案件を取り扱っており、お客様一人一人のご状況に合わせて、適切な補償が獲得できるよう、誠心誠意対応しております。
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